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5月5日(火)祝日

ドリームランドから。


グロ注意。

 



 向こうと白い宮殿が同じで安心したのだが、人が随分と居る。

 ただただパズルのピースを嵌める者、ボトルシップを組み立てる者、知恵の輪を引き千切る者、少し退廃的な気もするが、完成した者はニッコリと微笑み、眠りに入ると消えていった。


《おぉ、随分と待ったよ御使い》

「その呼び方は、おじさんの知り合い?」


《あぁ、大昔にな。どうだ?何か問題は無いか?》

「大丈夫です、今の所は。せいちゃんは?」


《書いているよ、余程趣味が無いらしい。仕事だとさ》


 シバッカルが指差す先で、せいちゃんが机に向かい何かを書いている。

 ただ、ココで文字は難しい筈なのだが、スムーズに書けているらしかった。


「仕事人間」

『鈴藤さん?』


「おう、姿には言及するなよ、服をひん剥くぞ」

『異性装の護法でしたら、私もされてましたし何も言いませんけど。ココは一体』

《私の宮殿だ。ただ、お前の知るのとは少し違うかも知れないが、ココは癒しを求める者の為の宮殿で有る事は変わらない》


「クラネスは?」

《変わらないだろう、会いに行ってみると良い》


 しっかりした感じのシバッカルが開いた扉の先には、見慣れた王都が広がっていた。

 真夏の青空、暑い日差しと冷たい海。


『今の女性が』

「シバッカル、ココの王様はクラネス」


 浜辺の裏口から王城に入ると、クラネスが変わらぬ姿で迎えてくれた。

 神様で人間だから、変わらないんだろうか。


「良く来たね」

「お変わりなさそうで、良かった。コッチはせいちゃん、付き添い」

『宜しくお願いします』


「それはこの子に言うべきだね、私は少し間借りしているだけだよ。そう言えば花街には行ったのかな、新人が入って嫁入りまであるらしい」

「行かなきゃ、じゃあまたね」


 せいちゃんを連れ花街まで飛んで戻ってみると、花魁達が騒がしい。

 何と新人花魁が灯台守の息子を射止めたらしいと。


『遊郭ですか』

「まぁまぁ、何もしてないよ。姐さん達、新人の子は?」


『あら、久し振りやねぇ』

「どうもー、おばんどすー」


『おばんどす、新人さんを見に来はったん?』

「せやで」


『良いタイミングやね、さぁどうぞ、おいでやす』


 門を潜ると甘い白粉の香りと、昨日のお酒の残り香。

 姐さんの後に付いて廊下を進むと、身支度を始めたばかりの新人花魁が鏡の前に座っていた。


 白いふさふさの尻尾、とんがり耳。

 キツい可愛い感じの、見た事が有る様な。


「長毛種の白猫は、お狐さんだったのか」

《もうバレましたか、勘の強い人やねぇ》


「何で居るのよ」

《そりゃねぇ、鳥居さんは有るし、ココは遊郭やし》


「まぁ、そうか。で、何の用ですかね」

《バレ無い様に近付いて、どんなお人か知ろうと思ったんやけど。お守りさんが居るなんて思わんかってん、それでずっとこのままや》


「知れた?」

《えぇ、私達が悪うござんした、どうか堪忍ね》


「せいちゃん知ってる?」

『白い狐でしたら、ダキニ天様と一緒に居られる方だとは思いますが』

《せやで、だけどあのお方は人様の領域には踏み入らんって、せやけど心配やん?いきなり知らん人が来たんやし》


「クエビコさんとか、オモイカネさんに聞いたら良いじゃない」

《それはソレ、コレはコレ。実際に見聞きするんわ大事でっしゃろ?》


「まぁ」

《それにね、住む世界が違う者同士、色々あって今は別々の情報網で活動してはるんですけど。そこの人間さんが連絡係やのに、全然教えてくれへんねんもん》


『あ、あー!申し訳ございません。纏めるのに時間が掛かってまして、今日中には僧侶の方々にお渡しする予定です、はい』

「直に会い行くのに、補足するし」

《ええの?助かるわぁ、そしたら連絡するわ、せいちゃんのお電話でええよね?》


『はい』

「ほいで、息子と結婚するの?」

《そないな事をしてええの?私の分身が残ってしまうんよ?》


「別に悪さをしないなら、ええよ。連絡に使っても良いし」

