4月29日
晴れ。
下に降りるとロキの姿は無い。
ノエルが両肘をテーブルに付き、口元を押さえ遠くを見ている。
「どうした」
《喧嘩してね、ダニーと。もっと会いたいと》
「今日も行ったら?」
《良いのかい?昨日の様に話し合いが出来ないと思うけど》
「子供優先」
《そうか、ありがとう》
「いいえ」
《運送屋は手配出来るから、フィンを見に出掛けると良いよ》
「透明のが欲しい、カタログに無かったからオーダーメイドになると思う」
《良いね、買っておいで》
壮絶なお金の押し付け合いをしていると、洗濯籠を持ったロキが現れた。
午前中だけ晴れらしく、早くから洗濯をしていたらしい。
朝食はトマトスープに落とし玉子と、昨夜のサンドイッチ。
ノエルは珍しく出勤。
スープだけを早食いし、サンドイッチは向こうで食べるからとそのまま持って行った。
そうしてロキと2人で朝食を食べる。
『シオン1人で出掛けても良いんだよ』
「なんで」
『私を殺すなら、一緒に出掛けた事とかが、後で辛くならない?』
「死んだ後の為に、何も一緒にしないって?誰かを悲しませるから友人を作らないってダニーが言ったら諭すでしょうよ」
『うん』
「はい、じゃあ行きましょう」
後片付けが終わった頃、インターホンが鳴った。
運送屋、今日も格好いい制服を着て迎えに来てくれた。
対してコチラの中はミカちゃんのシャツ、後で半袖も買い足そうか。
執事ロキと共に、再びルーレオに移動した。
お迎えは16時。
早速カタログに載っていたお店へ向かう。
透明なフィンを作れるか交渉、ロキが紹介者にアールトの名を出してからはスムーズに行った。
海用の長いフィン、透明で魚のヒレの様にとお願いした。
短い先割れのプール用は、シンプルな良くある黒いフィンでお持ち帰り。
出来上がりは1週間後、実はセレブ限定で材料はあるらしく、蓮っ葉には買えない品なんだそう。
気に食わないが、背に腹は代えられん。
それから数件服屋を周り、肌触り重視のシンプルなTシャツや短パンを数枚買って、靴屋で少し悩んだ。
履き替えれば何か有った時にマズい、靴をドリームランドで複製か、何かした方が良いかも知れないが。
出来るかは分からないし、今度だな。
そうして休憩にはワッフル屋へ。
『確かにセムラもシナモロールも匂いが強いですからね』
「シナモロールはギリギリ、上の白いのがタップリは遠慮したい」
『ならココで正解ですね』
「迷うなぁ」
ソースはベリー系からチョコ、ナッツにチーズ系まで色々ある。
トッピングも、悩む。
なのでオススメを聞いてベリーミックスを頼んだ、生クリームが甘くないのが決め手。
執事ロキは2種のキャラメルにナッツと生クリーム、半分こしてくれるらしい。
出来立てはもう、サックサクのモッチリ。
軽いので幾らでも食べられそう。
ベリーなので紅茶、ロキは珈琲で頂いている。
そして遊園地、流石に爺さんと若い男が遊びに行くのはどうなのかと話し合った結果、同い年の男になって貰った。
もう大はしゃぎ、大人の力で射的や輪投げで景品を取るわ、絶叫マシーンを制覇するわ、そうして最後に観覧車。
『拗ね無いで』
「別に、ミカちゃんのシャツが悪いんでしょうよ」
『シオンも顔を変えたら?』
「まだ良い、そのウチね」
『変身を使えるの?』
「いいや、手術で何とかするもん」
『素質が有りそうなのに』
「色々有るのよ」
『戻れなくなるのが怖い?』
「いや、別に平気」
『自分が嫌い?』
「バカでブスを好きな方が少ない」
『そこまででも無いと思うよ』
「そんな綺麗な顔で言われても困る」
『こんな不細工が言ったら?』
「ありがとうって言って仲良くなる」
