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5月4日(月)祝日

 雨。

 豪華なホテルに慣れず一瞬ビックリしてしまった。


 それからトイレに行き、せいちゃんが寝ているのでエリクサーを飲んでは、また寝た。


 そうして起きたのは昼、せいちゃんは居ない。

 曇り。

 測定、中域。


 トイレに行き、ついでに顔を洗ってからリビング的な場所で珈琲を淹れて飲む。

 せいちゃんが出勤してるのは良いんだが、何も指示が無いと動くに動けない。


 バイキング行きたいのに。


「お、せいちゃん、おはよう」

『おはようございます。遅くなりました』


「寝れた?」

『少し』


「ダメだよ寝ないと、バイキング行ってくるから寝てなよ」

『いや、でも』


「ワシ強いのよ、凄く」


 武器を何種類か見せると、驚いてくれた。


『じゃあ、カードキーを持って行って下さいね。全て部屋に付きますから』

「おう、じゃあね、おやすみ」


 やけに素直。

 コレは良い事。


 ランチバイキングはディナーとは違うメニュー、子供用の料理が大人向けに作られた感じ。


 盛り合わせにするとお子様ランチになる。

 こどもの日フェアね、なるほど。


 スウェーデン風ミートボール、グリルハンバーグに牛スネシチュー。

 目の前で包まれるオムライスは中のご飯が数種選べる、それとパンチェッタを使ったナポリタン、大エビフライ。


 向こうの皆を連れて来たら、喜んだだろうな。

 大使にお願いしとけば良かった。


 デザートはプリン、ミニチョコパフェ、ショートケーキにフルーツポンチ。

 子供が好きなメニューがお洒落で高級な感じに仕立てられてる。


 休日だと言うのにスーツ多め、浮く。

 ただ1人が多いのでギリギリセーフか。




 満足。


 部屋が臭くなるのが嫌なので、喫茶で1人珈琲と共に一服。


 が、神様が来てしまった。

 綺麗な着物の綺麗な神様、アマテラス神。


《楽しんで居るかしら?》

「おあ、はい、お陰様で」


《せいちゃんは?》

「独りで食べたかったので、無理矢理部屋に待機させました」


《そう。あの話しは大体分かったけれど、何を成して移動が叶ったのかしら?》


「それは少しココではどうかと」

《なら、結界を張るわね、声が漏れぬ結界を》


 柏手1つで綺麗なガラスの様な結界が張られた、周りは気付いて無いらしい。

 神様の存在にも、気付いて無さそう。


「神を殺して、新しい神を擁立させました」


《神殺しね。何処の神を殺し、擁立したのかしら》

「ロキを殺し、アヴァグドゥを擁立しました」


《ロキは分かるけれど》

「大釜の魔女の息子です、コチラにもその神話が有るかどうか分かりませんが」


《その協力者が、他の神々なのかしら》

「主に動いたのはトールとマーリンですね」


《何故、殺したのかしら?》

「死にたがってたので。家族と引き離され、死以外に救いが無かったんです」


《そう。吸い心地はどう?》

「美味しいですけど、2の世界の方がマシです」


《なら、コッチをどうぞ》


 白地に金のド偉い紋が入ったタバコ、0では廃止された憧れのパッケージそっくり。


 しかも何でか煙がキラキラしてるし、美味しい。


「コレは、どういう事でしょう?」

《通常のは霊力の元となるモノが抜いてあるの、溢れて霊瘴が起きては困るから》


「尿路結石とか?」

《ふふふ、まぁ、それもあるけれど、呼んでしまうのよ。溢れ出した霊元が、怪異を呼ぶの》


「マジか、怖いな」

《自然なままの霊元は問題無いのだけれど、人を通ると色が付くのよ。悲しみや憎しみが神霊と惹き合い、暴走させるの》


「いつからですか?」

《昔からだけれど、特に平安位からね。戦争もあって一時はかなり対処出来る者も減ってしまって、やっと何とかココまで立て直したの》


「根本的な解決法は?」

《人の協力が必要なの、具体的に言うと濾過。もっと端的に言うと循環を担う者。神に仕える者ね、僧や巫女、信者でも構わないのだけれど。それが少なくなったの、増やそうとしても限界がね》


「なんか濁してます?」

《人柱、せいちゃんがその候補者なの》


「ダメでしょう」

《でしょう、何とか引き伸ばしてきたのだけれど。大國に会ったでしょう?あの子が怪我をして、怪異対策班の戦力が落ちたの。その責任を負わせ、また人柱にさせようって話が復活したの》


