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★決戦当日 正午 ヒューパ決戦陣地
ガンッガンッ
「フェイ、例のやつ準備できてるか」
「はい、いけます、指示してください発射します」
「よし、敵の戦線を分断してしまうぞ、うちの傭兵隊も準備大丈夫か、すぐに出せるようにしろ」
「はいいけます」
「よーし、発射ラッパ吹け」
ペーポーペーポー
戦場に朗らかなラッパの音が鳴り響く。
前線で待機していた傭兵隊に緊張が走る。
自分たちの番がきた。
暁の咆哮団のグスタフは、十人長達に素早く指示を出す。
今朝の作戦会で説明されたのは、
・朗らかなラッパの音がしたら敵陣に突撃する準備をする。
・次に大きな音がするので走れ。
・敵は非常に混乱しているので、この作戦はスピードが命だ、敵が混乱から立ち直る前に倒して、さっさと引き上げろ。
だった。
実質的な指示は最初の二つだけだ、最後のは戦場でいつもやってる事だしな。
しかも今回は、敵が寝そべっている、立ち上がる前にやってしまえば簡単作業だ。
炎魔法が使える奴をつかって、燃やしてしまおう。
その時戦場に聞きなれない大きな音がした。
バシュッイイイイイイ
シュルシュルシュルシュル
ロケット花火の大きな奴が発射される。
ロケット爆弾?
違う、ロケットの後ろから付いていく紐のような物がある。
トゲの付いた針金だ。
いわゆる鉄条網と呼ばれる奴がロケット花火に引っ張られて、戦場を斜めに交差しながら分断していった。
鉄条網は1mぐらいの高さで螺旋状に形がついて戦場に広がる。
鉄砲が生まれた戦場では、この1mの高さが命取りになるのだ。
「走れ」
グスタフは暁の咆哮団へ命令する。自陣を飛び出した傭兵達は、竹束の下で外で何が起きてるのか分かってない敵傭兵達を鏖殺する。
敵の後方で味方がやられているのを助けようと、飛び出してきた奴らも大勢いたが、鉄条網に引っかかって動きを止めたところを鉄砲の餌食になって倒れていった。
後方の竹束陣地からの弓矢で何人かの犠牲者は出たが、これで敵傭兵のかなりの数は壊滅した。
問題は温存されている騎士団約5千の数だ。
ティアは戦場を見ながら次の指示を出す。
竹束に炎魔法を使った傭兵がかなりの数いた、竹束は予定外だったのでこの燃え続ける竹束の煙も完全に予定外だ。
まずい、戦場での目が奪われる。私が敵なら今すぐ動いて煙に紛れ、騎士団達を突撃させる。次の手を打たねば。
「フェイちょっと出てこい」
「何でしょうか姫様」
フェイ副官が飛び出る
「煙で前が見ない、騎士突撃で蹂躙されるぞ、鉄条網には敵兵が引っかかってるいるから簡単に馬が超えてくる。
第一陣を下げろ、第二陣で防ぐ。一陣と二陣の間に例のをやるぞ、すぐに連れて行け」
ティアが後ろでぼーっと立っているベックを親指で指差す。
「一陣退却太鼓! すぐに打て」
ドーンドーン カッカ カッカラカ ドーン
フェイの指示をで戦場に太鼓の音が鳴り響く。
第一陣が急いで後ろに走り出した。
……
?
戦場は煙だらけで、僕は何が起きてるのか分からないでいたら、突然姫様じゃなく、フェイが僕のヒゲを掴んでひっぱり、馬の背中に荷物のように乗せられて走り出した。
戦線の右端に着いたら、馬と鉄条網の準備はできていた。
「あんた忘れて無いでしょうね、姫様の指示で作ってた例の鉄条網の敷設機の操作手順は大丈夫?」
僕は思い出した、また馬に乗って危ない事をしないといけない。
「ふ、フェイさん、代わってください」
猛烈にやる気はない。ほんとに勘弁してほしい、僕は技官であって、武官のフェイさんみたいには馬に乗れない。だから代わってください。
「うん、大丈夫だそうだ、乗せろ」
嫌がる僕を皆んなが馬に押し上げる。
「姫様からの伝言だ、『いいか、勝手に死ぬな、死んだら殺すぞ』だ」
…アリガタイオコトバデスネ……