『本当に?』
「おう」
ロキが変えた顔は不細工と言うより、病気で顔が変わってしまっただけにも見えた、何処かの本で見た遺伝病に似てる。
元はそこまででも無さそうだし、不細工のハードルが違うのだろうか。
微妙な空気のままに観覧車を降り、遊園地を出て待ち合わせ場所へ向かった。
そして執事に戻ったロキと共に、家へと戻った。
『あ、良い事を思い付いたので、私は町に行きますね』
「おう?ノエルには?」
『それまでには戻ると思いますが、運送屋さん、お願いしますね』
そう言って玄関先から転移して行った。
家に1人、暖炉に薪を入れてからストレッチ。
筋肉痛は無し、泳げる、新しいフィンを使いプールで泳ぐ。
いつからなのか春の雪が舞っており。
時折プールに浮かんで見る空は、灰色の空に白い斑点が不規則に並ぶ景色、雪をそうして眺めては泳ぐを繰り返した。
そして1時間が経ち、2時間が経った頃。
休憩ついでに中庭へ降りるとノエルが帰って来ていた。
「はやい」
《あぁ、積もる前に帰れと。動物園で手を打つと言われたよ、だから出来るだけ早く仕事を終わらせて欲しいと》
「なるほどね、ロキは?」
《まだ街で買い物しているそうだ》
「長いな。食材かな、結構食べちゃってるし」
《そこは心配無いから、遠慮しないでおくれね。それよりフィンはどうだい》
「買った、良い感じ、上にある」
《どれどれ》
ノエルは家の中からプールへ向かい、コチラは外階段からプールへ向かう。
そして、ふと何やら動くモノを視界の端で捉えた、暗くなった白銀の世界に目を凝らすと、木にもたれ掛かる人影を見つけた。
「ノエル、ココら辺に誰か住んでる?来る予定の人は?」
《いや、お隣さんはかなり離れているんだが》
「様子見してくるから、中に居て」
《あぁ、気を付けて》
ノエルが中に入りカギを閉める間に、コートと靴を装備。
そうして木の陰に居る何者かに近付き、話し掛けた。
「何かお手伝いしましょうか?」
ゆっくりと近付くと、観覧車の中で変えた顔になったロキが、今にも倒れそうになっていた。
何とか木にしがみついてる状態。
『シオン、ごめんね、少し魔力が足りなくて』
「あら、じゃあ飲んで」
エリクサーを1杯、そうしてやっとマトモに立てる様になり。
顔もロキに戻っていた。
『ありがとう』
「おう、取り敢えず帰るべ」
フラフラするロキの手を取りながら、家まで行き、そのまま部屋へと入った。
ベッドに倒れ込む。
明かりの下ではかなり顔色が悪く、憔悴している。
『移動で使ってしまったみたいで、迷惑を掛けたね』
「別に良いけど、もっと飲んどけ」
もう1杯と飲ませるが、顔色は戻らない。
それどころか震えまで起きている。
『実は、トールに見付かった』
「は」
『だから、もし何か有ったらノエルをお願い』
「分かった」
リビングで待つノエルの元へ急いで向かうが、同時にインターホンが鳴り響いた。
ノエルが応対するのを阻止する。
《どうしたんだい》
「トールに見付かったって」
《そうか、君はトールを見た事が有ったと言っていたね》
「うん、この外見」
画面越しにはトール、しかも1人。
どうなってる。
《時間稼ぎをするから、逃げて》
「それは」
《無難にやるよ、まだ計画の途中だからね》
「分かった」
ロキの部屋まで走り、部屋の物を全てしまって、ロキを支えながら裏口へと出た。
だがそこにもトールが居た。
『そこの君、退いた方が良い』
「なぜ」
『彼はロキ、北欧神話のロキ神だ』
「存じてます」
凄い殺気で心臓の動悸が止まらない。
汗も凄い、ロキの手を握る手が滑りそう。
『幾千の人間を害したんだぞ』
