表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

エピローグ

 走り去る背中を見つめる。それは自らが開けたドアの向こうに、吸い込まれるように消えていった。

 スローモーションのように扉が閉まった。


 軽い歪み(ディストーション)とコーラスのかかったギターのバッキングが、ホールの隅々に染み渡るように拡がっていく。

 瞳を閉じて、マイクスタンドの支柱を握りしめ、角度を直す。瞼の裏には、まだ彼の背中が写っていた。


 ……行っちゃった。


 ……これでいい。


 これが、最高のカタチ。そして、ワタシはワタシの役をこなすだけ。


 偶像。それがワタシの(ロール)


『神様に 感謝した 邂逅は もう遠い過去

 気付いたら いつの間にか キミがいた この胸の中』


 心地よいリズムに合わせ左右に腰を振る。コンビネーションドレスの裾が、歌劇団のラインダンスのようにさんざめいた。


 目の前では、ワタシに魅入られた者たちが頭を振り、手を叩き腕を突き上げている。これだけの聴衆オーディエンスを前にしても、脳裏に浮かぶのは唯一人への感傷だった。


 ……本当に、純粋でまっすぐな子だった。ふふ、ワタシには熱くて眩しすぎるくらい。

 触れたらきっと、ヤケドしちゃっただろうな。


『夢を見ていた 幸せになれると信じていた

 だけどなんでかな 伸ばしたこの手が空をきった』


 歌詞に倣って右手を虚空に遊ばせながら思う。


 最後のコトバは結構グッときちゃったわ。

 ……貴女のコトが好きでした(・・・)、だなんて。本当に面白い子。


『Oh,Let it be. 生きてきた これでも|本気《

マジ》だった

 Oh,More than words 最後は ココからi飛ばした』


 第三の目(サードアイ)の開眼に懸けるように、額に当てた指を宙に投げ離した。テレパシーでも飛ばすように。


 自業自得とはいえ、寂しいわね。でも、言えないんだもの。


 ——だって、ねえ? こんなヨゴレた私が、あんな純粋な子とつり合うワケがないじゃない。その事がきっと、彼を悩ませる。だから私からは何も言えなかったの。


 それでも。それでももしキミが、こんな私を好きだと言ってくれるなら、素直になろうと思った。だから、コレが私の精いっぱい。


 ……今日は結構勇気出したんだけどな。やっぱ遅過ぎた、かな。泣かなかっただけ上等、だよね。


 キミの告白のあとに言ったコトバ、結局届かなかったな。





 ま、仕方ないか。











 ——あーあ。










『好きで 好きで だけど キミの空は 今は遠くて』






 ——ほら。今なら、言えるのに。






『せめて キミの 愛が 残るオトをなぞってたい』







 ——こんなに、言えるのに。






『どうせ叶わぬ想いならば』







 純クン。ワタシ、あなたのコトが——







『死ぬほど愛して消えたかった』







 ……*****。


香坂未來「みんな、最後まで付き合ってくれて本当にありがとう。

     ワタシたちの物語はきっとまだまだ続くわ。だって、小説も歌も、可能性は無限なんだもの。

      じゃ、いつかまた会いましょう」


 挿絵(By みてみん) 


 MUSIC+SICK=ミュージっく を最後までお読みくださった全ての方に、最大級の感謝!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