《わぁ、ありがとう。ほなら名前、くれへん?》


「えー、じゃあ、その花の名前は?」

《百合車やねぇ》


「じゃあそれで」

《ありがとう、それと鳥居とお寺さん、もう少し良いのにしてくれへん?》


「ええよ、どんなんが良いか教えて」


 白狐さんこと百合車と共に遊郭の門を出て、鳥居とお寺のある場所へと向かった。

 言われるがままにうんうんと鳥居や神社の案を聞き流す。


 そうしているとすっかり夕方、遊郭が盛り上がる時間になってしまった。

 そろそろ灯台守りの息子が来る時間だろうか。


『あ!誰かと思ったよ、ビックリしたぁ』

「おう、お元気そうで何より」


『はい!どうも。それで、もう聞いてます?』

「結婚するとかしないとか」


『いやぁ、えへへ』

「じゃあ、頑張ってね、寺と鳥居と神社の増築」


『良いんですかい?』

「おう、立ったら結婚許可しちゃる、頑張れよ棟梁」


『はい!』






 朝。

 晴れ。

 天気予報では1日中晴れらしい、せいちゃんはまだ眠ってる。

 容量チェック。


 低値、シバッカルの宮殿と神社仏閣だろうか。

 バイキングには丁度いい。


 トイレに行ったり珈琲を淹れたりしても起きる気配は無し、試しに空間を開いて出入りしても大丈夫だった。

 トラウマか何かか、せいちゃんの携帯が鳴っていたので、試しに窓を開けてみる。

 目を覚ました。


『ぁはい、はい、はい、はい、分かりました』

「おはよう」


『おはようございます、どうして置いてっちゃうんですか』

「あの建築物は、せいちゃんの方が詳しそうだったから。それより電話は?」


『深川の不動寺においで下さいと』

「いつ?」


『今からと』

「お腹減ってるのに?」


『すみません、私の仕事が遅いばかりに』

「ややこしいから仕方無いけど、まぁ、行こうか」


 せいちゃんの身支度を眺めながら、エリクサーを1杯。


 そうして受付に行きチェックアウトし、そのままタクシーに乗り込んだ。

 経費削減の為にトイレで移動しようと提案したら、トイレ前にカメラがあり、今後ホテルが使い難くなると止められた、近くの公園も人が多いのでダメだと。




 20分もせずに寺の裏手に着いた、お坊さんの案内のままに寺の中へ、檀家さんと使うのであろう質素な応接室へと案内された。


 お腹空いた。


「お待たせしました、私はココの寺の住職をしております泰法と申します。ただお不動さんの住職と覚えて頂ければ、結構ですよ」


《叡恩と申します、浅草寺から参りました》


『天台の寂庵と申します』


「鈴藤紫苑です」


 和やかなのに緊張感があって、やりづらい。


 お茶しか無いし、早くご飯を食べに何処かに行きたい。


「それで、早速ですが本題から入りましょうかね。先ずはダキニ天様からお聞きしました、お狐さんが少しお邪魔したそうで、前触れもなく申し訳なかったとの事でした」

「はい」


「それで、お話を聞かせて頂けるともお伺いしたのですが」

「はい、ダキニ天さんかお狐さんになら、お話させて頂きます」


「それは、どうしてでしょう?」

「朝ご飯を食べる間も無くココへ来たのです、それでただ話せと言われるのは、何か、ガッカリです。帰りたい、帰る、帰ろうせいちゃん」




 裏口から出ようとすると、先程の尼さんとは別の人が話し掛けて来た。

 美人さん。


『すまん、堪忍しておくれ』

「いやです、ごはん食べたいんです、天気も良いしお外が良いんです」


『ムクれ無いでおくれよ。そうだ、ご飯を用意させるから、ね?』

「お金有るもん」


『そう言わないで、じゃあ買い食いしながらにしようね。名物を沢山用意させるから、それまで私とお話ししよう』


 参堂へ無言のせいちゃんとダキニさんを引き連れて歩く、先ずは甘酒、日本酒の酒粕で中々に美味しい。

 せいちゃんは変わらず無言で飲んでる。


「何で、あんな対応なの」


『一応は、面白い人間と話せる事になったので丁重にお出迎えして欲しい、良く話しを聞くように。とは言ったのだけれど、話しが跳びに跳んで、おもてなしが抜けた様だ、すまないね』