「存じてます」
『洗脳でもされたか』
「かも知れませんが、今は、見逃して下さい」
『そうか、だが例えどうで有ろうと、退いて貰おうか』
「少し話しを聞いて貰えませんか」
『無理だな』
トールが左手を振り上げると同時に、盾が頭上に出現した。
コレは致命傷になると言う事、本気で殺しに掛かって来てる。
そう思った時には既に、ハンマーが右上から振り下ろされていた。
盾が有っても無傷とはいかなかった。
そうだ、攻撃受ける設定のまんまだった。
「話しを聞いて」
『聞かん。ロキよ、よくも御使いを洗脳してくれたな、どうするつもりだった』
「待って」
『黙れ』
攻撃は受けない、完全防御、完全回避。
【了解】
全身を全開で回復させる。
折れた右腕と鎖骨、肋骨が肺に食い込んで痛い、息も。
《ただ、殺して欲しくて》
『変わらず弱々しいフリが上手い。その、他の神の皮を被るのもだ。ロキよ、今度こそ俺がお前を殺してやる』
盾を出すのと同時に、トールの目の前に飛び出したのだが。
圧倒的な力によって、木に打ち付けられた。
全く無力で、何処までも非力。
体勢を立て直す間も無く、ロキの心臓が貫かれる。
ハンマーの先には2つの心臓。
その心臓が溶け、ロキの体近くで2つに分かれた。
心臓は停止し、ロキの体が地面へと倒れ込む。
「話を聞いてくれても」
ロキへ近付くと、その体が突然起き上がり、心臓を2つ取って体へと埋め込んだ。
傷口がゆっくりと治癒し、再び鼓動を始める。
『そうだよ、話しを聞いてくれたって良いじゃ無いか。ねぇ?シオン』
何か言おうと声を出そうとしたが、何も出ない。
声帯は無事なのに。
そしてロキは大きな口を開けると、なにかを吐き出した。
それは観覧車で見た顔、先程弱々しい姿を見せた誰かだった。
もう1神は、大釜の。
「大釜の」
『そう、良く分かったね、アヴァグドゥだよ』
「食べたのか」
『違うよ、食べられたんだ。じゃあ、はい、どうぞトール』
止めるべきなのか、コレで良いのか分からなかった。
ただ吐き出されたアヴァグドゥを治し、鼓膜が破れる程の雷鳴と稲光を見て居るしかなかった。
真っ黒に焦げた体の心臓目掛けて、トールが再びハンマーを下ろす。
身体は砕け、心臓だった黒い塊が粉々に散ったのが見えた。
アヴァグドゥは生き返らせた、ノエルは無事だろうか。
立ち上がったその時、トールの殺気が再び満ちた。
『まだ生き返るか!』
本当にどうしたら死ねるのだろう、全てが本当だったなら痛覚も有る。
感情も、記憶も。
『ダメだったね。じゃあシオン、宜しく』
ロキの声帯と口、発声に最低限必要な部位だけが辛うじて再生されている。
四肢も顔も赤黒くバラバラな状態、それなのに苦しそうにしないでくれている。
『おい』
「殺すだけだよ、ノエルに伝言は」
『アヴァグドゥが知ってるよ』
再び再生されかけていた心臓を、薔薇の剣で突き刺す。
向こうのロキが褒めてくれた剣。
「向こうで、ロキが褒めてくれたんだ。綺麗な剣で、自分を殺せる良い剣だって、だからロキは、絶対死ねる。大丈夫」
魔剣は自然とロキの魔力を吸い上げ、遺体を一瞬で灰にした。
ロキが死を受け入れてくれたからか、この世に無い物だからか。
再生の気配は無い。
『お疲れ様シオン』
背後から聞こえたのはマーリンの声、ノエルは無事なんだろう。
全部マーリンの計画通りなのだろう。
『シオン、お前は本当に』
「洗脳は無い、でも、出来事全体を洗脳と言うなら、洗脳なんでしょうよ」
『すまなかった』
『話は後にしよう、そこで寝ている神様を保護しないといけないからね』
「治したから、そのウチ目覚めると思う」
