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変身…?

幻想騎士エクサムと名付けた、俺とアンリが合体した変身形態。

まさか俺にとっても幻想になるとは思わなかった。


「何がしたいんだい。」


違うんだ、俺はちゃんと本気というか、自分に使える力を全て見せようと思ったんだ。

だけどアンリの奴が…。


『てっきり僕の意思では変身拒否は出来ないと思ってたんだけど、やれば出来るもんだね。

…なら、もしかして…。


…変身っ!』


俺の掛け声からかなり遅れての発光。

呆れた顔をしていたダンダリアも首を傾げていたランパードもフイをつかれたらしく、眩しそうな顔をして視界を腕で覆った。


「なるほどじゃな、謎の掛け声はフェイクで、タイミングを外した目眩しが本命か!」


ジジイが見当違いの事を考察している。


「…頼むよアンリ。

確かに安易だとは思った、だけどだな、俺にも立場というものがあるのだ…。


…あれ?」


姿は変わっている。

確かにエクサムの姿になっている感じがする。


普段は俺の身体を核にしてアンリが外側を形成し、変身していて、その身体の制御はアンリが行っている。


しかしエクサムの動きは俺が制御している。


「こんな事が出来るのか…!」


『そうみたい。

僕が変身するかどうかをコントロール出来るなら、制御を誰がするかも選べるんじゃないかなって思ったんだよね。』


これならアンリの気が乗らない戦いでもエクサムの力で戦えるという訳か。


「待たせたなダンダリア。」


普段と30センチぐらい違う身長。

これならリーチ差も腕力差も無い。


「貴族的な仮面、フリルにマント。

金色の長髪に豪華な細剣ねぇ。


どこの王子様か知らないけどね、そういう奴が強いのなんてそれこそ物語の中だけさ。


来な!」


ダン!と踏み込む音が大きく響く。

自分で出した音とは思えない程。


次の一歩、頬に触れる風が過去ないほど強く感じるほど素早いスピードで、俺は地面に顔を打ちつけて気を失った、らしい。


らしいと言うのは、自分ではよく覚えていないからだ。

後でアンリに聞いた。


『足の長さとかさ、身体の大きさに感覚があってないのにいきなり全力で走り出すから2歩目の足が空転してね、剣を下段に構えたままだったもんだから、強かに顔を打ちつけていたよ。


よかったねぇ、持った剣が体に刺さったり、顔の骨折をしなくて。

まぁ、骨折は自分で治せるか、あはは。

一応治癒しておきなよ?


表面はどうあれ、頭は内部も怖いから。』


そう言われた俺はどんな顔をしていたか。

あんなに大袈裟に構えて、さぁやってやりますよって顔をして、転んで気絶。


処理しきれないまま、忠告通りに回復魔法を発動して飲み込むと、気がついていなかった顔の痛みが逆に感じられ、それはそのまま消えていった。


寝かせてもらっていたベッドから起き上がって、部屋を出ようと思ったが、どの面下げて会えばいいのかが分からず、サイドテーブルに置いてあった水差しから水を飲んで、もう一度ベッドへ戻り不貞寝をした。



「消えたかと思ったよ。

転んだのを見失ったとかじゃあなくってね、1歩目から想像以上に速かった。


ランプスは横から見てたんだから、よりはっきり見えたでしょ?

