プロローグ
満月が空を独占する静寂の夜...
暗闇の中に足音が2つ鳴り響く...
1つはとても軽やかでリズムよく響く。
もう1つは重く、犬のような足音が逃げる
ように響く。
住宅街の街灯がチカチカと点滅し、走り回る1人と1匹の姿が見え隠れする。
1人の方は少女...長い銀髪が印象的で、後頭部の部分で1つにまとめている。
1匹の方は獣...形は犬とさほど変わらない。
大きさは普通の犬の2倍程あり、剥き出しの牙と鋭い爪が月明かりに照らさられギラギラと逆光を放っている。
少女はその姿を見ても怯む事なく走り続け、
さらに加速を加えて逃げ回る獣を飛び越し前へと躍り出た。
予想外の出来事に獣は一瞬怯んだが、構うことなく少女に突っ込んで行った。
少女は襲いくる獣が直前で飛びかかってくる事を想定し体制を低くした。
案の定獣は直前で少女に飛びかかった...が、そこに少女の姿はない。
体制を低くした少女は元々股に装備していた刃渡り十センチ程のナイフを抜き、獣の頭が頭上を過ぎたところで獣の喉元にナイフを突き刺した。
獣は喉にナイフが突き刺さったまま少女の頭上を通り越し、着地と同時に地面に崩れた。
獣の喉から鮮血が噴き上がり、辺り一面を赤く染めあげる。
少女の銀髪は大量の返り血を浴びても尚月明かりの下輝いていた。
その姿は果たして「天使」か「悪魔」か...