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第三話 ライバル認定

時は流れて、二人は中学二年生。


学校で、道場で、二人は毎日何時間も顔を合わせる関係を続けていた。


周囲からは仲の良い幼馴染をして認められていたが、当の本人たちはその呼ばれ方が好きにはなれなかった。




麻央の十四歳の誕生日。


いつものように学校へ行って、


いつものように部活で汗を流して、


そして、いつものように二人は一緒に帰宅していた。


部活で体力を全て出し切っているので、帰宅中の二人は静かだ。






「麻央、オレはお前のことが好きだよ」


二人並んで静かに歩きながら、勇太がボソッと呟く。


「いっ……今さらそんなことを言うの? わっ……私は初めて出会った時から好きだったよ」






((あれ…………?))




生まれて初めて愛を確かめ合った甘いひととき……のはずだったのに、二人は変なデジャヴに襲われた。


((今のやりとり、どこかで…………))


二人はこの日初めてお互いの気持ちを確かめ合った。


過去に同じ経験なんてしたことなんて無い。


なのに、いつかどこかで同じ経験をしたような感覚に襲われる……。




「な……何黙ってんのよっ!」


「ん? いや……」


ほんの僅かな沈黙から麻央が先に我に返り、なんの反応も示さない勇太に文句を言う。




「ふんっ。そっか……」


「そうよっ!」




麻央が自分のことを好きなのは当然わかっていた。


でも、勇太は言葉に出してハッキリさせておきたかった。


男と女だからこそ、中途半端な関係だけは避けたかったのだ。




そんな勇太の気持ちを知ってか知らずか。


麻央は勇太の腕をグッと引き付け、少し膨らみ始めている自分の胸に押しつけた。


「他に言うことは無いの?」


「あ……、誕生日おめでとう」






二人は幼馴染。


二人はよきライバル。


そして二人は、今日から恋人同士。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




勇者と魔王が戦いに明け暮れるようになってから七年が経過していた。


七年もの間、来る日も来る日も二人は剣を交えた。


そして、勝負はいつも引き分けに終わっていた。






今日も二人は全力で戦った。


二人とも体力も気力も持てるもの全てを出し切り、全力で剣をぶつけ合う。


そして、今日も勝負は引き分けだった。


一度も勝ったことはないし、一度も負けたこともない。もう、何度目の引き分けなのかも分からない。




力を出し切った二人は、息を切らせたまま地面に横たわる。






「魔王、オレはお前のことを気に入ったよ」


静寂の中で、勇者がボソッと呟く。


「今さらそんなことを言うのか? 俺は出会った時からそうだったぞ」




分かりきっていることを今更ながらに言ってくる勇者に魔王は少々呆れた。


呆れながらも、少しだけ可笑しくもあった。




「ふんっ。そうか」


「そうだ」




魔王が自分のことをライバルと認めていることは当然分かっていた。


でも、勇者はそのことを言葉にしてハッキリさせておきたかった。


お互いは敵同士だからこそ、中途半端な関係だけは避けたかったのだ。










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