「だれが」

《人よ、神の一存では決められないもの。人の手に渡ったこの地に、私達はあくまでも借り住まいしてるに過ぎないの》


「そんな阿呆は、全て殺したら良いのに」

《そうね、でも、1人を捧げれば50年安泰なのは覆せない事実なのよ。大國が治り、引き渡しは延期になったけれど、議論が再開されてしまったまま》


「ただ1人を治しただけで敵が凄い増えたのか、マジか、殺してぇなぁ」


《大丈夫よ。まだ他の方法を模索出来る時間は有るわ。そして、新たな方法を持つかも知れない者が目の前に居るんだもの。アナタが人間だとしても、私には神に見える位よ》


「人身御供には成れんよ、1の世界を救わなきゃならん。数が比じゃないんだ、地球なんだわよ、もう1つの」

《それがどうして…そうなのね、アナタはそこの人身御供かも知れないのね》


「どうだろう、それはそれで1に戻れたら考える。ただ絶対死なん方向でいる、人身御供にもならん。だが出来る限り協力する」

《優しいのね、おばちゃん涙出そう》


「肌触りの良いぬいぐるみを貸してあげます、心が安らぎます」


 煙を吹かす金髪メッシュチンピラと、泣きそうな顔をしながらぬいぐるみを撫でる美人な未亡人の図。


 絶対ワシが悪い人に見える図。


《ありがとう、少し元気が出たわ》

「今度、新品を見付けておきますね」


《えぇ、お願い。じゃあね》


 結界を張るのも解くのも柏手1つ、詠唱無し。

 お着物に臭い付いて無いかな、アマテラスさん。




 カードキーをレジ横のスキャナーに翳し、上の階に戻った。


 音を立てぬ様に開けたのだが、どうにも起こしてしまった。


「すまん」

『いえ、あ、すみません、有難う御座いました、寝かせて頂いて。人の出入りの気配で起きちゃうんで、気にしないで下さい』


「下でアマテラスさんと話をした」

『アマテラス様が?』


「おう、少しだけ。身分証はどうなった?」

『あ、はい。保険証の発行と、顔写真を撮って頂いて、パスポートを作る案が有るんですが』


「パスポートは万能ってか」

『はい』


「戸籍は?」

『はい、コチラが経歴になります』


 戸籍未取得児で、健康に育った為に保険証等は一切無し。


 両親は少し前に流行った病で死亡、成人し免許証取得の申請時に無戸籍が発覚、両親の親族が居ない事で新規の戸籍取得となった。


「闇の深い例外措置だなぁ、またサバ読むのか」

『アマテラス様がギリギリ大丈夫だと仰ってましたから、大丈夫かと』


「君もか」

『御髪がですね、やんちゃなので』


「黒くしたら?」

『どうでしょう、カラー剤を買って来ましょうか?』


「ちょっと待ってて」


 洗面所で髪の色素を増やし、黒くする。

 久し振りでちょっと手間取ったが、数分も掛からずに終えられた。


『えっと、額を出したらどうですか?』


 結果、金髪メッシュにオールバック、花子的には有り得ない髪型で決着が付いた。


 どうしよう、お嫁に行けない、最初から行けないだろうけど。

 少しばかり眉を整え、チェックアウト。


 警察庁に行き証明写真を1枚撮った、そうして何故か昨日の道を辿っている。

 どうした。


「課が違うのでは?」

『え、ウチの課に在籍するお話は?』


「なんの事?」

『あ、すみませんてっきり。どうしますか?』


「こんな公務員が居て良いの?」

『パスポートなら問題無いかと、ただ。手帳の写真は』


「おう、黒くします」




 警察庁の怪異対策班に所属する事にあってしまった。

 今回は怪異に関わり、一定の能力があるとの事で実働部隊への配置なんだとか。

 勿論、公務員試験免除、ただコレも戸籍や国籍が必要。


 だが今回は珍しくそれが無いので、課から申請書類を持って逆打(さかう)ちしていく事になったらしい。

 その方が早いんだそうだ。


 廊下を歩きつつ、話しを聞きつつ髪を黒くした。

 そうして今度は廊下で写真を1枚、今度は手帳用。

 黒のオールバックは人相悪いな。


 それから昨日の部屋に挨拶へ。


『新しい方が加入しますので紹介します、どうぞ』

「鈴藤紫苑です、字画が多くて書くのが大変です、宜しくお願いします」


 流石社会人、皆がそれなりに対応してくれた。

 ただ、役職名で呼び合っているので少し違和感、巫女とか霊媒師とか。

 疑問に思って要ると、自分の名前と役職名が入ったプレートが渡された。


 役儀様。


『やくぎさまと読みます、アマテラス様が付けた役職名です』

「意味は?」


『役目を担う者だそうです』

「御役目様か」


『それは、却下されたそうです』

「あー」


『手帳は暫く掛かるので、それを付けといて下さい。私は横で少し仕事が有るので、適当にお待ち下さい』

「うい」


 せいちゃんが部屋から出て直ぐに、着物のお婆さんが話しかけてきた。


《あんた、昨日の子だろう》

「声でバレますよね」


《ふふ、アレは良い呪法だね、どうしたんだい?》

「神様から貰いました」


《ほー、そっちの子かい。巫女さんや、お仲間かも知れんね》

「伊勢から来ております、巫女です」

「北から来ました、人間です」


《ふふ、人間じゃて、デッカい霊力持って良く言う》

霊媒師(イタコ)さん、ダメですよ霊力の大きさを言っては」

「イタコさんかぁ、青森の?」


《んだ、訛ればなも分からんちて東京の人は喋るはんで、東京弁を頑張ってるんじゃけどな》

「もう、アチコチ行かれたそうで、色々な地方のが混ざっちゃってるんですよね」

