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天国に居るんだか地獄に居るんだかわかりませんが、
お父さん、お母さん、兄貴、俺もそちらに逝っても良いでせうか?
只今俺の目の前で超絶可憐美少女が絶賛嘔吐中です。
原因は・・・やっぱ俺、なんだろうなぁ・・・。
折れた。心とかたぶんフラグとか色んなものがバッキバキに折れた。
まさか、初対面で眼が合っただけで吐かれるとかどんだけブサイクなんだ、俺?
うん、鬱だ。鬱すぐる。
とりあえず謝ろう。なんかもう俺の存在が申し訳ない。
生きててごめんなさい。
「・・・申し訳ない。心から謝らせて欲しい。
言い訳でしかないが、俺は最近こちらに来たばかりで常識に疎いんだ。
自分の容姿にも頓着が無かったのでこうなるとは予想出来なかった。
俺を見て不快な思いをさせてしまって、本当にすまない」
俺は頭を下げながら謝罪した。もう顔なんて見る事は出来ない。
俺の方が泣きそうだけど、いや半分泣いてるけど謝らないと駄目だと思った。
こんな可憐な女の子を泣かせるどころか、吐かせるってどんだけだよ!!
自己嫌悪でマジで死にそうだ。
死んだらあのクソ神の所に行けるだろうか?もし行けるならマジでブチ殺そう。
考え付くありとあらゆる手段で殺し尽くそう。諸悪の根源は奴だ。
あいつが俺をこっちに送らなければ、あいつがアフォな事を思いつかなければ、
こんな、こんな事にはならなんだのにぃっ!!!!
「・・・とりあえずフードを被って」
吐くものが無くなって胃液しか出なくなってた少女が声を掛けてきた。
当然のようにこちらを見ようともしない。
謝罪に対する返答も無しですか。そうですか。そんなに怒ってますか。
「はい、すみません」
言われた通りにフードを被る。そのまま俯いてしまう。
謝罪を受け入れてもらえていないので立ち去るわけにもいかないだろう。
対人スキルに乏しい俺にこの状況はヘビィ過ぎるぜベイブ・・・。
っと、なんかゴソゴソ音がするんでちらっと少女の方を見てみると、
なにやら馬車の荷台を漁ってるようだ。
・・・・・もしかしてこの娘、盗賊?
この人達を眠らせたのもこの娘だったりするとか?
そうなると謝罪するのは決定だけど、
その後の対応が変化するわけだが、さてどうしようか?
情報が決定的に不足してるなぁ・・・。
確認出来る範囲で全員武装してるけど装備がバラバラなんで騎士団とかでは無いだろうし、馬車と荷が少ないので商人と護衛って線も無し。
もしかして冒険者ギルドみたいのの討伐チームかな?
で、討伐に失敗!!・・・って全員無傷じゃねぇか!!
う~ん、気が進まないけどあの娘に聞くしかないか・・・。
とかなんとか、答えの出ない事を考えてると「あったあった」となにやらお目当ての物を見つけたらしい少女が近づいて・・・・・・・・・こなかった。
馬車からは出てきたけど俺には近づこうとはしません。正直悲しいです。
「これとこれを両腕に嵌めて、これを首に掛けなさい!」
って、結構な勢いで物を投げるなっ!!
最初に腕輪が4つ、その後ネックレスが飛んできた!!
落として汚してり壊れたら怒られそうだから全部キャッチ!!
・・・こっそり鑑定させてもらう。隷属とか呪いの腕輪だったら嫌過ぎるからね。
・・・「魔封」?魔力の隠蔽、拡散、封印、認識阻害・・・。
とりあえず害は無さそうだけど、なんでこれを?
「・・・早く!!」
ちょっと考えてたら怒られてしまった。
申し訳ないと一言謝ってから急いで装備する。
「・・・まだ駄目ね。じゃあこの仮面を被って!!」
駄目ですか、そうですか。仮面ですか、そこまでですか。
そんなに見るに耐えませんか。無理ですか、そうですか。
もう鑑定する気も起きません。隷属でも呪いでも構いません。
本当にもう泣きそうです。ってかすでに泣いてます。
もう止めてぇ!!俺のHPはもう0よぉ~!!
「・・・うぐ、ぐす、こ、これで良いですか?」
仮面のデザインが好みだったのがせめてもの救いです。
こんな俺に好まれて、製作者様もご迷惑でしょうがお許しください。
「・・・なに泣いてるのよ?」
「うぅ、すみません。生きててすみません。泣いててすみません」
俺なんかが泣いててもただただ不快なだけですよね、すみません。
もう早く用件だけ済ましてさっさと立ち去ろうと思います、すみません。
近場の町か村の場所だけでも教えていただきたいのです、すみません。
「・・・・貴女方は一体何者でしょうか?」
口から出てきたのは別の言葉でした、すみません。
さっきまで疑問に思ってた事ですし、
無意識に他人との会話を欲してたのかもしれません、すみません。
「私たちはギルドの討伐チームよ」
あ、先程の推察が当たってしまいました、本当にすみません。
しかし、まだ眠ってらっしゃる他の方々は一体どうしたのでしょうか?
最初に探査で感知した位置と現在地から考慮すると、
進行方向は俺がやってきた方向です、すみません。
あちらには本当になにも居ません、すみません。
「俺の来た方向にはなにも居ませんでしたよ、すみません」
「いいえ、居たわよ、あなたが」
「・・・・・・・・はい?」
「私たちはあなたを討伐する為にここまで来たのよ」
・・・・・・・・・・はいぃぃいい!!!???