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63:有名人が入学してきた!?

気分新たに大学生活を送る一途と遥。

彼らの前に、新たな後輩が登場する。

講義後の食堂は並んでるのは当たり前なんだけど、新1年生が増えたことでより賑わいが増している気がする。


「先に席取っといてよかったね」


目の前に座る押崎さんは、丁寧に左手を添えて箸で掴んだエビフライをその小さい口にほおばりながら笑顔でこちらに話しかけてくる。確かに、新学期始まって数週間ということも相まって1年生が増えているせいで席に座れない人も見かける。


「1年生がすごく若く感じるんだが?」


「オレらもまだ若いって。バカ言うなよ一途」


一途は相変わらずきつねうどんで済ませている。栄養バランスが心配だ。かくいうオレも、カツカレーをフーフーしながら口に入れていく。今日の食堂のカレーもうまい。なんで、カレーってどこで食べてもうまいんだろう。


「それにしても、人多すぎやしないか?」


お昼ご飯を食べにというよりは、なにかに群がっている印象だ。文化祭で有名人が来るくらいの集まりようだ。集団の真ん中にはなにやらアイドルのような服装をきた女子がサインを書いているように見える。



「有名人かなんかか? 別にイベントとかでもないしなぁ」



「そういえば、今年はすごいのが入学してきたって先輩が言ってた気がする。あの子のことかな」


押崎さんが顎に手を当てながら右手でごはんを口に入れた。俺はスプーンを置いてずっとそのわちゃわやの方を見つめる。すると、女の子がこちらにやってきた。


「ごめん、お待たせ!」


ふと、彼女がそう口走ると、手を合わせてこちらを向いてウインクをしてきた。どうやら彼らから離れたいからオレ達を使いたいらしい。


「......遅いよ。速く食べるよ」


女の子は他の人たちよりも少し派手めなスカートとシャツを着て、オレたちのところへと座り込んだ。

一途たちはぼんやり顔でオレを見つめてきた。俺だって状況読み込めてないし。駆け寄ろうとした人たちは、さすがに知り合いとの会話に割り込めないと思ったのかだんだんとクモの子を散らすように消えていく。


「あ、思い出した」


「どうしたの、押崎さん」


押崎さんは目の前に座るアイドルらしき女の子をまじまじを見た後、彼女は身振り手振りで思い出してい始める。


「えっとねえ、チックタックで歌ってる子だ。たしか名前は」


「知ってくれてありがとうございます! 私は夢野舞華っていいます。まいまいっていう名前でチックタックとかUtubeで歌ってます! よろしくどうぞ!」


明朗快活で笑顔を絶やさない彼女は自己紹介をすると、ふぅとため息をする。

なんだか聞いてほしそうなため息だな。それを悟ったのか一途は少し顔を緩ませながら彼女に質問する。


「どうして君みたいな有名人が大学に?」


「親からの試練?みたいなもんです。歌続けたいなら大学に行ってくれって......。でも、私顔だししちゃってるからこんなことなっちゃうんで困ります」


困り顔も少し演技しているように見えてしまって、本当に困っているのかちょっとわかりにくい。彼女のパッと花が咲いたような笑顔だけは本物であると願いたいばかりだ。


「そうなんだ、大変なんだね!」


大変なんだねといいながら、一途は彼女の花のように咲く笑顔に夢中だ。オレは別に嫉妬したわけじゃないけど、面白くないので隣の一途バカの腕を指でつねってやった。へへへ、痛そう。


「そうなんですよ。遥さんみたいに素性もわからないVならよかったんですけど」


「ま、オレは知られなかったとしても可愛いから話題になる......。ん?」


は? 待てよ、こいつ今オレのことVだって言ったか?


「お、おい一途! こいつにオレの正体」


「は、ばらしてねええよ。てか、お前が先にボロだしてんじゃん!」


「あ、そっか。悪い」


「さっきからなんだよ。いきなりつねってくるし」


オレ達の会話を聞いてか彼女はカラカラと音をたてて笑いだす。え、なんか面白ポイントあったか?

きょとんとしていると、彼女は涙をぬぐう。


「ごめんなさい。やっぱり面白いですね! 遥さん、いや神野エルちゃん」


「君がどうして、オレのことを? 中身の性別も公表されていないのに」


「知ってるのは、私と一途くん。それに、ジン様とマネージャーさんくらい? 事務所内ってバレるものなの?」


押崎さんが問いかけるもオレは冷や汗が止まらずに冷静になれていない。


「いや、基本こっちから接触とかしない限りわからない。ジンさんだって最近顔知ったくらいだし」


「おい、じゃあその誰かから情報が洩れてるってことじゃあねえの? ちな俺じゃねえ」


一途はすぐに首を振った。押崎さんも同じくと言わんばかりに大きく首を振る。


「じゃあ、なつきさんかジンさんか」


「ううん、どっちも話したことないです。私が聞いたのは別の人。めちゃくちゃ抽象的でしたけど。同じ大学の男の子がエルちゃんだって。それで、かわいい感じのあなたに話しかけてカマをかけてみたってわけ」


この子、ずいぶんと鼻が利くというか運がいいな。この子の声の感じといい、Vでも全然食べていけるだろうし、もちろん歌の方でも人気なのもう頷ける。


「まじか、単純な推理で俺が見事ハメられたってことね」


「というわけで、これからよろしくお願いします! 大学生としてもVtuberとしても後輩として」


「はいはい、は?」


「あれ? あ、言い忘れてました! 私、実は最近Vデビューしたんです! 改めまして、ゆーらいぶ5期生 バーチャルサキュバスのむま・むうまです! よろしくな、センパイ」


彼女の笑顔がどんどんと邪悪になっていった。こ、こいつ天下取る気だ。オレや他の子たちをも追い越して、すべてを食らうという宣戦布告ッ! こいつは単に挨拶しに来たんじゃない! なんて恐ろしい子!!

夢野舞華、彼女の情報網とは一体......。

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