能力1で追放された元・再建屋、ステータスに映らない“考え方”が+100だったので、七人の廃村から最強の国をつくります
「レイ。能力、一。熱意、百」
神官が読み上げた途端、聖堂がどっと沸いた。
十五歳の子どもたちも、付き添いの親も、壁際の衛兵まで笑っている。
「一だってよ」
「器が一じゃ、水を百注いでも溢れるだけだろ」
笑い声を浴びながら、俺は四十五年ぶんの人生を思い出していた。
灰島礼司。町工場専門の再建屋。
潰れかけた会社に乗りこみ、帳簿をひっくり返し、現場を歩き回って、人を切らずに立て直す。それが仕事だった。三社まではうまくいった。四社目に入る前の晩、事務所の机に突っ伏したまま、俺は二度と起き上がれなかった。
最後に浮かんだのは、若い頃に仕込まれた師匠の口癖だ。
――数字に出ないものを見ろ。
で、目を開けたらこれである。
孤児院育ちの少年レイ、十五歳。鑑定の儀の真ん中で、能力一の烙印を押されたところ。
十五年ぶんのレイの記憶も、ちゃんと頭の中にあった。孤児院の固い寝台。院長先生のしゃがれた声。今朝、鑑定に出かける前に「何が出ても、お前はお前だよ」と背中を叩かれたこと。
四十五年と十五年が頭の中で混ざりあって、どうにも落ち着かない。生まれ変わりというやつらしいが、感慨にひたる暇もなかった。
目の前の鑑定板は、真鍮の枠に磨いた硝子をはめたものだった。上に天秤の飾りが乗っていて、硝子の表には白い文字で二つの数字が浮かんでいる。
能力の欄に、1。熱意の欄に、100。
「よいか」
神官が、居並ぶ者たちに向き直った。
「人の値打ちは、器と水で量られる。能力は生まれ持った器。熱意はそこに注ぐ水。器が小さければ、いくら注いでも無駄になる。能力は一生変わらぬ。ゆえに己の器を知り、分をわきまえて生きよ」
もっともらしい理屈だ。前世の会議室でも、似たような話を何度も聞いた。偏差値、学歴、売上。数字は便利で、便利すぎるから、そのうち数字しか見なくなる。
そして数字しか見なくなった会社から、順番に潰れていく。俺はそれを、仕事で嫌というほど見てきた。
天秤の飾りに、ふと目がとまった。
皿を吊るす鉤が、三つある。
なのに、下がっている皿は二枚だけだった。
妙なものが見えたのは、そのすぐ後だ。
神官の頭の少し上に、白っぽい数字がぼんやり浮いている。
−10。
隣の衛兵には+22。最前列で腹を抱えて笑っている金髪の少年には、くすんだ赤で−35。さっき能力九十五と読み上げられて拍手を浴びていた、代官の甥のベルントだ。
目をこすっても消えない。聖堂にいる全員の頭の上に、一つずつ数字が浮かんでいた。白い数字の者もいれば、赤い数字の者もいる。
鑑定板に出る数字は、能力と熱意の二つだけ。だったら、これは何の数字だ。
三つの鉤に、二枚の皿。
嫌な符合だった。
考える間もなく、儀式は次へ進んだ。鑑定の済んだ者から聖堂を出ていく決まりらしい。
俺も列を離れて扉へ向かう。そこで、籠の落ちる音がした。
入口の脇で、娘が膝をついていた。粗末な麻の服に、茶色の三つ編み。年は俺と同じくらいか、少し上。聖堂に薬草を納めに来たらしい。石畳に散らばった青い草を、ベルントが靴の先で踏みつけている。
「おい、口なし。代官の甥の前を横切るなら、挨拶くらいしろよ。……ああ、できないんだったな」
取り巻きが笑う。娘は何も言い返さない。唇は動くのに、声が出ていなかった。
草の汁で緑に染まった指が、踏まれた葉を一枚ずつ拾い集めている。
その頭の上には、+85。
この聖堂で見た中で、一番大きな数字だった。
気づいたら、俺は草を拾っていた。
再建屋の癖だ。現場で踏まれている物を見ると、拾わずにいられない。
「なんだお前。能力一の――」
「この草、聖堂の注文品ですよね」
拾った束を、俺は神官のほうへ掲げてみせた。
「踏んで駄目にしたら、代金は誰が払うんでしょう。代官様のお屋敷に、請求が行くんですか」
ベルントの顔に、さっと血がのぼった。神官の頭の上の数字が、−10から−8に揺れる。面倒ごとは困る、という顔だ。
「……その草は、聖堂で引き取る。ベルント殿、足をどけられよ」
舌打ちが聞こえた。次の瞬間、ベルントの肘が俺の胸を突いた。
能力一の体は、笑えるくらいあっけなく石畳に転がった。背中を打って息が詰まる。十五歳の体は、四十五のくたびれた体より軽くて、そのぶん脆い。
「騒がしいな」
重い靴音がして、人垣が割れた。
