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フランは気味悪がっている(仮  作者: まつり
聖騎士

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アンリエント

本当に驚いた。

僕は契約上、この世に関与出来ない条件でフランと話す許可を得たのだから、母上が僕を見つけるはずなど無いはずなのに。



弟に全てを与え、胎内で石ころとなって消えた僕は、気がつくと神様の元にいた。


成長した弟には劣るだろうけれども綺麗な少年の姿をした彼は、僕に同情的で、せめて別のところで人生を送ってみないかと提案された。


しかしその救いとでも言うべき提案に、正直僕はあまり興味を持てなかった。


やり切った気持ちもあった。

弟も母も助けられたから、満足していたのだった。


「そんな悲しい事言わないでよ。

美徳だよ、確かに、人を救うのは。

素晴らしい事だと思う。

だから神である僕の前に君が現れたんだ。


多分ね。

神でも感知できない意思みたいなものが、君を可哀想に思ったから僕に送り届けたんだと思うよ。


ま、僕は転生を司りはするけど、別に全知全能って訳じゃあないからさ。

そこんところは詳しく知らないんだけどね。」


少年はなんというかフランクだった。

軽いんですね、なんというか、態度が。

そう彼に言うと、偉ぶるにもここに来る人は良い奴ばっかりだからさぁ、意味なく威圧したって仕方ないってさ。


「何か望みはあるかい?

僕は転生神。

生まれ変わりを司る神さ。


だから君が次、こういう人生を送りたいっていうならば、それの手助けは出来るよ。」


そんなものはない。

僕は産まれてすらいなかった。

夢も希望も持つ前に終わった。


だが悲しくはないんだ。

やるべき事をやり切ったんだから。


強いて願いを言うなら、家族の元へ帰して欲しい。

それぐらいだ。


「それは出来ないんだ、ごめんね。

君がいる事で未来が変わるのは構わないんだけど、過去が変わるのは許容できない。

世界が壊れてしまうのさ。」


なら僕に望みは無いよ。

僕の世界は弟が全てだったんだから。


「そうだね。

僕が悪かった。


酷な事を聞いたと思うよ。」


神様は僕の隣に座り、話を続ける。

世界はいいことばかりじゃないけれど、悪いことだけでもない。


君が楽しそうなら、とりあえずはそれでいい事にすると。


「良くある特別サービスでさ、何かの才能をあげるよ。

それが役に立つかは分からないけれど、心の支えにはなるかもしれないよ。」


優しい神様と長い事話をして、次に行く踏ん切りはついた。


それでもやっぱり弟が気掛かりで、一つだけお願いをする事にした。


「もし僕が次の人生で死んだ時、一度だけ弟の事を教えてくれないかな。」


良い子に育っても、悪人だとしても、構わない。

少しでも大きくなった姿をしれたなら、今世の僕の人生に花を添えられる。

それを僕の供養とすることにした。


「あんまり良く無いんだけどねぇ…。」


そう困った顔で笑う神様は、最終的にはその案を受け入れてくれた。

無気力、というか振り絞り尽くして、気力が無くなった僕の生きる糧として許してくれた。


そうして僕は僕の人生を新たに始める事となった。

貰った才能は役に立ち、僕は剣で名を上げた。


弟の事はその当時、夢の中の出来事の様に記憶が薄れていったけれど、常に付き纏う心残りとしてはあった。


何故なら、僕は次の人生でも結局天涯孤独となっていたからだ。

親は居たが、早くから道場の門下生として住み込んでいたし、その親も戦火で散った。


魔法も魔物もいない平和な世界だと聞いていたのだけれど、人は争う相手が居なくなると、人と争うらしい。


神様から貰ったという、文字通りの天才剣士として生きた僕であったが、争いに継ぐ争いに参加し続けて、多忙の中での不摂生が原因なのか若くして結核という病気で死んだ。


その世界にも大切な者は居た。

仲間とかね。

その人生もやり切ったし、後悔もない。

だけと生まれ付いてからずっとついて回っていて、世界からの疎外感とでも言う様な感覚は死ぬまでなくなる事は無かった。


そのせいか、死ぬと分かった時に強く弟のことを思い出した。

神様が弟の事を教えてくれる事も思い出して、死ぬのが少し怖く無くなった。


死後、神様は約束通り待っていてくれて、弟の様子を見せてくれるらしい。

まさか姿まで見られるなんて思わなかったから、嬉しいサプライズだ。


「じゃあ映してあげるねぇ。」


何もない空間が裂け、そこには男の子が立っていて、親指を咥えていた。


可愛い。

僕のがに電撃でも走ったかの様に痺れた。

立っていられない!

可愛い!!!


「どうしたの?

この子が君の弟君だよ。

名前はフランセスク。

アンリエント家の長男として可愛がられているみたい。」


おぉ!そうか!

そうだろうなぁ、可愛い過ぎるもん。

この生き物を虐められる奴なんていないって。


「良かったなぁ、身体どころか命張った甲斐があるよ。

あ、神様見て!母上のスカートの裾を握ってる!

