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76:遥と一緒におでかけしよう

日は変わり、配信を無事に終えた遥は今日も大学生活をそつなくこなす。

それに見習うように一途も追いかけていく。今日は、遥の巻き沿いを食らい、一緒にお出かけする羽目となっていく。

 配信も大事に毎日配信していきたいが、大学の授業もおろそかにしちゃいけない。遥だってやってることだ。俺にだってできない道理はない。そう、言い聞かせてバッグからノートを取り出していると隣に遥が座ってきた。髪の毛をふんわりとさせて、メイクも少し整えていてより可愛らしくなっている。こいつ、自分磨きに凝りやがって......。


「おはよ♥ 昨日の配信見た?」


「配信? すまん、まだ見てない。それより、今日のお前どうした?」


「別にいいじゃん。どんな格好しようが配信見てくれない一途には関係ないでしょ。 ......それで、どう? 変じゃない?」


目をうるうるとさせながら両手を口元に持ってきてかわいい子アピールしているんだが、普通にしてりゃいいのに圧力を感じるんだよな。


「そのポーズが余計」


「だよなぁ。今どき、こんなブリブリしてるの流行んねえか」


どんな格好しようがこいつの勝手なのは間違いないが、今日の遥はどうもそわそわしている。

そんなに俺と会えていなかったのがさみしかったのか? たった1日かそこらだろ。


「なんだよ。寂しかったのか? 最近会えてないから」


「は? 1日会ってねえだけだろ。オレはそこまで一途に依存してません! もっと別のことで悩んでるんですー!」


「なんだよそれ」


その瞬間、間が悪いことに始業の合図が鳴った。教授も入ってきたので、遥も逃げるように後で話すねと片手間にごめんと言ってのけた。俺は、遥の言葉に気を取られて授業の半分も聞けなかった。

こんなにももどかしいと思ってるのは俺だけか?


「来週はゴールデンウィークですのでお休みです。であるからして、再来週また授業でお会いしましょう。それでは」


教授が立ち去る瞬間に終業のチャイムが鳴った。そっか、ゴールデンウィークか。いろいろ起きすぎて忘れてた。そういや押崎さんとの会議でこのタイミングに合わせようって話になったのか......。



「いやー、もう5月かー。時間たつのはえー!」


「いや、まだ5月かって感じでしょ。俺的には6月くらいだと思ってたぞ?」


授業の方が時間経つの早いだろというツッコミはさておき、俺はまた遥を見つめなおす。

遥は自分の視線に気づいたのか、遥は微笑みかけた。だが、その後すぐに笑みを崩した。


「悩みがあるなら言えよ。こっちも気持ち悪い」


「この前、女の人助けたんよ。その人からショートメールが来たんよ」


「は? 意味わからん」


「猫助けようとした女の人が怪我してたんですよ。その人をオレが絆創膏買ってあげたんだけどさ、そのお礼ってことで連絡してきたんよ」


話の道すじは理解してきた。聞くに、相手は中々律儀な人そうだが......。なにが不安なんだ?


「それの何が嫌なんだよ。行ってやればいいじゃん」


「あのなぁ。こちとら、お礼目的でやってるわけじゃねえのよ。それでも電話番号を聞いてきたやつだぜ? 怖えよ。なぁ一途、一緒についてきてくれよ」


「なんで俺が」


「最近遊んでくれない罰です」


遥は頬を膨らませると、教室から舌打ちが数回聞こえてきた。リア充に思われてるのも少しいい気はしないし、空気が最悪すぎる。次の授業もあるし、一旦外に出るか。



「とりあえず外出よう。次の授業の人が集まってきてる」


「お、そうだな」


俺たちは荷物をまとめて教室を出た後、教室棟近くのベンチに座った。まだ日が当たって明るく、花もきれいに咲いている中庭のようなもので、ちらほらと愛を語る男女も見受けられた。俺たちはそんな雰囲気もぶち壊すようなギスギスとした空気感の中、遥は俺の手を握ってプラプラとさせる。


「ねえ、一緒にいこうよぉ。おねがぁい」


「そんな甘い声を出しても俺は一向に動かんぞ」


「じゃあさ、今日はオレが晩飯おごってやるよ? それでいいだろ」


配信まで時間があるから晩飯くらいなら付き合えるし、今日の俺の財布は給料日前ということもあって寂しい割には飯を用意していない。こいつ、それも分かってるんだろうな。こいつには敵わん。


「はぁ、まあいいでしょう。その子に会う直前まで付き合ってやるけど、その後は知らんからな」


「契約成立だな」


ショートメールに書かれた地図を頼りに俺たちは、遥が助け出した女性の家にたどり着いた。

この辺では少し珍しいマンション暮らしのようで、そこの4階にいるらしい。遥は玄関に設置してあるインターホンに番号を入力する。


「404っと。ピーンポーーン」


「口で言う必要ないだろ」


しばらくすると、エレベーターへ続くドアが開いた。どうやら、俺たちのことを認識したらしい。

俺はそこから立ち去ろうとしたが、遥が俺の腕をつかんで離さない。


「お前が掴むのは俺の腕じゃなくて、お礼したい相手のドアノブだろ」


「うるせえ! 旅は道連れじゃい!」


ぐいぐいと深淵の中へと入っていく。これは、俺も入って大丈夫なのだろうか。結局俺は404号室のドアの前まで来てしまった。その女性、困惑するだろうな......。


「来ちゃったよ」


「まあまあ、いいじゃない。 あ、開いた」

しばらくすると、ドアがガチャッと開く。その向こうには、髪の短めなラフなTシャツを着た女性が立っていた。女性は、遥に気付くとパッと表情が明るくなった。 この顔、どこかで見たことあるような気がする。


「来てくれたんですね。ありがとうございます! あれ? そちらの方は?」


みるみると表情が固くなっていく女性。本当に申し訳ない......。本当は二人きりを想定してただろうに。


「こちら、友人の小田倉一途です。不安だったんでついてきてもらっちゃいました」


「そうだったんですね。でも、別に取って食おうだなんて思ってないですよ。あれ? もしかして、コワモテの店長がいるコンビニの店員さんですか?」


女性はメガネをクイとあげて、俺をまじまじと見つめだした。俺もどこかで会ったのかと、首をかしげるも思い出せない。バイト先の客なんていちいち覚えてないけどな。


「ああ、まあ。あそこ有名なのかな」


「じゃなくて、以前に落とした学生証を拾ってくれた方ですよね? 自分、高知たかじ瑠衣るいです」


ああ? ああ......。確か、思いっきりすっころんで学生証を落とした人がいたような......。


「お前ら、知り合いだったのかよ。なら、話は早いな!」


「......そうですね。あなたにもお礼をしなくちゃですもんね。二人とも、上がってください」


女性に言われるがまま、俺たちは家に上がることになった。

やっぱり俺たちが思っているよりも世間というものは狭すぎるようだ。

高知瑠衣、彼女はいったい何者なのか。

彼女は一途と遥に何をもたらすのか......。

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