第五話 grand person…
偉大なる使徒
日本 神奈川―― A.M10:50 11月 28日
「おーしまい…っと」
ついに“レリエル”との決着が着いた。長く、かなり苦しい戦いの疲れか、彼女も息を切らしている。
「ふぅー……ちょっとー!! 出て来てもいいわよー!!」
side change
「……トウマ、行くぜ」
凄まじい光景だった。人間が“天使”の力を行使し、“天使”を打ち倒した。その光景に、見惚れていた自分……。正直な話、これは“期待”とも取れるような感情だ。だがそれはそれ。今は“彼女”の元へ行こう。立ち上がり、トウマを立ち上がらせて、“彼女”の元へ行く。
「そ、空に“天使”がいない……」
「そういや見ねえな……」
荒廃したビル群、カラスの鳴き声、瓦礫の山、……人の死体、曇りで太陽の見えぬ空。
まるで、ここは“地獄”である事を象徴するかの様な光景だ。一歩、一歩と、重い足取りで進んで行く。空を見上げても、“天使”も、“Angel blood”も、あたかも、そこには存在しなかったかのように。
数キロ先の彼女の元へ、何十分位かで到着する。
「あら? 早いじゃない」
「小走りしたしな……」
また、歩き出す。少し話をしながら、歩いて行く。
「“天使”って、何なんだ?」
「急に政府のブラックボックスに突っ込むわね……」
「政府……何か知ってるんだな……」
「今から行く場所で教えてくれるわよ」
政府が絡んでいるのは大体分かっている。あの“都心部”に貧困層をブチ込んで天使の監視をさせているのも、政府であるのは知っているのは分かっていた。
「今から行く場所は何処だ……」
「お楽しみよ、それは……」
少し、歩いていると、トウマの顔の血の気が引き…
「ウッ!?」
トウマは口を抑えた。唐突な出来事で、リョウは冷静さを失い…
「どうした!? おい!?」
「そ、それ……」
「っ……?」
「!!?」
――――其れは、人の死体に機械の様な“ソレ”が纏わりついて、歪に“合体”している。
「――――キッ……■■……ガヒッキッ」
「うっ!?」
思わず口を塞ぐ。グロテスク過ぎる光景は脳を刺激し、更に吐き気を催させる。
「……“なり損ない”じゃない。」
「なり……損ない……?」
「“天使”の体の一部は剥げ落ちるのよ…不要な部分が再生しようと死体や生きた人間に取り付く……」
訳の分からない話。現実が齎す残酷な光景。死臭が激しくなってゆく中で、“地獄”がより一層酷くなってゆく。
「現実は酷な物よ……今は耐えなさい……。」
「ああ……」
今すぐにでもこの世界から逃げ出したくなる。心はいつまで経っても弱いままだ。足取りも重くなりつつある。
そこからかなり歩き、建造物の多い地区に着き、“彼女”はしゃがみ込み……
「まだ残ってたのね……」
そこの瓦礫を退かせた。するとマンホールが出てきた。“彼女”はマンホールの蓋を開け、そこに入る様自分達に奨める。
「こっから直接目的地まで行けるわ……」
「なぁ……」
「何よ?」
「名前を教えてくれよ……」
「……“朝野 アスカ”」
――――この出会いは、後の“■■”となるのは、後のことだ