可愛くない?

弟…フランってば可愛いくない!?」


左手はスカートを握り、右手の親指は口の中。

はぁああ!

はぁあああああ!

可愛い!


「う、うん。そうだね。」


「あれ?なんフランってば、なんでこんな小さいの?

僕が死んだのは25歳の時なんだけど…僕らは双子だよね。」


神様が言うには、世界を渡ると時間の流れがおかしくなる事が多いらしい。

昔々、海の世界に行って帰ってきた男が帰ると、70年程経過していたなんてこともあったのだとか。


「そうなんだ。

小さい頃を見られて得した気分だなぁ。」


座り込んで夢中でフランを見続ける僕に、神様はこう言った。


「最後になるから、好きなだけ見てて良いよ。

満足したら教えておくれ。」


それから2年が経過した。



「あのさ…えーと総司君、いいかな。」


神様は度々こうして話しかけてくる。

恐らくこんなに長く留まるなんて思ってなかったんだろうけれど、一度言ってしまったので、早く出てけとは言えないみたいだ。


「神様。」


「お、え?満足した?」


「全然。全然だよ。

あのさ、僕のことは総司じゃなくてアンリエントと呼んでくれないかな。

確か僕の名前のはずだよね。

僕はフランのお兄ちゃんなんだから、アンリエントとしか呼ばれたくないんだ。」


そうやってフランをずっと見続けて、フランは変わらずずっと可愛いけども、ストランド領には問題があるように見えた。

理由は分からないが、父上のガタンが居ないのだ。

始めはどこかで仕事をしているのだろうかと思ったけど、流石に年単位で帰宅しないのはあり得ない。


しばらくして、失踪したきりというのも分かった。


こんな可愛い我が子を放って自分の意思で居なくなるとなんて思えないから、何かがあったのだろう。


ともかく、父上がいないストランドは母上が支えていて、フランもそれを気にしてか早いうちから剣を始めた。


剣の達人である僕からしたら拙いけれど、だからこそ応援したくなる。

っていうか、可愛い。

ぴこぴこと剣を振る姿は可愛い。


「なんでこの世界には行けないかなぁ。

フラン、父上が居なくって苦労しそうだ。

僕なら剣も教えられるし、貴族的な振る舞いも少しは教えられるのに。」


独り言の様に呟く愚痴に、神様は教えてくれる。


「世界にゼロから何かを作るのは大変なんだよ。

君の身体は無くなったから、構築しなければならないでしょ?」


そうなのか。

…ん?なら、身体を作らなければ良いんじゃないか。


「神様、この総司の身体もいらないからさ、僕をこの世界に送ってよ。

ただフランを見守るだけで構わない。

意思だけの存在で構わないから。」


神様は明確に引いていた。

だけど検討はしてくれて、しばらく考えたあとに様々な縛りと共に許可してくれた。


「ちょっと気持ち悪いぐらいの執着だけど、はじめてここに来た時のことを考えるとなるべくそうしてあげたいと思う。

本当にいいの?

フランを見守るだけの存在として、それだけなんだよ。

干渉は出来ないんだ。


辛い事も見るだけになる可能性もあるんだよ。」


それも考えた。

それでも共に在る事ができるならそれで満足だ。

僕の始まりは、そうだったんだから。


「もちろん。」


「はぁ、分かった。

いつまでもここに置いておく訳にもいかないしね。


君をフランの側へ送ろう。

話せないし、触れられない。


…だけど、僕は君の事も大好きになったから、一回だけ。

フラン君が成人する前に一回、触れ合うことを許そうと思う。


その時なにを話すのかは君次第だ。」


なんて温情だろうか。

あのフランと話せるだなんて。


「一緒にお酒でも飲もうかなぁ。」


条件的に未成年ではあるけれど、成人ギリギリならまぁ、構わないだろう。


しかし、神様はそれは出来ないという。


「君の存在がめちゃくちゃだから、一番安定している空間が神域だから、そこで話す事になると思うんだけどね?


神域の食べ物は食べちゃいけないのさ。

神の気が含まれた食べ物を取り込んじゃうと大変な事になるんだ。


だから、剣でも教えてあげなよ。

君の特技だし、フラン君も必要としてそうだ。」


そっか。

それは残念だけれど、仕方ない。

確かに剣を教えるのも楽しそうだ。


僕の剣がフランを通じて蘇る。

それを僕の証としよう。


「そうするよ。

…だけど剣なら一回だけじゃあ厳しいなぁ。


剣のみを教えるって条件で、何回か許してよ。」


「その時になったら考えてあげるよ。

君次第さ。

じゃあ、また、さよならだ。


今度会う時は兄弟揃ってかな。

帰りにはまたここに寄れる様にしておくから。」



そうして僕はフランに取り憑いた…とは言いたくないけれど、事実そんな感じだ。


成人まであと8年ぐらいかと、話せる時を楽しみにしていた。

まさかフランと話し続ける事が出来るだなんて思いもしなかったんだ。


そして、母上に気がついてもらえるとも。


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