4月28日
曇り。
目覚めスッキリ爽快。
取り敢えずノエルの所へ向かおうと部屋を出ると、リビングで水を飲むノエルの姿があった。
「おはよう、どうだい調子は」
《お陰様で、二日酔いも無くてスッキリだよ》
『おはようシオン』
「おはよう、今度ロキもお酒飲む?」
『私は止めとくよ、感情のタガが外れても怖いし』
「そう?そこまで飲まなくても良いんだよ?」
『少しで良いなら』
「じゃあ今度ね」
《良いんだよ、シオン、向こうの子になっても》
「途中で止めるのか、見捨てるのか、酷い」
《そうじゃ無いんだ、君が他の人間と居る方が、君の幸せになると思ったんだ》
「飽きて捨てる恋人のセリフじゃん」
《君の味覚を意図せず奪った事も関係する。コレから先、コレ以上、何か合ったらと思うと心苦しい》
「ロキもか」
『私は、私をロキと知っても居てくれた事、変わらず接してくれた事が嬉しかった。もっと居て欲しいけれど、シオンの幸せに繋がるか分からないから、ノエルと同じ意見になってしまう』
「どの面下げて爺さんの所に戻れば良いのよ」
《そのほとぼりが冷めるまで、ココに居てくれて構わない。いくらでも》
「分かった」
引き際なのだろうか。
珈琲を貰い、そのまま中庭の椅子に座った。
そして空を眺めていると、雨と共に妖精が振って来た。
《おはようございます》
「おはよう、フられた」
《え、誰にですか》
「あの2人に、もう良いって」
《自分勝手な人達ですね》
「なー」
《こんなにシオンが思ってくれてるのに、酷い人達ですね》
「本当。あ、ごめんね、味覚戻っちゃった」
《良かったぁ、あ、でも、全部ちゃんと戻りました?》
「偶に薄い、ボンヤリしてるけど味は区別付く」
《ふふ、僕のお陰ですね》
「本当に、君が生きてて本当に良かった」
《雨が強くなってきますよ、入りましょう》
中に入ると朝食が用意されていたが、無視。
大人気ないがもう、寝込もう。
何分経ったろう、雨の音が強くなる。
妖精の話しでは、今日は雷雨らしい。
悔しいやら悲しいやら、ムカつくやら。
殆どの感情がごちゃ混ぜになって、とてもイライラする。
昔の体験と混ざって、悲しみと怒りがこみ上げる。
「もう、帰った方が良いよ、気持ち良い感情では無いでしょう」
《そんなの関係無いですよ、僕はどんな時でも一緒が良いんです》
「爪の垢を煎じて飲ませて塗り込んで漬けてやりたいな」
《ふふふ》
《シオン、少し話しをしたいんだが》
「どうぞ」
《計画を見直してみたけれど、本当は、本音は君が必要なんだ。だけど、私が想像する人物と君自身がもしかけ離れていたら、もっと君を苦しめる事になる。だから、手を引くのが君の為なんだ》
「謎解きを途中で取り上げられるのは嫌い、甘く見積もられるのは良いけど、見くびられるのは嫌い。お前の為だと言って嘘を言われるのは殺意が湧く。自分の代わりに誰かが苦しむなら、お前の知り合い全部殺す。だから本当の事を言って欲しい、役に立たないから降りて欲しいと」
《もし、地獄の底まで付き合ってくれるなら。私と会社を好きにして構わない》
「それは要らない、御使いは帰ると決めてるから持って行けない物は要らない、筈」
《なら、あのお金は》
「あくまでもココで生活する為だけ。むしろ金や魔道具、魔石が良い」
《魔石は少し時間が掛かってしまうよ、とても希少価値が有るから》
「知ってる、少し、君の私室に行こうか」
妖精を連れ、ノエルの仕事部屋から私室へ入った。
そこで魔道具を展開し、威嚇形に武器を取り出す。
《コレは本当に、君は神では》
「無い、マジで無い。で、素質に問題が?」
《いや、本当に見くびっていた、すまない》
「それじゃ家族になれないよな、うん、何かスッキリしたから帰るけど。本はどうなる?」
《勿論出すよ》
「どうして人助けを?」
《こうなると助けていたのかも怪しくなるけれど、バランスだよ。ロキを囲い殺す罪悪感とのバランス、やり方は気に食わないだろうけど。ただそれだけなんだ》
「いや、別に反対はしてないでしょ。僕みたいに副作用が変に出るのも居るから、気を付けろってだけ。薬でも使わないと救われないのが居るのは分かるから反対はしてない、ただ、イレギュラーでパニクったのは分かるけど、妖精であれ誰かを害するのは反対。つかあそこまでしたなら押し通せよ、ガッカリだわ」
《そうだそうだー》
《すまない》
「出来るか分からないけど、重ね掛けしてやろうか?」
《あぁ、頼む》
妖精には耳を塞いでおいて貰い、ノエルの耳元で呪文を囁いた。
そして気付くと口から大きく白い泡が出て、ノエルの脳を覆うとピッチリと密着した、肉眼で見えたのでは無く、そんな風に感じた。
「出来たと思うんだが」
《あぁ、かなり動揺してしまって、すまない。心にも無い事を言った》
「え、あ、どれよ」
《君の為だとか君の幸せだとか、父親の立場を、家族の立場が揺らいだ、嫉妬だよ。不安からの欺瞞》
「【抑制解除】」
《ちょっとそれは、止めてくれないだろうか》