痩せた長身に、灰色の口髭。この町の代官ヘルマンだ。頭の上の数字は、−40。今日見た中で、一番暗い赤だった。
代官は転がった俺を一瞥しただけで、聖堂の書記に言った。
「能力一の孤児を町に置いても、飯の無駄だ。北の廃村……七つ屋へやれ。あそこなら、役立たずが一人増えたところで誰も困らん」
誰も異を唱えなかった。
前世で何度も見た光景だ。数字の悪い工場は、会議室で静かに名簿から消される。違うのは、今度は俺の名前が消される側だということくらいか。
石畳に転がったまま、俺は頭の上の数字を順に眺めていた。
再建屋の仕事は、半分が観察だ。帳簿の数字より先に、人の口癖を聞く。
代官、−40。人のせいにする言葉しか口にしない。
ベルント、−35。自分より弱い者を踏むことで、自分の値打ちを確かめている。
神官、−10。面倒を避けて、強い者の側につく。
薬草の娘、+85。踏まれても、黙って葉を拾い続けていた。
能力でも、熱意でもない。もっと根っこの、物の考え方のようなもの。
仮説としては、悪くない気がした。
孤児院に戻ると、院長先生は何も聞かずに、銀貨を三枚、俺の手に握らせた。
「少ないけどね。……体に気をつけるんだよ」
しわだらけの手が、少し震えていた。この人の頭の上には、+52。孤児院の台所事情を知っている身としては、銀貨三枚がどれほどの無理か、よくわかる。
俺は深く頭を下げた。
町の門へ向かう途中、通りのあちこちで、似たような声を聞いた。
「また塩が上がった。代官様は何を考えてるんだか」
「隣の家が水を汲みすぎるから、井戸が濁るんだよ」
「どうせ俺たちが何を言っても、変わりゃしない」
すれ違う人の頭の上は、赤い数字が多かった。
愚痴の多い町だ、と思った。潰れかけた工場の休憩室と、同じ匂いがする。
門の外で、さっきの娘が待っていた。
籠から無事だった草を一本抜いて、俺の手に押しつける。青い葉に、白い産毛。鼻を近づけると、ほんのり甘い匂いがした。
娘は自分の胸を指さし、それから北の空を指さした。
「……君も、七つ屋の人?」
こくりと頷いて、娘は先に歩き出した。
門の脇の水桶で、俺は足を止めた。転んだときに頬を擦りむいている。洗おうと身をかがめると、水面に自分の顔が映った。
痩せた黒髪の少年。眠そうな目。
その頭の上に、白い数字が浮かんでいた。
+100。
息をのんだ瞬間、頭の奥で、冷たい声がした。
〈警告。この数値の表示は、禁じられています〉
◇
「帰れ、坊主。ここは子どもの来る所じゃねえ」
片腕の男が、斧の柄で村の入口をふさいでいた。
日焼けした顔に、白髪まじりの短い髭。右の袖が、肩の下から風に揺れている。頭の上の数字は+60。
町から北へ半日。
道案内は、三つ編みの娘がしてくれた。名前はミナ。彼女が帳面に書いて教えてくれた。口はきけないが、字はきれいだった。
道すがら、ミナは草むらに埋もれた石畳を指さして、帳面に書いた。
『むかしの、しおのみち』
ところどころに、轍の跡が石に刻まれている。昔はここを、塩を積んだ荷車が行き来していたのだろう。
その道の終点にあるのが、廃村・七つ屋だった。崩れかけた石垣の内側に、家が七軒。人も七人。昔は塩商人のための宿場で、宿が七軒あったから七つ屋と呼ばれた――と、これもミナの帳面に書いてあった。
ミナが帳面を開いて、片腕の男に突きつける。
『聖堂で、たすけてくれた人』
男はしばらく紙を睨んでから、鼻を鳴らして斧を下ろした。
「……ガルドだ。飯は自分で何とかしろ」
その日のうちに、残りの住人にも会った。
縁側で煙管をふかしている婆さんが、ネル婆。+40。
「三十年ぶりの新入りだよ。よく来たねえ、地獄の一丁目へ」
木の根元で酒瓶を抱えて寝ているのが、錬金術師くずれのドラン。−20。
「能力一? はっ、そりゃ傑作だ。ここにお似合いだよ」
黙々と薪を割っている大男が、木こりのボルク。+30。こちらを見もしない。
駆け寄ってきて俺の手を引いたのが、九歳のリタ。+70。
「おにいちゃん、どこから来たの? ごはん食べた?」
その後ろで腕を組んで睨んでいるのが、兄のティオ。+10。
「リタ、知らねえやつに懐くなって言ってるだろ。……どうせお前も、すぐ出てくんだろ」
そしてミナが、+85。
さて。
前世の俺なら、ここでまず決算書を出せと言うところだ。だが、この村に帳簿はない。数字なら頭の上に浮いているが、あれは結果だ。原因は現場にある。
