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第五話 飲み比べ

高二の秋、文化祭。


最終日の放課後、剣道部では毎年恒例の「飲み比べ大会」が行われようとしていた。


男女それぞれ五人の代表で戦う団体戦方式。


今年の飲み物は「牛乳」だ。


より多く飲んだ方が勝ちという至ってシンプルな戦い。




2対2で迎えた大将戦。


二年生ながら大将に抜擢された勇太と麻央が席に着く。


「手加減しないわよ!」


席に着くなり麻央が牽制してくる。


「当たり前だ。オレが負けるわけがない」


勇太も負けじと言い返す。


こんなくだらない戦いではあるが、負けず嫌いの二人は真剣そのもの。




部員たちが大絶叫しながら二人に声援を送っている。


文化祭最終日の夕方。


剣道部が一年で一番盛り上がる瞬間だ。


この勝敗によって、今後1年間の男子部員と女子部員との上限関係が決まるのだから。




「言っておくがオレは牛乳が大好きなんだ。それこそ浴びるほど飲んでも平気だからな!」


「ふんっ。私を誰だと思っているの? 勇太ごときに牛乳の飲み比べで負けるわけがないわ!」




「オレが勝つ!」

「私が勝つ!」






((あれ……???))




((今のやり取りどこかで聞いたことあるような……))







大将戦の緊迫した雰囲気の中、二人は気の抜けた表情で虚空を見つめた。


時々感じるデジャヴ。


((気のせいかな……))


自分だけのことだと思っているので、二人がデジャヴについて相談し合う事は無い。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「「ハァ、ハァ、ハァ……」」


勇者と魔王はお互いに背中を預け、へたり込んでいた。


一騎討ちの後、二人とも精も根も尽き果てて立ち上がることも出来ない。


もう何百回目の対決だろうか。


決着が付かないまま、最後はいつもこうなる。




「勇者よ。本当はな、戦争なんかどうでも良いんだ。オレはこうやってただ強い奴とひたすら戦いだけなんだ……」


背中にもたれかかっている勇者に向けて、息を切らせながら魔王がつぶやいた。


「ふんっ、そうか。実を言うとな、俺も同じだ。戦争はただただ醜いだけだ」


勇者も呟く。


お互いに認め合っているからこそ漏れ出る本音。




お互いの本音を吐き出したあと、しばらく沈黙が続いた。






「戦争のない平和な時代だったら、酒でも酌み交わしていたかもな」


勇者が何気なく思ったことを、そのまま口に出した。


「そうだな。全力で戦ったあと二人で酒場に行く。そんな平和な世の中も悪くはない」


魔王も平和な時代だったらと、想像した時の思いを語る……。




「言っておくが、俺は酒強いぞ。それこそ浴びるほど飲んでも全然平気だからな」


「ふんっ! オレを誰だと思っている? 魔王だぞ? 人間ごときに飲み比べで負けるわけが無かろう」




「オレが勝つ!」

「俺が勝つ!」






負けず嫌いの二人は、こんなくだらない事でも一歩も譲る事はなかった。













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