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61:後輩ってだれ?

午後の配信に向けて少し休憩しようとしていた遥に、寝耳に水な情報が飛び込んでくるのだった。

 今日はいい天気だ。入学式のおかげで学校も休みだし、配信も午後からにしてるから午前中はゆっくりできるな。溜まってたアニメとか見ようかな。それとも、マンガかな......。


「なんか、棚にマンガ増えたな」


 自分で言うのもなんだが、最近一途のせいでオタク化が進んでいる気がする。前まではマンガなんてあまり読むほうじゃなかったし、アニメなんて活動が忙しいのを理由にしてみてなかった。久しぶりにプリギャル一気見したときの感動が忘れられず、同じ声優さんがやっているアニメを探しているうちにいろいろつまむようになった。 


「とりあえず、ハンマーマンの続き読むか」


棚からマンガを取り出そうとしたその時、インターホンがなった。


「はーい」


「門田ですぅ」


げげ、なつきさんかよ。なんというバッドタイミング......。唐突に来たけど、いやなニュースじゃなかろうな。


「どうも、久しぶりですね。どうされたんですか?」


「まあ......いろいろとありましてぇ。どうですか最近の方は?」


「? 元気、ですけど。エルちゃんとしてはチャンネル登録者数がまた少し伸びてきまして」


「それはよかったですぅ。本日はたしか、雑談配信とお伺いしておりますが......」


「ええ、それがなにか?」


なんだか、お互いに探りあっているような感覚がして嫌だな。なつきさんとは初めてゆーらいぶに入った時からの付き合いだけど、珍しく彼女の言動が理解できない。なんで、対面できたんだ? もしかしてクビか? いやいや......。そんなことあるまいて


「実は、今日5期生の発表がありましてぇ」


「後輩? ってことですか」


「そうなんですぅ。いきなりで申し訳ないんですけどぉ......公式であげる動画に対してリアクション配信をしていただきたいなと思いまして......。大丈夫ですか?」


「わ、分かりました。でも、ただそんなことのためにここまで来たんですか? メールとか電話とかでいいような気がするんですが」


「それは、ついでみたいなものなので。本題はこれです」


というと、なつきさんは封筒を渡してきた。


「何これ」


「契約更新の書類なんですが、実は郵送するのを忘れててぇ......。明日までに提出しないとなんでぇ......。更新、お願いしますぅ......」


会社というより、芸能事務所のようなところだからオレ達Vtuberにこういう更新契約の書類があるのもおかしくはない。そういうのが来ないからないのかなと思ってたけど、なつきさんが忘れてただけかよ。それじゃあ、オレ知らぬ間に契約解除になってたじゃねえかよ。怖え......。


「明日までで幸いだったっすね。そうじゃないと、まじで詰みでしたよ」


「返す言葉もないですぅ......」


オレは渡された書類に名前を書き、印鑑を押して契約を結んだ。これでまた活動ができる。案件も受けられる。ふうと一息ついた後、なつきさんはその書類を鞄の中に入れた。そして、その後お菓子を渡してきた。


「これは、なんといいますか......。罪滅ぼしの春限定のさくらケーキですぅ」


「こ、こんなので機嫌とれると思わないでくださいね......」


正直、うれしい。こういう季節限定のお菓子は滅多に買わないから早く食べたい。でも、まだお昼にもなってないし......。そう思って、オレは出てきそうになるよだれを抑えて冷蔵庫に入れた。


「すぅ......。発表の配信は13時からなので、よろしくお願いしますぅ」


さすがに上がってもらってなにももてなさないのも失礼だと思い、冷蔵庫からお茶を出してなつきさんに手渡す。


「これから仕事? まだ、大丈夫ならお茶くらい飲んでいったら?」


「た、助かりますぅ。少し喉が渇いていましたのでぇ」


「ていうか一大事なのに、よくケーキとか買う余裕あったよね」


そう言って、オレはお茶でのどを潤していく。なつきさんはコップをぐいと上げて一気に飲み干して、少しした後口を開いた。


「そういえば、このケーキをコンビニで買いに行ったら一途さんに会いましたよ」


「ぐぇ? えほっ、ごほっ......」


お茶が変なところに入ってむせてしまった。なんでよりによって遥のバイト先なんだよ。あんま絡まないでほしいんだが......。


「また変なこと言ってないでしょうね?」


「いえいえ、彼はあなたのアベック。エルちゃんの活動にとってのパトロンですから。変なことなんて言ってないですよ!」


「は? アベック?」


「またまたぁ」


なつきさんはオレの体に肘で小突くけどそもそも、アベックってなんだよ。


「はぁ、飲み物だしただけ損した。帰ってよ、配信の時間ずらすなら今から準備しておかないと」


「はーい。それじゃあ、彼氏......じゃなかった。彼によろしくお伝えください」


そういうと、そそくさと玄関から立ち去った。ふうと一息入れて、ゆーらいぶの公式チャンネルを見ると、5期生発表のことは本当のようだ。シルエットだけが移されている。さっそくそのつぶやきをみんなにも共有した。その後、自分がリアクション動画を撮るということを言った。多くの人が楽しみだとコメントしてくれる。


シルエットを見る感じ、女子2、男子1の3人が加わりそうだ。一体どんな子がでてくるんだろう。


後輩がどんなキャラか今か今かと楽しみにする遥の一方で

一途は、店長に言われてバイト先を飛び出し、大学へと走るのだった。

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