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3:俺の純情

一途パート:大学生活を推し活に捧げる小田倉一途に恋の受難が舞い降りる!?

今日は一人で授業を受ける日だ。3、4限と連なって第二外国語として選択した韓国語だ。だって、日本語と文法とか似てる単語あるし簡単そうなんだもん。


講義室で教師を待っていると隣に可愛い系の女の子が声を掛けてきた。


「隣、いいですか?」


髪をかきあげてニコッと笑う彼女にグッときてしまった。というか、女性とちゃんと話したことないから少し困る。


「ああ、はい。いいですけど」


そういうと、隣に彼女は座り始めた。彼女は白と黒で統一されたいわゆるゴスロリっぽい服装で凛として座っていた。


「そういえば、今日いつもあなたの隣にいるかわいい子いないんですね」


「えっ? もしかして遥のことですか? 彼なら今日いないですよ」


しどろもどろになりながら俺が答えると彼女は驚いた表情で答えた。


「その子、男性だったんですね。にしてはかわいすぎません?」


少しおどけるように俺に問いかけてくる。まあ確かに自他ともに認める可愛い系男子だ。


「高校から男女ともにモテてましたからあいつ。でも意外と声低いですよ」


「なにそれ推せる」


少し食い気味に彼女が何か言ったように聞こえたがよくわからなかった。それにしても彼女、めちゃくちゃ話しやすいなぁ。そう思っているとチャイムが鳴った。彼女はバッグの中から下敷きとノートを取り出した。下敷きなんて小学生以来だなと思ったら全然違う。あれはポスターをクリアケースに入れて下敷きにしているんだ。ポスターはVtuberのポスターみたいだ。なるほど、通りで話しやすいんだ。じゃあ、話しかけたのも同類だと思ったから?


「それでは授業を始めます」


チャイムと共に先生が講義室に入ると、彼女はスンと前を向きなおした。俺はそんなどころじゃない。韓国語の興味から徐々に彼女への興味に変わっていってしまう。これでは授業に集中できない。一度落ち着こう。ノートに何度も記号のようなハングルを書いていく。


「今日は場所についてお話したいと思います」


基礎に近いことを何度もやっているので、なんとなく黒板の文字も読めるようにはなってきた。意味は分かんないけど......。こうやって成り立っているんだって分かれば、韓国語は楽勝って言うのはあながち間違いじゃないみたいだ。そうこうしているうちに終了のチャイムが鳴った。

小田倉一途、勇気を出すんだ! 俺自身の歴史上で女の子と話すチャンスじゃないか!


「あのもしかして、Vtuber好きなんですか?」


思い切りよく聞いてみた。すると彼女はニコッと笑って見せた。


「そう! 実はラウンジでいつも大声で、その遥さんと話しているの聞いて同胞だと思ったんです。それで話したいなと思ってたんですけど、こんなところで会えるなんて。あっ、ごめんなさい自己紹介忘れてた。押崎香菜って言います。一年生です」


「あっ、小田倉おだくら 一途いっとです。俺も同じ一年生だし、タメ口でいいかな?」


「う、うん。いっとくんはVtuberでは神野エルちゃんが好きなんだっけ?」


は、初めて女の子に下の名前で呼ばれたぞ! こ、これは少し昂ってしまうっ! 

落ち着け、小田倉一途......。ただ、名前で呼ばれただけじゃないか。


「大声で言ってるからそら知ってるか。うん、初めて彼女が動画をアップしたころくらいからのファンだよ。そういう押崎さんは?」


「このJINって子なんです!」


写真には眼鏡のかけたイケメンが立っていた。

彼女が持っていた下敷きと同じ人だ。彼女はその写真を指さした後、俺に笑いかけた。


「かっこいいでしょ?」


「ああ、エルちゃんがよく話している人だ。こんな見た目してたのか」


彼女との会話はまたもチャイムによって阻まれた。くそ、もっと話したかった!!

4限が終わった後、彼女はすぐに帰り支度を済ませていた。きっと、推しのジンさんの配信があるのだろう。きっとそうに違いない。絶対に俺の話がつまらなかったとかそういうのじゃない。

......多分!!


「じゃあ、またね」



彼女が恥ずかしがりながらも手を振ってそう言ってくれたので俺も手を振り返した。

またね......か。まあ、今日はこれくらいということにしておこう。


「俺も帰るか」


 自転車を取りにいったときにはもう16時を回っていた。今日はどうしようかな。また遥の家に突撃お前の晩御飯でもしようかな。そう思って自転車で坂を下りていく。爽快だ。


ーーーーーーーーーーー


 晩御飯の材料を買って遥のアパートの階段を駆け上る。2階の3番目の部屋が彼の部屋......なんだが、そこからやけにかわいらしい服装の女の子が現れてルンルンと鼻歌を歌って外へ出て俺に目線が来る。彼女はやけに青ざめていく。事件はもうすでに起きていた。彼女は男のような低い声で俺の名を口にした。


「一途、どうしてきたんだ......」


「その声、もしや我が友 霜野遥なのか?」


彼の女装の違和感のなさにあっけにとられた俺は、親友の秘密の趣味を知ってしまったドキドキ感と自分の推しに少し似てるドキドキとが入り混じって混乱していた。

女装した遥に出会ってしまった一途は困惑していた。

でも、それ以上にその恰好に違和感がないことに混乱していた。

遥もまた、突然出てきた一途に青ざめていた。この世の終わりである。

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