だから、まず歩くことにした。
畑は半分が雑草に埋もれていて、芋は親指くらいの大きさしかない。家の屋根は継ぎはぎだらけ。そのくせ、ミナの薬草畑だけは、畝の一本一本まで手入れが行き届いている。
ミナの家の窓辺には、使いこんだ帳面が置いてあった。断ってから開くと、日付ごとに細かい字が並んでいる。
『ボルク、ネル婆のまき割り』
『ティオ、リタに芋をゆずる』
『ガルド、夕方、古井戸のふたを閉める』
誰が、何をしたか。それだけが、毎日欠かさず書いてある。
ティオが妹に芋を譲った日が、何日もあった。口ではつっけんどんなくせに。
この村で一番まともな記録係は、口のきけない娘だった。
村の真ん中には古井戸がある。ガルドは夕方になると必ずその蓋を閉め、水は裏の小川まで汲みに行く。理由を聞いても「古いからだ」としか言わなかった。
夕飯は、ネル婆の家で芋の汁をもらった。
ひと口すすって、俺は思わず椀を見下ろした。
味が、しない。
芋の甘みはある。香草の匂いもする。なのに、舌の上を何も通り過ぎていかない。輪郭のない、ぼやけた味だった。
「おにいちゃん、おいしい?」
隣でリタが、同じ汁をおいしそうにすすっている。この子は、これが当たり前の味なのだ。
「……うん。あったかいね」
嘘はつかずに、そう答えた。
足りないものは、ネル婆が教えてくれた。
「塩だよ」
煙管の灰を落としながら、婆さんは北を顎でしゃくった。
「あたしは若い頃、この道で塩を売り歩いてたのさ。三十年前のあの年に道が閉じてから、塩は町の代官様が一手に握ってる。高くて買えやしない。去年の冬は塩漬けが作れなくて、肉も菜っ葉も春まで持たなかった」
婆さんは、リタのほうをちらりと見た。
「あの子は冬じゅう、腹を空かせて泣いてたよ」
「塩の取れる場所は、ないんですか」
「村の裏に、苦い泉ならあるよ。しょっぱくて苦くて、煮詰めると青っぽい塩が出る。……ドランが三年前に作ったけど、誰も買わなかったねえ」
藁の寝床に寝転んで、俺は前世の手順を頭の中でなぞった。
再建の一手目は、大きな改革ではない。小さな勝ちを、一つ作ることだ。
潰れかけた現場の人間は、もう何をやっても無駄だと思っている。そこへ立派な計画を持ちこんでも、誰も動かない。まずは小さくてもいいから、やったら本当に良くなった、という手応えを一つ見せる。人が動くのは、その後だ。
この村の小さな勝ちは、たぶん塩だ。冬に塩漬けが一樽できる。それだけで、この村の顔つきは変わる。
そのドランが、夜になってふらりと俺の前に現れた。
「よう、新入り。孤児院から餞別くらい貰ってきたんだろ? 酒代、貸してくれよ。返さねえけどな」
懐には、院長先生が持たせてくれた銀貨が三枚ある。
「酒代は出せません」
「けっ」
「でも、日当なら出します」
ドランの赤い目が、こちらを向いた。
「苦い泉の水で、塩を作りたいんです。手伝ってくれたら、できた塩で日当を払います」
「……あれは失敗作だ。苦くて青くて、誰も買わなかった。王都の錬金術院にいた俺が作って、あのざまだ。やるだけ無駄だ」
「売れなかった理由を、ちゃんと調べた人はいますか」
ドランは黙った。頭の上の−20は、ぴくりとも動かない。
俺はそれ以上、何も言わなかった。
数字は、本人が動いたときにしか動かない。前世でもそうだった。社長に言われて嫌々やった改善は、社長がいなくなった翌月には元に戻る。押しつけて動かした数字は、たぶんすぐ元に戻る。
翌朝、泉のほとりで石を積んでいると、ボルクが黙って隣に来た。俺が両手で抱えて三歩でへたばる石を、片手で二つずつ運んでいく。礼を言っても、頷くだけだった。
昼過ぎ。背後で、がちゃりと硝子の鳴る音がした。
振り向くと、ドランが埃をかぶった蒸留器を抱えて立っていた。
「……勘違いすんなよ。日当が欲しいだけだ」
頭の上の数字が、−20から−12へ。午後に泉の水を三度煮て、苦味の出かたを手帳に書きつけはじめた頃には、−5になっていた。
日が暮れる頃には、俺の手は豆だらけになっていた。水を汲み、石を運び、火の番をする。能力一の体は、すぐに音を上げる。それでも、前世の徹夜明けよりはましだった。
藁の寝床に倒れこんだとき、頭の奥で、あの冷たい声がした。
〈記録。能力、1→2〉
「……上がった?」
思わず声が出た。
能力は生まれ持った器で、一生変わらない。聖堂で神官は、確かにそう言った。
