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僕は夢の為にベストを尽くす  作者: kazu
想い馳せる時……
3/5

三、

 漸く辿り着いた小さな店。と言うよりも、小さなスーパーマーケット。ここの住民達の拠り所ともなるこの店には、買い物だけではなく様々な情報を貰いに来る奥様達がいた。

 ジニョンは店の中を見渡しながら、駄菓子の売っているところに向かった。

「やはり日本だな。色々なお菓子が売っているな」

 目移りする程の駄菓子の数に、微笑むジニョンだった。すると、

「どれにしようかな」

 ジニョンの横で、一人の女の子が同じ様にお菓子を選んでいた。

てのひらには、銀色の効果が二枚光っている。日本のお金で百円玉が二枚だ。それを見て再び握り締める女の子だったが、いきなりジニョンの方を見ると、不思議そうな顔でじっと黙っていた。

ジニョンは、その場でどうしたら良いのかが解らなかった。そして、とにかく笑顔で対応しようとした。その時、

「もう、早う決めんと帰るよ。どれがいいとね」

と、一人の女性が女の子に向かって言った。どうも、その女の子の母親らしい。すると、

「う…… うん。このチョコでいい」

そう言って、一枚の板チョコを取ると、

「それやね。解ったから、レジに並ぶよ」

 そう言った母親は、女の子の手を取ってレジの方に向かって言った。ジニョンは、その場でその状況を黙って見ていたのだが、その時、女の子がジニョンの方に振り返った。そして、

「またね」

と言って、微笑みながら手を振っていた。

 その笑顔は、前にも経験したような、何処となく懐かしい感じがしていた。女の子の優しい微笑み。初めて会った感じがしない。不思議な感覚だったのだ。

 そして、ジニョンも手を振っていた。

 その後ジニョンは、片言の日本語で欲しい物を買う事が出来た。

「どうにか言っている事が解ってもらえたよ。一時はどうなる事かと……」

 そう呟きながら店を出るジニョンだった。そして、さっき会った女の子の事を思い出していると、

「早よ、乗らんね。叔母さんたちが待っちょうやろ。帰るばい」

 という声が聞こえてきた。何か聞き覚えのある声だと思い、ジニョンはその声の方を見た。すると、さっきの女の子が、母親に言われて車に乗り込んでいた。それも、ジニョンの方をじっと見ながらだった。

「ほらッ、美咲ッ。早よう乗らんねっち言いよろうがね」

 母親の怒った様な声に、渋々後部座席に乗り込む女の子。だが、ジニョンが気付いた事を知ると、表情を変えた。そして、さっきの様に笑顔を見せて手を振っていた。それを見たジニョンは、

「あの子…… 美咲って…… 言うんだ」

 そう呟いて、手を振っていた。

 その後、美咲を乗せた車はジニョンの帰る方向と同じ方角に向くと、坂尾登って行くのだった。

「へえ、あの子もこの山の上に住んでいるんだ。シンドン叔父さんの家の近くなのかな」

 ジニョンは、美咲の乗った車を目で追いながらそう言うと、坂道を登り始めていた。


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