「ギリ聞き取れる、東京弁上手だねイタコさん」


《わー、どんだんだば、珍しいねぇ、北ってのは青森け》

「母ちゃんの婆ちゃんが青森だったって」


《わい、亡くなってまったんずな》

「んだ」


《あべ、可哀想にな、下ろすべが?》

「ええねん、もう成仏してはると思う」


『“余り変な日本語を聞かせないで欲しいのだけれど”』


 西洋人の牧師さん、綺麗な英語だからイギリスだろうか、凄いな。

 聞こえないだろうと思って罵倒されるの初めて、ドキドキしちゃう。


「“表現力と感性の乏しい彼をどうか主よ、どうか彼をお救い下さい”」


「わぁ、英語もなんですね。良いなぁ、私も勉強したいんですけど、時間が無くて」

「最低限のお金を持って旅すると良いですよ、死に物狂いで覚えるんで」

《そらそうだろうよ、あははははは》


「鈴藤君、良いかな」

「はい、何でしょう」


「余り不和を起こさないで欲しいんだが」


 黒服スーツ組め、聞こえてたなら向こうを御せば良いのに。

 良いスーツに相応に仲裁をして欲しい。


「英語で返しただけで、どうして不和を起こしたと?もしかして聞き取れてた上で、まさか野放しにしてたんですか?」


「いや、主よとは聞こえたから、学校にも出てない君なら、誂ったに決まっているだろうと」


 凄い敵対心、最近で断トツブッチ抜き。

 しかも嘘付いてドキドキしてる、巫女さん狙いなのか視線がチラチラ動いてるし。

 ありがとう、お陰でピアスが壊れて無いのが確認出来た。


「何か、嘘ついてません?しかも年下の実働部隊員に学歴まで持ち出して、何が気に食わないんでしょうか。好きな人が居るなら八つ当たりしないで告っちゃえば良いのに」


 向こうが大きく振りかぶったので、急いでコチラが両手を挙げると盾が鼻先から出現した。


 目の前で拳と盾がトップスピードの状態でぶつかり合い、拳が砕ける音がした。


 凄い音だった、痛そう。

 手を抱えて転がってる


「お前ぇ」

「治しましょうか?」

《ふん、ほうっておけ。せいせいするわいな》

「ダメですよ、スーツさん、医務室へ行きましょう」


「いやいや、税金掛かるから僕が治しますよ」


 痛覚はそのままに治療、痛みに悶え、暫くして失神した。


 大國さんを少しは見習え。


 そこで電話が鳴ると一気に緊張が走った、最も緊張しているのは他のスーツ組、電話を取った。


「君、鈴藤君、電話だ」


 電話を手に取ると、アマテラスさんの声。

 怒られるのか、なら辞めちゃおうかな。


「はい、なんでしょう」

【怒られてるフリをして頂戴ね、返事はハイかイイエだけ】


「いいえ」

【プフッ、良くやったわね、これからも存分におやりになって】


「いいえ」

【あら、問題無いのよ?もしかして辞めたくなってしまった?】


「はい」

【お願いよ、そのままの振る舞いで居て構わないから、ね?】


「はい、了解です」

【うん、じゃあね】


 電話を切ると、スーツ組がコチラの表情を見て少しニヤニヤして居た。

 心配してそうなメンツも居るので、思いっきりフルスマイルでサムズアップ。


 大丈夫でしたよの意味だったんだが、一部で反感を招いたらしい。

 あら怖い。


「大丈夫でしたか?」

「無問題アルよ」

《無いのか有るのか分らんが》


「無いアルよ」

《じゃから》

「大丈夫ですよ、アマテラス様はしっかりと皆さんを見てくれてますから」


 その言葉にハッとしたのか、スーツ組が一気に鎮静化した。

 神様があまり身近に居ると、こう疎かになってしまうのだろうか。

 ココは反面教師、襟を正さねば。


『“ココにはカメラが沢山あるんだろうねぇ”』

「ですね、この部屋だけで500台は有るかと」


『イタリア語もか、驚いた』

「どうも、ラテン語も少しならいけるかと」


『本当に楽しい子だね、君は何処かを旅して覚えたのかい?』

「国内だけですよ、パスポート無いんで」


『戸籍も無かったなんて、本当に?』

「ダー、何も無いですよまだ今も、申請中です」


『そうか、さっき倒れた男が言い触らしてたんだが、本当とは。大変だったろうに』

「いえ別に。それより、何で恨まれますか」


『あの男は巫女さん狙いだったのと、学歴無しに能力のみで君が居る事への逆恨みだろうね、彼らもエリートだから。あ、彼らラテン語は無理だから安心して』

「じゃあイタリア語は居るんですね」


『シィー、数人ね。少し訛ると無理みたいだ。訛りって風情があって僕は好きなのだけどね、自分は訛るのが苦手だから、少し羨ましい位だし』

「イタリア系ですか」


『お喋りするとバレちゃうか。昔ね、イタリア南部の教会に居たんだ、訛りが無いから馴染めなくて、苦労したよ』

「じゃあ、さっきの人に言った言葉は貴方とは無関係だとだけお伝えしますね」


『良いんだよ、それにアレは彼が悪いんだから、上に何か言われても気にしてはいけないよ』

「ありがとうございます」


 スーツ組が語学力で撃沈しているのか、アマテラスさんが急に怖くなったのか分らないが、静か。

 僧侶達も静か、心も穏やか。

 彼らは特に静寂の人達だ、心地良いかも。


『只今戻りました、今まで問題に無関心で居た方達への罰則が検討に入った事をお伝えしておきます。くれぐれも同じ轍は踏まぬ様に、そして罰則が増える事を悲しんでおられるアマテラス様の事を、しっかりとお考えの上で行動して下さい、報告は以上です。鈴藤君、話しがあるのでコチラへ』