一日働いただけで、変わったぞ。
前世で愛読していた経営者の本に、能力は未来進行形でとらえよ、という言葉があった。今の能力で、できるかできないかを決めるな。能力は、これから伸びるものとして考えろ。
あれは心構えの話だと思っていた。この世界では、どうやら文字どおりの意味らしい。
寝つけずに外へ出ると、村の裏が青く光っていた。
苦い泉だ。水面が、夜の底で青白く揺れている。村の真ん中では、古井戸の蓋の隙間からも、同じ色の光が細く漏れていた。
井戸の前に、ガルドが立っていた。月明かりの下で、その顔は紙のように白い。
「……三十年前と、同じ色だ」
◇
「塩の私造を禁ず。造りし者は、一升につき銀貨三枚を納めること」
十日後、町から来た徴税吏が、村の入口で代官の触れ書きを読み上げた。
「さらに。七つ屋の者が泉に毒を流し、町の井戸を濁らせているとの訴えあり。追って沙汰する」
読み終えると、男は触れ書きを石垣に打ちつけて帰っていった。
十日のあいだに、ドランは苦い泉から塩を取り出すことに成功していた。……成功と言っていいのかは、まだわからない。出来たのは、青みがかった苦い塩が、小壺に一つぶんだけだ。
それでも、町の連中はどこかで聞きつけたらしい。
「ほら見ろ。だから言ったんだ、やるだけ無駄だって」
ドランが蒸留器を蹴った。
「町に殴りこもうぜ。毒なんか流してねえって、言ってやればいい」
ティオが拳を握る。
「闇の塩商人に流せば、少しは金になるさね」
ネル婆が煙管を噛む。
「泉ごと埋めちまえ。ろくなことにならん」
ガルドが吐き捨てる。ボルクは黙ったまま。リタは「けんか、やだ」と泣きだし、ミナは帳面に何かを猛然と書きつけている。
そのとき、見えた。
七人それぞれの胸から、細い光の線が伸びている。ドランのは地面に向かって垂れ、ティオのは町のほうへ突き出て、ネル婆のは斜め下へ、ガルドのは泉と反対の方角へ。ボルクのは短くて、どこも指していない。リタのは震えていて、ミナのだけが、まっすぐ空を向いていた。
七本が、てんでばらばらの向きを指している。
前世の研修で、講師が繰り返していた言葉を思い出す。組織は、ベクトルを合わせろ。どんなに優秀な人間を集めても、向きがばらばらなら力は打ち消しあう。
あれは、こういうことだったのか。
「ちょっと、待ってください」
俺は手を挙げた。
「どうやって塩を作るか、どこで売るか。その前に、そもそもの話をさせてください。俺たちは、何のために塩を作るんですか」
「売るためだろ」とドラン。
「金になるからさね」とネル婆。
「代官を見返すためだ」とティオ。
ばらばらだ。そして、どれも間違ってはいない。
しばらくして、しゃくりあげながらリタが言った。
「……ふゆに、ごはんが、なくならないように」
誰も、何も言わなかった。
ネル婆が煙管を口から離した。
「……去年みたいに、ならないように、だね」
「冬に、誰も死なせないため、か」
ガルドが低く言った。
「……うん」
ボルクの声を、初めて聞いた。
ミナが帳面をこちらに向ける。紙いっぱいに、大きく二文字。
『ふゆ』
七本の光が、ゆっくりと向きを変えた。
垂れていた線が持ち上がり、突き出ていた線がしなる。短かった線が伸び、震えていた線が落ち着く。やがて七本とも同じ方角を向き、その根元が、俺の胸につながった。
〈記録。七名のベクトルが揃いました〉
その夜の仕事は、自分の目を疑うほど早かった。
ボルクが割る薪は倍に増え、火は一晩じゅう落ちなかった。ティオとリタが汲む水は途切れず、ネル婆は昔の塩商人が使っていた灰の使い方を思い出した。ガルドは片腕で器用に鍋をかき回し、ミナは煮詰まり具合を一刻ごとに帳面に記していく。
そしてドランが、煮詰まりかけた鍋を覗きこんで叫んだ。
「苦味は、煮詰める前に灰汁と一緒にすくやいいんだ! ……なんで三年も気づかなかった」
誰か一人が頑張ったのではない。七人の手が、同じ方向に動いていた。
真夜中を過ぎた頃、鍋の底に、最初の結晶が光った。
「わあ……青い!」
リタが歓声をあげ、ネル婆が「よく見つけたねえ」と頭を撫でる。
その横で、ティオが小さく舌打ちした。
「……リタばっかり」
ティオの胸から伸びる光が、わずかにたわんだ。
リタは結晶をひとつ指先にすくうと、まっすぐ兄のところへ走っていった。
「おにいちゃんが、お水いっぱい運んだからだよ。はい、いちばんめの」
