キャトルミューティレーション
どうも、UFOで異世界に行ってみたいなと思いました。サイボーグ的な感じです。
男の腕は異形だった、腕の先は人間のものではなく。それは、死を与えるものだった。肘から先の全ては銃口、放たれた弾丸は淡く輝き、着弾地点は大爆発に飲み込まれた。超技術の粋を集めて造られた兵器、本来の名を■■■■と言う。
「えええええええええええええええ……!!?」
男は驚愕していた。自らの身体に植え付けられた兵器の威力に心底驚いていたのだ。なぜならば、男がこのような力を手に入れたのは数分前の事だからである。
「ふんふふ~ん……」
男はただの学生だった。少しばかりUMAやUFOが好きなだけで、特に特技もないような、特に運命もないような、そんな木っ端の存在だった。どこに存在していても、当たり前のように生きていける恵まれた存在であった。
「……?」
男は自らの身体が浮くのを感じた。それは無重力浮遊にも似た、おかしな感覚だった。違和感を感じ、そして上を見上げた時、男の眼は大きく開かれた。
「ゆ、UFOだぁあああああああああ!!?」
発光する円盤形の飛行物体、UFOという言葉を知っていれば10人が10人そう答えるほどにそれはUFOだった。
「本当にあったんだ!!」
男が感じるのは恐怖でも、焦燥でもなく、歓喜だった。淡い憧れが目の前にあること、遠い存在が近づいてくること。それはなによりの僥倖だった。
「やった!! やった!! 僕は選ばれたんだ!!」
今まで何にも選ばれることもなかった男、何を選ぶこともなかった男。生まれて初めて選ばれたことに至上の喜びを感じていた。無縁だと思っていた運命に、あり得ないと思っていた奇跡に、全てを捧げる覚悟は完了していた。
「僕は……え?」
貫かれる身体。白銀の槍が2本。
「は、はは、連れていってくれよ!! 遠くに、とても遠くに!!」
薄れゆく意識、聞こえてくる謎の言語、そして全身が焼かれるような感覚。
「これで、特別に、なれるかな……」
暗闇につつまれた視界。差し込む光は突然に。
「っ!? UFOはどこに!?」
男が身体を起こす。見慣れた町並みは既に無く、周囲には石の壁。空気の通り道はあるらしく、呼吸が苦しいということはない。
「ここは……?」
見渡せど、見渡せど、周りには壁、人も居ない、閉塞感だけが募っていく。
「壁、邪魔だなあ。空も見えない」
上を見上げてぼそりと呟いた。その意思に呼応したのかは定かではないが、男の肩がぱかっと開いた。そこには黒光りする砲塔。ピーという音の後、そこから砲弾が放たれた。
「ぐわぁああああああ!!?」
体勢が不十分であったことで反動を押さえ込めなかった。男の後頭部が勢いよく地面に叩きつけられる。
「いた……くない?」
鈍い感触を感じるのみ、痛みはなかった。頬をつねってみても、なにも感じない。
「とりあえず外に出られるようになったのか……?」
崩れた天井から空を見上げる。
「ここどこだ……」
男には少しばかり天文の知識があった。見上げた空に輝く星が、地球から見えるものではないと分かるくらいには。
「UFOが僕をここに置いていった。そして、僕の身体を改造したのなら」
男は自分の使命を定めた。言われてもいないのに。
「尖兵として送り込まれた……?」
男は思い込みが激しい性格だった。このままであれば、男は自らの身体に備わった暴力でもって破壊の限りを尽くしたことであろう。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■? ■■■■■■■■■■■■■■■? アー、キコエマスカ?」
立体映像が投影される。そこには銀色のロボットがいた。
「ア、ドーモドーモ、オゲンキデスカ」
「……げ、元気です」
「ソレハ、チョウジョウデス」
やたら感情豊かなロボットである。
「アナタ、サッキ、センペイイイマシタケド、チガイマス。アナタハ、ワワ、ワワワ、ガァピー」
「え、ここで終わるとかある!?」
映像が乱れてロボットからのメッセージは止まってしまった。使命らしきものを見いだした途端に奪われ、そして放り出された形となった。
「……どうするか」
途方に暮れてもしょうがない状態ではあった。だが、男は前向きだった。
「とりあえずは、外に出てみるしかない」
とは言うものの、天井まで移動する術を男は知らなかった。
「出れるかなあ……」
そう言ったとき、男の背中からガシャコンと何かが飛び出した。それは空を飛ぶための道具、炎を吐いて空を飛ぶもの。
「なんでもありだなこの身体……どこまで僕だった部分が残っているのやら」
炎と共に空を飛び、外に出る。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「UMAだ……ドラゴンかも?」
翼を持ち、灼熱の火炎を吐く化物。それが見渡す限り。男は知らぬ事であったが、この場所はこの世の地獄と呼ばれる地帯の1つ。群龍森林フラクタルであった
「うわ、うじゃうじゃいる」
嫌悪を含んだこの言葉を、身体は殲滅の意思と認識した。男の瞳の色が変わり、戦力評価が瞬時に行われた。そして、必要な武装が導き出される。
「え?」
男の身体は炎の噴射によって上空へと運ばれた。龍が追うのも間に合わぬ速度で。
「え?」
腕の形が変化する。それは銃口、死を撃ち出すもの。
「ええええええええええええええええええええええええええ!!!?」
眼下に広がるのは暴力の跡。これは後に平にする者と呼ばれる者が行った最初の戦闘だった。
【群龍森林 フラクタル】
同じ形の龍を半永久的に生み出し続ける地獄。地下深くにいる本体を倒さない限り永遠に子龍と戦うはめになる。
とてもとても人類が倒せるものではなく。選ばれた英雄が命を賭して1割の勝機を掴めるかどうかというレベル。