 お、せいちゃんに怒られるか、それはマジで嫌だ。


 怒られたら辞めちゃおう。


「はい、何でしょうか」

『ケガは無いか確認して来いと言われて、私は何が有ったか知らないのですが、大丈夫ですか?』


「殴り掛かられたけど無傷。詳細は省くけど、向こうがケガしたので、治したら失神した」

『あぁ、格闘も出来るんですね』


「いいや、ズルっこした、コレ」


 先程と同じポーズを取り、服の表面の数ミリ前から盾を出し、ゆっくりと収納した。


 お分かり頂けただろうか。


『それで迎撃して、向こうが一方的に負傷したと』

「使われる税金が可哀想なので治した、アマテラスさんは笑ってた」


『はぁ、そうですか』

「ごめんなー、せいちゃん堪忍なー、俺の学歴とか経歴言い触らしたんやアイツー」


『それで、他の課も2人飛んだんですね』

「大丈夫か警察庁や」


『そうですね、だから国民からの信頼も薄いんでしょうね』

「大丈夫、俺国民でも無いけど応援してるぞ」


『ありがとうございます。ですが2人飛んだので、手帳と身分証は明日になりました』

「わー、凄い因果律ぅ」


『取り敢えず私の身分証で端末を買う許可が出たので、今から買いに行きましょう』

「仕事は?」


『昨日今日と周辺に怪異は出て無いのと、私は元々定時上がりなんです。他の方は三交代制なんですけどね』

「へー」


 過保護。

 そのまま8の部屋に戻る事無く、徒歩で家電量販店へと向かった。




 高架を通り過ぎる途中に電車が見えた。

 凄いスッキリしたスタイルしてる、ホームドアもあるし0より進んでるかも。


『乗ってみます?』

「やだ、混んでるのきらい」


『分かります、私も嫌いです。さ、何にします?』

「先ずはスペック表やね」


 メモリが64も有ってクアッドコアで2万だと、しかもバッテリー6,000。

 画面サイズも各社で大中小と有るし、折り畳み携帯が現役。


 迷うぅ、良いなぁ、全部欲しい。


『ノートパソコンも買う予定ですから、折り畳みでも構いませんけど、支給品も折り畳みですよ』

「あー、じゃあ、でもなぁ、大きいの良いなぁ」


『好きなんですね、デジモノ』

「だいしゅき、先にパソコン行こうか」


 タブレットタイプあるじゃん、流石に少し高いけど。

 キーボードカバー悩むなぁ、白は汚れが、あ、安いし替えも買うか。


『コッチは早いんですね』

「タブレットタイプに決めてたからね」


『ついでに家電も見ませんか?』

「せいちゃん家に住むのはアカンのか?」


『人が玄関を出入りする気配で起きちゃうので、オススメ出来無いですね』

「玄関じゃ無ければ良い?ベランダとか押入れとか」


『それはちょっと、試した事が無いので、何とも』

「ですよねー、家電は今度でスマホに戻ろう」


 結局、花子でも使える7インチ未満のサイズに落ち着いた。

 最近は無かったけれどデジタルで情報収集すると目がヤバくなりそうだし、うん、仕方無い。


 コレで好きなだけ情報収集出来るな。


『他に何か見て回りましょうか?』

「プラトン行きたい」


『そうですね、近いですし行ってみましょうか』




 何故、全く同じ曲調が流れているのか。


 転生者か何かが、そうか、それは確かに確認してないし言っても無い。


「せいちゃん、この曲」

『頭に張り付きますよね』


「おう」


 ココでもか、後で調べよう。


 店内はお祭り騒ぎ、通路は広い。


 そろそろ夕飯時なのに、それなりに人が居る。

 中には気晴らしに来たであろう名札付きも、モビールに魅入って口が開いてる。


 確かに綺麗だ、買おう。


『かなりヤられてましたね』

「脳味噌を空っぽにしたい時に良いよね」


『末期ですよそれ』

「おー、クリスタルのパズルやん」


『好きなんですか?』

「綺麗とか可愛いとか、良いよね。胸派?足首派?」


『答えないとダメでしょうか』

「事情によるかなぁ、あ、花火だ、出来る場所って有るの?」


『9時までなら公園でも可能ですよ、但し五月蠅いのはダメです』

「出来はするのね。せいちゃんの趣味は?」


『旅行雑誌を眺めるのと、映画ですかね』

「だけ?」


『仕事が有るので』

「出た、仕事人間。別々の部屋を取れば寝れる?」


『それは、警護の観点から無理ですね』

「あー、君より強いのに」


『ですよね』

「でも、素体はせいちゃんより弱いよ」


『そうは見えませんよ、筋肉も有りそうですし』

「見せかけ、ハッタリは大事やで」


 雑貨を少しばかり買い漁り、タクシーでホテルへ向かった。




 着いたのはまたしても高級そうなホテル、オーワラ。


 バイキングは、アジア料理を旬の食材で頂こうフェア。


 はい、もう美味しい、チェックインしてそのままバイキングへ直行。


 大アサリどっさりのフォー、カニのタイカレーにカニシュウマイ。

 イカと空芯菜の炒め物、サーモンやエビの生春巻き、蒸し魚は取り分けてくれるサービスまで有る。


 中華が多めだけど仕方無い、種類が多いし美味しいもの。


 デザートも旬の食材、ちょっと怖いのでトイレで魔石に魔力を流してから食べる。

 マンゴープリンにチェー、愛しの愛玉子や豆花のマンゴーソース掛け。


 アジア料理だけあって、マンゴー推しなのがまた良い、組合せ完璧。


 せいちゃんは食わず嫌いだったのか、意外と食べれると呟いて今日も普通の量で終わった。

 花子の方が楽かも知れない、つい容量が心配になる。


『アッサリしたのも多かったですね』

「フォーが1番だった、無限に食べれる」


『本当に無限に食べそうな勢いでしたね』

「アサリとかのダシに弱いんだわ、もう無条件で美味いと思うもの」


『なら、お味噌汁もアサリですね』

「そこはなめこ、アサリ出汁でなめこ」


『贅沢な』

「向こうで出汁が売ってたんだもの」


『え、良いですね、売ってるか探してみますね』

「ねー」




 部屋に着いてから先ずは見守り君発動、正常起動。


 ソラちゃんや、スマホで何かしてみる?