ティオはしばらく妹の指先を睨んでいたが、やがて、ぶっきらぼうにそれを受け取った。たわんでいた光が、元の向きに戻る。
ミナの帳面に、一行増えたのが見えた。
『ティオ、いちばんめの、しおを、もらう』
夜明けには、ひと月かかるはずの量が、壺に十も並んでいた。
出来た塩は、やっぱり淡い青だった。だが、苦味はほとんどない。
ミナがひとつまみ舐めて、帳面に書いた。
『ねむくなる。いいほうの、ねむい』
「苛立ってる奴に舐めさせたら、静かになりそうだな」
ドランが笑った。この男が笑うのを見たのも、初めてだった。
問題は、売り方だ。
塩として売れば、代官の税に食われて終わる。安く大量に売れば、目をつけられる。
「塩としては、売りません」
俺は壺を一つ、ネル婆の前に置いた。
「眠れない夜の薬として、町の薬屋に少しだけ卸します。量は絞って、値段は高く。本当に必要な人にだけ届けばいい」
前世で、潰れかけた町の豆腐屋を立て直したときと同じだ。大手と同じ土俵で安売り合戦をしても勝てない。数を絞って、ほかにない物を、それを本当に欲しい人に高く売る。
翌日、ネル婆と二人で町の薬屋を訪ねた。
店の奥から出てきたのは、ネル婆より少し若い、背中の曲がった女主人だった。
「なんだい、ネル。生きてたのかい」
「あんたこそ、まだ店を潰してなかったのかい」
軽口を叩きあってから、女主人は青い塩をひとつまみ舌に乗せた。しばらく目を閉じて、それから、ほう、と息をついた。
「……こりゃいい。このところ、眠れないって客ばかりでね。どいつもこいつも、夜通し文句ばかり言ってるから眠れないのさ」
女主人は、小壺三つぶんを、普通の塩の十倍の値で引き取ってくれた。
青い塩は、藍塩と名づけた。
三日後、その藍塩を目当てに、一台の荷馬車が村へやって来た。
「いやあ、どうも。町の薬屋で、いい噂を聞きましてね」
御者台から降りてきたのは、人の好さそうな笑顔の男だった。年は三十前後。旅慣れた外套に、よく手入れされた革の鞄。
「その青い塩、あるだけ全部いただけませんか。薬屋の言い値の三倍、お出ししますよ」
気前のいい申し出に、ドランが目を丸くする。ネル婆は、品定めするように男の靴を見ていた。上等な革だ。旅の泥が、ほとんどついていない。
男は帽子を取って、丁寧に頭を下げた。
「申し遅れました。旅商人の、ゼロと申します」
金貨を数えながら、ゼロは村の裏のほうへ目をやった。
「それにしても、不思議な塩ですねえ。どうして青いんでしょう。泉の水は、どこから湧いているんです?」
「さあ。俺も来たばかりなので」
「そうですか。いや、ご立派です。あの代官殿に睨まれながら、こんな品を作るなんて」
笑顔も、声も、言葉も、感じがいい。前世なら、一番最初に信用してしまう種類の取引相手だ。
ただ、目だけが、泉のほうから一度も動かなかった。
俺は、男の頭の上を見た。
数字が浮いている。白でも、くすんだ赤でもない。色のない、透きとおった数字だった。
0。
プラスでもマイナスでもない。ちょうど、ゼロ。
そんな人間は、初めて見た。
◇
「町が、竜に呑まれる!」
夕暮れの村に、ティオが転がりこんできた。泥だらけの顔で、肩で息をしている。藍塩を薬屋に届けに、町へ行っていたはずだった。
この十日で、町はずいぶん荒れていた。
代官は、町の井戸が濁ったのも、子どもが熱を出したのも、税が上がったのも、すべて七つ屋の毒のせいだと触れ回った。広場の掲示板には『七つ屋の毒に気をつけよ』という張り紙まで出た。町の人間は、口では代官を恨み、裏では隣の家を恨み、最後には七つ屋を恨んだ。
薬屋の女主人だけは、藍塩を変わらず引き取ってくれた。眠れない客は、日に日に増えているという。
ゼロは三日おきにやって来て、藍塩をあるだけ買っていった。そのたびに、泉の水はどこから湧くのか、なぜ青いのか、煮るとき何を混ぜるのかと、根掘り葉掘り聞いてくる。俺は曖昧に笑ってごまかした。
あの男の0は、何度見ても、ぴくりとも動かなかった。
「広場の井戸から、水が噴き上がって……それが、竜になったんだ。体じゅうに口がいっぱいあって、みんな、ぶつぶつ何か言ってる」
ティオの声が震えている。
「あいつのせいだ、俺は悪くない、どうせ無駄だ、って。……代官は馬車で真っ先に逃げた。逃げながら、七つ屋の毒が竜を呼んだって叫んでた。衛兵まで一緒に逃げちまって、広場に残った人は、水の輪に囲まれて出られない」
