表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フランは気味悪がっている(仮  作者: まつり
聖騎士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/54

我が子

フランが新たな魔法を発現し姿を変えた時、私はすぐに察する事ができました。

あぁ、やはり我が子は2人居たのだと。


ガタンの子を宿してから、元々強くはない私の体調は日々悪化していきました。

しかし医師に見てもらいましても、何処かが悪いわけではないと言われる。


私もガタンも狼狽するばかりでしたが、ある日その原因が分かりました。

それは偶然、少し体調が良い天気のいい日に、料理をしている際に発現いたしました。


普段から料理をする訳ではない私ですが、記念日にはどうにか手料理を振る舞うことを目標にしています。

その日はガタンの誕生日で、偶然にも体調が良かったので、包丁を握りました。


メイド衆が失礼にも青い顔をしながら見守ってくれてはいましたが、やはりというべきか、指を切りました。


まあまあ、元々傭兵の家系、戦闘をこなして来ておりますから、こんなかすり傷は屁でもありません。

何かを得るための対価として下の下、この程度の血と引き換えに料理ができるのならば安いものです。


しかし料理に血が入るのは良くありません。

大雑把な傭兵団でもそれは厳命されておりました。


なにやら、人から人へと伝染る病の素があるらしいのです。


なので治療をしてから続きを、と思い薬箱から傷薬を取り出したのですが、いざ塗ろうと手を見ても、傷はどこにもありませんでした。


…はて。

あまりにスパリと浅く切った場合、傷がどこかわからなくなる事はありますので、私はその様な現象だと気にせず続けることにしました。


しかし何度か同じ事が続いて、これは違うと確信しました。


ガタンと私が作ったポトフを食べながら、自分が作ったものだと伝えた際、彼はとても驚いておりました。

何故なら、私が料理をした場合、大抵手が歴戦の戦士の様な様相を呈するのに、この日は傷ひとつありませんでしたので。


「セリーヌ!料理が上手くなったんだなぁ!」


大きな声で喜ぶガタンでしたが、私の複雑そうな表情を見て違うのが伝わった様です。


「ガタン、これを見てください。」


手元にあるナイフを手に取り、もう片方の手に当てて引く。

人を傷つけるのでは無く、肉を切るためのナイフなので切れ味は鈍いですが、力強く引けば血は流れます。


「おい!なにやっ…。」


自らを傷つけた私の手を取り、辞めさせようとしたガタンの動きが止まります。

手につけた傷がみるみると塞がっていくのを目の前で見ればそうもなるでしょう。


「…なんだ?新しい魔法を身につけたのか?

いや、セリーヌの魔力の感じじゃねぇ。


…まさか。」


彼も魔法で戦う戦士です。

人の魔力の流れなど、落ち着いて目を凝らせばすぐに分かるでしょう。


「マジックベイビーか…!」


マジックベイビー。

産まれながらに魔法の才能を持ち、誰からも学ばず発現してしまう…病気とはまた違いますが、症状といいましょうか。


殆どの場合は1歳前後に発動する事で発見されるものですが、稀に胎内で既に魔法を使い始める子が居るそうです。


マジックベイビーは魔法の才能に溢れる。

普通ならそのことは喜ばれそうですが、実のところあまり歓迎されてはおりません。


大概、自分の魔力に振り回されて、生命力すら使い果たして死んでしまうのですから。


産まれてさえいれば対処法は確立されております。

魔力回復薬をミルクに混ぜたり、教会産の聖水に漬けて保育したりなどさまざま方法はありますが、どれも高価。


庶民であれば頭を抱え泣く泣く諦める家も多いと聞きます。

しかし曲がりなりにも我が家は貴族、男爵家です。

由緒…は良く分かりませんが、夫は元聖騎士、信用もあるので我が家だけで足りなければ借金する事は可能でしょう。


私の実家は有って無い様なものですが、私たちは共に恵まれておりますので、どうにでもなります。


しかし、その対処法は産まれてさえいたら、の話でございます。


胎児のマジックベイビーなど前例が少な過ぎる。

ましてや無事に産まれたとなると更に少ない。


ガタンと話し合った結果、とりあえず私も魔力回復薬を日常的に飲むことになりました。

母から子へと栄養が行くならば、魔力も与えられる可能性があるからでございます。


出来ることがそれしか無い。

忸怩たる思いでございますが、それでもそうするしかないのでした。


「気にすんなセリーヌ。

こんな優しい子が無事に産まれねぇ訳がねぇ。

そうだろ?

腹ん中にいる頃から母ちゃんを癒そうと奮闘してる奴なんだから、母ちゃんを悲しませる訳がねぇんだ。」


その言葉を希望として、私は過ごしておりました。


それからは不安がよぎる日もありましたが、平和に過ごしておりました。

怪我をしたりすると、我が子の魔法がより強く発現する可能性があるので、料理を禁止されたのは不満でしたが仕方ありません。


そして我が子の魔力を感じる様にもなりました。

理解したのが感知に役立ったのか、それとも母の愛が成せる業かは分かりませんが、自分の魔力とは別の魔力が身体を駆け巡っているのが手に取るように分かりました。


それも、二つ。


片方の魔力は、私の身体を癒している魔力。

そしてもう一つは、私の身体を癒し続け、消耗している兄弟を応援しているかの様な魔力。


その時初めて、双子を宿していると分かったのです。


どちらがお兄ちゃんかしら。

それが分かるのは大分先の話にはなりましたが、予想は当たっておりました。


2人いるのなら必要な物が増えます。


「名前を考えてくれ?早くないか?