途端に赤くなって、ちょっと面白いぞこれ。
少しはピアスも反応してるし、本当はこのままが良いんだが。
《あんまり誂ったら可哀想ですよ》
「優しいな君は」
《シオンは本当に妖精の声が?》
「ノエルは聞こえない?」
《あぁ、口も読めない》
「聞こえない事に関して、思い当たる節は?」
《魔の血、ロキの血が入っているから》
「即答か。妖精が計画の邪魔なら遠ざけるよ」
《えー》
《暴れてる様に見えるんだが》
「仕方無い、大儀の為です」
《どうしてそこまで》
「自分にとって大事な神様だから、神様が困ってて助けられるなら、助けるでしょうよ普通」
《例えロキを殺す事になっても》
「構わん、日本には介錯と言う概念がある。元嫁にでも聞きたまえ」
そうして再びノエルに呪文を掛ける。
続いてノエルが自分自身に呪文を掛けた、試しにまた重ね掛け。
そして同時詠唱も、便利。
《ありがとう》
「死なないなら、コチラの事は構わんで宜しい。成すべき事を成して欲しい、出来るだけの事はする」
《ありがとう》
それからは、やはりただ普通に過ごして居て欲しいと言う事と。
妖精の存在は少しマズいと言う事で、また暫く妖精と離れ離れに。
部屋を出て小窓から妖精を帰し、そして朝食を食べにキッチンへと向かった。
ロキが片付けをする中で、黙々と食べる。
ロキにとって家族とは子供、家族こそ唯一無二の存在。
ロキはロキ、自分にとって唯一無二であるから問題無いのだが、家族かどうかは別。
もし家族なら、心を抑制している状態は見逃せない。
そこは最初と変わらず、本来のロキとして死んで欲しい。
「ロキ」
『ん?』
「殺してあげるから、本来のロキに戻って欲しい」
『解放させるのは、怖い』
「前に失敗した?」
『いや、ずっと、抑制したままだから』
「前例は?」
『無い、普通は定期的に解放させるらしいけど、私はしてないから』
「何が、どう心配?」
『良いの?コレ以上関わったら、もっと深く関わる事になって、君が傷付くかも知れないよ』
「そこはまぁ良いんだ。で、何が心配なの」
『自殺衝動が激しく出て、暴れ回ったりとか』
「御せれば良いんだろ、策はある。で、他には?」
『憎しみ、死ねる者への憎悪が凄く奥にある。抑えてるのは自殺衝動って言ったけれど、正確には自己破壊衝動を抑えてる感じ』
「それは確かに、抑えたいよな」
『うん。そう言えば仕返しは、もう良いの?』
「いや、追々。取り敢えず今夜ノエルに花でも嗅がせ様かと思ってる」
『前に試してた時はかなり大変だったから、その、後始末が大変だから。薬の方にした方が良いと思う』
「普通そうなるの?」
『元からの耐性が少ないとね、薬物中毒者でも凄い事になってたから。耐性が有る方が少ない、凄く』
「抗体有るかもか」
『うん、ノエルが少し言ってたんだけど、拮抗薬が作れるかもね』
「あー、言ってくれれば良いのに」
『悪い事だって自覚があるから、気が引けたんだと思う。血を採取するんだろうし』
「んなもんたっぷりやるのに」
態勢を変えた時、違和感が有った。
まだ筋肉痛が残ってる、雑にやったもんな。
『何処か痛いの?』
「筋肉痛が少し、話し終わったらストレッチする」
『手伝おうか?』
「頼む」
暖炉の前に寝転がりながらのストレッチ、治しといて良かった。
思考するのに凄い邪魔だし、馬鹿がマジ馬鹿になってしまう。
『それで、殺せそう?』
「使える魔法全部知らないとな、マジで魔道具何も無いの?」
『魔道具は何も無い、アールト家に渡したから。魔法は、魔法は多分、殆どの魔法が使える』
「は、めんどい、どうやってそんな使える」
『合わない魔法は魔力消費も凄く多いし、使った事の無い魔法も有るけど、知識としては殆どの魔法があるんだ』
コレは想定外、魔力容量を抑えてるのは確かに得策では有る。
それから、蘇生した状態での容量がどうかだが。
「蘇生した時の魔力容量は?」
『生きてられる程度、ある程度貯まらないと、肉体が完全に再生してても覚醒出来ないらしいから』
「アールト家の実験か」
『うん、抑制の魔法もかなり解けてるから。アールト家が重ね掛けしてくれてた』
「てた、とは」
『ノエルはしてくれないんだ、出来ないのかしないのか。容量が足らないのかな、ノエルのお祖父さんは良く使ってくれてたんだけどね』
「ワシも出来るでよ」
『凄い、それなら実験しても安心だね』
「なあーーーーーーっ」
『ごめん、加減するね』
「いや、しなくて良い」
『そう?』
「おぅ、一応ぅ、聞くけどぉ、痛覚はぁ、ありますかぁ」
『あるよ、そこは大丈夫』
「ぐぅう」
『本当に大丈夫?』
「大丈夫ぅー。使ったぁ、事のあるぅ、魔法をぉー、おしえ、てぇ」
変身は勿論の事、凍らせる魔法や体を硬直させる魔法、多岐にわたって使われたが。
そのどれもがあくまでも自殺の為に使われ、そして自殺は失敗。
『後は移動魔法とか、身体強化とかかな、爆弾の時に使った』
「その時って、どんな、気持ちで?」