【手動でセットアップを完了させて下さい】


 ですよねー。


 ただ、あまりにもアッサリと設定出来てつまらん、メールアドレスとパスワードを設定するだけ。

 カスタムは好きだけど、簡単過ぎる。

 タブレットも同じく、メルアドとパスだけ。

 いや、簡単なのは良いんだよ。


 でももうこの進化の仕方、絶対コレも転生者絡みよね、転生者って公式なのかしら。


 ソラちゃん、タブレットをどうぞ。


【了解】


『もう良いんですか?』

「おう、転生者って居る?」


『いいえ、物語には居ますが』

「ココ、居る、確実に居る。だから発展してる、0より。2にはココまでのは無かった、確認出来なかったけど。ココは確実に居る、アマテラスさんは認識してるの?」


『どうでしょう、聞いてみますか?』


「いや、先に歴史調べないと」

『それだけ焦るのは、何処かの世界で似た事例が有ったからですか?』


「誰かが回避してくれたから、大きな事に成らなかったんだと思う。科学系の事」


『もしかして、核ですか?向こうで迎撃したから大丈夫ですよ、そもそも核の武器開発がその時点で禁止されましたし』


「じゃあチェルノブイリ原発は?」

『何処の国のですか?原発事故は特に聞いた事無いですけど』


「地震では大丈夫なのか」

『安全装置が有りますし、地震プレートからズレた位置なので、地震では特に問題無いかと』


「マジか、逆か、転生者が守ってるんか。せいちゃん、霊力0って有り得る?凄い能力の人、功労者レベル」

『0に近い方はかなり居るとは聞いてますけど、ただ、そう言った方で飛び抜けた方は居ないかと』


「それも逆に可笑しく無いか?かなり居るなら、何かしら飛び抜けてるのが1人居たって良いでしょうに」

『確率で言えば、確かにそうですけど』


「何だ、何でだ、バレ無い様に?何から?誰から」


 アマテラスさん?体制側?神様?

 悪の組織?

 逆か?悪い召喚者を警戒してる?


『大丈夫ですか?』

「ワシや、召喚者を警戒してるのかな」


『どうしてそう』

「自分達が発展させて守っていても、所詮は古いデータ。新しい、危ない知識を持った悪い召喚者、悪い転生者が現れたら殺されると思ってるかも。ましてワシが悪い奴なら確実に掌握するし、ダメなら殺して自分の好きな悪事を働く。そうならない為に、お互いに認識できる何かで確認し合って、だから、痕跡を残さない様に出来るとか」