ガルドが、古井戸の前で立ち尽くしていた。
「……三十年前の飢饉の年だ」
片腕の男は、空っぽの右袖を握りしめた。
「町の連中が、互いを恨んで、恨んで、恨み抜いた冬に、あれは出た。俺は町の衛兵だった。斬っても斬っても、あれは水だった。隣で槍を構えてたハンスは、俺の目の前で呑まれた。笑うと前歯の欠けた、いい奴だった」
ガルドは、しばらく黙った。
「俺は、あの広場に腕を置いてきた」
「倒したんですか」
「倒しちゃいねえ。大雨が来て、あれはただ流れて消えた。……流れただけだ」
あの夜、泉と古井戸が青く光っていたのを思い出す。この村の井戸と泉は、たぶん地の底で町の井戸とつながっているのだ。ガルドが毎晩蓋を閉めていた理由が、ようやくわかった。
腹の底が、熱くなった。
あの男は、また人のせいにして逃げたのか。能力一の孤児を廃村に捨て、村に濡れ衣を着せ、町が危なくなれば真っ先に逃げる。
その瞬間、体が重くなった。
〈警告。考え方の数値が低下しています。+100→+81→+60〉
膝から力が抜ける。胸から伸びていた七本の光が、ふっと緩んで、たわんだ。
「おい、どうした。顔色が悪いぞ」
ドランが俺の肩をつかむ。
わかった。怒ると、弱くなるのだ。この数字は、そういう仕組みらしい。
よりによって、今か。
袖を、くいと引かれた。
ミナだった。帳面を胸に抱えて、俺の顔を覗きこんでいる。それから、急いで何か書きつけて、こちらに向けた。
『レイ、こわいかお』
俺は、自分の頬に手を当てた。
強張っていた。前世で、何度も鏡の中に見た顔だ。
前世の記憶が、勝手に浮かんできた。
二十年前、師匠と組んだ再建の案件だ。腕のいい職人を抱えた、金型の工場だった。社長は頭の切れる男で、そして何もかもを人のせいにする男だった。売上が落ちれば営業のせい、不良が出れば職人のせい、資金が詰まれば銀行のせい。
二十五の俺は、その社長に本気で腹を立てた。会議で怒鳴りつけたこともある。正しさをぶつけるほど社長は意固地になり、職人たちは一人、また一人と辞めていった。
工場は潰れた。師匠は自分を責めて、酒の量が増えた。最後に会ったとき、師匠はぽつりと言った。
結局、人は変わらんよ。
それからまもなく、師匠は死んだ。
前世で何度も読み返した、ある経営者の言葉がある。
動機善なりや、私心なかりしか。
大きな決断の前には、自分の動機に私心が混じっていないかを問え、という意味だ。
だから、問うてみた。
俺は、何のために町へ行く?
広場の人間を助けるためか。それとも、逃げた代官の鼻を明かして、能力一と笑った連中を見返すためか。
……正直に言えば、両方だ。あの男が青ざめる顔を見てやりたいという気持ちが、確かにある。
でも、その気持ちで町へ行けば、二十年前と同じことになる。
俺は息を吐いた。
町には、藍塩を買ってくれた薬屋の婆さんがいる。リタが冬に食べる芋を買う市場がある。町が潰れれば、七つ屋も冬を越せない。
前世で読んだ、江戸の商家の家訓を思い出す。商いは互いの渡世。売る側だけが生き残る商売なんて、どこにもない。
「行きましょう」
俺は顔を上げた。
「代官のためじゃない。冬のためです」
〈記録。+60→+100〉
たわんでいた七本の光が、まっすぐに張り直された。
「……ああ」
ガルドが斧を拾い上げた。
「今度は、流されて終わりにはしねえ」
困ったことに、藍塩はゼロにほとんど売ってしまっていた。
ところが、ミナが小走りに家へ戻り、壺を一つ抱えて出てきた。帳面には、日付つきでこう書いてあった。
『ふゆのぶん。うらない』
この娘は、俺よりずっと先を見ていたらしい。
ミナの籠には、あの日聖堂で踏まれた青い草も、ひと束入っていた。青眠草。煎じれば、苛立ちを鎮める薬になるという。
ボルクが塩を煮る大鍋を背負い、俺たちは町へ走った。
夕闇の塩の道を、八人で駆けた。
能力二の足では、とてもボルクの歩幅についていけない。三度目に転びかけたところで、大男は黙って俺を小脇に抱えた。鍋と俺を両脇に抱えて、息ひとつ乱さない。
「……すみません」
「……ん」
情けないが、文句を言える立場ではなかった。
町の門をくぐると、通りに人の姿はなかった。家々の戸は固く閉ざされ、隙間から怯えた目がこちらを覗いている。どこからか、ぶつぶつという低い声が、波のように寄せては返していた。
広場は、青い水の竜にとぐろを巻かれていた。