『ただ、死にたいってだけで。死ねる、死ねる筈だって事で頭がいっぱいになってた』
「なんで、そう、なった」
『軍に、ロシア帝国領に居たんだ。凄い色々と薬が使われたから、余り覚えて無いのだけれど、良い爆弾が出来たって。中々殺してくれなかったから、コレだなって、そしたら持って走って逃げてた』
「君に花を使うのはやめとくか」
『そうだね、今までもノエルや私が誘導しても、どう出るかはその時までは分らないから』
「そうかね?」
『うん、ノエルが襲われた事もあるんだ、男への激しい憎悪が顕著に出て。ノエルの首を絞めたから止めようとしたのだけれど、ノエルがそのままにしろって。それでノエルが意識を失ったら、大泣きして、効果が切れるまでボーっとしてた。それでノエルを起こして、相手に質問を何個かして、意識誘導をした』
「どんな風に」
『家族をどう思ってるか聞き出して、本来の家族像はこうなんだって教える。刷り込みって言ってる、ただそれで終わり。目覚めた後、違和感に気付かせて帰らせる、そうして自分達の異常性に気付かせて、選ばせる』
「家族を切るか、一緒に立ち直るか」
『そこで手助けをする、暫くの間ココで過ごしたり、揺り戻しが起きた時は薬を使ったり。仕事や家、そしてパートナーを見付ける手伝い。見知った人間の、赤い糸が見えるんだって』
「キューピーちゃん」
『そう、代々して来た事だから、今までは簡単だったのだけれどね、今回は私達の事だから』
「前から調べてたの?」
『ううん、私があの短時間に調べに行ったんだよ、国連の人間に変身して』
「国連にまで、はー」
『全ては知れないけれど、君の情報は閲覧出来た』
「あら、何を知られてるんだろ」
『何にも無かったから、君の身元引受人を探ったけど、ただの普通のお爺さんだったから少し心配だった。ほら、占い師は自分の事は見れないって聞くでしょう、そういうのかなって』
「まして最近人間界に来たしなぁ」
『あぁ言う背景があるとは思わなかったから、ノエルは少し悩んでたんだ。御使いじゃ無いかも知れないって、そうなったら計画が崩れるからって』
「ソレを教えてくれたら良いのに」
『家族になったら教えるって言ってたから、まだなのかも』
「ロキはどう思う?」
『まだ、息子の嫁位かな』
「ノエルは息子に返り咲き?」
『うん、似顔絵を大事にしてくれててありがとうって、昔みたいに笑ってくれたから』
そんな事で、そんな事って内容でも無いのか。
信頼なのか、何なのか。
「どうしたら家族だと思ってくれる?」
『君が家族だと思ってくれたら、かな、まだ少し壁があるじゃない?どんなのでも良いんだよ、少しそこに穴があって、たまに顔を出してくれたら、それで良いんだと思う』
「あー、あのですね、言われた事が有るんですが、愛情表現が遠回りらしいんですよ。そこを考慮してですね、また、見て頂ければ宜しいかと」
『そう、ふふふ、ノエルにも教えて良い?』
「どうぞ、いってらっしゃいまし」
『うん』
自分でも壁は作っていると勿論感じているし、たまに素がひょっこりと顔を出す時も有ったんだが。
百戦錬磨のノエルでも、読み取れない複雑さがあるんだろうか。
なんか、複雑だ。
もう少し可愛げがある顔の出し方をせねばいかんのだろうか、めんどい。
それと気付いたのは、違和感。
どうやら綿密な連絡や情報交換は行って無いらしい、ロキを警戒しているだけでは無く、何かしらソコにも要素があるんだろうか。
家族の要素。
ウチはなぁ。
大事な事は、流石にあの父親でも知ってたろうけど。
知らせても面倒な事になるだけだからと、知ってるべき情報は封鎖されてたし。
ほら、分らないのよ普通の家庭が、それどころか家族が分らない。
親が居てもこうだ。
ワケ有りと会った事が有ると言ってたし、親が居ない子の対応もしてるなら。
シオンなりの家族像を出せと言う事か、理想の家族か、恥ずかしい。
でも、だから嫉妬したのか、しかも親友に。
シオンが懐いたから、理想の父親像を見出した様に見えたから、手放そうとしたのか。
そらそうよな、他に父親候補が出たら勧めるわな、そうか、悪い事し、してない。
ノエルが悪い。
またしても、ノエルの仕事場に突撃する。
「ノエルが悪い」
《え、あ、うん。そうだね、私が悪い》
「そうだぞ。それと、ロキはお祖父ちゃんだ、親より兄弟より近いお祖父ちゃん、お祖母ちゃんでも良い、そう言う庇護者、それと看取るべき存在。ノエルは兄弟だな、父親代わりのお兄ちゃんが良い、お父さんにするとマリーちゃんと取り合いになる」
《お父さんは》
「そらもう、君の思う通りだ。ただ、距離があるから、遠い存在だからこそのお父さんの立ち位置。身近に居たら、もしかしたら合わなかったり失望するかも知れない。それをしたくないから、遠い理想の父親、母親はまぁ、サラさんで良いかな、少しお祖母ちゃん寄りだけど」
《うん》
「うんじゃない、頑張って考えたのに、何か言えよ」
《あんな事があっても、家族として考えてくれて、凄く嬉しいよ》