『先ずは、その転生者の候補を調べてみては?』

「ネットがどれだけ発展してるか分らないから、最悪は探っただけで逆にコッチが見付かって殺されるかも知れんし、相手に逃げられてしまうかも知れんし」


『八方塞がりになってますけど』


「クエビコさんやオモイカネさんには会えないかね」

『それも、アマテラス様に相談してみないと』


「じゃあ、行こうか」




 初タクシー。

 車で警察庁に着くまで、神様チェック。


 秒で酔った。


『大丈夫ですか?』

「乗り物酔い」


 そして警察庁に到着。


 辿り着いて直ぐ受け付けで上に行く様にと言われ、せいちゃんについて行く。

 うん、道は覚えた。


《どの、事かしら》

「クエビコさん、オモイカネさんに会いたい」


 すると突然、せいちゃんにも誰にも教えていない番号に電話が掛かって来た。

 先程買ったばかりのスマホ、通知されているのは見慣れぬ番号。


《それ、出て大丈夫よ》

「はい」


【ワシの名を当ててみよ】

「クエビコさん」


【もー、何でじゃ?】

「オモイカネさんはしなさそう」


【うぅ、まぁ良い。ワシの所に来い、その連れも一緒にな。同じ場所じゃよ】

「分らなかったら折り返しても?」


【あぁ、ヒント位はやるでな、またの】




 アマテラスさんの助言により、駐車場まで一旦降り、社用車内部で転移を試みる。

 だが座標が同じ場所には入れず、かなり手前で空間を開く事になった。


 だが目の前には白木の鳥居。

 少し先へ進むと大きなお屋敷、懐かしいのに、少しの違いで寂しく感じてしまう。


《よう、早いのう》

「幼女、ちっさ」


《うっさいわい。お前は、違う世界のワシを知っておるんじゃろ?》

「はい、凄い美少年でしたよ」


《そうか、男であったか》

「下半身は見てないので、胸から推察しました」


《何割かの女子を敵に回したな》

「冗談です、喉仏がありましたよ」


《ふん。本当に気負わなんだ、神を前にしても》

「もう色々と会って来たので、会おうとしてくれる神様は全て相性が良いと思ってますから」


《ほう、中に入って聞かせて貰おうかの》

「はい」


 お寺や神社同様に、襖や障子で隔てられている和室、提灯や灯籠で灯りを採っているので少し心配になる。

 そして、薄衣で顔を隠した宮司や巫女達が世話係なのか、黒子ズと同じく座布団やお茶を運んで来てくれた。


『初めてお会い致します、観神清一と申します』

「桜木改め、鈴藤紫苑です、胸が大きめの年上の女性が好みです」


《ほう、ケンカ売っとる?》

「とんでもない、自己紹介しただけなのに酷い」


《ふふふ、向こうのワシはどんなんだ?》

「優しい、オモイカネさんと会った事無いと言ってた。そして手足が木と融合してる、痛くは無いって。でも、動けないから、コレ持って一緒に行動してた」


《ほう、確かにワシと似た気を感じる》

「通信機みたいに使って、相談したりしてた。堅苦しい言い回しする、もうガッチガチ」


《ふふ、そうか、雌の木で良かったのかも知れんな》

「御神木は?」


《真ん中に植わっておる、見るか?》

「どうしようかな」


《ふふふ、見ておくれよ鈴藤や》

「じゃあ、遠慮無く」


 細い木々が撚り合った様な不思議な巨木、枝の先には小さな緑色の実が連なっている。

 葉は艶やかでギザギザ、葉先は尖っている。