『無理だよ、君の力がもう少し必要だから』
後ろを振り返りアヴァグドゥの体を確認するが、特に異常は無い。
ただ静かに寝息を立てている。
『俺が運ぶ』
『ノエル君、案内してあげて』
『はい』
「少し、待ってて」
『うん、いくらでも待つよ』
箱の中の最後の1本に火を付け、その火が消えるまで、ただ何も考えない様に座って居るのがやっとで。
頭を整理しようとして、混乱している事に気付いて、考えるのを止めた。
「戻る」
『うん』
立ち上がろうと。
白い部屋に居る。
頭上にはシバッカル。
「死んだか」
《違うぞ、魔力切れじゃろう》
「ならずっとココに居たら死ぬか」
《そうじゃな》
「全部知ってたのか」
《今知った、お主の記憶でな》
「だから優しいのか」
《そうじゃよ、その為の我じゃからな。ほれ、アヴァグドゥも居る》
倒れる前と変わらない、安らかに眠ったまま。
ココでも目を覚ましたく無いのか。
「アヴちゃん、一緒じゃ嫌か?」
《そうでは無いんじゃよ、ただ、目覚める理由が無いんじゃ》
「全知なんだから、見付けるのなんて簡単でしょうに」
《全能では無いからの、だからこその苦悩もあるんじゃよ》
「そっか、知ってても出来ないのは辛いものな」
《それに、お主への罪悪感。真実を告げていればと後悔しておる》
「アヴグぅ、アヴちゃん、別に良いのに。気にすんなよ、一緒に遊園地で遊んだ仲じゃんか。それに、このままじゃシバッカルが色々とベラベラ喋るぞ。ちゃんと聞くから、話しておくれ」
その声に反応したのか、生きる理由を何処かで見付けたのか。
アヴァグドゥはゆっくりと目を開けた。
『私は、僕は、生きていて良いのだろうか』
「そう言うのはマーリンに任せてる、ただ自分としては別に、死なないで良いと思うけど」
『兄弟を食べたのに?』
「神話なら良くある」
『でも、醜いのは、敵で悪だよ』
「美しい悪い神も居るんだから、醜い良い神が居ても問題無い。君もワシの記憶を少し見たら良いよ」
マーリンの過去を見た時と同じ様に、神殿の壁に過去の悪夢を映し出す。
それを見たアヴちゃんは、コチラに向き直った。
『でも君は、僕よりマシだよ』
「人間は進化するんだ、治してやるから見てろよ」
アヴァグドゥの体、遺伝子へと潜り込む。
そして遺伝子配列を本来の姿に戻して行く、それは途方もない様で一瞬でもあった。
視界を戻しアヴァグドゥを見る。
そこにはただ普通の男の子が居た、それはアヴァグドゥが求めた普通の姿。
《元はエラく美男だと聞いていたがの?》
『それは、弟の顔だから。本当の私は多分、こうなんだと思う』
「違くてもこの顔って事にしなさい。そも神様が遺伝子配列なんかに従う必要無し、コレが真実」
《そうじゃな。じゃが、弟はもう居らんのか?》
『僕の中で直ぐ、溶けてしまった。彼は罪悪感から自分を維持出来なかったんだ、御使いを唆したのは彼だから』
《ほう、釜を独占する為か?》
『それと、姉を嫁にする為に。そして僕の記憶を見る事で溶けていった、もう姉は死んだと知ったから』
「それがどうしてロキを食べる事になる」
『お願いされたし、僕の中で溶かす事で殺せると思ったのだけれど、途中で失敗して。それからずっと、そのまま』
《失敗したのは、死の条件を揃えられなかったからじゃな。だが、そのまま死ねばお主も死んでいたんじゃぞ?》
『誰かの、まして神様の役に立てるなら良いかなって。ずっと、役立たずだったから』
「君の親は君を愛してたから、薬を作ったんじゃ無いのか?生かす為にだ、命を粗末にする奴は嫌われるぞ」
《お主が言う?随分と無茶をしておったよなぁ?》
「何処まで記憶を見た」
