第四話 Way……
日本 神奈川―― A.M10:00 11月 28日
「さぁ、続きを始めましょ」
「――……貴様」
私は、笑顔で“アイツ”と同じ言葉を返す。実にいい気味だ。
「あら? “使人”を見るのは初めてじゃないんでしょ?」
「――………」
“レリエル”はこちらを見つめる。私がいつ、“レリエル”に対して攻撃するかは……“まぁ、いいでしょう。”
「行くわよ……」
「――!!」
side change
“レリエル”にとっては理解不能だった。何故、使人とは言え、闇雲に突っ込んでくるのか、頭の中の考えを全て否定させられたかのような彼女の行動に疑問詞しか沸かない。
「ふっ……」
――――刹那、彼女の姿は“レリエル”の前から消えた。
「―――なっ!?」
「―――何処だ! 何処にいる!!」
辺りを血眼で見回す。だが、そこには殺すべき相手はおらず、ただそれらは全ては空回りするのが現実だ。
(―――何故だ! 何故分からない!?)
天使の目はその空間の周波数を感じる事が出来る。ただただ視力が良い訳では無く、ステルス等も見破れる目だ。
それを持ってしても、“彼女”は見えない。混乱し、益々“レリエル”は苛立ちを見せる。
「―――姿を……見せろォォォォ!!」
辺り一面に光弾を放ち、爆発させてゆく。瓦礫が一面に飛んでゆき、大地もグチャグチャになった。
「―――グゥぅぅ……何処だぁ!」
“何処にもいない” 殺すべき相手が見えないだけでここまでの怒りを抱くものだろうか?
“周りの物なんぞ関係ない。壊せ。”だから叫ぶ。だから滅ぼす。そうしてきた全てを否定されるように
女は、姿を見せない。
「………疲れちゃったの?」
「――――!?」
突如、目の前にあの女が現れた。一瞬の刹那、理解し切れない速度で脳がオーバーヒートしそうな程の“怒り”がまたも溢れる。
「――――ぶっ殺してやる……」
「……?」
「――――侮辱した…罪は…重いぞォォ!!」
「フフ……」
またも消えた。しかし、先程と違い……
「――――ガフッ!!?」
打撃、斬撃、果てに光弾、姿が一瞬見えれば、それを掻き消すように連打の繰り返し。
正にそれは疾風怒涛の勢いだ。“レリエル”の肉体を確実に破壊している。
「――――グゲッァァ!?」
奇声のような悲鳴を上げ、ボロボロのビルに激突し、激突した箇所に塵や小さな石が舞う。
「私の中の“天使”については知ってるかしら?」
「“イスラフェール”何でも音楽の天使らしいわ……」
「だから <役割>も“それより”な力って事……」
石の落ちる音と共に“レリエルは立ち上がった。その翼は、最早ボロボロの雑巾のように、曲がり、根本から取れかけている。機械と臓物の様な物しか最早見えない。
「――――グゥぅぅぅ……!!」
「もう“お開き”にしましょう」
「――――グガァァァァ!!!」
“レリエル”は <役割>も、光線も行使する事なく、ただ怒りのままに“彼女”に突っ込んでゆく。“殺してやる。”この一心だけで動くソレは最早、“天使”とも、“化物”とも言えないものと化していた。
「 <ああ、主よ、音を奏で給え。>《Domine, ludens Tamae et sana.》!!」
鐘の音と、ラッパの音が重なり合ったかのような音は、“レリエル”に“安らぎ”と言う名の“地獄”を与える。その音は、遠くにいる筈のトウマや、リョウにも聞こえた。
「――――――――――――!!」
レリエルは声にならないような悲鳴を上げる。……だがリョウやトウマにはそこまで影響を与えていない。どちらかと言うと、本当にそれは“安らぎ”のように感じる
“レリエル”はやがて、瞳から光を失い、翼も腐り落ちてゆく。そしてそれは肉体にも影響を及ぼし、その後……
“レリエル”は、塵一つ残さず、消えていった
「おーしまい……っと」
そこに佇む者は、一柱の天使のように見える。
『 思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。』………(マザー・テレサの名言)
哲学的なのが好きです。