どうだったのさ、あの子は。」


ダンダリアは素直にそう思った。

格好つけた鼻につく構えを見せていたので、笑いそうにはなったが、感じる力は大きく威圧感もあった。

なので、目を切ることも油断もなかったとはっきり言えるのだが、それでも見失ったのだ。


もしあのまますっ転ばずに攻撃が届いていたなら、受け切れただろうか。

もし反応して受けられたとしても、無事だっただろうか。

そう考えると、聖騎士団長までのし上がった実力者からの評価も聞いて見たくなった。


「んむ、速かった。

身体強化系に富んでいるとは聞いてなかったがの、身体も強かったのか。

速いことを自慢にしておる戦士よりも速かったかもしれんの。」


「なんだい、あの子、報告が来るほどの特別な何かがある子なのかい?」


聖騎士試験を受ける人物には2種類いる。

実績を持ってそのまま聖騎士になる者。

特別な何かを見そめられて、聖騎士に誘われる者。


それらには前もって、聖騎士自慢の調査力での調査が入る。

他薦自薦問わず、近しい者が見る実力は怪しい所があるからだ。


問題が無ければ、問題無しと。

問題があれば資格無しと、基本的には簡易な報告になるのだが、聖騎士から見てもなお特別だと感じられる力があれば、詳細に報告が来る。


「うむ。

フランの治癒魔法はかなりのもんでな、使える回数は少ないが、目を見張る回復速度と回復力を持っているらしい。」


「なんだい。

確かに凄い力だろうけど、今回の、あの速さとは何の関係もないじゃないか。」


報告書では回復魔法ともう一つ、ガーナンド家が執着しているらしいと、フランに憑いた神にも言及があった。


剣神が憑いている。


そう記載されていたのだが、それについてランパードは然程気にしていなかった。

たまに魔力の急激な成長が起こり、更にそれが精神的に不安定な思春期に重なると、そう錯覚される事が多々あるからだ。


それでもガーナンド家が婚約者をあてがってまで取り込もうとしているので、腕に見どころもあるのだろうと考えていたのだが、不意打ちに対する素晴らしい反応はともかく、振る剣やその運びは工夫はあれど平凡寄りと言っても良い位の評価に収まる程度であった。


努力の跡もしっかり見えるので、がっかりした訳ではないのだが、それでもわざわざ特記したり、ガーナンド家が固執する様には思えなかった。


「神憑き、とは書かれていたが、良くある大袈裟なもんだと思ってたが、まさか姿まで変化するとは。


ダンダリア、姿を変えるってのは本来出鱈目に魔力を食うから効率が悪いんだ。

そうだろ?身体ってのは複雑なメカニズムで動いてんだ。


俺みたいに恒久的に変化したならまだしも、勝手に元に戻ったところを見ると、自由自在か、それに近いんだろう。

あり得ない。

不具合がない様に身体を正確に作り替えながら、力も上がるなんて変だ。


それこそ、フランの身体にもう一人分、それもかなりの実力者の力をぶち込んだみたいだった。」


「ちょっとおじいちゃん、言葉が戻っているよ。」


眉と口角を上げて反応はしたが、ランパードは考え込む。

もしあれを扱えたなら、対峙する訓練された相手さえ見失う程の力を扱えたなら、確かに神が憑いていると言って良いのではないだろうか。


ランパードは懐からフランの推薦状を取り出して目を通す。

ガタンの妻、セリーヌの手紙でも、やはり回復魔法と神憑きについて触れられている。


そしてもう一枚の封筒。

セスが実家のガーナンド家に送った手紙の写しを読む。

セスは、手加減されて技術比べにしてもらい、それでもなお負けた、と書かれていた。


あの時みたフランの変化した姿からは技術の向上は見られなかった。

剣の家ガーナンド家の当主の弟、セスが負けるとはとても思えない。


「あいつ、まだ何かを隠しておるの。」


そうとしか、思えない。


「そうかい。

まぁ、治癒魔法は見せてもらってからの評価になるけどね、あの子を預かるのに異論は無いよ。

からかったら楽しそうだしね。


変身?だっけ?

あれの方も気になるところだけどね。」


ま、それは追々。

そう呟く孫娘も楽しそうだ。


「それじゃあ頼む。

俺は引退した身だしの。


聖騎士団第2班3席ダンダリア。

俺の友人の、戦友の、部下の、息子の様な男の…遺した子をお前に預ける。


死んでるとは限らんがな…責任感の強い男だった。

妻子を置いて居なくなるとは思えんが、もう一人のフランといい不可思議な事が多すぎる。


そっちは俺が調べるから、あまり触れてやるなよ。」


ダンダリアはぬるくなったお茶を飲み干し、ゆっくり立ち上がると、しっかりと騎士の礼を執る。

そしてランパードから推薦状を預かると、起きた気配はしたのに、二度寝をかましている「部下」の元へと歩き出した。

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