鱗の代わりに、体じゅうに大小の口がある。その口がいっせいに、ぶつぶつと呟いていた。
あいつのせいだ。俺は悪くない。どうせ無駄だ。代官が。廃村の連中が。
聞き覚えのある言葉ばかりだった。町を出たあの日、通りで聞いた愚痴と、同じだ。
水の輪の内側で、町の人間が身を寄せ合っている。薬屋の女主人がいた。粉まみれの前掛けをしたパン屋の女将がいた。逃げ遅れた年寄りの衛兵がいた。その中に、震えるベルントの金髪も見えた。
輪の内側の誰かが、こちらに気づいて叫んだ。
「七つ屋の連中だ!」
「毒の村が来たぞ! お前らのせいで、こんな――」
助けに来たのだと言う暇もなかった。怯えた目が、いっせいに俺たちを睨む。その声に応えるように、竜の体に、新しい口がまた一つ開いた。
竜の首が、ゆっくりとこちらを向いた。
無数の口が、一度に黙る。
次の瞬間、竜は鎌首をもたげ、青い大波となって俺たちに襲いかかってきた。
「ボルク、鍋を!」
ボルクが大鍋を掲げた。
青い波が鉄の底にぶつかって、左右に割れる。飛沫が頬を打った。冷たい。水というより、誰かの吐いた溜め息を浴びたような、嫌な冷たさだった。
「ガルドさん、あれは斬れない。そうですね?」
「ああ。斬っても水に戻るだけだ」
「なら、斬りません」
俺は広場を見回した。
あれは町じゅうの愚痴が、井戸の底に溜まって形になったものだ。剣で斬っても、愚痴は消えない。消すなら、愚痴が出てくる元を止めるしかない。
「ミナ、青眠草を鍋に。ドランさん、藍塩を全部。ティオ、リタ、裏の小川から水を!」
ボルクが据えた大鍋に、ミナが草を千切って放りこみ、ドランが壺の塩を空ける。ネル婆が火を起こし、ガルドが片腕の斧で竜の鼻先を牽制する。
煮立った青い湯を、柄杓で竜の口へ浴びせた。
じゅっ、と音がして、口が一つ黙った。
また一つ。もう一つ。
竜の体が、目に見えて細くなる。
だが、すぐに元に戻った。
「代官のせいだ……!」
「廃村の連中が来たから、竜が怒ったんだ!」
「もう終わりだ、みんな呑まれる!」
水の輪の内側から、怯えた声が次々と上がる。そのたびに、竜の体に新しい口が開いた。
当然だ。愚痴の元は、目の前にいる。
俺は水の輪の際まで歩いた。
「町のみなさん」
声が震えないように、腹に力を入れる。
「この竜は、町の愚痴でできています。言えば言うほど、大きくなる」
「黙ってろ、能力一が!」
ベルントが叫んだ。その途端、竜の脇腹に、ひときわ大きな口が開いた。
「だから、黙ってください」
俺は足元の桶を一つ拾い上げて、輪の内側へ放った。
「文句を言う口があるなら、その手で桶を持ってください。小川から鍋まで、水を運ぶんです」
誰も動かなかった。
しばらくして、輪の端にいた小太りの女が、黙って桶を拾った。粉で白く汚れた前掛け。市場のパン屋の女将だ。頭の上の数字は、−15。
女将は唇を噛んで、輪の隙間から小川へ駆けだした。
数字が、−15から+3へ変わる。
ネル婆の胸から、女将へ向かって、細い光が一本伸びた。
俺がじかにつながれるのは、七人までらしい。
けれど、七人の一人ひとりから、さらに先へ、光が伸びていく。
ガルドから、かつての同僚だった年寄りの衛兵へ。ボルクから、材木屋の若い衆へ。ドランから、薬屋の婆さんへ。
桶を持つ手が、一つ、また一つと増えていく。小川から大鍋まで、人の列ができる。
頭の上の数字が、赤から白へ、次々にひっくり返っていった。
口が、黙っていく。
あいつのせいだ、が消え、どうせ無駄だ、が消える。竜の体は細り、縮み、とぐろがほどけていく。
最後まで叫んでいたのは、ベルントだった。
「俺は悪くない! 能力九十五だぞ、俺は――」
竜の残った口が、いっせいにベルントのほうを向いた。水の牙が、少年の頭上に落ちてくる。
俺は駆けだしていた。能力一……いや、二の足で間に合うはずがない。
ベルントの襟首をつかんだのは、俺ではなくボルクの手だった。大男は俺とベルントをまとめて抱え、横っ飛びに石畳を転がった。
水の牙が、さっきまでベルントのいた場所を砕いた。
腰を抜かしたベルントの前に、俺は桶を置いた。
少年はしばらく、震える目で桶を見つめていた。
それから、それを握って立ち上がった。
頭の上の数字は、−35から−20へ。まだ赤い。
でも、手は動いている。
竜は、小さな蛇ほどの大きさまで縮み、最後に広場の井戸へと沈んでいった。
