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Meteor battle   作者: レイニー
第1章
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1


「では、授業を開始する」


真新しいカーキ色の軍服を着込んだ100名の少年、少女を前に、同じ軍服を着てはいるものの多数の勲章を胸にした、20台中盤の年齢であろう女性が声を発した。


少年、少女達の歳の頃は13-4歳と言ったところだろうか。まだまだ未成熟の彼らにカーキの軍服は些か似合いそうもなく、どうも背伸びをしているかのような印象を受ける。


彼らは黒いガラスのような机に腰をかけ緊張の面持ちで女性に注視していた。


「今回の授業では、諸君に世界の歴史について学んで貰おうと思っている」


大教室の中央に立ち、教鞭を振るう女性の名は、ミリアーレ=ゴールドマン。齢24にして、ここ国防軍民生士官学校の教官を務める才媛であった。


「諸君も既に知っていると思うが、500年前に我々人類の歴史は滅亡という形を迎えたが、今回はかの神の断罪の月についての授業をおこなう、教科書を開け」


ミリアーレ女史の声かけに従い、生徒100人が一斉にページを捲った。


この授業では、教科書を元に都度補足を交えながらミリアーレ女史が読み進めていくというかたちを取るようだ。


生徒達は彼女のまとう厳しい雰囲気に圧倒されたのか、誰1人よそ見やほかごとをすること無く、集中して授業を受けている。


「それゆえに…」


着々と進められていく授業は世界史、それも人類史の転換点にもなった大事件神の断罪の月。


神の断罪の月とはおよそ500年前、人類の文明が滅び、一気に科学技術が失われた悪夢のような1ヶ月のことである。


それ以前の記録はほぼ残っておらず、人類はおよそ1億人程までその人口を減らし、生活の水準は中世程度まで退行してしまった。


「言い伝えでは人類は、大地から血を吸い付くし、更には他者からその血を奪うために、火の矢を無数に打ち合ったのだという」


そう、彼らは知る由もないが、西暦2100年代には遂に石油の埋蔵量に限りが見え、価格が高騰、経済は混乱を始め先進国は自国の利益のみを優先し始めた。


当然、後進国はそれに反発するも先進国の国力には及ばず、進退極まった後進国は侵略戦争を開始した。


そしてミリアーレ女史の読み上げた火の矢、これは言わずもがな核兵器である。


歴史がもし続いていたのなら第三次世界大戦とでも名付けられたであろうこの戦争は、泥沼の熱核戦争と化した。


何千何万という核ミサイルが飛び交い、ものの1週間で地球全土は焦土となり、人類はその人口を約半数まで減らすこととなる。


がそれだけでは文明が滅ぶことはなかったのではないだろうか。


「愚かなことだ。諸君もそうおもうのではないだろうか」


教科書から顔を上げて生徒達を見渡す彼女の視線を感じたのか生徒達は視線をあげ、あるものは頷き、あるものは視線で応えるなど、概ね彼女と同意見であることが伺える。


それを見て彼女は教科書に視線を落とした。


「そうだ、そしてその愚かな人類に神は天罰を下された」


神の断罪の月、熱核戦争によって疲弊した人類に止めを刺したのは、決して人類ではなかった。


何故事前に察知できなかったのか全くわかってはいないが、巨大な隕石が突如として出現、本体は太平洋に落下、破片が地球全土に降り注ぎ、シェルターに逃れたものもなす術なく災禍に飲まれ、人類の文明は完全に滅ぼされたのである。


「しかし神は同時に救いの手を差し伸べて下さった、それが何かわかるな?」


視線で指し示された男子生徒が立ち上がり発言した。意外と背は高い。黒髪黒目は神の断罪の月以前、東方の島国の血を色濃く残しているからだろう。


「出席番号M18!トーマ=神崎です!発言します!」


発達途上を感じさせる完全に声変わりを終えていない声で指し示された生徒、トーマ=神崎は答えた。


「続けろ」


「はっ!火の矢によって生物の生きては行けぬ大地になってしまったのを浄化し、また生き物の住める土地に戻し、更には人類に魔石テクノロジーをもたらしてくださいました!以上であります!」


「よし、着席しろ」


飛来した隕石は原理不明の作用によって、地球を汚染した放射線を除去し、またトーマの発言の通り、人類に魔石テクノロジーをもたらした。


魔石というのは、現在世界各地で発掘されるある種の鉱石で、既知の物質とはまるで異なる性質を持っていた。


_「魔石テクノロジー、全員、先日の入校式で配布された魔石を出せ」


ミリアーレ女史の発言を受け、生徒全員が縦15センチ横4センチ程の薄緑の透き通った結晶を取り出す。


「知っての通り、それが魔石だ、エーテル結晶だの、マナクリスタルだの言うものもいるがどれも、その魔石の事だ」


彼女は全員が取り出したことを確認すると話を続けた。


「では諸君、その魔石を机に設置しろ」


彼女が発言すると同時に彼女のはめている腕輪が発光し、生徒全員の机の端が小さな駆動音をたてて開く。


蓋のようになっていたそこには丁度魔石がはめられるような溝があり、生徒達はその溝に自身の魔石を設置した。


「起動は出来るな?全員起動しろ」


生徒達は魔石に手を触れ目を閉じた。1人また1人と魔石が発光を始める。


ぶぅんと音を立てて、黒いガラスに画面が表示される。


「できたな?」


ミリアーレ女史は全員が起動したことを確認するとニヤリと笑い、口を開いた。


「では、入校して早々だが小テストだ、諸君のレベルを計らせてもらうぞ」


笑みの表情を浮かべる彼女に対し、複雑な表情を浮かべる生徒達であった

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