 向こうのクエビコさんとは種類が違う様に見えるが。


姫榊(ひさかき)じゃ、花の時期が過ぎていて助かったのぅ》

「何、臭いの?」


《臭いとか言うなし、独特の芳香と呼ばんか》

「どんなんよ」


《ガスだの沢庵だの、とても花の匂いとは思えんらしい》

「何それ、逆に嗅ぎたいんだけど」


《そうじゃな、剪定の残り木でもやろう。お主は植物の命も操れるらしいからの》


 巫女さんが持って来てくれた枝と花瓶を受け取り、エリクサーを垂らし花を咲かせてみる。

 花はとても可愛いのだけれど、確かに独特。


「ほれ、せいちゃん」

『独特でらっしゃいますね、やはり沢庵でしょうか』


「ガスみたいで良い匂いよな、健康的に嗅げる」

『ガソリンスタンドの臭い好きな人ですか』


「すき」

《ふふ、こう稀に良い臭いだと言う変人もおるでな、まぁ、面白いものだよ人間は》


「鳥や蝶が凄い来そう」

《主に鳥じゃな、実を突きにくるで、くすぐったいんじゃよ》


「こうか、ほれ」

《やめぃ、気安ぃ》


「いやか」

《くすぐるのはイカン》


「抱っこでもするか?」

《膝の上だな、ほい、どっこいしょ》


「ばばくさい」

《幾つだと思っておる》


「1200とか?」

《む、何で当たる》


「いや、何となく」

《ふん、その前は1500は越えておったんじゃよ。争いがあっての、ココに植え替えられた》


『平安辺りですね』

「へー、大変だな婆さん」

《この見た目にそんな事を言う?》


「ロリ婆とどっちが良い」

《アレな、多分ワシの為の言葉だと思うの》


「確かに」

《面白い造語で気に入っておるぞ》


「でもなぁ、神様にロリ婆言うのはちょっとな」

《アマテラスには何か無いのかの?》


「エロい未亡人」

《うふぅ、じゃが未婚なのよなぁ》


「色気大美人」

《字面が角々しい》


「皆のお姉さま」

《あぁ、うん、それな。アレは人間が好き過ぎて困る、心を折っても報われることは少ないと言うのに》


「仏の方々は何してるの?毘沙門さんとか」

《地方に居られる、何せ人手が足りんでな。方々を守れる機動力があるからの》


「何で魔法無いの」

《呪法、護法、まぁ他にも色々呼び方は有るが。細分化し過ぎてしまった事、そして人には成し得ぬと人間が思い込んでしまったから、じゃろうかね》


「無い世界から来たけど、出来たぞ」

《素質じゃろ、オモイカネが言っておったわ。出来たら良いと、出来ないだろうには大きな隔たりがある。広がりと幅が違うとな》


「会えないか」

《まだお主を信用せぬ人間も居るでな、少し先になるじゃろう》


「あ、転生者は?」

《保護しておる》

『え』


《大昔の転生者の中に、霊力が無い事で問題が生じるかも知れんと危惧した者が、似た者を集め組織を作った。それがカーネションと呼ばれる組織だ、こーゆーマークがシンボルじゃ》


 巫女さんが差し出した紙と鉛筆で、クエビコさんが上手に描く。

 コンパスと定規で三角が構成され、真ん中には目。


 組み合わせたのか、なら知ってる者はどっちかに引っ掛かり、接触するんだろう。


「転生者の特徴は?」

《IQが高い事、前世の記憶を持つのだから当然だろう。それと霊力がほぼ無いと言う事、コレがまぁ良い作用を(もたら)しているのだよ、霊障の影響を受けない恩恵から、健康にも育つからの。それから面白い事に、気が小さい。そして信仰心、コレが高い》


