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5:俺のバイト

一途パート:一途は大学での学業とは別に、アルバイトをしている。

彼のアルバイト先はコンビニ。今日もレジ打ち、品出しに精を出している。

そんな彼のバイト先には風変わりな店長がいるという。

 今日は土曜日。大学の講義もないのでコンビニでのバイトがフルで入っている。

ああ、でもこないだのハルの女装が気になる!! え、なんで女装してたの? テンパってコスプレとか言っちゃったけどあれでよかったのか?


ていうか最後の方でめっちゃカッコつけてなかったか、俺。

虚無にレジ打ちしながら悶々とする俺に店長がお尻を触ってきた。


「ちょっといっくん!? しゃきっとなさい、男の子でしょ!」


「すんません、てんちょー。にしてもこのコンビニ、ちょいと利用者少なくないですか?」


店長は自分のスキンヘッドの頭を軽くなでておどけた。


「そうなのよぉ。平日はアンタ達みたいなケツの青い学生がくるんだけど、休日になると地方のコンビニはこんなもんよ。それでもちゃんとしてちょーだい」


そういって店長は俺のお尻を二回ほど軽く叩いた。これ、セクハラで訴えられないかな?

レジ周りは暇なのでドリンクのラベルを正面にしたり、パンコーナーの整頓をして過ごした。


時々レジ対応しながらとうとうお昼が回った。


「いっくん、もうお昼なんだから先上がっていいわよ」


「うっす。じゃあお言葉に甘えて」


そういって俺はスタッフルームに置いたバッグから財布を取り出してパンを3種店長にレジ打ちしてもらった。 スタッフルームの中で食べるパンというのは少し罪深い感じがする。


「で、あんた朝から何に悩んでるわけ? オネエさんに話してみなさい」


「いや......。なんというか、言語化するのが難しくて」


「人間ね、ため込んでちゃ気力なんて持ちやしないわ。アンタみたいな童貞が一番いろんなもん抱え込むの。性欲も、恋愛の悩みも、学校の悩みも飲み込んじゃうの。なにか言いたくなったらアタシに言ってちょうだい。これでも人生経験豊富なのよ」


まあ、丸坊主オネエなんだから紆余曲折あるだろうよ。


「まあ、はい」


メロンパンをボソボソとかみしめながら会話してたら休憩が終わり午後の業務へ。

午後もこれといってなにもかわらない。荷物がたまにくるくらいだ。暇そうにレジで待機していると入り口から見知った女の人が現れた。


押崎さんだ。


押崎さんもこちらに気づくと目を丸くして会釈してくれた。ジュースとお菓子を持ってニコッと笑って紙を渡してきた。


「これと、一番くじ10回引かせてください」


「かしこまりました」


一番くじは面倒だけど、押崎さんならいいかなと思った。押崎さん、このアニメ好きなのかな?


一途いっとくんここで働いてるんだね! 私びっくりしちゃった」


「そうだね。あまり同じ学生に見られないように遠めにしたんだけど......。見つかっちゃったか。あっ、ドンドン引いて行って」


EやらDやらあまり嬉しくない景品が続く中、2つだけB賞の文字が現れた。B賞というとアニメの主人公とライバルの大きめのフィギュアだ。


「小さい子をお迎えしようと思ったけど、嬉しい誤算だね」


「大荷物になっちゃったけど大丈夫?」


「うん、平気。自転車のかご二つあるし。じゃあ、また講義でね」


「あ、うん......」


連絡先、また聞けなかった。そんな「ていうかラインやってる?」って流れるように聞けるわけないよ。


「もしかして、あの子が悩みの種? 服装から地雷臭がするけど大丈夫?」


「見た目で判断しちゃあだめですよ。てんちょー。それにあの子のことじゃなくて、友人のことで」


「喧嘩?」


「いや、でも会うのが気まずくなりそうで。この子なんですけど」


そういって俺は彼と大学に来て初めて取った入学式の写真を見せた。


「あんら、かわいい女の子......?」


「男っす。しかもこの間女装したところ見ちゃって」


「ずっと男だと思ってたパターンではなく?」


「高校からの知り合いなんすけど、高校の体育であいつにモノがついてるのは見てるんですよ?」


「でも、友達なんでしょ?」


「はい」


「なら、答えは一つじゃない。自然に接しなさい。どんな趣味を持っててもその子はその子でしょ。むしろ、いいじゃない」


でも、このドキドキは違う気がする。もっと奥の奥でつっかえているなにか。スマホをしまおうとしたらバイブがなった。遥からだ。


「な゛っ゛!!」


そこにはエルちゃんがFPSをするときに着る勝負衣装をきて、ノリノリな遥がいた。脳震とうが起きそうだった。俺の脳をぐちゃぐちゃにさせる男、霜野遥......。あれ? こいつの胸元にある缶バッチ、神野エルちゃんのグッズなんだけど、デザインが初期案に似てたような......。気のせいかな?


「あらあら、これはアンタの性癖心配になる写真だわ。確かに強敵ね。頑張れ」


ため息が夜の田舎道にこだましていくような静けさに呑まれながら、自転車でコンビニを後にした。

小田倉一途がバイトをしている間、神野エルこと霜野遥はゲームを練習する。

すべてはみんなのため、そしてずっと応援してくれている【一途な一号】に恩返しをするために



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