「ダキニさんの話しを聞かんなら、ワシの話しも聞かんと思うが」


『そうでは無いんだ、その、上をもてなす、と勘違いが生じたらしい。伝言が上手く届かなんだ』

「へー」


 目の前の鯛焼き屋で、餡子とクリームを買う。

 せいちゃんはクリームを取った。


『もぅー、そんなにむくれないでおくれ』

「それで、何が聞きたいんです?」


『何を成そうと思っているのか、人間もソレを警戒している』

「カーネションとの繋がりは?」


『お主を警戒している』

「会わせてくれよぅ、それこそ、そこの誤解を解きたいねんな」


『今は百合車達が説得中だ』

「ほう、あ、お煎餅だ」


 お煎餅を何種類か買って店の外へ出て味見、お醤油美味し。


 そのまま隣のきんつばを買い、鞄に入れた。


『ほう、凄い鞄だねぇ』

「花に水やりしてあげたい」


『そうかそうか、なら戻ろう、きんつばは落ち着いて食べた方が美味しいぞ?外にお茶も用意させる』


「わかった」


 くるりと踵を返し、先程座ったベンチに戻る。

 偉そうじゃないお坊さん達が、お茶やホースを用意してくれた。


《“ふぅ、良いお天気ねぇ”》

『まぁ!異国の妖精か、可愛いねぇ』

「でしょう」


《“淡雪です、宜しくお願いしますね”》

「淡雪です、宜しくって」

『ダキニじゃ、よろしゅう。せいちゃんや、坊達に説明してくると良い、私はコチラで話を聞く』

『はい』


「せいちゃん怒ってるのかな」

《アナタに?違うわよ》

『人間に、だろう』


「じゃあ怒ってるじゃん」

『坊達にだよ。まだ人間を騙るとは、面白いヤツだ』


「血も糞も出る人間です」

『神と同等の扱いを受けて構わぬのだよ、それ程の能力なのだから。せいちゃんはソレを感じているからこそ、他の人間を怒っているのだ』


「面倒だなぁ、人間で良いのに。あ、天界に召すのは止めてね、人身御供も」

『人身御供は考えてはおらんが、天界に召すとはなんぞや?』


「可哀想なこの流転の民を救う方法、殺すのでは無く神に近い存在にし、傍に召し上げる」

『それは1の理か?』


「まぁ、馴染めない者への救済。不満を溜めて魔王に成られたら困るのと、神が気に入った人間を傍に置く方法でも有る」

『百合車からの情報ですまないのだが、お主は魔王候補だと聞いたが?』


「おう、だから転生者が怖がるのも仕方無い、1で魔王候補だし、2ではロキ殺したし。そんなんが悪い奴かどうか知りたがるのも分かる、危ないかもと危惧するのも分る」


《“まぁ、ロキを殺したのね”》

「正確に言うと、アヴァグドゥの中に居たロキね」


《容姿を気にして引き籠もってた子ね、お姉さん凄い美人だったのよねぇ》

「知り合いか、なら置いてった方が良かったか」


《良いのよ、他にもアヴァグドゥを知ってる子は居る筈だから》

「“なら良いけど”」


『そうそう、何カ国語を話せるのだ?坊達が羨ましがっておったよ』

「多分、全部、1の恩恵だと思う、世界からの恩恵」


『まぁ、まぁまぁまぁ、何て素敵なんだろうか。もしかしたら、意志疎通不可能な怪異とも、何か話せるかも知れないねぇ』

「どうだろ、根本的に解決しなきゃイタチごっこじゃない?」


『今、その転生者達が色々案を出してるらしいのだけれど、突拍子も無いと他から反対が出てるんだ。そんな事を誰が出来るのかって、ハッキリ言って邪魔をされている』


「面倒しか無いなぁ、神様と密接過ぎるとこうなるかね」


『最悪は涙を飲んで退くしか無いのだけれど、アマテラスが1人でも頑張るって言うからねぇ、退くに退けないんだよ』

「天に帰ったら、もう戻れないの?」


『別に、そんな事は無いのだけれどねぇ』

「皆でストライキして、昔のアマテラスさんみたいに消えれば、気を引き締められるんで無いの」


『それで死人が出ては困るよ』

「欠損が無ければ、脳が無事なら生き返らせる事が可能なら?」


『それでも、死の恐怖を与える事に変わりは無いだろう?』

《“私が忘れさせてあげる、得意なのよ、そう言うの”》

「忘れさせるって、淡雪が」


『悪魔の様、悪魔の囁きとは、こう言う事なのだろうね、何と恐ろしい事を考える人間なのだろう。面白い、話しを持ち帰らせて貰おう』

「良いけど、魔王候補にはしないでね」


 ダキニさんが立ち去り、空いた席に深川飯の定食と鰻が並んだ。




 淡雪と日光浴をしながら食べ終えた頃、せいちゃんが戻って来た。


『足りました?』

「まさか、せいちゃん何食べたい?」


『今日は暑いですし、お蕎麦が食べたいですね』


《ニャー》


 長毛種の白猫が鳴き、歩いては振り返り、また鳴いた。


 付いて来て欲しいらしい。


 案内されたのは、参道から外れた場所のお蕎麦屋さん。

 汁の良い香りのする店の前で、猫が止まり顔を舐めた。


「オススメ?」

《ニャー》


「そうか、ありがとうね」


 お昼前、お客はまばら、お座敷に座る。


 せいちゃんは鴨付けそば。

 コチラは親子丼と天ざるを頼むと、山盛りのおろしに天つゆとお蕎麦の2つのつけ汁が置かれた。

 親子丼は味が濃過ぎずトロトロで美味しいし、蕎麦は細めでどっちのつけ汁でも美味しい、天ぷらサクサク、アスパラ旨い。




 そして食事を終える頃には店は満員に、しかもレジ横にはお稲荷さんが売りに出ていた、大入りを買ってお店を出ると、猫がまた歩いて行く。


『今度は何処へ行くんでしょうか』

「用事ある?」


『夕方までに身分証を取りに行くだけですよ』


「じゃあ、行こうか」

『はい』


 猫は車を避け、日陰を進む。

 そうして小さな公園に入ると、1匹の白猫と少女の前で振り向いた。


《ニャー》


「転生者?」

「は、何で、まさか」

《ニャー》

《にゃー》


「何で連れてくんさ」

《ニャー》

《にゃー》


「あまり誂うのは良くないと思いますが」

《だって、面白いんやもん》

《ね、凄い形相やったわねぇ》

「俺が、殺されたら、お前らのせいだからなお狐さん」


「何で神霊や神様の言う事を素直に信じないのか」

「お人好しだし、神様だって間違う事もあるだろうから、代わりに疑ってるだけだし」


「成程」


「お前は、悪い召喚者か?」

「だったら?精神科にでもぶち込む?殺す?どうやって?」


「神様に、殺して貰うか、怪異課に殺してもらう」

「課には既に所属してるんだが、しかも多分、圧勝できるぞ」


「なら、精神科にぶち込んで貰う」

「逆に君にしてやろうか」

『鈴藤さん』


「嘘です、悪い召喚者じゃ無いよ、良い召喚者だよ」

『本当ですよ、今のところは』


「どうやって確信するんだよ、そうやってさ、アンタ観神の家の人間だろ。知ってるんだよ霊力の事は、でもな、無いからなのか俺らには分らないんだ、見えない、そう言う直観が無いんだよ。神様達だってそうだ、今の処は間違えてないけど、間違えるかも知れないだろ、新しい人間で、しかも能力を持ってるんだから」


