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プロローグ

       

 そうだな。一言で言えば…イカれてる。誰もがその感情をいつか感じるだろう…例えば、殺人鬼を間近から見れば? 嫌でもこんな感情を抱く……だが、俺が思うに元から人はそれ以前にイカれてる。俺はそう思う……だから何が言いたいか? それは……



 これは、そんなイカれた“人間”である“俺”が、“俺”であろうとする。そんな物語だ。



side change



 2019年の5月2日、東京から謎の生物が地下から地上へと現れ、それらは同時に全世界でも突如として出現した。


 人の作りし文明と叡智は尽く破壊しつくし、生命の尊厳は知らぬがごとくに蹂躙するそれらに対し、人間もまた、様々な兵器を使い、抵抗した、がそれらには余り決定打になる事も無くただの無駄骨だったのだ。


 しかし、それらはある『統制者』たる個による『宣言』により、睡眠状態へ移った。人間達は巨大で、絶対的なそれらを畏怖し、こう名付けたのだ、『天使』と



 それからのこと、2023年となった現代。かつて以上の科学力を手に入れ、更には人の平均寿命も格段に上がった…………この時『人間』は平和ボケを極め、災厄の幕が開こうなどと誰も思わなかったのだから…




  日本 神奈川――P.M12:00 11月 27日



 ――またこれだ


「おい、今日も金貸してくれや」


 ――あの野郎……


「な、なんで……」

  

 ――……………


「テメェ……金出さなきゃどうなるか分かってんだろうが……オイ…!」


 ――……!


「ハッハッハッハ!あんがとよ。またよろしくな!」


 ――……またこうなっちまったのか…最悪だ


「…………大丈夫か?」


 ――また助けられなかったのか…俺は…


「い、いいんだよ……」


 ――クソッタレが……


「…………」 

 

 ――……


 その時の俺はあいつを助けようと思った。


 ただ『いつものように助けられない』助けようと思うと、まるで蛇に睨まれたかなように、体が動かなくなる。特に今の様に圧倒的な力を持つ者による暴力と金を後ろ盾にした脅迫ならば、尚更動けない。


    ※※※ ※※※


 これはそもそもの話、今のこの時代では『天使』がもたらした破壊行為により、世界の貧困層は増加し民衆達は彼らに対する差別意識を向けるようになった。


 それたらしめる理由としては勿論彼らに対する目線もあるが、何よりも彼らの住む場所の半分は『天獄』に送られた事にある。


 『天獄』 かつて起きた天使たちによる災害の後、『統制者』の『宣言』によって天使達は破壊を止めた。


 その後、かつての『東京』や全世界の首都で眠りについた。それらの場所に皮肉を込めてこう呼んでいるのだ。だが、実際に『天獄』を見た者は少ないらしいが……


 そして、『宣言』とは、地下にまだ潜んでると思われる『統制者』が引き起こすサイレンのような音であり、この音はどうやら人体に対しては影響は及ばさないものの、どうやら一部の人間にはこの音が地獄から聞こえる悲鳴を聞いているかのような嫌な気分になる者もいるとのことだ。


 何よりもこの場所を『普通の人間』が忌み嫌う理由は大気中に謎の気体が発生しているからだ。 これは通称『Angel blood』と呼ばれる直視できる赤い気体があるからだ。


 これらがもたらす影響は人体の『突然進化』なのだ。これにより、肉体の細胞は瞬時に進化を繰り返す。だが肉体がついて行ける筈もなくすぐに死んでしまう。そのためこれらが発生してる場所ではガスマスクや防護服が必ず必要となる。


 だが、それと同時にこの気体は科学を発展させ、人の平均寿命を引き延ばした一つの奇跡でもあるのだ。


 何故か? これを直接大量に吸えば死ぬが、多少の量ならば繰り返し進化しない。つまり、一度きりの進化により、寿命が延びるだけですむのだ。


 科学に関しては元の『天使』が機械と生物の中間体であったため、そこから出た気体や機械部分を何とか改良することに成功し、かつて以上の科学力を得たのだ。


 とは言え、人の住めるような環境で無くなった『東京』や他の世界の首都に行くのを拒む者の方が多い。


 その上現代の差別意識の高い『普通の人間』達はそれ故にホームレス等を見掛ければ彼らに暴力を振るう。その後は警察等に通報し、『天獄』へ行かせたり……

 