井戸の水が、底まで透きとおる。
ガルドが、空っぽの右袖を見下ろして呟いた。
「三十年前は、雨が流しただけだった。……今度は、町が自分で黙らせたな」
パン屋の女将が、桶を抱えたまま、その場にへたりこんだ。誰かが笑いだし、誰かが泣きだした。広場を見渡すと、頭の上の数字は、ほとんどが白くなっていた。全部ではない。でも、ほとんどが。
◇
代官ヘルマンが町に戻ってきたのは、二日後のことだ。
自分が王都に急使を送って援軍を呼んだから竜が退いたのだと言い張り、七つ屋の毒の罪を改めて問うと息巻いた。
「鑑定板を持て。能力八十八のわしと、能力一の小僧と、どちらの言い分が正しいか、天秤に量らせてやる」
代官は神官に詰め寄り、自ら鑑定板の前に立った。
硝子に浮かんだ能力の欄は、61。
五年前に王都で受けた鑑定では、88だったという。
「能力は、生まれ持った器……変わるはずが……」
神官の顔から血の気が引いた。その頭の上の数字が、−8のあたりで、ふらふらと揺れている。
代官は鑑定板が壊れていると喚き散らした。だが、広場にいた誰一人として、もう代官の言葉に耳を貸さなかった。
町の人間は、桶を運んだのが誰で、逃げたのが誰かを、自分の目で見ていた。
代官は王都へ訴え出ると言い残して、町を去った。
神官は最後まで何も言わなかった。ただ、聖堂へ戻る前に一度だけ、俺のほうを振り返った。
町の顔役たちが、七つ屋に礼金を持ってきた。
俺は受け取らなかった。
「施しは、いりません。その代わり、仕事を頼みたいんです。塩の道を、もう一度開きたい。人手を貸してください。日当は、藍塩で払います」
顔役たちは顔を見合わせて、それから笑った。
パン屋の女将だけは、焼きたてのパンを籠いっぱいに抱えてきた。
「毒の村だなんて、言いふらして悪かったよ。あたしも、言った口だ」
女将は俯いたまま、籠を俺に押しつけた。
「謝るより、こっちのほうが得意だからさ」
これは、ありがたく受け取った。謝罪の言葉より、焼きたてのパンのほうが、よほど腹にたまる。
〈記録。能力、2→5〉
その夜、村に戻ると、ガルドが古井戸の蓋を外して、脇に立てかけた。
「もう、閉めとく理由もねえからな」
それから、片腕の男は俺の顔をじっと見た。
「坊主。お前、広場で何を見てた。誰が桶を持つか、持つ前からわかってるような顔だったぞ」
少し迷ってから、俺は答えた。
「……みんなの、向きです」
「向き?」
「どっちを向いて生きてるか、です。それが、なんとなく見えるんです」
嘘ではない。全部でもないが。
ガルドはしばらく黙っていたが、やがて鼻を鳴らした。
「再建屋だか何だか知らねえが、妙な坊主を拾っちまったもんだ」
その頭の上の+60が、+62になっていた。
リタは、パンを抱えたまま眠ってしまった。ティオがその上に、黙って毛布を掛けている。
古井戸を覗きこむと、水は底まで澄んでいて、月と、俺の顔が映っていた。
頭の上に、+100。
冷たい声が、頭の奥で告げた。
〈記録。この数値の表示を禁じたのは、初代賢者です〉
「……初代賢者?」
聖堂の天秤を思い出す。皿を吊るす鉤は三つ。下がっていた皿は、二枚。
街道のほうで、車輪の音がした。
月明かりの下を、ゼロの荷馬車が通り過ぎていく。御者台の男が、こちらに気づいて愛想よく手を振った。
その頭の上の、色のない0が。
一瞬だけ、黒々とした−100に変わり、すぐにまた0に戻った。
俺は、振り返す手を上げられなかった。
隣に、ミナが腰を下ろした。
膝の上で帳面を開き、今日の出来事を書きつけている。覗きこむと、こうあった。
『レイ、ふゆを、まもった』
『パン屋のおかみさん、さいしょに、おけをもった』
『ベルント、おけをもった』
ミナの帳面には、今日も数字が一つも書かれていない。
書いてあるのは、誰が何をしたか。それだけだ。
――数字に出ないものを見ろ。
師匠。この世界は、その練習にはうってつけの場所みたいです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
レイと七人の物語は、ひとまずここで一区切りです。
ゼロの数字、初代賢者、そして三枚目の皿。
この先の物語を連載版として書くかどうかは、皆さまの反応を見て決めたいと思っています。
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