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格納庫はMAが活動できるようにかなりの広さがあった。
高さ30メートル横幅60メートル奥行100メートルの空間に様々な機械や作業用車両が存在していたが、何よりも存在感を放っている物は四方に跪く姿勢で鎮座している隕石発動機搭載型人型装甲車両4機である。
所々塗装が剥げていたり、足元に土汚れが着いていたりするものの、全身を白く塗装された4体の巨人は第1小隊付きの整備員達によって、訓練前の最終チェックをされていた。
トーマが格納庫に入ってくるのを確認した整備員の1人が駆け寄ってくる。
「小隊長、整備は万全です」
駆け寄るなり敬礼した整備員の声を聞くなりトーマは振り返り小隊員に向けて大声を上げた。
「ハッチ開けろ!」
トーマの声に呼応して整備員が機械を操作すると、4機のMAの胸部の装甲が展開し操縦席が見えるようになった。
「では、段取りの説明だ。まずは搭乗後第4小隊の格納庫へ行き追加装備の受領、その後西門から校外へ出発、街道沿いを進みながらグランデアーロ要塞へ向かう」
「「了解!」」
小隊員全員が敬礼で返すのを確認したトーマは全員の顔を見て続けた。
「訓練ではあるが携行する装備は全て実戦仕様だ、全員これが現実の哨戒任務だと心得てくれ、では全員搭乗せよ!」
「了解!」
小隊員は2人1組に別れ各々のMAへ向かい走り出した。トーマの後ろに続いたのはフィオナだった。
操縦席の内部には座席が一つとその後に縦2メートル直径1メートルの透明で卵形のカプセルが存在していた。
トーマが座席に座りフィオナがカプセルに触れるとカプセルが縦に開いた。彼女はカプセルに横になると魔石を取り出し胸の前で両手で握りしめる。
するとせり出していた操縦席が胸部に収納され一瞬暗闇になると周囲に外の風景がブゥンと音をたてて表示された。
「起動完了、エリクシール注入開始」
トーマがコンソールを操作するとカプセルに薄緑に輝く液体が注入され始める。エリクシールというのはMAの血液とも言うべき液体である。
MAの心臓部である隕石発動機はミスリルではなく隕石本体に含まれた未知の物質の結晶。