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89:100万人の壁

遥パート:ジルの企画で4人で大きなコラボを実現した遥達。

お祭りも落ち着きを取り戻しつつ、自分たちの配信に戻っていった。

だが、遥はいつものように思い悩んでいた。

 今日もパソコンに電源をつけて、配信の準備を始める。

ここ最近はいろいろコラボとか忙しかったから、自分のチャンネル登録者数80万人記念配信できてなかったからなぁ......。


「記念だし、3時間以上は話せるようにしたいな」


いつもはなんとなくゲーム配信でさえ、2時間くらいで済ませることがある。

だが、それは自分の技術的にも性格的にもやることを恐れていたことも理由の一つだ。


「俺も頑張って、100万目指してみるか。でも、まずは80万のお祝いだな」



マイクのスイッチを切り替えて、配信画面を覗き見る。

そこには、今まで以上のコメントがずらりと並んでいた。


「みなさーん、こんえるこんえる! ゆーらいぶ4期生 バーチャルJKの神野エルでーす! 待たせちゃったかな?」



【地雷屋】「待ってました! 初見です! 80万おめでとうございます!」

【トライドン】「始めてきました!」

【ジンジャー・エールのみたい】「おー、増えてますねえ。これが80万のコメント欄かぁ」

【下ネタヘイヘイ】「歓迎歓迎!」



「今日は、初めての人もいるけど予定通り80万人記念の配信を始めまーす! まずは、みんな来てくれて、私を見つけてくれてありがとうー!」


【はんぺん】「こちらこそ、生まれてきてくれてありがとう! 推しです」

【下ネタヘイヘイ】「出会いに感謝! ん? かん、しゃ?」

【ひいらぎ】「それ以上、よくない」


こちらこそ、いつも見てくれてありがとう。

やっぱり、ここに一途は並んでいないか......。


「というわけで、早速マシュメロ読んでいきたいと思いまーす!」


オレはそう言ってマシュメロの画像を1枚配信画面に貼り付けた。


【80万人おめでとうございます! いつも見てます! エルちゃんのホラーが一番最高です!! めざせ、100万!!】


「う、うぅ......。化け物が多いよぅ! 100万のVって1週間とか2週間でなった人ばっかじゃん!」


【むぎちゃん】「あの人たちは......。うん、別枠だよ」

【ぎぎんぎん】「化け物だよねえ......。でも、エルちゃんも確実に登録者伸ばしてるし」


「でも、ありがとうね。ゆっくりだけど、100万めざしてがんばります! じゃあ、次!」


【80万人!? すごい数ですよ、奥さん!】


「うちの視聴者層に主婦層がいる......。フフフ。 奥さん、見てますか?」


オレは慣れない、低音ボイスをマイクに乗せた。ほぼ、自分の地声なんだけど、気味悪くないかな?


【下ネタへいへい】「急にえっちボイスやめてください」

【ころころ】「ふおおおおおおおおおおおおおお」

【ちょちょいの上位】「あああああああああああああああ(脳破壊)」

【じゅん】「男の人っていうのを実感しました。メスになりそうです。あ、自分は女子です」


「えええええ? そんな変な声だった? ごめんね。配信だと、地声で話したことなかったから......。びっくりしたよね?」


¥10,000【ジンジャー・エールのみたい】「えっちボイス代+80万記念代」

¥15,000【一途な一号】「遅刻代+80万人記念代です! お納めください! 久しぶりにきちゃ!!」


赤く輝くスパチャが並んだと思うと、久しぶりに一途が配信に来てくれたみたいだ。

こういう時にしか来ねえとか......。ほんと、ずるい男だよな。


「二人とも、スパチャありがとうございます! 他のひともこぞってスパチャしてる。みんな、そんなに出さなくてええんやで......。気持ちだけで、十分なんだよ?」



使ったこともない関西弁が出るほどには、見たことのない金額に焦りと嬉しさを覚えた。

それと同時に、みんなの財布が少し心配になった。普段、もやしとかなのかな......。

いやいや、考えるな。今は、みんなとの会話を楽しもう。ささ、次のマシュメロはっと


【ホラー配信と、昨日のコラボ回見て好きになりました! これからも頑張ってほしいです! がんばえーる!】


「応援ありがとう! ホラー配信ってどれのやつだろ? 案件の時とかかな? なんでもいいや、これからよろしくね!!」


何通ものマシュメロで会話を盛り上げていくと、いつの間にか3時間ほど立っていた。

自分でも驚くほどのマシュメロが届いていたというのもあるが、コメントが多い分それだけみんなと会話することも多くなる。たくさんの人間が、この配信を作り上げているんだと、改めて気づかされた。



「もう3時間もやってたのか、長いこと付き合ってくれてありがとうね。じゃあ、これでラストにしようかぁ」



¥2000【ちょちょいの上位】「もうそんなに経ってたのかぁ。ラストになるのも寂しいぜ」

【ころころ】「さ”み”し”い”いいいいい!」


皆の寂しがる声に揺らぐも、切れ目はしっかり作って起きたい。

私は、最後になるマシュメロを開いた。


【80万人おめでとう! また、一緒にコラボしたいな。 ジル・デ・ジルコニア】


【ジンジャー・エールのみたい】「おおお! ジル様だぁ!!」

【親愛なる領民】「領主の名を聞いてはせ参じた! 80万おめでとうございます! 我が領主も喜んでおられます!」

【ことり】「すげー---!!」



「ほんとスゴイまめな子ね。ありがとうね! ジルの領民たちも駆けつけてくれてありがとう! ジルちゃーん、私もまたコラボしたいですー--!!」


これは別に嘘じゃないけど、不思議な気分だ。自分のことを好きなVtuberが二人もいるだなんて......。気まずくならないといいけどね。 二人きりでってなったら、前に二人きりでコラボした時よりも緊張しちゃうかもな......。


「じゃあ、またえる~」


絞めにちょうどいい相手が出てきたところで今日はお開きとなった。

オレは配信画面を閉じてゆっくりと伸びをする。配信の後のこの時間が、やっぱり大好きだ。


「100万人、か。簡単に言ってくれちゃって」


天井に目をやり一人、ぽつりとつぶやく。一途のように事故を起こしたり、話題になることなんてほとんどなかったけどやっぱり遠いよ。100万人という壁を上るにはまだ、先は長そうだ。




地道な努力ほど、つらくむなしいことはないと知る遥。

一方で、一途は破竹の勢いでゆーらいぶの門を叩く。

そこには、謎の動物集団が......。

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