「また定義から話さにゃならん事を」

《信心深い心持ちの事、バチを怖がる、ただそれだけでも良い。それだけでも道徳心が高まり、神への自然な崇拝となる。無理に毎日祈らんでも、参らんでも良い、特定の神を信じぬとも良い。ただ神を恐れ敬う心が、揺らがぬだけで充分なのだ》


「何だかんだで皆そんなもんだけど思うけど、でも揺らぐなは難しいかも」

《何かあって揺らぐのは良いさ、人生には色々ある。ただ、神を疑い退ける、悪しき心が大きく育た無ければ良いのだよ》


「ほう、で、どうしたら良か?」

《好きにしたら良い》


「そ、れ、が、1番、困る、ん、だ、よう」

《ふふふふふ、嘗て神々が海を掻き混ぜた棒の様に、船を漕ぐ(かい)()なのだそうだよ、お主は。意志を持った(かい)なのだから、好きに人間界を掻き混ぜたら良い》


「どうしてそう思う」

《お前は男なのだし、既に持っておるだろう?》


「えー、使った事無いしー、分かんなーい」

《なら、禰宜(ねぎ)にピッタリじゃの》


「ネギ?」

『宮司や神主の事ですよ』


「あれ1回着てみたかったんだよなぁ、白と水色の」

《用意させてやろう、使う時があるかも知れん》


「えー、でも成らんよ」

《成られては困る、そこまでは背負えんよ》


「頼んでくれたらやるかもよ」

《コレは我々の世界の事だ、まだ諦めてもおらんでな。お主が居るのだから、そのウチ良い策も出るだろうさ》


「そう?あまり買われても困るよ、大した人間じゃ無いんだから」

《人間と言えばだな、あの団体は特に今までは問題無かったが、まぁお主と言う神を手にしたのだ、予測が付かんとだけ言っておいてくれ、との伝言だ》


「オモイカネさんか、どんなんだろ」

《ふふ、まぁ見てからのお楽しみじゃなぁ、眠いなぁ、お主は良い感じじゃ》


「皆こんなものですよ」

《大國は心地良く無い、あぁ言う奴なのに緊張しおる》


「せいちゃんは?」

《カッチカチでイカン、ウブじゃからのう》

『神様を触るだなんて誰でも緊張しますよ』


「高い高いの1つでもすれば良いのに」

《アレは良いモノだ、大國はデカいから楽しいぞ、して貰うと良い》


「絵面がムサイ、重くて無理だろ」

《身体強化の術を持っておる、大丈夫だろうさ》


「眠いからって適当な事を言って、コッチが耐えられんわ」

《教えて貰えば良い、ほれ、斎服(さいふく)じゃ、持って行くが良い》


「ありがとう、おやすみなさい」


 電池が切れた子供が如く、クエビコさんが一瞬にして深い眠りに落ちた。


 手を差し出す巫女にクエビコさんを手渡し、着物が入っているらしきたとう紙を受け取った。

 そしてせいちゃんには紙袋、中には草履や足袋と言った小物が入っていた。

 帰り際にストレージにしまい、ホテルの部屋へと戻る。




『本当に人間とは思えませんね、私の知ってる韋駄天とはレベルが違いますし』

「コレは2でもココまで出来るのは少なかったかも。全ては容量のお陰ですじゃ、流石に教えられん、あ」


『また何か思い付いたんですか?』


 シバッカルと検索すると、居た。

 ドリームランドの話まで。


 ただ、あくまでもドリームランドは想像図。

 実際に行けた者の話は無い、が、前の世界の様に創作の体をした実話も有るかも知れない。


 なら、行ってみるしかあるまいよ。


「まぁ、せいちゃんは寝る準備しておくれや」


 交互にシャワーを浴びて、ベッドに座ったせいちゃんに透明な鍵を見せる。

 目を見開いてじっくり見ているが、触れようとはしない。


『コレは?』

「ドリームランドの、シバッカルの宮殿に行く為の鍵。良い神様の筈だから、先に会いに行ってて欲しい。直ぐに後で行く」


『ネットやゲームでは有名ですけど、実体の確認はまだな筈ですよ?』

「君が知らないだけかも知れんよ、じゃあ、おやすみ」


 鍵に触れさせるだけで脱力し、寝息が一定間隔になり始めた。

 目を瞑り異常が無いかチェック。


 異常無しの健康そのもの。


 そうして自分もベッドに入り、鍵を手に取った。

『せいちゃん』《アマテラスさん》


《イタコさん》 警察庁の霊媒師

「巫女さん」  伊勢巫女

『イタリア系神父、司祭さん』 イタリア語とラテン語と英語、日本語

《クエビコさん》 幼女


桜木花子→ラウラ→シオン→鈴藤紫苑、名前の遍歴が増える増える。

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