《腕を切る所じゃな、ほれ》
腕を切り落とし、繋げた直後に倒れ。
そして介抱されて起き上がるまでが映像で流された、アヴちゃん真っ青。
『何で、あんな事を』
「治療魔法の為、だから君も生き返ったんだ。感謝して欲しい」
《それを無茶と言うんじゃろう、この後で説教されとるし》
「はいはい、すみませんね。で、アヴちゃん、多分君は真っ直ぐに親から愛されてたと思うんだ。そこが自分と違うし、本当の事を言わなかったのがムカついたから、少しだけ生きて欲しい、で、生殺与奪はノエルにあるから、追々話し合って欲しい」
《そう言えば、ロキの伝言が有ったんじゃな》
『うん、伝えるよ、僕が伝える』
《では、もう帰ると良い》
アヴァグドゥが再び目を閉じると、体が光となって霧散して行った。
それでも、戻る気になれない。
「よし、終わったな」
《じゃが、腹が減ったじゃろう?ほうら、鳴っておる》
「やめい」
《このままではアヴァグドゥが悲しみ、再び自分を責めるかも知れんぞ?良いのか?》
「感傷に浸りたい」
《それは向こうでせい》
《シオン、目を覚ましてくれて良かった》
ベッド脇には泣きそうな顔をしたノエルが居た、手を握っていてくれたらしい。
そして反対側の左手には点滴、エリクサーがトクトクと流れ込んでいる。
「アナタは、誰?」
《あぁ、頭を打ったんだね、今先生を》
「冗談です。ノエル、お腹が空きました」
《用意するから、少しだけ待っていておくれね》
本当に直ぐに運ばれて来たのは、グラタン。
ロキが今晩の夕食にと朝早くから作っておいた物らしい、食べ辛い。
「食べ辛い」
《ロキの願いが叶ったお祝いだと思って、食べてあげて欲しい》
そして、仕上げはアヴァグドゥが焼き上げたそうだ。
そうか、アヴァグドゥが作ったモノでもあるのか。
でも、あの似顔絵を喜んだのはどちらだったのだろう。
アヴァグドゥは、変わってしまってるのだろうか。
『シオン、食べないなら捨てるよ』
「マーリン、アヴちゃんはどうした」
『君のお代わりを待ってる、オーブンの前で』
「ロキは」
『ちゃんと死んだよ』
それから、グラタンを1皿食べ終え下へと降りた。
キッチンに居るのは、ロキよりも小さい姿のアヴァグドゥ。
顔は夢のまま、その顔で生きると決めたらしい。
『お代わり?』
「おう」
『うん』
『シオン、もう安心して良いからね。ロキだった者は彼だ、ロキは彼の中でずっと眠っていた』
「どこでわかった」
『君が別の神の話しをした時、ロキの気配が消える方法は限られてたからね』
「妖精は」
『想定外。粉もそう。もう、あの粉を使っても今の妖精は感じ取れない事になった』
「ノエルが、ノエルに魔の血が流れてるとは思わなかったのか」
『思わなかった、アヴァグドゥに気付く前だし。まして死のうとする者が子孫を残すと思えなかった』
「なら」
『ノエルはアヴァグドゥの子孫。そしてトールはけしかけた、君が殺せる様にする為に』
「トールは」
『私に怒ってから、ずっと黙ってる』
2皿目のグラタンを食べ終え、アヴちゃんに3皿目を貰い、暖炉を見ているトールの所へ行った。
「けしかけられましたか」
『すまなかった』
「許す」
『そんな簡単に許してくれるな』
「マーリンが悪い。そして1周してノエルが悪い、その残り滓がアヴァグドゥ、その次がトールだから。トールは実質悪く無い」
『だとしてもだ、すまなかった』
「いいえ、どういたしまして」
そしてキッチンへ戻り、グラタンを食べ終え。
少しして、また眠らせて貰う事にした。
《ノエル》『ロキ』→『アヴァグドゥ』
『トール』『マーリン』《シバッカル》
【醜男と魔女と御使い】