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評価、ブクマありがとうございます><

まったり冒険ですが宜しくお願いします


「た、助かったぁー」

「今の魔法、かなりの威力でしたね」


 大量の水が流れたために、地面は泥濘みとなっています。ただし、水が流れた無かった場所には、未だぱちぱちと燃える音が聞こえてます。

 ボクがグラスランナーの女の子を下ろすと、彼女はぺたりと地面に座り込みました。

 ああ、そんな場所に座ったら……。

 案の定、彼女は「うひゃっ気持ち悪い」と言いつつ立ち上がりました。


「ううぅぅ。好奇心猫を殺すって奴かー」


 まあ被害は彼女のタイトミニ風の革スカートが泥で汚れただけです。気にしないでおいましょう。


「あ、そういえばピクミーさん、でしたっけ?」

「ほへ? うん、そうだよ! キミがプラムだよね」

「はい、プラムです、よろしくね。そして聞きたいことがあるのですけど」

「その前に先に町へもどりたーい。どこの宿に泊まっているの?」

「安寧と平和亭という安宿です」

「ああ、あそこかぁ。安いしおもちゃのようなカギも付いているし良いところだよね!」

「……おもちゃ?」


 結構しっかりとしたカギだった気がするのですけど。さすがにカードキーや電子キーという訳ではありませんが、がっしりとした錠前がついているタイプです。

 まあこんなファンタジーな世界じゃカギはあろうがなかろうが簡単に、物理的にドアを破壊できますけど、一定の抑止力にはなりますしね。

 それに貴重品を部屋に置きっ放しにする訳ではないですし、せいぜい着替え類くらいです。いや下着を盗まれるのは、それはそれで大問題ですけど。


「あんなのおもちゃだよ。たまに忍び込んでいるし」

「憲兵さん、犯罪者がここに!」

「いやいや! 入るだけで何も盗ってないよ!!」

「犯罪者は誰でもそういうんですよ。大人しく捕まってください」

「らめぇぇぇぇ」


 まあ遊びはここまでにして、とりあえずは町に戻りますか。何やらきな臭い陰謀も見れた事ですしね。

 グラスランナーですから、足は速いはずですし、このまま走って戻りましょう。


「えっとピクミーさん、町まで走りますけど良いですか?」

「あたし、瞬発力はあるけど持続力無いんだ。おぶって!」

「それは体力のある男の人にお願いしてください」


 ボクは足に風と纏わせ、ついでにピクミーさんにも纏わせてあげました。

 足に突然風が纏わり付いたピクミーさんは、何やら不思議そうに片足をあげたり、飛んだり跳ねたりしています。


「さあ、遊んでいないで早くいきますよ」


 ボクが走り出すと、ピクミーさんも後からついてきました。


「うわっ、なにこれ? めちゃくちゃ早いんですけど。これなら馬車いらすだね!」

「節約は良いことです」

「プラムって便利だね!」

「アイテム扱いしないでください」


 かなりの速度で走るボクたち。周りの景色が流れるように視界に入っては消えていきます。ただ足に纏わせた風は素晴らしく、一歩大地を蹴るたびに十歩分は進んでいます。

 周りは星明かりによってうっすらとと浮かび上がる世界ですが、暗視持ちのボクには昼間のように見えています。

 そういえばグラスランナーは暗視持ってないのですけど、付いてこれるのかな?

 でもグラスランナーは種族的に盗賊シーフ向きですし、となると暗視、とまではいかないものの、夜目はそれなりに見えるのでしょうか?

 ちなみに暗視と夜目は似ているようで異なります。

 暗視は目に赤外線スコープをつけた感じですが、夜目は猫等が瞳孔を開いた感じです。このため、完全に光の無い場所だと夜目なら見えませんが、暗視は見えます。


 ちらと後ろを見ると、彼女は必死な形相で追いつこうとがんばっているのが見えました。この魔法は早いのですけど、少しバランスを崩すだけであっという間にこけてしまうんです。初めてスケートをやったときのような感覚なのです。

 しかし初めてこの魔法を使って、こけずにボクの後を着いて来ているのですから、ピクミーさんってかなり運動神経が良いですね。


 そういえば、どうやって消していたボクの姿を見つけたのか、あと何故彼らを付けていたのか、この二つを聞く必要がありますね。

 特に前者です。

 ダークエルフのアイデンティティを失うような事態ですよ。気配で分かったのか、あるいは何らか方法があるのか。

 とにかく殺してでも奪い……ではなく、もしそんな方法があるのならちゃんと口止めしておく必要があります。


「そういえば何故ピクミーさんはあんな場所に居たのですか?」

「話しかけないでっ! 今必死なの分かるよね?! 早いけどちょー難しい」

「どうしてあんな場所にいたのですか?」

「ねぇ、あたしの話聞いてるっ!?」

「どうしてあんな場……」

「ああぁーーー!?」


 あ、こけた。



△ ▽ △ ▽ △ ▽ 



「ううう、まだ身体のあちこちがひりひりするよ……」


 ピクミーさんは鎧を脱いで下着姿になって、泥で汚れた下半身をお湯で拭いています。女の子の入浴シーン(タライシーン?)はどきどきものですけど、残念ながらどう見ても子供、凹凸のないピクミーさんでは眼福じゃないです。