「ピアスの穴開けてる?」

「何だよ急に」


「嘘を見抜ける魔道具があるとする、魔力が籠った魔石があるとする、なら能力無しでも使えるとすると」


「そもそも、それが嘘か見抜けないじゃ無いか」


「ココの嘘発見器は?」

「体を操れたら意味無いだろ、生理反応で調べるんだから」


「どうしようかせいちゃん」

『操れるんですね』


「そこ?」

《ふふふ、慎重やねぇ》

《せやね、警戒心高過ぎやわぁ》

「五月蠅いなぁ、弱いんだから仕方無いだろう」


「その感覚を一般人が持ってくれてたらなぁ、省庁も良くなりそうなのにね」

『そうですね、ご自分を弱いと言いながらも神様を心配してくれてますし』

「しょうがないだろ、本当に何も出来ないし。凄い良い人達なんだから、仲間も、神様達も」


「どうしたら良いのよ、少女よ」

「河瀬だ、それはソッチが考えたら良いだろ」


「殺すぞコミュ障、てめぇ、ベルセルク何処までだ」

「31」


「俺は40だ」

「卑怯だぞ!」


「君が最新の転生者か」

《ちゃうよ、どこもだいたいは15年間隔やねんけど、最近生まれたのがおるよねぇ》

《話せる様になるまで3年、それでも、その情報を持ってるとは限らんよねぇ》

「うぅ」


「どうしたら信用できるかはソッチが考えといて、後、電話番号あげる、じゃあ帰ろう」


《ふふ、面白いモノが見れたぁ》

《せやねぇ、ふふふ》


 5月と言えど炎天下の中で苦悩する少女の皮を被ったおっさんと、お兄さんの皮を被った女の戦いが終わった。


 どうしよう、何時バラそうか。


『後半の、何の会話なのか全然分らなかったんですけど』

「本の話し」


『あぁ、それは卑怯ですね、私も気になっちゃいます』

「好きな本有るの?」


『怪異太郎の備忘録です』

「マジか、家にある?」


『はい』




 再びタクシーに乗り込み、警察庁へ。


 パスポートに保険証、警察手帳、折り畳みの携帯電話を受け取り、内部の案内がそのまま始まった。


 途中で、例の突っかかって来たスーツが挨拶をして来たので、同じ挨拶で返した。

 辞めないんだ、偉い。


 怪異対策課は個別で整備班、科学捜査班、医療班等々を持っている。

 前駆部隊が銃火器を持った例の隊員達で、実働隊が8番、スーツ組は一応実働隊の警護らしい。

 盾か捨て駒か、エリートなのに大変だ。


 実働隊は警護のスーツ組を除いて、銃火器などの所持は許可されてはいないが、儀式用などの特別な許可を得た物のみ、現場での所持と使用が可能。


 どうしよう、申請書類だけでヤバい事になりそうなんだが。


「あー、困った」


『最低限で良いので、軽く教えて頂けませんか』

「盾は申請しなくて良い?」


『それは大丈夫です』

「最低限かぁ、難しいなぁ、臨機応変に出ちゃうもの」


『じゃあ、種類だけでもお願いします』

「実弾が出ない銃は?」


『それは大丈夫です』

「じゃあそれは逆に申請する、後は」


 いつも使ってる短刀、そして薔薇の剣か。

 出すのか。


『登録には、1度提出して貰う必要があるんですが』

「1つは魔剣だから、傍に居たいんだけど」


『まっ、はい、分かりました。では、行きましょうか』


 せいちゃんに書類を作って貰う為、事務班に一緒に向かった。

 御守りが大変だな、せいちゃん。


 スケールと共に実物の写真を撮って記録していくのだが、銃も魔剣も写真がブレるので、少し時間が掛かってしまった。


 ごめんね薔薇ちゃん、銃も。


 それを見ていた他の事務の人達が、銃沢山、刃物沢山と書かれた書類を文句も言わずに受理してくれた。

 作戦勝ちなのか、大局的に見ると負けなのか分からない。


 次は医療班、採血に身長体重など軽めの健康診断的内容。

 歯を褒められた、ですよね。


 科学捜査班には淡雪の花粉や何かを提出し、8番へと戻った。




 後は定時まで居るだけ、其々にテレビを見たりスマホを弄ったり、本を読んだり。

 スーツ組はそれなりに仕事をしている、様に見えるが、主にパソコン画面と睨めっこなので実態は不明。


 せいちゃんの席は入口の真横なので、その横でカーネーションについて調べる。


 公式ホームページは昔ながらの作りで、アクセスカウンターがあるタイプの簡易サイト。

 軽い、最速でも目指してるのか。


 そうして会員専用入口でパスワードが求められる、しかも数字かどうかも不明で、文字数制限は凡そ50以上。

 アタックのしようも無い。


「今日こそ、せいちゃんち行って良い?」

『昨日言いましたよね、ご迷惑お掛けする可能性があるって』


「大丈夫そうだったよ」

『そうなんですか?』


「うん、試した」

『なら良いですよ、アマテラス様からも勧められましたし』


「狭い?」

『そうかも知れませんね』




 そして今日も何事も無く定時が終わり、せいちゃんちに行く事になった。

 それに付随し車の貸し出し許可が出た、今日みたいに色々と移動するには便利だし、出動もし易いからとの事。


 せいちゃんを守るには、このままの姿の方がお互いに良さそう。


 だってワンルームなんですもの。

 取り敢えず見守り君を展開、まだ驚くか。


「出世組で良い部屋に住んでそうなのに」

『広いと掃除が大変ですし、1人には丁度良いんです』


「本とテレビしか無いじゃないの」

『趣味をやるヒマが無いんですから、仕方無いんですよ』


「そう言えば大國さんを見なかったのだけど」

『警視庁に居ます、向こうの方がエリートですよ』


「2つあるのか」

『我々は簡単な怪異や先遣隊です、向こうが本隊ですから』


「向こうの情報来ないのかぁ」

『アマテラス様には入ってると思いますよ』


「怪異と話したいなぁ、予測出現ポイントとか無いの?」

『滅多に無いですね、荒れたりお参りが減った神社仏閣には注意を払ってますし、主に突発的な個人の事情から発生する場合の処理が、コチラですから』


「じゃあ、今夜か」

『止めて下さいよ、縁起でも無い』


「すまん、今夜はキャンセルでお願いします」

『そうしておいて下さい、何も無いのが1番なんですから』


 夕飯には近所の中華の出前、中華丼に餃子、ワンタンメンとエビチャーハン。

 せいちゃんは中華丼小盛りと餃子。


 うまい。


 部屋は禁煙なので近くの公園に出掛ける。

 新品のスマホを弄りながら一服。


「着いて来なくても良いのに」

『腹ごなしの散歩ですよ』


「偉いねぇ。お、近くに銭湯あるじゃん」

『熱くて真っ赤になりますよ?』


「最近急に熱いの好きになったからなぁ、行きたいけど、空くのまだ先か」

『温泉好きなんですか?』


「好き、寒い時期の露天とか最高。デジタルもパズルも食べるのも好き、趣味が無い人の気が知れん、マジで何でなのよ」


『暗い話になるので、聞かない方が宜しいかと』


「まさか、役に立つ人間になれって厳しく育てられたとか?」


『…はぃ』

「マジか、いや、でも教育の成果は出てるしなぁ」


『それがまた悔しいので、自分の意志で役に立とうとしてるんだと考えるんですけど。実際は何処まで見えないレールを走ってるのかって思ったり』

「同じだ、見えないレールが何処まで続いてるのか知りたいけど、見るの怖いもの」


『また移動する恐怖ですか?』

「おう、親しくなっては離れて、また誰かと親しくなる。自分が耐えられても、向こうを思うとね、お別れは出来たけど、ココでも出来るとは限らないし。1ではそうだったから、向こうで探してないか心配」


『1でも初めてなんですか?』

「聞いてはいない、追跡確認出来ないし。2でもそう、既に他を体験してるのは居なさそうだった。で、ココもでしょ、初めてばっかで困っちゃう。無限に移動させられるとかマジ無理、死んじゃう」