「イレギュラーは体質だし、それは自分のせいだから、そこを鑑みての答え。合ってる?」
《合ってるも何も、君の意見を聞くのが目的だったからね。ロキが母親でも、私が息子でも良かったんだよ。君の役割が聞ければ良かったんだ、そして思う通りの人間だった事が、凄く嬉しい》
「何が思った通りなのよ」
《言うと君が濁ってしまうから、言わないよ》
「皆そうやってさ、バカにして」
《してないよ、その君の言う皆も、褒めてるんだよ》
「らしいね、どうせ褒められてると思わないだろうから、言わないってさ」
《良い友人だね》
「本当にね」
《向こうで少し、話そうか》
「おう」
私室に行き、深呼吸をしてから、ノエルが話し始めた。
真の目的は、家族として人間では無い何かが、ロキを殺す事。
ヘル同様に神で有るのが1番だが、それは無理なので御使いにと。
通常の人間とは異なる者、そしてそれが家族で有る事が、ロキが死ねる条件だと推測していると。
だが天使や神は限られているし、ロキの家族になってくれるとも思えない。
なら、御使いしか居ないと。
他の検証は既に先代達によって行われていて、妖精や精霊の血が入って居ても殺す事が出来なかったと。
ロキが神だからこそ、下位と思われている妖精や精霊によって死は齎されないのではと推測された。
そして先代、ノエルの祖父。
彼がロキを殺そうとした最後の人間、家族であり、時に人間が神を殺す神話があるからこそ賭けた。
そうして彼は人間だからこそ、返り討ちに合い死亡した。
だから、シオンがただの人間ではいけなかった、ただただ殺されてしまうから。
そこの見極めを迷った、マーリン爺のせいで。
ただその中で、冗談で言った宇宙人の可能性、そして神や天使の血を持っている可能性にも行きついた。
だからこそ、あのマーリン爺の様な人を経て、この貴重な存在が秘匿されたとも言えると。
そしてあのストレージ能力や、エリクサーで確信したと。
《普通の、この世界の普通の人間では無い。希望的観測無しでね》
「そんな変か」
《大して魔法が使えない筈なのに、呪文はサラリと使えただろう?花や薬も、もし治癒魔法が使えるなら、それも納得できる》
「だけで?」
《エリクサーも、サウナでのリセットも。今話題の日本人の治療師の血が入ってるなら、有り得るだろう》
「あー、アレに荷担した治療師ね」
《私はあの天使様が好きだよ。きっと沢山の忠告をして、沢山手を差し伸べられたんだと思う。映像で、彼?は喜んで殺してはいなかった。何なら、そう、苦悶の表情を浮かべてらっしゃったからね》
「ワシも好きだぞ、ほれ」
Tシャツやグッズを見せると、眉を寄せたり、ピクピクと動かし笑ってくれた。
良い笑いの種をありがとう、ミカちゃん。
《まぁ、そう言った所と、君がロキに殺してあげると言った時かな》
「カメラで読唇術とかズルいよな」
《真面目な君の事だから、出来そうも無い事は言わないだろうから、それ相応の力を持ってると確信した。それに、カメラの見当は付いてるんだろう、たまにコチラを見ていたじゃ無いか》
「見当だけだよ、分かって無い。適当」
《そう、もう止めるよ》
「良いよ、見守っててくれ。うっかりロキに殺されるかも知れんし、もしそうなったらマーリン爺を呼んでくれ、どうにかしてくれるから」
《そうか、彼が魔法の師匠なのかい》
「いいや、どちらかと言えば女王」
《そうだ、まだ例の絵本が見付からなくてすまない》
「本当に探した?寄贈品だよ、図書館にある」
《古本屋から調べていてね、そうか、同時並行すべきだったね》
「原稿が本題だったからね、ただ、この元の持ち主の話しも、いずれ本か何かにして欲しい」
《分かった、そうしよう》
「それと、この人形の設計者と商人は、ロキ?」
《あぁ、商人はそうだが、設計はまた別だよ。御使い、協力者だったらしい》
「ロキを殺せなかったのか」
《そうだね、だから何か条件が足りないんだと先代達は気付いたらしい》
「返り討ち?」
《だが、何とか生き延びて、そして御使いを降りたそうだよ。そうして結婚して、子を成して、アールト家から去った。行方は負わなかったそうだ》
「あー、大事な所がぁ」
《子を成せば帰れているらしい話しもあるのだし、誰か紹介しようか》
「それな、それは最終手段だ」
《そうだね、そうしたら私は叔父さんになるのかな、楽しみだよ》
「いきなり双子とかが良いよなぁ、1人はノエル見てると可哀想だと思う」
《そうだね、少し大変だったから。その条件で探しておくよ》
「追々ね、追々」
《もう否定はしないんだね》
「宇宙人が母星に帰れる条件と同じなのかも知れんよ」
《確かに、それも追加しておこうか》
パソコンに向かい、キーボードを打ち始めた。
セキュリティは大丈夫なのかと心配して見ていたが、ノエルの説明では自社サーバがあり、そこ専用のパソコンと回線らしい。
なんでそんな高等なと思ったが、国連の元セキュリティ担当を落として組み立てさせたんだそうだ。
だから国連も繋がれる?それだけか?
