8:二重生活での配信
遥は今日も元気に配信をする。
みんな待ちかねた彼女の声にコメントはお祭り騒ぎ。
いつものメンバーを携え、コントローラーを握る。
『今日もあなたのハートをロックオン♪ 神野エルでーす。今日は生き残りをかけたゲーム「フォーリンガイ」で優勝狙っていきたいとおもいます! こないだね、プライベートでやったとき惜しかったんだよね。だからがんばりたいと、思います!!』
【下ネタヘイヘイ】:フォーリンガイ楽しみ! がんばって
¥5000【一途な一号】:今日も優勝目指して頑張れ、頑張れ♪
『いちごちゃんいつもありがとう! みんな応援よろしく! お、さっそく50人集まった』
配信は順調、ゲームの音声もオレの声もバッチリ取れてる。
コメントはいつもの人たちが温かく応援してくれている。可愛いキャラが平気で押し合いへしあいで1位を目指すこのゲームでオレを含む多くの実況者さんやVtuberが王冠を求めて左スティックを前に押し出す。
『よし、1stステージクリアだぁ! ここまでは大丈夫だね。次はなにかな~? チームかぁ......。もっとやりあいてえよ、わたしゃ』
【kana0909】:戦闘狂で草
【ひいらぎ】:下ネタ言わないね、余裕ない感じ?
『私そんなに下ネタいうキャラなの? ちょっと、女子高生にひどくなーい?』
確かに、Epexやってたときに『コッキングは得意』とかよく言うけどさ、ちょっと改めようと思ってたんですけど? ていうか、一途も下ネタ目当てだったりして......。あいつ、例の押崎さんとか言う人とよろしくやれてるかな......。あいつが女と話したり、ラインしてるところみたことないし。
いや、いまは変なことは考えたらだめだ。
いまはこのミニサッカーに集中しよう。
『取り合えず、大きいタマを転がせばいいのね!」
自分と同じ赤い色になったゲーマーたちがこぞって大玉ころがしのように転がしてゴールに入れていく。冷静に一つずつゴールさせる。3:0で完封したところでそのゲームがタイムアップとなった。
『よし、いいちょーし!! ごめん、ちょっとお水飲むね』
ふぅ。変な汗かいちゃった。しっかし、一途のアカウントってどれなんだろう。俺の事推してるとは言ってるけど一体どの時点で言ってるのかわからない。初めて知った時は大学入学式でスマホを見せてもらった時だ。てことは3月? オレは高2から始めてるから最近の子なのかな? 楽しんでいるといいな。
【一途な一号】:最近このゲームチーター多いから負けないで!
一号さんからのコメントだ。確かにこのゲームチーターがヤバいって噂になってるからこっちとしては負けられない。一号さんはあまりゲームとかはやらないみたいだけど、Vがやるゲームの情報はいつも最新でチェックしている。高校生からの付き合いで恩人だ。多分、おじさん。わかんないけど、そんな恩人との会話が楽しくてここまで続けられた。
しばらく粘っているとようやく決勝戦。ここが勝負どころだ。オレはただジャンプすればいいんだ。下に落ちないように、他の人に押し出されないように、そして抜ける床をよける。
『フゥ......フゥ......!! ヒィッ、ハァッ!』
【nazonanJ】:ヌ゛ッ゛‼
【下ネタヘイヘイ】:落ち着いて素数を数えるんだ...
あれ? コメント欄がとんでもないことになってるけどまたオレ、なんかシちゃった? まいったなぁ。また健全じゃない動画って言われて収益化止まっちゃうよ。あの作業だけはやりたくないの!!
後、4人......。3人と数が減っていく。オレを入れて3人。落ちるわけにはいかない。
私だけが立っている床、そして二人だけが立っている床......。どちらが先に落ちるのか。それともそれとは関係なく落ちてしまうのか。そう思っていると向こうの床が落ちた!!
『や、やったーーーーーー!!! みんなぁ! やったよ、私ビクトリーしちゃったよ!? イイイエーーーーイ! 王冠ゲットだぜ!』
【一途な一号】:888888888888888
【ひいらぎ】:88888888888888
【kana0909】:88888
【kjihgiyffu78604】:888888
みんなの拍手がコメントで流れてくる。いやぁ、冷汗かいたぁ......。
一位の画面をスクショした後、配信を終了した。優勝したことをつぶやいてみるとみるみるリツイートやいいねが帰ってくる。中には同業者も多数、祝杯してくれていた
@jinjin888
エルおめでとう。また、コラボしようね
このアカウントは前にEpex配信でコラボしたジンさんだ。たしかにあの人のチート級の投げ戦法があればガチでやってみたい。
@kamiel
そうですね!! またEpexでジンさんのかく乱戦法で蹴散らしましょう
こういうやり取りから意外とコラボというのはできたりするからVtuberは面白い。
通知の鳴りやまないスマホをカバーで閉じて、電気を消してベッドにダイブ。そのまま疲れて寝てしまったのだった。
次回は押崎さんと一途が急接近!?
恋にハッテンする、のか?