『すみません、私のはスケールの小さい悩みでしたね』

「逆に嫌味に聞こえるから止めて、こちとらイレギュラーマンなんだし。せいちゃんのは充分な悩みだよ」


『そうなんですかね、鈴藤さんの悩みを聞いたら、自分がただの蛙に思えてきたんですけど』

「大海どころか宇宙規模はアカン、比べるのは生息出来る範囲に限るべきよ、淡水は淡水で、鮭じゃ無いんだから」


『何だか鈴藤さんの事が段々年下に思えなくなってきましたよ』

「せいちゃんは蛙ちゃんどころか、お玉ちゃんやもんねぇ」


『訛りでディスりを誤魔化してるつもりですか?』

「ウブい話しやしぃ、事実やろぅ」


『大声出して泣きますよ』

「ごめんなさい、アイス奢るから許して」


『お金、持ってるんですか?』

「あ、うん、返すか」


『団体にですか?』

「おう、お供も放置中だし、どうしよう」


『昨日の助言もありますし、泳がせた方が良いかと、大國にも相談しておきますよ』

「さよか、よし、帰ろうか」




 せいちゃんがお風呂に入ってる間、晶君の居るホテルの部屋を覗いた。

 気を使ってテーブルと椅子のある場所から覗こうと思ったのだが、目の前には膝。

 テーブルでパソコンしてるらしい。


 画面の見える位置に空間を開き直し、覗く。

 どうやら医師に戻るらしい、嘗ての勤務先のサイトを腕を組みながら眺めている。


 少しじっくり話そうか。


 いきなり出るのもアレなので、先ずはバスルームからノックをして出た。


『お待ちしてました』

「ごめんね、大丈夫だった?お金足りてる?」


『はい、安いパソコンなので、部屋も安いですから』

「食事は?バランス良く食べてる?」


『はい、治して頂いたので、コレからも大事にしようと思っています』

「そうか」


 そろそろ結界を張ろうか、ソラちゃん出来る?