「それだけで?」
《元嫁の教会関係者から辿って、そこも落とした》
「怖い兄ちゃんだなぁ」
《下っ端だけだよ、身分照会が出来れば良いからね。変に目を付けられても困るし》
「そこから御使いの情報とか探れないの?」
《表面上は移民扱いだろうからね、そこから探ったとしても普通の移民が多いから、来て貰う事にしたんだ》
「それよ、どうやって」
《君の様に帰りたがっていたら、辿り着く1つの選択肢にしたんだ。教会、国連、そして御使いの事が描かれた本を出版する場所。そしてその何処に辿り着いても、私は情報が取れるからね。最近だと目立ったのはラウラと言う治療師の女の子だ、運送屋にも合格したそうでね。ただ、引き籠りがちな上に軍に所属しているからガードが固くて。君が現れなかったら、その子が次の候補だったんだよ》
「ほぇー、何か目立った事をしちゃったんだ」
《それこそ治療師でありながら運送屋になれた事だろうね、そうして御使いの嫌疑も、軍の内部からと国連内部から、噂話程度でね。そうだ、君と同じアジア系だそうだし、ソダンキュラなのだから、話しは聞いて無いのかい?》
「同じく引き籠りなんでね」
《運が合わなかったんだろうか》
「会えないかなぁ」
《それなんだが、教会に一時接触しようとしたらしいんだが、その後であの事件が起きたからね。教会からの接触は難しそうだが、君が軍の病院に行ってみたらどうだろうか》
「重症じゃ無いと会えなく無い?ロキは知ってるの?」
《余計な情報は知らせない様にしてるんだ、爆弾の暴走の事があるからね》
「家族になった御使いが殺せるかもと知れば、襲って来る可能性が有ると?」
《あぁ、その条件でも足りるかどうか分らないのに、不用意にアールト家で何か問題が起こったら、ロキを安全な状態で隠しておくのが難しくなる可能性がある》
「国連なり他の神様なりに協力を仰げば良いのに」
《国連なんて無理だよ、アールト家なんて使い潰されてしまう可能性が有るし。ロシア帝国軍の話しは聞いたんだろう?あんな目に会う事があれば、彼は本気で人間に牙を向きかねない》
「なら神様は?」
《トール神には殺されきれなかったのだし、大魔女ロウヒには追い返されて密告されたら終わりだからね》
「神様にそう警戒するかね」
《身近な神様がこうだからね》
「あぁ、話しに行ってやろうか?」
《それで協力してくれるだろうか》
「それは探り探りじゃ無い?花は使えないだろうし」
《ロウヒ神は1番北に住んでいるとは聞いたが、運送屋を手配してみるかい?》
「うーん、その、ラウラに運送を頼むのはどうだろうか、何なら雇ったら?」
《軍からの引き抜きとなると、かなり目立ってしまうよ》
「良い宣伝にはなるよね、御使いの、そしてその子が帰れたなら、どんどんココに集まる」
《かなりの賭けになるよ、それにその子はまだ未成年で治療師、花も薬も使えないからね》
「なら僕をダシに使ったらどうだい、その子の家は分るんでしょ?」
《ただ、未成年で女の子なんだ、君で事が済むなら巻き込みたくない》
「優しいなぁ、僕には優しく無かったのに」
《それは、すまない》
「薬か花を使って白状させてやろうか、この子の家を」
《花は勘弁して欲しい、多分、凄く大変な事になるだろうから》
「薬は良いの?」
《何回か試したからね、まぁ、酒に酷く酔った状態になるんだよ》
「リセットの時に使えば良かったな、ミスったわ」
《ふふ、宇宙人もミスをするんだね》
「そうだよ、宇宙人だからね」
《その宇宙人がこの子に会いたい理由は、帰る方法かい?》
「おう」
《そこはね、本当に千差万別なんだ。ただ魔道具を残して消える者も居たし、子を残して消えた者も居るらしい。そうして大釜の魔女に出て来た御使い、彼は魔女を殺して、暫くしてから消えた》
「魔道具開発して誰か殺して子を成せば良いのか」
《そうだね、ロキを殺せれば、帰れるのかも知れないね》
「御使いが御使いを殺して帰れた事例は無いのかね」
《それらしいのは有るけれど、ただ片方がかなり悪人に描かれていて、片方は聖人君主として描かれた、教会の絵本だよ》
「あ、謎の出版社があるって聞いたけど」
《あれもアールト家だよ、繋がりが無い様に昔は出来てたんだが、最近は難しいね》
