7:俺の友達と友達?
一途と遥が話しているとそこに現れたのは押崎さんでした。
3人の初会話はいかに!?
必修科目の講義室は文学科の連中がたむろしていた。
本を読んで一人を楽しむやつ、本なんて読まずにスマホばっかり見てるやつ。
そして友達とウェーイできるパーティの予定を大声で話してるやつがいた。
俺とハルはそれらのどれでもない。静かに自分のスマホを見つめながら話している。
「なあ、ハル。昨日推しの供給がなくて彼女のつぶやき見てんだけどさぁ」
「ごめん、今アリウマ記念で優勝してダンス見てるからしゃべらないで」
「それって、もしかして今流行りの?」
「うん、ウマドルマスター」
ウマドルマスターって聞いたことあるけど、ホントに流行ってるんだな。
女の子かわいいけど別に惹かれないなぁ。
「ああ、ウマ系アイドルを育てるやつか。俺は流行りわかんねえよ」
「流行りに乗らないとシンのオタクとは言えんぞ、少年」
ショーが終わったのか、スマホを縦向きに変えてこちらを指さした。
指してるけど、別の方向を向いてる。どこ指してるんだ?後ろを振り向くと手をもじもじさせて話をしたそうにこちらを向いている押崎さんがいた。
「押崎さん!? 文学科だったの?」
「あっ、うん。声が聞こえたから......。その、会いたいなって思って」
どういうことだ? もしかして、遥のファンだったりするのか? まあイケメンだもんな。
「一途ぅ、この女誰ぇ?」
「ウザがらみすんな。韓国語の講義で知り合ったんだよ。そういえば、ハルと会うのは初めてだよね」
「ええ。でもみんな知ってる。イケメンで有名だもん。ねえねえ、遥くんと一途くんはどれくらいのおつきあいなの?」
「お付き合いっていってもなあ」
俺が顔を掻いていると遥が異様に敵対心を燃やして俺に顔を近づけて仲良しアピールした。
「かれこれ、4年になるかな。あんなことやこんなこともしたよね?」
「はぁあああああ/////」
遥が馴れ馴れしくボディタッチをすると押崎さんは見てはいけないものを見たかのように顔を赤らめた。一体こいつの情緒どうなってるんだ? 俺をからかってるのか?
「ああ、ごち......。そうじゃなくて、実は一途くんに渡したいものがあって......」
そういうと彼女はキーホルダーを渡してきた。Vtuberエルちゃんをかたどったキーホルダーだった。
こんなグッズみたこともないんだけど? どこかのサークルのもの?
「これは? ガチャガチャではなさそうだけど」
「知り合いの同人サークルからもらい受けてたの。こっちに持ってきてたみたいだし、特に推しでもないから一番のファンである一途くんの手元にあった方がいいかなって思ったんだけど、嫌かな?」
初めて女の子からモノをもらった......。イイイイイイイイイイイヤッホオオオオオ!! 落ち着け落ち着け俺!! いやこれが落ち着いていられるかよォ!! 同人サークルだとすればこれは制作者が作らない限り二度と受注されない言ったら限定品。こんなものを逃していたとは俺もまだまだだな。
「ありがとう! 大事にするよ」
「なるほど、こいつと意気投合する理由が分かったよ。そういえば、押崎さんだっけ? 示し合わせてきたようには見えないけど、もしかして二人とも連絡先知らないの?」
遥がそういうと俺たちはハッとした。そうだ、連絡先。俺も知りたいけど、女の子に連絡先なんて聞いたことない。
「そういえば、知らないね?」
押崎さんが不思議そうに首をかしげる。俺も不思議。同じ授業なら交換しておかない?っていえそうなものを、こいつはしれっと聞いている。
「そしたらさ、同じ学科だし、同じ授業取ってるなら交換した方がよくね?」
遥が颯爽と連絡先を聞いている。俺にできないことをやり遂げる。そこに妬ましさとやるせなさを感じてしまう!
「逆にいいの? 私、邪魔じゃない?」
「何言ってんの? 友達に邪魔とかないじゃん。ほら、携帯貸して」
どんどん遥のペースに入っていく。高校の時もそうだ。友達のいなかった俺をつなぎとめてくれた彼の引っ張りがあるから今の俺があるんだ。
「一途もスマホ貸して」
そういうと俺のラインの画面にはすでに押崎さんの名前のアカウントが入っていた。両親と、ハルと、押崎さん。後、店長。
彼女はスマホを握りしめて、ぺこりと頭を下げた。やっぱりなんか怪しい。
「もしかしてあの子、一途に興味あるんじゃ」
「ええ? ハルだろ。ハルの連絡先聞けてうれしかったんだよ、きっと」
ハル言い合いをしていたら講義開始のチャイムが鳴った。どうしてハルは押崎さんが俺のことに興味あるって思ったんだろ。それに、あの変な絡みよう......。まさかな。
次回は遥の配信姿をお見せするよ!!