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49:ドキドキ、コンビニ危機一髪

来たる企業案件のためマネージャーとのやりとりに専念する遥の一方で一途はこれからも遥=神野エルを応援するためアルバイトに励みに行く。今日店長は休みで鷹野仁とペアを組むことになってしまった。果たして彼と親交を深めることができるのか?

遥のことが気になるけど、とにかくバイトに集中しないと!


「お疲れ様です!」


「お、時間通りだね」


いつものコンビニエンスストアには店長ではなく鷹野仁がそこにいた。

いままでより少し朗らかで優しいお兄さんといった雰囲気だ。


「今日店長は?」


「今日はぼくが一緒の日だよ。店長ばかり働いてるのも可哀想だし」


そういえば、俺も店長もジンさんもいなかった文化祭ってこのコンビニどうしてたんだろ。


「そういや、文化祭初日に店長と来てましたよね。ほんとに先輩後輩ってだけ? それにあのときは誰がここ店番してたんです?」


「そりゃ、別の子だよ。ぼくも見たことないけど......。君とは別で働いてる子じゃない? それで、ぼくと藤宮さんとの関係だっけ? 普通にあの時は連れていかれただけだよ。別に、やましい関係でもなんでもないよ」



ふーんと思いつつ、賞味期限切れの商品を回収しに周りに行く。どれだけ、おいしいものを作っても最終的に売れ残ったら捨てられるなんて、ひどい話だよな。まあ、たまにもらえたりしてるから食べ物には困ってないけど......。


「ところで、我が弟よ。ハルちゃんとどう? 進展した?」


は?この人は何を言ってるんだ? とは思ったものの、この人の目は依然として澄んでいて嘘やいじるために言っているわけではなさそうだ。


「はぁっ!? お、弟?」


鷹野は親指を立ててうなずく。なんかこの人のこと許してからからだいぶキャラ変わったな......。


「今や私たちは同胞なんだよ? 兄弟も同然、でしょ? でも、僕の方が招待を知っていたのが早いからお兄ちゃんだけどね」


「兄弟とか......推しが同じってだけでしょ」


「僕は元々、同じ人を好きになる輩が好きじゃなかった。いわゆる同担拒否ってやつ? でも、きみたちに出会ってから誰かと推しを分かち合うってのも悪くないかなって......」


この言葉は、わかりあえたと思っていいのか......?

鷹野は自分の両手いっぱいに抱えた賞味期限切れになったパンを受け取っていく。前はここまで俺によくしてくれなかったのに今では隣でにこやかに接してくれている。ちょっと気持ち悪いけど、同じ「神野エル」を愛した人なら手を取り合ってもいいのかもしれない。


「まあ、もう変なちょっかいを出さないってならいいんですけど。元からそんなにしてはなかったですけど」


「うん、ぼくおにいちゃんだから我慢できるよ」


「弟ができた小学生かよ」


「そういう誰にでもバッサリと突っ込む性格、嫌いじゃないぞ! とにかく、これからは遥との関係については改めていくから安心してくれ。じゃあ、弟分よ! 商品を並べてくれたまえ!」


ドアが開けると必ず「いらっしゃいませ」といういい声が響き渡る。さすがはジンさん。俺も追従して「いらっしゃいませ」とお客を招き入れる。トラックから来たおにぎりやサンドイッチが沢山入った箱から品物を取り出してきれいに並べる。一番下の段を整理していると一人の女性が声をかけてきた。


「精が出るね。一途いっとくん」


「ううぉっ!? 押崎さん? いらっしゃい......」


そこには、少し寒さで頬を赤らめていた押崎さんは同じ目線で微笑んでくれていた。ちょっぴりびっくりしたけど、バイト先にきたの久しぶりじゃないかな?


「今日寒いね! あったかい飲み物、買いたくなっちゃって......」


「そうだね。 寒いよね......」



なんかないのかあああああああああああああああ! 俺は! しゃべること全くないなんておかしいだろ! もっとしゃべれ俺! 口を開くんだ! ほおら彼女も困ってるぅ!


「一途、誰この子? もしかして彼女とか?」


鷹野の背の高さが思った以上に座っているせいもあってめちゃくちゃ高く感じる......。え、名に怒ってんのこの人。 鷹野の言葉に押崎さんは少し顔を赤らめて強く否定した。


「ふぇっ!? 彼女? 違いますよ!? 違う違う! 実は一途くんにお願いがあって......」


「俺にお願い?」


「そう......。買い物を手伝ってほしくて、だめかな?」


買い物? なにを買いに行くんだ? もしかして、俺へのクリスマスプレゼント? いや、俺にプレゼントしたいなら俺に聞かないはず......。多分、ジンさんにあげたいとかかな?


「ジンさん関連?」


「そ、そう! JIN様クリスマスプレゼント交換会ってのが開催されるらしくて......。プレゼント紹介された人にはJIN様新作グッズがもらえるの!」


キラキラした彼女の瞳はいつもの押崎さんだ。彼女らしい笑顔が引き出せる人が今近くにいるって言ったらびっくりするだろうなぁ。



「あー、そういえば...... あっ」


「ん? どうかしたんですか?」



「あーいやいや......。 ぼ、ぼくもそのジンさんて人? 聞いたことがある気がするなって」


めっちゃ嘘下手すぎだろ! もっとなんかないのかよ! しかも目動揺しすぎだし、こんな人がジンなのかよ。


「へー、男性でジン様ファンて珍しいですね。うーん、でもなんか声に聞き覚えがあるような......」


そらそうだよな! ずうっとジンさんの配信聞いてるもんね! こいつはまずい! 彼女のためにも、なによりジンさんのためにもここは俺がなんか気を利かせて話をそらさないと!



「あっ、鷹野さん。レジお願いしていいですか? お客さんきてるみたいですよ」


「あっ、はーい! すみません、今行きますね」


ふぅ、なんとかなった......。お客さんが来ててよかった。


「手止めさせて、悪いことしちゃったかな。後で謝ろうかな」


「いいよ、俺たちが悪いんだし......。後で押崎さんのことは言っておくし。ところで買い物でしょ? 行くよ。一緒に選んでジンさんを喜ばせよう」


俺ができることならなんでもしよう。 話が変えられるなら彼女とも買い物へ行こう! これは、ジンさんを守るためのデートだ!


「うん! じゃあ、来週とか大丈夫?」


「うん、特にないよ」


彼女はあったかい飲み物コーナーからジュースを取り出してそのまま俺がレジで買い物を済ませて帰らせた。彼女は仁さんに会釈した後、俺に手を振ってコンビニを後にした。


「ちょっとヒヤヒヤしちゃったな」


「しっかりしてくださいよ。身バレしたらあの子になんていうんすか。彼女めっちゃジンさん大好きな子なんですよ?」


「夢は夢のまま、徹底しないと与えている側として彼女たちに失礼だからねえ。今日はありがとう、さすがは自慢の弟だね」


「いや、だから弟じゃないですって。さっきからなにいってんすか」


「ごめんごめん、最近読んだ漫画が面白くてつい」


意味の分からないことをつらつらと並べるあたりジンさんぽいというか、ズレてるというか......。まあでも、悪くない人なのかなとは思ってる。もう少し仲良くなれていけたらいいな。






なんとなく仲がよくなった(?)鷹野と一途。そして押崎さんともデート(ただの買い物)に行くことを約束した一途だったが、彼の平常心は保たれるのか??

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