 これは現代の差別意識の高い世界の指導者達のとる、『かつての科学力を越えた今、天使たちに対抗するための備えが必要である。そのために在住権の無い者たちの人権を出来るだけ消滅させる。そして、街から切り離し、使える貧困層はあの天獄で眠らすことなく働かせ、天使たちを監視させろ。』


 このやり方により、一文無しやホームレスは人権を失い、汚れ仕事をしなければならない。これが差別意識を生むようになったのだ。そして彼、『加賀 リョウ』もまた貧困層の人間であり、今脅迫されていた彼も又、貧困層だ。脅迫してくるのは大抵、普通の 『人間』なのだ。


 リョウや彼のような街にいる貧困層の一部は多少の金があるため、学校に行けないものの街の在住権を与えられる者もいる。


 しかしあくまでもこれは『在住権』だけである。つまり『普通の人間』の権利は与えられないのだ。それ故、一部の街の貧困層は叛逆し、デモを起こすものもいるのだ。これに対し、政府は更に彼らの人権だけで無く、『そこにいる意味』までも消滅させようとしているのだ。


「……行こうぜ、トウマ」


 リョウは『彼』を呼び、共に『街』へ歩き出した。


「う、うん……」


『彼』の名は『八代 トウマ』。基本的に彼は誰とも争おうとしない、それが災いとなり、『普通の人間』に脅されてしまう。


 トウマは天使たちにより、目の前で家族を殺された過去を持っている。その時からか彼は自身の意思を明確に伝えることが出来なくなっていた。


 だが、彼にはリョウがいた。リョウとは『天使』が現れる前から友人だった。リョウと出会ったのはまだ五歳のときだった。その時から今の十八になるまで、喧嘩する事もないほどの仲だった。


 リョウはトウマとは違い、『意見』は『まだ』言える。だが……彼は余りにも、いや常にだろう。


 『闇』を宿している。それは、消える事なく、ただ永遠に続くかのような『闇』を。


 深淵に続くようなその『闇』。そんな『闇』も、トウマと言う一人の『友人』によって抑えられている。だからこそ、絶対に、自分を照らし続ける『光』であるトウマを助けようとするのだ。怯える心を奮い立たせ、立ち上がろうとしているのだ。


 リョウは頭のバンダナを自分のツンツンした髪に巻き直し、トレードマークのライダースジャケットを着用し、トウマも白のジャケットを着用した。


 一歩、一歩と深く寒い夜の人気の少ない街を二人と共に歩いていく。そこには希望を失った自分達と同じような人達がいる。先客がいたようだ。


 如何にも浮浪者な外見をした人々がそこをたまり場とし、会話をしていたようだ。自分から声をかけようと思ったが、先に一人の浮浪者が、声をかけた。


「……お前らもか、居場所が無いのは」

「……ああ。」

「あっち、空いてんぜ。……住んでたやつの事は聞くな……」

「……分かった。ありがとよ」


 取り敢えず、その場所へ向かった。そこには形が歪んでいるが、運良くテントが放置されていた。中々住みやすそうだ。


 その空いていたスペースにリョウは荷物を置いた。先にトウマを座らせた。トウマとリョウは先に見える浜辺を見てはちょっとした悟りを開けそうに感じた。


「すげぇ……綺麗だな……」

「……う、うん」


 トウマはリョウの方を向き、


「あのさ……」

「何だ?」

「神様って、い、い、いると思う?」


 唐突な質問に少し彼は戸惑った。だが、その答えは既にでていた。


「分かんねえ……でも、これだけは言えるぜ?」


 そして俺は


「もし神様がいるとしたら、お前や俺みてえな境遇な奴らにも、少し位の幸せをちょっとはくれるんじゃないか?」


 この言葉を紡いだ。


「けれども、変わるべきなのは自分なんだ。同時に立ち向かうのも自分なんだ……」

「か、変われるかな……」

「ああ、きっとな」


 気分がすっきりした。やはり自分の答えを誰かに伝えれると言うのはいい事だと久しぶりに思えた。


 自分の意味を見出す。それは恐らく、何よりも難しい、人生の難題なのだろう。


 ─明日もトウマと一緒に頑張って生きていこう。


 そう思えたのに…なのに、運命の歯車は『今』となって『動き始めた』。



side change




  日本 東京――???? ?? ??


 人には見えない深層、かつての始まりを告げる地で、新たな『始まり』を告げる。


「――さぁ、」

「――■■■の元において、」

「――――――――――目覚めの時だ、兄弟たちよ」

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