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「とりあえず一発殴らせろ」
別に前世に未練も執着も無い。親兄弟も居ないし、恋人が居た訳でもない。
友人は居たが、俺が居ないと困るって奴は居なかったと思う。
仕事も俺より優秀な奴らばかりだ。問題にはならないだろう。
まぁ、そんな事はどうでもいい。どうにでも修正するんだろう。
要するにこいつは
暇潰しの為に異世界で適当に暴れろってんだろ?
勇者とかなんとか切羽詰った理由なんかでなく。
そのふざけた言動をぶん殴るっ!!
「うん、殴られてあげても良いけどたぶん無理だよ?」
「あぁん?なんでだよ?」
「君達のゲームでもよくあるだろ?レベル差が有りすぎてダメージが入らないってのが」
「ほう?ちなみにレベルはおいくつで?」
「うん、レベルは約5000だよ?ちなみに3000を超えると神と認められる。
ついでに言うと今の君のレベルは23だね」
いい笑顔で言いやがった。やっぱコイツは敵だな、うん。
絶対的優位に立つ余裕から俺が何言っても気にしないんだろうな。
「なるほどな。とりあえずさっき言ってた
【俺がさっきまでやってたゲームのキャラの能力】
をくれよ。話はそれからだ」
「うん、それで僕を殴るつもりだね?それでも無理だと思うけどねぇ」
クソ神が軽く腕を振るうと俺の姿が変わる。
部屋着から鎧姿へ。
あぁ、間違いない。この装備は俺の最強キャラのものに間違いない。
「ステータスもそのままなのか?」
「うん、ゲームのデータをそのまま移植したからね」
どういう原理だそりゃ?意味わかんねぇ。
ってか、そうかぁ・・・そのままかぁ・・・。
あ、ステータス画面が開いた。脳内ディスプレイだ。
「ちなみにコレがどんなゲームか知ってんのか?」
「うん?いや戦闘をするゲームってくらいしか知らないよ?」
「それって適当すぎないか?」
「何が起こるかわからなくて面白いじゃないかい?」
頭の表層だけで会話しながらステータス画面をチェックする。
問題ない、
最後に見た時のままだ。
間違いない。
間違いようが無い。
さて・・・・・・っと、
「お前じつは馬鹿だろ?」
「うん?なにをいぐあwせdr#f¥tgy&hk!!!!!!!」
怪訝な顔を向ける馬鹿に
とりあえず『レベル差』を考慮して
思いっきり『手加減』して
手甲装備の『デコピン』を叩き込んでみた。
ソファーごと派手に引っくり返り、数メートル吹っ飛んでようやく止まった。
のた打ち回る馬鹿を眺めながら、軽く腕を振るいコーヒーを出す。
好みドストライクなコーヒーを味わいながら推測が当たっていた事を確認する。
思った通りこの空間は思考を具現化するようだ。
「い、いったいなにが」
む、再起動しやがったか。
あ、額が赤くなるどころか若干陥没してる、ざまぁwwwww
「俺に能力を渡す前にしっかり確認するべきだったな、馬鹿アル君?
俺がやってたゲームはな?至上最強のやり込み度なんだよ。」
「つ、つまり?」
「私のレベルは9999なのです!!!!」
「!?」
「ついでに転生により総レベルは53万だゴラァ!!」
「ひぃっ!!?」
人と神という種族差は有れ、見える範囲で倍、
潜在的には100倍のレベル差という事になる。
もはや青を通りこして白くなった顔色で馬鹿は俺を見て震えている。
うん、気が済んだ。もう良いや、許してやろう。
え?軽い?うん、まぁ、俺はそんな奴だし。
最初に言った通り、前世には未練も愛着もない。
理由のくだらなさには正直むかついたが、
それもさっきの一発でチャラにしてやろう。
「とりあえず一発入れて気も済んだから、これからの話をしようか」
「は、はい」
うむ、完全にびびってるな。よしよし。
「俺を元の世界に戻す事は可能か?」
「む、無理です。し、資格というか、権限がないんです。
も、元の世界の管理の引継ぎ時にや、やったのでもう僕の権限では・・・」
「んじゃ、異世界に行くしか無いのかよ」
「そ、そうなります」
この馬鹿をブチ殺して此処に残るって選択肢もあるが・・・・。
あ、今ビクッとしやがった。やっぱ思考読んでやがるな、こいつ。
そのくせ時々サボってるからこんな追い詰められた状況になってるんだが、
やっぱこいつ馬鹿だな。もしかして左遷させられたんじゃないか?無能過ぎて。
あ、赤くなった。図星かよ!?もはや最初の余裕まったく無いな!!ざまぁwww
「よし!んじゃ、異世界に行くわ」
「・・・良いんですか?」
「良いよ、別に。まぁ、少しばかり我侭聞いてもらうがね?」
「わ、我侭ですか?」
「迷惑料だな。んな大した要求でもないんで頼むわ」
「わ、わかりますた」
神が噛みやがった。・・・・よし、忘れよう。華麗にスルーだ。
そこから数時間掛けて詳細を詰めていく。
必要な物をリストアップして厳選していく。
さすがになんでもかんでもってのも酷だろう。
さらにそれらを異世界の常識に合わせ機能、外見を決める。
無駄に目立つのは危険だし、面倒だからな。
レベルは元のゲームのシステムを使って1に、
スキル、魔法、防具も最低限のものにした。
その代わりにこれから行く異世界独自のものを憶えることが出来るようにした。
せっかくの異世界だ。せめて楽しませてもらおう。
「っと・・・こんなもんかな?」
「・・・すでにバランスブレイカー過ぎですが」
「その分面白い事が起きるかもよ?」
「は、ははは」
なにその乾いた笑いは。当初のご希望通りになりそうなんだし、喜ぶとこだろ?
・・・・・・まぁ、俺基準で面白そうって事でこいつの事は知らんがねっ!!
「じゃ、行くか!!異世界!!」
「あ、エルガディアというのが世界の名前になります」
「うわお、超今更だなヲイ!!」
「す、すみませんっ」
「いや良いよ。で?どうやって行くの?転送とか?」
「あ、それはこのドアを開けると適当な場所に繋がります」
ここで出て来たか奇妙奇天烈摩訶不思議出前迅速落書無用ドアめ・・・。
「・・・ちなみにこのドアのお名前は?」
「どこへでもド」
「はいアウトォオオオオオッ!!!!!」