【結界を展開しますので、1度消灯させて下さい】


 手元で全ての電気を消すと同時に、結界が展開された。

 便利。


【一時的なモノのみです】


 それでも便利よ。


『あの、今のは』

「気にしないで。医師に復帰する?」


『考え中です、ただもし再発したら周りに迷惑を掛けてしまうので。主に復帰先を考えている所です』

「偉いなぁ、じゃあ再発しない様に遺伝子弄ってみようか」


『待って下さい、それなら今の自分のサンプルを採って比較したいので、少しお時間を頂けませんか?』

「出来るって信じてくれるの?」


『勿論です、あの病から回復させて頂いただけで無く、直ぐ動けるまでに回復させて頂いたんですから』

「嬉しいなぁ、信じて貰えるって素直に嬉しいよ」


『あの、私はお役に立てませんか?』

「ごめんね、あの団体を信じ切れないんだ。利用されるだけの状況は避けたいからね」


『所属していたので信じて頂けるとは思いませんが、私は私の理念と信心でアナタに着いて来ました、教団は関係ありません』


「現れたのが女じゃ無くてガッカリした?」

『いいえ』


「翠は好き?」

『いいえ』


「何か呪法や術は使える?」

『いいえ』


「性的に好きな体の部位は?」

『下腹部の、臍の下の膨らみです』


「初めて聞いたよ、そのフェチ」

『女性的で優しさを感じます』


「好みのタイプは?」

『良く笑って良く食べる人です』


「年上?年下?」

『似た年齢であれば気になりません』


「結婚は?」

『1度、子供は居ません、再発したので離婚して貰いました』


「優しいなぁ」

『いいえ、もっと早く決断すべきでした、最初の発病の時点で病気を甘く見てしまい、彼女の時間を無駄にさせました』


「連絡する気は?」

『有りません、再婚してますから』


「わお、早く無い?」

『子供を欲しがってましたから、2年は充分です』


「そうか、何か聞きたい事は?」

『何かご不便は有りませんか?』


「無いよ、あ、スマホを入手したから番号を交換しよう」

『それは後にしましょう、教団が入手した携帯ですから、私が新しい番号を入手次第、ご連絡差し上げます』


「ありがとう。最後に1つ、真面目で大きな嘘吐いて」

『元妻を愛した事は有りません』


 高音と低音が入り混じる悲しい音、滅茶苦茶良い奴で、良い男なのに、ごめんな。

 もう少し警戒させておくれ。


「閉じ籠もって無くても良いからね。じゃあ、またね」

『はい』


 バスルームへ戻る頃、結界が解けていった。

 居留中のみ展開されるものなのだろう、にしても便利。


 バスルームから、せいちゃんちのバスルームを覗き、誰も居ないのを確認してから広げて戻る。




 そうしてバスルームから、リビングへノックした。


「ただいま、気付いた?」

『いいえ、気配も何も無いですね』


「でしょう。じゃあお風呂借りるね」

『はい、どうぞ』


 ささっと浴びて、ぱぱっと出る。

 ココで1番不便なのは、髪を乾かす魔法を持ってるのがソラちゃんだけな事。


 髪を乾かして貰い、さっき帰りに買ったアイスを食べる。


 せいちゃんの携帯が鳴る、とっても不穏。


「せいちゃん」


『要請です、鈴藤さんと私だけに。月読隊、大國さんの部隊からの要請です』




 場所は今日行ったばかりの深川の寺の近く、神社、それ以外の情報は一切無し。

 一応車で向かう事に。


 大きな道路に出てからサイレンを鳴らし緊急走行、そして深川が近くなった所でサイレンを止めて走行。


 それから間もなく規制に出くわした、警視庁の道路規制。

 せいちゃんが手帳を出すと、もう少し先で止める様にと指示が出た。


 ソラちゃん、せいちゃん守って、但しコッチが死なないのが最優先、回避と防御全開。


【了解】


 周囲にソラちゃんに反応する気配は無い。

 規制線から神社の参道へ向かうが、本殿に進む毎にビリビリして重い感じがする。


 そして本殿から少し離れた場所で、黒く人を包む様な霞、影の様な何かがモヤモヤと蠢いている。


「せいちゃん黒いの見える?」

『いいえ、女性しか見えません』


 眼鏡を掛けても外しても、影はそのまま人を飲み込み、見えにくくしている。


「せいちゃん、見てみ」


『はい、確かに』

「貸す」


「清一」

『大國』

「どうも、鈴藤紫苑です」


