プロローグ
何も無い空間。
空、海、大地、それどころか空気すらあるか不明だ。
もし人がここに居たとすれば一瞬で死に至るだろう空間。
そんな空間に、どこからともなく真っ白な小さい妖精と、漆黒のこれまた小さな妖精、二人がやってきた。
いや、白い、黒い、どころかシルエット状態である。
そんな二人は何やら嬉しそうに互いに会話をしていた。
「ようやく来たよ魂が!」
真っ白い妖精が指した方向を見ると、丸い火の塊がふらふらと漂っていた。先ほどまで何も無かったのに、いつの間に現れたのか全く不明である。
だが、この魂、と呼ばれるものを求めてこの二人はここを訪れたのだろう。
「あら、本当ね。千年ぶりですわね」
「じゃあまたじゃんけんで、どっちのものか決めようよ!」
「今回はじゃんけんはお断りですわ。あなたじゃんけん強すぎですもの。わたくし、三回連続で負けておりますのよ?」
「それじゃどうやって決めるの?」
両腕を組んで悩む漆黒の妖精。
そして何かを思いついたように、ぽんっと手を叩いた。
「そうですわ、今回は二人のものにしてみません?」
「え? どうやって?」
真っ白い妖精が、理解不能とばかりに首を傾げる。
「ですから、お互いの能力を同居させるのですわ。そしてあの魂が願えば、それを交互に使えるようにするのです」
「何だかややこしくなりそう。それに二人の力が同居するなら、能力を使いこなすのに二倍時間がかからない?」
「ええ、そうですわね。なら長命種にしてあげればよくって?」
「それは苦労しそうだなー、あの魂」
「でもそれはそれで楽しいではありませんか」
「それもそっか」
きゃはっ、といかにも楽しそうな声を上げて、くるりと一回転する真っ白な妖精。
漆黒の妖精も、自分の案が通ったことで嬉しそうな雰囲気だ。
「じゃあ一緒に」
「行きますわよ」
互いの言葉が終わると同時に魂の中へと飛び込む二人の妖精。
その次の瞬間、魂は消えうせた。
どこへ行ったかは不明だ。きっとあの妖精たちしか知らないだろう。
そして何も無い空間はもとの静けさを取り戻した。