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4月17日

 曇り、中域。


 タイムリミット寸前の、火葬での合同葬儀が始まる直前、昼過ぎに起こされた。


『だって、要請が無かったし』

「眠らせた?」


『私はして無い』

「スズランか」


『君は心穏やかに過ごせないと思ったから』

「スズランは」


『また向こう、あの子を責めないで』

「君を責めるから大丈夫、それより葬儀は」


『君の依り代が出席してる、もう流石に何も無いと思うけど念の為。代わりに、アヴァロンのお葬式に来て欲しい』


 ティターニアが用意してくれた205本の花、マーリンと共に川へと流す。


 名前は伏せられたまま、ただ対岸のマーリンに合わせ花を手向ける。

 どうにかすれば名前を知れるだろうけれど、敢えて伏せられたからこそ聞くのを止めた。

 例え涙1つ流していないマーリンでも、負担になる事は避けたい。


 流された花は川を進み、島の端から海へと落ちる。

 誰も居ない海へ花が落ち、波に呑まれる。




《おかえり》

「ただいま」

『ただいま、お勉強?』


《一応、意外と試験がダメかもだし》

「学会周りする勉強オタクが落ちるとか、どれだけ厳しいのよ」


《ふふ、どうだろうね、何せ初めてだから》


 もう何も知らずに、このままニコニコしていてくれると助かるのに。

 知りたがるだろうか、このまま忘れてはくれないだろうか。


『じゃあ、私は少しだけ打合せしてくるけど、外出はしないでおくれね』

「あいよ、いてら」


《お昼ごはん、どうだった?》

「美味しかった、ホットサンド上手よな」


《でしょ、練習したんだから。オヤツは何が良い?》

「有るので良いよ、クッキーとか」


《じゃあ、夕飯は何にしようか》

「グラタンか、サーモンスープ」


《ならデザートはゼリーにしようね》


 そうしてコチラはエリクサーを作り、マティアスは勉強。


 平和なままエリクサーを作り終えた頃、マティアスが原稿用紙の束を取り出した。

 2冊分、イデリーナの挿絵が所々に挟まれている。


「読まないでおく」

《もう読んでも良いのに、書いてる途中だと感想が心配になって書けなくなりそうだったから、読まないでって言っただけで》


「そう?でも折角なら本になったのが良い」

《なるかどうか分らないのに》


「出来る出来る、よし、明日にでも行くかな。何も無いならだけど」


『ただいまー』

「おかえり、今後の予定を教えてくれ」


『特に無し。だけど運送屋はまだ少ししないで欲しいな』

「出版社に行くだけなら?」


『原稿出来たの?』

「おう、明日行こうかと」


『明後日』

「なんでダメか」


『じゃあ明々後日』

「ひでぇ」


『明日の状況次第ね、エリクサー足りてるワケじゃ無いんでしょう?』

「ふぇい、作ります」




 エリクサーを作りながら、オヤツを頬張る。

 何事も無かったかの様に、いつも通りエリクサーを作り、マティアスはテーブルで何かを書く。


 いつも通り、何事も無かった様に過ごす。

 前と同じ様に。




 夕飯にはキノコのグラタン、シーフードスープ、ベリーのゼリー。


 サウナへ入り、ベッドへ入る。


『何か、ぎこちなかったけれど話したの?』

「いや」


『話すなとは言って無いんだから、話しても良いんだよ?』

「話したくは無いけど、マティアスには知る権利が多少は有るよね」


『知る権利が無いと思えば良いのに、レーヴィに話させても良いんだし』

「レーヴィが可哀想」


『ならマティアスに知る権利が無いと思うか。話しちゃうか』

「か、まだ悩むか」


『だめ、今日で区切りを付けて。それでまた問題が起きたら、そこで考えたら良いの。君にはやる事も考える事も多いんだから、もう一旦終わり』


「へい」


 トントンと寝かしつけられながら、説き伏せられながら、頭の中を出来るだけ空っぽにする。

『マーリン』《マティアス》

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