「怪異には名乗らない方が良い。鈴藤、最初に君が接触しろとの命令だ」

「うい、じゃあ、行って来ます」

『気を付けて』




 装備は万端だが、通用するんだろうか。

 無手で近付くが反応は無し、近くには血塗れの斎服を着た男性が倒れている。


「こんばんは……こんばんは、鈴藤と申します。何をお困りですか?」


《にぐぅくでぇ、ごおじぃ、だのぉお』


 悲しくて泣いているのか、怒っているのか全く分らない。

 ただただ喉から声を絞り出し、苦しそうに話している。


 ソラちゃん、捕縛の方向で。


【了解】


 何とこの気配には反応した、顔を上げてキョロキョロしている。


 ソラちゃん、刀を離す様に言ってみて。


【刀を離して下さい】


《はだでなぃ、はだでなぃのぉお』

「そうか、腕を切るけど治すから、ごめんね」


 薔薇の剣を出すと、それに反応して飛び掛かって来た。


《いだぁいのいやーーーーーーーーーーーーーー!』


 ストレージから縄が出て彼女の腕に巻きついた、それでもなお必死にお噛み切ろうと、縄に食らい付いている。


 腕から先の痛覚を遮断させ、縄から先の両腕を切り落とす。

 魔剣をストレージへしまうと、少しだけ落ち着きを取り戻した。


《うでぇ、いだぐなぃ』

「そうだね、刀を離せばもっと楽になるよ」


《まもるぅの、なぐなっぢゃう』

「もう無くても大丈夫だと思うよ、警察の人がやっと助けに来てくれたんだもの、ほら」


 顔を上げ、囲まれている状況をやっと把握出来たらしい。

 安心したのか、格段に表情が落ち着いた。

 切り離されてなお刀を握っていた手が開くと同時に、彼女は気を失った。


 急いで刀をストレージにしまい、腕を治し少し縄を緩める。


 黒いモヤが突風で吹き飛ぶと、前駆部隊と共に大國さんが来た。


「刀は」

「異空間に保存してるんだけど、どうしたら良い、怖いんだけど」


「任意で出し入れ出来るか?」

「できる」


「なら暫く持ってて欲しい、それともう1人も治して貰いたい」

「何で、悪い奴かも知れんでしょ」


「それは追って法が裁く」

「それが無理だと思って刀を持ち出したかも知れないんだよ、彼女は」


「怪異と話したのか、大半は戯言と聞いているぞ」

「家庭内暴力とかの通報記録見せろ、猶予ある筈だし、それまでは絶対に治さんぞ」


「分かった」


 最近特に通報が多かったが、両者全く食い違う内容と、別居しなかった事で実際の介入は無し。

 診断書も写真も有るが、夫が認めなかった事と、正式に訴えるまでは行かなかった事が大きいらしい。

 それでも現に、腕の中の女性の顔には出来たばかりであろう痣がある。


「せいちゃん、どう思う」

『片方の言い分だけを聞くのは良くないと思います、こうなる前から刀に操られてたのかも知れないですし』


「じゃあ治すけど、この人はどうしたら良い」

「この縄のままで良いだろうか、念の為、病院に運ぶ」


「分かった」




 女性を地面に置き、隊員から手袋を貰い、血塗れでうつ伏せになった人へと向かう。


 切り裂かれた部分を適当に治し、引っ繰り返す。

 最低限の傷口は閉じ、血管も神経も繋いだ。

 後は心臓に1撃、2撃、3撃目で鼓動が動き出した。


 だが脈拍は弱い、血が足りないのだろう。


 しかも脳を見ると少し塊が見えたので治す、他に機能には問題無さそうなので救急隊に引き渡した。


《お疲れ様やねぇ、はい、手袋はココ》

「お疲れ、隊員に化けてるの?」


《だって、1人増えてもバレへんもん》

「大変だね、近くでこんなん」


《敵わんわぁ、お掃除も大変やろうし、浄化せなアカンしねぇ》

「お、それならやったるよ」


 踵を返し血塗れの地面へ清浄魔法を掛けてみる、成功。

 そのままお狐さんの案内で、血痕を辿り綺麗にして行った。


 そして最初の現場は裏手にある家らしかった、血痕への清浄魔法は神社内部だけに留めた。


《わぁ、鈴藤ちゃん大好き、スッゴい綺麗になったわぁ》

「そこまでは分からん」


《残念やわ、折角綺麗なのに》


『なんか、キラキラしてるんですけど』

《せいちゃん、見える様になったんかしらね?》

「眼鏡のせいかな」


『ですね。ありがとうございました』

「どらどら」


 濃い魔素を放つ温泉街の様なキラキラが、清浄魔法をかけた場所を中心に広がっている。

 それもそうか、霊的な場所なのだから、本来がこう有るべきなのだろう。


