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18/122

18:女子二人(?)でデート三昧

デート当日になって緊張する遥。

そして押崎さんもまた少し緊張していた。

一途いっとの一押しがあったのか、あれから押崎さんからデートの誘いを受けるとラインが来た。

今日は控えめに水色ワンピースで来たけど、女子っぽくみえるだろうか。


ショーウィンドウにうっすらと映る自分の前髪をそろえていると電話がなった。名前を見ると履歴に入れたばかりの押崎さんの文字が並んでいた。少し長くなった襟足をかき分けて通話ボタンを押す。


「もしもし?」


『あ、どうも。押崎です。今どの辺ですか?』


「カキツバタ通りのおしゃれな服やさんのショーウィンドウの前だよ」


『JUですか?』


オレは看板を捜して頭をあげてあたりを見渡した。自分のいる場所を確認して「うん」と一言返しながら押崎さんらしき人を探す。同じタイミングで電話をしている女性。すると、きょろきょろとあたりを見渡しながら電話をしているフリルの多いスカートを履いた女性がこちらに近づいた。


「今日の服ってフリルスカートだったりする?」


「えっ!? ええ、まあ。この辺にいるんですか?」


「目の前にいるよ」


後を向いている彼女に肩をポンと叩いて気づかせてあげた。押崎さんは少し動きも思考も止まっていたけどなんとなく理解したようで言葉を発し始めた。


「......遥くん!?」


「そうだよ。ちょっと恥ずかしくなってきたし、早く行こう?」


「いや、ちょっとクオリティ高すぎない? 別人かと思ったよ」


「あんまりジロジロ見んなよ......」


彼女はオレの周りをグルグルと回っては写真を撮ったりして考え事をしていた。


「やっぱ、逸材だわ。遥くん......。とにかく、買い物もいいけど話とかしたいしカフェに行かない?」


意外にも押崎さんはオレの女装をすんなりと受け入れいるようにも見える。というか、楽しんでないか?

押崎さんに連れられ、俺たちはカフェの前へとたどり着いた。


「ここ、女の子しかいないじゃん。怪しまれないかな......」


周りの目線を気にしながら歩いていると押崎さんはオレのお尻を叩いて小声で諭した。


「オドオドしてたら怪しまれるよ! シャキッとして」


確かにそうだ。ここでオレは挙動不審にしていたら不審がられるに決まっている。

オレは別に恥ずかしいことをしているわけじゃない。似合う服を着たいだけなんだ。それがただ、女装って言う表現なだけで、普段にジーンズとかも履くし、野暮ったいズボンも履く。ファッションに疎い奴が来そうな赤いチェック柄のシャツを腰に巻いたりもしている。


窓際の席に座るとウエイターがメニュー表と水を2つおいて立ち去った。

特に変に思われているそぶりもなく、静かにメニュー表を眺める。


「デートとは違うドキドキがあって案外楽しいね!」


押崎さんは思っているより楽しんでいるようだ。それはそれでいいんだけど、オレはなんだか胃がキリキリする。押崎さんはイチゴパフェ、オレはコーヒーを頼んで待っていると、さっそく俺の分のコーヒーが届いた。大人な匂いが鼻をくすぐる。少し和らげるようにもらった砂糖とコーヒーフレッシュを少し入れてゆっくりと口に含む。一息ついていると彼女はパフェ越しにオレの写真を撮っていた。


「ほんと、人を写すの好きだな」


「う、うん。なんか、一途くんと不思議な時間を過ごしたからか、いろんな人の顔を写真に収めるのが好きになってきたんだよね。それで、思い出をいっぱい残すためにも遥くんの可愛い姿もかっこいい姿もいっぱい撮りたいなって思ったんだ」


「そっか。もっと一途を撮って困った姿見たいし、オレもいっぱい撮って欲しいよ」


「ホント!? じゃあ、友達の印に一緒に写真撮ってもらっていい?」


「いいよ。後でその写真しょうだい」


そういってオレ達はスマホのカメラに収まるように距離を近づけて写真を1枚パシャリと撮った。もらったその写真に写るのは明るい笑顔の押崎さんと女装姿のオレが映っていた。まるで女友達の写真のようにも見えた。女の子の友達とこうやって話を写真をとったり話したりすることで少しずつ仲良くなれるのかな。オレの周りには友達なんていっぱいいた。女子なんて向こうから声を掛けてくるなんてザラにある。でも、こうやってありのままの霜野遥として接してくれようとしている押崎さんや一途が特別で、愛おしい。


会計を済ませてしばらく今日のコーディネートの話をしたり、かわいい服について語りながらウインドウショッピングを楽しんだ。彼女のフリルファッションのセンスは少し自分に似たところがある。Vtuberとして女装し始めたのが始まりだったけど、今はそういう恰好をしている時が一番楽しくいられるんじゃないかとも思ってる。


「押崎さんのおすすめの服屋さん教えてよ」


「ああ、うん。きっと遥くんも気に入ると思うよ。後、メイドコスとか持ってる? 興味あるならそっちもいかない?」


「マジで!? 気にはなってたけど、手は出したことないんだよ! 俺のコスプレそれにしよっかな」


俺たちの会話は買い物が終わって電車に帰るまで続いた。

二人は無事、仲良くなりました(?)


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