「あー、マジか。君が立ち直らせた人間にも会いたいな」
《あの運送屋の子だよ、先代、祖父の最後の仕事だった》
「年が近いっぽいんだが」
《そうだよ、彼はココで過ごしてた。移動魔法に優れていたんだが、周りの環境、特に家庭環境が悪くてね。ココで一通りの教育と資金を、祖父が注いだんだ》
「事情は何も知らずに?」
《あぁ、会社の事業でも無く、祖父個人としてね》
「あの子に運んで貰おうかな、ラウラって子の所まで」
《良いけれど、どう話すつもりなんだい?》
「半分バラす、で、魔道具とか提供して貰って、最悪はバックアップになって貰う。ロキの魔法がネックなんだ、殺すだけなら出来ても、失敗した時に抑える力が欲しい」
《ラウラが成人するまで、待っては貰えないだろうか》
「急ぎの用事があるので、早く帰りたいんです。それに、未成年だと偽ってる可能性だって有る、何せ僕がこうなんだし」
《確かに、守るには未成年の方が良いだろうけど、行動するのに不便だろうに》
「だから、既に誰か協力してるんじゃないかと思う、ロウヒ、トールが」
《なら、接触する君が危ないんじゃないのかい》
「なー、間違えたらうっかり殺されるかも」
《それは困るんだが》
「向こうの力が分らないから半分バラす、ダメなら逃げる。コッチが考えるバックに付いてるのが違うなら、上の話し合いになるだろうし、そこから何か活路が見いだせるかも知れないじゃない」
《君の上とは一体》
「ねー、誰なんでしょうねぇ」
《君の嘘も誤魔化しも、この前から、本当に見抜けないから止めて欲しいんだが。本当に、ロキでは無いんだよね?》
「そう?いつから?」
《あの、妖精の事以降。凄く、申し訳無いと思ってる》
「どんな感じに分かるの?」
《こう、悲しみや楽しいって気持ちが分かる。凄く共感出来る感じだよ、警戒してるなとか、それだけだよ》
「雰囲気が、分かるだけ?」
《後はもう人間観察》
「はぁ、マジ?」
《魔法を解こうか?》
「いや、今度のリセットの時で良いや。で、そのラウラちゃんに会って良い?」
《少し考えさせてくれないだろうか?》
「何時間」
《そうだな、当面は明日の朝まで》
「えー、うーん」
《もうお昼なんだから、良いだろう?私は普通の亜人なんだから》
「うーん、普通に待てない、何か気を逸らさせて欲しい」
《そうだ、君にフィンを上げよう、運送屋の子を付けるから、街まで買いに行くのはどうだい?大きいプールがある街だよ》
「上手いなぁ、でも雨だし」
《じゃあ、明日は?カタログなら有るから、選んでおくと良いよ》
「はー、上手いなマジで、そんな悩むかラウラちゃん」
《イレギュラーがイレギュラーな話を持って来たんだ、それ位はね》
「まぁ、カタログ見ておきま。あ、検体になろうか?花の拮抗薬の」
《宇宙人かどうかバレてしまうよ?》
「同じ赤い血だから大丈夫」
《ロキの事が終わったら、頼むよ》
「寧ろ輸血用パック作った方が良いかも、何か合った時用に」
《それは良い案だと思うけど、長期保存は難しいんだよ?》
「そこは宇宙人だから大丈夫、方法は有る」
《分かった、それも合わせて考えておくよ》
お昼はキノコクリームパスタとスモークサーモンのサラダ、コレもキッチンで良いらしいので、デザートのベリーのタルトだけは一緒に食べる。
中庭で一服してから、暖炉の前でカタログを見る。
色や形が豊富過ぎ、セミオーダー特集とかも有るし、マジ無理。
『水泳道具?』
「おう、色々で迷う」
『凄いよねぇ、魚みたいで』
「あー、魚の図鑑とか無いかな」
『有るよ、待ってて』
暖炉脇の本棚から迷う事も無く大きな魚図鑑を出して来てくれた。
深海魚も載ってる、やっぱヒレって透明なイメージよな。
「こんなフィンが欲しい」
『魚みたいな?有るの?』
「無い、多分オーダーメイド」
『スーツだと時間が掛かるらしいけど、コレはどうなんだろうね』
「早く欲しいからなぁ、プール用と流れのある海用で考えるべな」
海用の長いフィンを透明なオーダーメイドで、プールや練習用に短く割れたフィンを買えば直ぐに使える。
ただ足のサイズがなぁ。
『海で泳いだ事は?』
「無い、フィン無しじゃ泳げない」
『川も?』
「何処でも。ロキは出来ない事無いの?」