『手入れされて無かったんですかね』


「せやろなぁ」

『神社庁から人が来ると思うので、暫くすれば元に戻ると思いますよ』


「評判がなぁ、お不動さんにも波及するやん」

《ええんよ、連休で儲け出てはる筈やし、神社庁からも出るやろから、何とか出来るやろ》

『情報規制されてますし、大丈夫かと』


「なら良いんだけど、あ、お稲荷さん一緒に食べる?」

《鈴藤ちゃんだいしゅき、せいちゃんも食べるかしら》

『私はまだ、お腹いっぱいなので』


「じゃ向こうで2人きりで食べるから、せいちゃんは戻ってて」

《ふふ、デートやねぇ》


 せいちゃんが初めて嘘を吐いた、不協和音な低い気持ち悪い音。

 ナイーブさん、血は苦手か。




 公園に行きお稲荷さんを食べて居ると、カッチリとしたスーツの女性が近付いて来た。

 後ろに黒子ズ、警視庁のトップって、月読さん?


『ご機嫌ようお狐さん、鈴藤君を借りても宜しいかしら?』

《邪魔が入って残念やわ。またね》

「おう、またね」


『月読です、アマテラスがお世話になてるそうで』

「鈴藤紫苑です、アマテラスさんにお世話になってます」


『ウチの隊へ来ない?』

「せいちゃんの人身御供が永久停止されるなら良いですよ」


『他は?』

「他の候補を立てるのもダメです、人身御供の計画自体を無くして下さい」


『1億3千万人の命が掛かってるのよ?』

「全部じゃ無いですよね?」


『そうだとしたら、都市部の人間を見捨てるの?』

「いいえ、今日の様に篩にかけます。向こうで205人見殺しにしました、救う価値も無い人間が居る事を知ってるだけです」


『気に入ったわ!良かった、アマテラスみたいに何でも救おうとする子なのかと思ってたけれど、違うのね』

「出来る事が限られた場合の選択です、少なくとも子供は含まれてませんから」


『そう、じゃあせいちゃんの条件も、人身御供の事も全て飲むわ、ただ私の範囲内でよ。人間に命令するにも限界がある事は覚えておいて』

「はい、署名付きで紙で下さい。後、心配なんで、せいちゃんの近くが良いです」


『それなら、せいちゃんを昇格させて連絡係にさせましょうかね、そして月読の呼び出し優先でお願い』

「せいちゃん最優先です」


『分かったわ、それも全て署名付きね。分割で2枚、人身御供の事はせいちゃんに教えない為よ』

「了解」


『お給料倍にしなくちゃね』

「やった、引っ越そ」


『あら、狭いの?』

「せいちゃんの為にももう1部屋欲しいのです、相談してみてからになりますけど」


『そう、なら候補を送らせましょう、じゃあ、またね』

「はい、お疲れ様でした」


 勢いって怖いなぁ、昇格?

 兼任て過労死しないだろうか、寝れないのは無理だし。




『鈴藤さん、今、月読様から通りすがりに昇進だと言われたんですが、何か言いました?』

「隊に来ないか誘われたんで、せいちゃんと一緒が良いと言いました、そしたらそうなった、辞令は追って書面でくれる。多分ワシ兼任になる、どうしよう、過労死は嫌なんだけど」


『大國も居ますから、そこまで過酷な勤務では無いと思いますよ?それより何で私もなんですか?』

「大國さんがあのケガしたのはせいちゃんの関わりなんだろう、ならせいちゃんは守らないといかん、霊力あるだけなのは危ないと思う、アマテラスさんも気に入ってるせいちゃんを守るのは、アマテラスさんの益にもなる、かと」


『あ、怒って無いですよ別に、ただビックリして聞いただけで』

「そうか?連絡係になるんだぞ?せいちゃんが過労死も困る」


『それこそ、そこはアマテラスさんが守って下さる筈ですから大丈夫ですよ』

「そう?ごめんな、相談無しで」


『急だったんでしょうし、ありがとうございます、お気遣い頂いて。さぁ、帰りましょう』

「おう」


 車まで歩いて行く頃には規制はかなり縮小され、参道前の大きな道路のみ交通網は復活していた。

 帰りはサイレン無し。


 家に帰ってシャワーを浴び、せいちゃんと押し問答の末に、ソファーで眠った。

第3世界の《シバッカル》

《白い長毛種、白いお狐さん》→《百合車》

『ダキニさん』

「河瀬」 転生者、15才

『月読さん』


『せいちゃん』「クラネス」『灯台守りの息子』『晶君』「大國さん」

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