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異世界に来てファーストコンタクト後の初イベントが王国乗っ取りって、いきなり難易度高過ぎなんではないですか!?とりあえず、今すぐってわけではないみたいだけど巻き込まれるのは確定だな、こりゃ。っつか、面倒臭いんですけどぉ!?
ここは薬草採取とかから始めるとこではないのかよっ!?マジ面倒だな・・・。
よし、逃げよう!!
「もし逃げたり計画が漏れたら地獄の果てまで追いかけて後悔させるから♪」
・・・先手打たれましたか。
ま、しゃあない、諦めよう。適当に流されそう。
クリスがなに考えてるかわからんが、なにか理由があるんだろ。裏切り者に死を、って言ってるしなにか恨みでもあるんだろう。師の恨みは弟子の恨み、とか言う程付き合いは深くないが、まぁ良いか。
毎度の如く、適当に生きていこう。どうせまだやりたい事も無いんだし。
「オーケー了解いたしましたよ師匠。お手伝いいたします」
「うむ、よきにはからえ弟子」
「なんだかなぁ・・・。ま、良いや。王都までどれくらいで着くの?」
「あと2時間くらいかな?」
すでに出発から3時間くらい経過している。出発が昼過ぎだったから夕方には着く計算か・・・。晩飯は王都で食えるって事か!!初異世界飯!!うほっ!!
急にテンションが変わったので不信に思ったのだろう、クリスが汚物を見るような眼をしてくる。
・・・この娘は俺の心を何度折れば気がすむのだ。
「王都で晩飯になりそうだから喜んでただけだよ」
「そういえば此処まではどうしてたの?まだ町や村に行ってなかったんでしょ?」
「あぁ、食料と水は大事だからな。こっちに来る前にしっかり準備したんだよ」
「・・・準備って。そんなのしてくる異世界人は初めてじゃないかなぁ?」
「まぁ、かなり余裕を持って来れたのは確かだな。予備知識としてこの世界の言葉や文字も覚えたし、少しだけどお金も持ってる。」
「なんか優遇されまくってる気がするけど、ノイエって勇者だったりするの?」
「勇者とか断固拒否する!!俺は俺の興味と趣味を優先するねっ!!まぁ、特に決まった役目も無いんだよ実際。俺は言うなら不確定因子として送られたわけだし」
「不確定因子か。ま、良いわ。それよりご飯!!ご飯!!」
「・・・もしかして超水の件で味をしめましたか師匠?」
「えへ♪」
実は神水は提出用とは別にクリスに渡してある。理由は美味しいから。
ほいほい魔力を上げまくるわけにはいかないので改造で効果を無くした味だけ良い神水、通称『超水(命名クリス)』を創ったのだ。これをクリスは大層気に入り今も飲んでいる。
水でこれなのだ、食事も美味いと考えてもおかしくはないのだろう。
「言っとくけど飯は出さないからな」
「ぅえぇえ!?なんでなんで!?」
食いしん坊キャラかっ!?
ま、かわいいから許すけど。かわいいは正義!!だよね?
「特に理由はない!!」
「ちょ、なにそれぇえっ!?」
「冗談はさて置き、ただでさえクリスと二人でここに篭ってるんだぞ?
さらに一緒にお食事もいたしましたとか、周りの目が怖いから嫌だ」
出発前の一悶着でも分かる通りクリスは人気者なのだ。いらぬやっかみは勘弁願いたい。
弟子入りしてる時点で嫉妬されまくり確定で夜道が怖いのだけどNE!!
「後でちゃんと出してやるから今は我慢してくれ」
「・・・むぅ、わかった」
なんか本当にお子ちゃまだなぁ。・・・お子様ランチでも食わせてみるか。
「そういやクリスっていくつなん?」
「レディに歳を聞くのは如何なものかな?弟子よ」
「サーセン。あ、俺は25歳です」
「む、もっと下かと思ってた」
「日本人ってそう見えるらしいな」
「エルフもそうね」
「いや、それとはちょっと違うと思うけど?」
「そうかな?」
「実年齢より若く見えるってのと長期間老化しないのは違うだろ」
「似たようなもんでしょ」
「まぁ、そう言えなくもない・・・のかなぁ?」
「そういう事にしときなさいな。歳は教えないけど私の秘密を一つ教えてあげるから」
「ほぅ・・・乙女の秘密とな!?」
「なんか如何わしい事考えてる気配がするんだけど?まぁ、ノイエだししょうがないか」
・・・・・・なんかクリスの中で俺は変態って事で決定っぽい感じなんですが。
否定出来ないし、する気も無いけどねっ!!
「秘密ってのは私の出生の事。ハーフなのよ、私。ハイエルフと人間の」
「・・・その場合エルフになるって話を聞いたけど?」
神に種族を聞いたときにはそう習ったはずだ。
本来のエルフ、純潔のエルフはハイエルフと呼ばれ、主に人間との混血で生まれるのが今エルフと呼ばれる種族。ハイエルフとエルフ、エルフと人間のハーフは両親の種族のどちらかになる。
自主的な品種改良で生き長らえた種族、それがハイエルフってのが俺の感想だったりする。
優性であるはずのハイエルフの因子が表立って出ないという事は・・・
「・・・魔人の因子か」
「当たり。母様の何代か前に魔人がいたらしいの」
魔人は突然変異で顕れる魔力がとんでもなく多い人間の事だ。
魔族とは何も関係がない。魔族と人間は交配できないのだ。
オークやゴブリンが孕ませるという話もあるが、あれは借り腹、もしくは寄生に近い。
栄養を吸い取れるなら木の股でもいいのだと。なんか胸糞悪い話だけど。
魔人に話を戻す。おそらくは異世界人の血が隔世遺伝したのが魔人なのだろう。
どうやら結構な数の異世界人が居たらしいからな、クソ神のせいで。
「じゃあクリスは魔人って事になるのか」
「そうなるのかな?」
「俺に聞くなよ」
「いや、だって、なんかノイエの方が詳しそうなんだもん」
「はい!!本日二度目の『だもん』いただきましたぁっ!!」
「だもんだもんだもんだもんだもんだもん!!」
「連呼するなぁっ!!有り難味が薄れるわぁっ!!!!」
「だもん。・・・だもん?・・・だ、もん」
「言い方変えても駄目ぇ~」
何このノリ?あっれぇ?ちょっとシリアスなお話してたんじゃかったっけ?
ま、良いか。