『有るよ、絵が描けない、模写は出来るけどオリジナルは無理。作る事全部、真似は出来てもオリジナルは出来ないんだ』
「なんそれ、天才の悩みか、完全なオリジナルなんて時代が進む程に無理でしょうよ、ファッションだの絵本だの、限界は有るでしょ」
『そうなのかな』
「名画の完全模写とか、ヤバすぎだろ」
『ね、ふふ』
「やったな」
『ふふふ』
穏やか、普通の家みたい。
眠いなコレ、昼寝しよう。
いつ何時、何が有ろうとも。
オヤツに起きるのだが、ノエルは不在。
子供に会いに行ったらしい、帰りは遅くなるんだそうだ。
「出掛けたい場合はどうすれば?」
『私が執事として付き添うか、ノエルに言って運送屋を手配するかだね』
「爺さんに会いに行くのも?」
『そうだね、車は手配出来るよ』
「ほう、でもなぁ、まだダルいし雨だしなぁ」
『雷もだよ、コレから酷くなるって』
近くに落ちたのか轟音と稲光がほぼ同時に起った、目端ではロキが体をビクつかせたかと思うと、真っ青になりながら震え始めた。
「神様にも怖いモノが有るのか」
『あるよ、沢山。犬も怖いし、鷹も、爪や牙とか、嘴なんて鋭くて怖いじゃない』
「追いかけ回されたか、あるある」
『シオンも?』
「子供の頃、大型犬が追い駆けて来てさ、飼い主は笑ってて。後からそれは遊びたいからだって聞いて、それからして今度は撫でてたらいきなり噛まれた、唸りもせずにガブって」
『え、それも飼い犬?』
「おう、飼い主も周りもビックリよ」
『じゃあノエルはダメだね、狼だから』
「狼は別でしょう、まして飼われて無いし、躾はされてるし」
『ふふ、確かに良く躾はされてるね』
2回目の大きな雷光の後、少しして雷鳴が鳴り響いた。
またしても体をビクつかせ、真っ青に。
「部屋に戻る?」
『うん、そうさせて貰うね』
「おう、付いてってやろう」
『ありがとう』
ビクビクとしながら、おずおずと布団へ入って行く。
マジで神様なのか疑いたくなる。
「この子を貸してやろう、涎は付いて無い筈だ」
『他にも持っているんだね、ありがとう』
青い兎と一緒に買った白いクマ、そのクマを抱えると同時に稲光がカーテン越しに見えたが、音は無し。
ノエルのお祖父さんが、防音にしてあげたのだろうか。
光りだけなら、視界に入らなければ良いらしい、布団を被り新しくラミネートされた似顔絵を抱え、目を瞑っている。
「なぁ、神様や、夢は見るのかい」
『見るよ、昔の事も最近の事も、良く覚えてる』
「なら、夢の国は?夢の中にある世界」
『?聞いた事無いけれど、あるの?』
「行く?」
『悪夢は嫌なのだけれど』
「大丈夫、楽しい所だよ」
透明な鍵を取り出し、ロキに見せる。
『綺麗だね、凄いなぁ。コレで行けるの?移動は無理だよ?』
「体はココだから、大丈夫だと思うんだけど」
『なら大丈夫』
「横になって、目を閉じて」
鍵がロキへと刺さり、そして回った。
体の力が抜け、規則正しい寝息が聞こえる。
どうしようか、このままでほっとくか、世話するべきか。
シバッカルさんどうせ暇だろうし、でもなぁ。
行くか。
《遅いんじゃが?》
「いや、自由にさせるか迷って」
『凄いねぇ、綺麗な所だね』
《のぅ、そやつ、ロキと名乗っておるがぁ?》
「そうだねぇ、ロキだねぇ」
《えぇー、あー?なんでじゃ?》
「雷が怖いって言うから。まぁ、案内してやり給えよ」
《あぁ?うんー》
『シオンは小さい頃は女の子みたいなんだねぇ』
「うるさいなぁ、そう言う風習あるでしょうに」
《まるでデュオニソスじゃの》
『へぇー、良く知ってるね?知り合い?』
《いや、知識として知っておるだけじゃが、知っておるか?》
『私も知識としてだけだよ』
「お酒の神様だっけか」
《じゃよ》
『キュベレイによって救われれ、放浪の果てに地位を築いた神様だね』
「へー」
《で、案内すれば良いのかの?》
「おう、宜しく」
『シオンは来ないの?』
「なんだ、寂しいのか」
『そうかも、一緒に行こう』
「はい」
有無を言わさずロキに抱き抱えられ、シバッカルの宮殿の扉が開けられた。
そこは湯の里、相変わらず直通させているらしい。
《だってぇ、暇なんじゃもの》
「ほらぁ、だから案内任せても良いかと思ったのにさぁ」
《だってぇ》
「おう、久しぶり」