あぁ、確かにな。

呼びかけるのに必要か。

産まれて来てからが俺らの子供じゃなくて、もう、俺らの子供なんだから。


分かったよ、考えておく。


え?なんでだよ。

こういうのは渾身の一作を…。


…分かったよ、二つな。

考えておくよ。

どっちを名付けるかは、セリーヌに任せるから。


…俺のセンスってそんなに信用ない?」


そうして、お腹の子たちの名前が決まりました。


癒しの魔法を掛けてくれているのが、フランセスク。

私の身体を強くしたり、フランセスクを助けているのがアンリエント。


そう決めました。


お腹を撫でながら名前を呼ぶ。

それだけで、マジックベイビーの双子というかなり危うい状況でも大丈夫な気がしていました。


コン、コホン。


臨月まであと1ヶ月ちょっとというタイミングで、私は軽い風邪の様な症状が出ました。


妊婦はそうなりやすいと聞いておりましたので、それに狼狽えることはありませんでしたが、問題は起きてしまいました。


内部から透けて、お腹が発光するほどの魔力。


恐らくは母体が弱ったと感じたのでしょう

私の風邪をきっかけに、フランセスクの魔法が強まったのです。


自力で操れる物ではない魔力を、私とガタンを合わせたよりも強く出し続けて無事なはずはありません。


「ダメです、フラン!」


そう呼びかけても、魔法は弱まらず。

どう考えてもフランはダメだろうと思いました。

しかし、もう一つの魔力も強まり、私の身体とフランのカバーをし始めました。


凄い子達。


だけどこのままにしていたら2人とも死んでしまいます。

私は愛剣を取り出し、腹を裂く事に決めました。

産まれるまで足りない時間は1ヶ月と少しなら、このままにしているよりも可能性はあるでしょう。


信頼しているメイドだけを傍に、他の人には秘密にしました。

止められるでしょうしね。


躊躇う事なく腹を切りましたが、身体が刃を弾きます。

これはアンリエントの魔法の力でしょうか。

何度も何度も斬りつけて、身体に刃を立てて体重をかけてようやくついた少しの傷も、フランセスクの魔法で直ぐに治る。


何度試しても、彼らの力は私を傷つけることを許しませんでした。


手に力が入らなっても、自分に剣を突き立てている姿は狂人のそれでしょうが、この時ほかの解決策などありませんでした。


痛みではなく悲しみで流れる涙。

気がつくと私は眠っていた様です。


体力的には問題などありません。

風邪も完治しておりました。

精神的な疲れでしょう。

身体は彼らが守り、癒してくれているのだから。


ガタンにバレない様、毎夜自分に剣を突き立てて力尽き眠る。


3日か、4日か、もっと長かったのか短かったのか。

時間感覚を失っていた私に知る術はありませんが、目を覚ますと魔法が落ち着いておりました。


正確に言えば、フランの強大な魔力は変わらず、フランの器が安定したという感覚でしょうか。

ほっと安心しました。

これなら産まれてくる間に壊れてしまう事はないと、理解出来ましたので。


それからは穏やかなものでした。

フランと、少なくはなりましたがアンリエントの魔力も感じ、これからこの2人がどんな大物になるのだろうと想像し、嬉しくなりました。


そして出産の日。


産まれて来たのはフランセスクのみで、アンリエントなど存在しませんでした。

代わりに出て来たのは、黒く光る石。


この石が何かは分かりませんが、フランが両手で抱える様に持ち共に出て来ました。


魔石に似ていると思います。

しかもかなりの力を持つ。


何かの要因でこれが身体に混じり、マジックベイビーを助けた。

医師はそう判断をしましたが、私には納得がいきませんでした。

確かに意思を感じたのですから、こんな石ころな訳がないと、そう思いました。

そして、これはフランを守るものであるのは間違いないとも感じました。


ペンダントへと加工し、フランに分別がついた頃に渡そうと考えましたが、ガタンへ渡す事に決めました。

私にはやはり、もう1人の子供がいて、この石に変化したとしか思えなかったのです。


ならば、私とフランとは共にいた時間がありましたが、父と一緒の時間もあって良いと思ったのです。


ガタンにそれを知らせるのは考え物でしたので、彼の母、先代のストランド夫人の名前を使う事にしました。

故人なので調べようがないからです。


ストランド家の女に受け継がれる石で、子が産まれるまでは当主にも話はしない。

子が産まれたら当主へと渡す。

そして子が結婚する時にまた相手へと受け継ぐ、という事にしました。


嘘ですが、家宝っぽくしておけば粗忽なガタンも無くしたりはしないでしょう。


フランへ渡るのは結婚して子が産まれてからなので、遠い先の話になりそうですが、アンリエントは弟の為には頑張りすぎてしまう性質の様なので、見守るだけにして貰いましょう。

セリーヌの話し方がバカ丁寧なわりに正確じゃないのは、彼女の出自が下民の傭兵で、ガタンと結婚した際に自身で矯正したものの為です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