拭き終わったあと、軟膏を身体中に塗っていました。あれは薬草をすり潰して作られた奴ですね。ポーションの方が効果は良いものの、やはり高いので低レベル冒険者の必須アイテムです。


 ピクミーさんの格好は革鎧です。ただ速度重視のためか部分的につけているだけで、腕や足は露出しています。そして風を纏わせて走った時の速度は下り坂を自転車で猛ダッシュしたくらい。四十キロから五十キロは出ています。そんな速度でこけたら普通は大怪我ですけど、この世界の人は中々に頑丈なので、その程度じゃ全身擦り傷程度です。


 一瞬回復してあげようかと思いましたが、エルフになるの禁止なんですよね。ここは涙を飲んで放置です。


「で、先ほどの続きなのですけど、どうしてあんな場所にいたのですか?」

「高そうなローブを着て急いで歩いている人がいたから、少し後をつけただけだよ。でもまさか町の外まで行くとは思っても無かったけど、暇だったし」

「……それだけ?」

「もちろん。決して隙をついて少々懐から拝借しようとか思ってないから」

「憲兵さーん、犯罪者がここに」

「だから未遂だよ!」


 やはり手癖悪いですね。本当にこんな人とパーティを組んでいいのかな。


「そうそう、あとボクの事をどうやって見つけたのですか?」

「んー、カン?」

「具体的に」

「だって草の踏まれた後が途中で止まっていたから、空飛ばない限り誰かあの場所にいるなって思っただけだよ。それに風も無いのに僅かに草が何かに踏まれたように潰されてたし、潰され方、地面の沈み具合から体重の軽い子供かなとか」

「え? ピクミーさんって野伏レンジャー?」


 野伏レンジャーは野外において追跡行為、奇襲などをする職です。確かにこの職の人なら追跡などお手の物でしょう。しかしまさか姿を消していても分かっちゃうのは予想外でしたけど。

 なるほど。ギルドマスターは「冒険者は戦うだけでなく、様々な知識が必要だ。その点、あいつならその辺りはよく知っておるからな」と言ってましたが、確かに野伏レンジャーなら知識は豊富ですね。


「それよりプラムって回復魔法使えないの?」


 回復魔法は光の精霊と契約した人が使える魔法です。例外的に自己の魔力を回復力へ転換させる神官職も回復魔法は使えますけど、効果は精霊魔法より弱いです。

 精霊魔法はエルフやダークエルフが得意のため、今のボクも回復を使えるものと思っているのでしょう。


「え? 使えませんが」

「そうなの?」

「エルフは光の精霊ですが、ダークエルフは闇の精霊と相性がよいのですよ。闇の精霊の中にも回復魔法に似た効果のものがありますよ。二回くらいしか使ったことありませんけど」

「それってどんなの?」

「傷口を闇パワーで塞いであとは放置です」

「それ回復じゃないよね?! 包帯巻いたのと同じじゃないの。そもそも闇パワーって何よ?!」

「闇パワーは闇パワーですよ。得体の知れない闇のパワー! かっこいいと思いませんか?」

「思わないよ! 怪しさ満点だよ!」

「で、使いますか?」

「使わない!」

「そっかー、残念」


 実際は魔力の塊を使ってかさぶた・・・・みたいなものを作り、皮膚にくっつけるだけなんですけどね。

 それでも血は止まりますし、なかなか便利なんですけどねー。

 まあ試しに使ってみただけですし、そもそもエルフになって回復魔法使ったほうが手っ取り早いですしね。


「では用事も終わったことですし、明日はギルドへ行かなければなりませんから、そろそろ寝ます」

「ん、あたしも寝るー」


 そう言ったピクミーさんは部屋に一つしかないベッドへもぐりこみました。


「ちょっ、そこボクの!」

「いいじゃない、どうせあたしら小さいから二人でも余裕で寝れるっしょ」

「そういう問題ではなくて」


 女の子と一緒に寝る?

 そんな経験は悲しいかな前世と合わせても生まれて初めてです。でもグラスランナーは見た目十歳くらいの子供ですし、そんな気は起こらないと思いますけどね。

 ユリに目覚めたらまずいですけど。


「ほらほら、もう二時だよ。明け方まで三時間しかないから早く寝ないと」

「はぁ……分かりました」


 仕方なくボクも着ていた革鎧を脱いで、ベッドに潜り込みました。

 その瞬間、ふわっと布団の中に漂う香り。

 ああ、なるほど。これは良いもの……良いもの……??


「ピクミーさん」

「なに?」

「臭い」

「えええっ?!」



 見た目はともかく女の子と一緒のベッドに寝るという初めての体験は……薬草臭かった。






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