番頭に戻った塔守りの息子は、良い感じに髭を生やして落ち着いた感じになってる。
山や森は黄色やオレンジの秋の色、カラフルで明るい。
《ココも良いが、クラネスも待ち侘びて居るでな、後で行くと良いぞ》
『クラネス?』
《橋を渡った先の、王都の王じゃ》
「まぁ、神様よ」
『聞いた事無いなぁ』
《古の神々にしてみたら、我ら新顔じゃて、知らんでも無理は無いでな》
『やっぱりシオンは、御使いなんだね』
「と、思いきや実は宇宙人なんだ」
《ふふふ、そうか、宇宙人であったかシオンは》
『ふふ、ノエルが好きそうなお話だね』
「書かせるって言ってた」
『そうなんだね、ならアイデア料を取らないと』
「幾らになるんだろうなぁ」
《ほれほれ、次は王都へ行くぞ》
シバッカルが神殿へのドアを開け、中に入った。
そうして次は王都への扉が開いた。
『季節が、夏?』
《地域が違えば季節も変わるでな、よし、クラネスの所に》
「呼んだかな?」
《おま、何をサボっておるのじゃ》
「お久しぶりです、どうも」
「久しぶりだね、シバッカルが会いに来るかと思って待っていただけだよ。王都は今も混雑しているから」
『アナタは、人間?』
「そうだね、元人間だよ」
「からの神様」
《ワシもじゃよ?》
『私の知識には無いのだけれど』
「君の世界ではまだ神となり得て無いからね」
《シオンは渡りが出来るでな》
「渡りをした覚えは無いんだよなぁ」
『そうか、なら、シオンなら私を』
「ダメだよ、ココはシオンの場所なのだから、シオンの悲しむ事をしてはいけない、それがルール」
《じゃよ、少し我慢せい》
2人の新顔神様に肩を叩かれ、抑制の魔法を掛けられたのか少し落ち着いた様子に戻った。
そうして強く抱き締めてくると、深呼吸をして元の表情へと戻った。
『ごめんね、少し動揺してしまったみたいだ』
「ええんやで、気にするな」
《そうじゃよ、我らも居るでな、気軽に楽しく過ごすと良い》
「あぁ、楽しんで行っておくれね」
それからは海でダイビングをしたり、猫の街へ行ったり、花街に漁村と案内して行った。
そして気が付けば夜、満天の星空を王都で眺める。
『凄いね、綺麗だね』
「ね」
『お腹は減ってない?』
「減ったら眠ると良いんだよ」
『そうだね、そうしよう』
ロキの腕枕で、星空を見ながら。
暖かさに目を閉じた。
「おはよう」
『おはようシオン』
雷はすっかり治まり、窓の外は星が見えていた。
お腹がとても空いた。
「ご飯食べたい」
『そうだね、何にしようか』
ランチから流用したキノコのクリームスープにサンドイッチ、そしてプルプルのレモンゼリー。
久しぶりのドリームランドは楽しかった、ノエルも招待したらどうなるんだろうか。
「どうだった?」
『うん、とっても、凄く楽しかった。大きな遊園地みたいで、また行きたいな』
「遊園地か、まだ無いな」
『シオンが作ったの?』
「だけじゃ無いよ、おじさんとね」
それから、初めておじさんと会ったのはいつか思い出せないけれど、夢の中で何度も会った事。
ドリームランドは広がり続けてる事を話した。
そして更には遊園地の構想を2人で練り、画用紙いっぱいに絵を描いた。
沢山のジェットコースターに大きなメリーゴーランド、観覧車に射的に輪投げ。
今度は水族館や植物園も作る話しが出た、規模がデカいので1個ずつ。
『人魚を見に行こうか、魚の亜人のダンサーと水族館で働いてるんだよ』
「マジかよ、アラクネとかは居るの?」
『うん、真っ赤な髪をした植物園の職員さんでね、ダニーが一目惚れしていたよ』
「あー、行きたい所まみれだ」
『ノエルに案内して貰うと良いよ』
「魔法沢山重ね掛けしてやるから、一緒に行こうよ」
『執事でも良い?』
「何でも良いよ、未成年以外ならね」
『良いの?お爺ちゃんだよ?』
「綺麗なお姉ちゃんと一緒だと、ナンパ出来ないじゃないか」
『それなら同い年にする?』
「君にばっかり行くに決まってる」
『大丈夫だよ、シオンの方が良い体つきをしてるんだし』
「夏ならね、でも全裸で歩けんだろうに」
『ふふふ、そうだね』
「何でも良いよ、好きなので」
『うん』
そうして暫く下らない事を話し、部屋に戻り布団へ入った。
《ノエル》『ロキ』《スズランの妖精》《シバッカル》「クラネス」