表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

第1話「雑用係、追放される」

「……レイ、お前、今日も遅いな。荷物の整理ぐらい、とっととやれよ」


ギルドの地下訓練場。

薄暗い空間に、乾いた声が響く。


パーティー《暁の剣》の面々は、練習後の整理もせず、椅子にふんぞり返っていた。

その視線の先には、ひとり黙々と荷物を運ぶ少年、レイ・アルステッドの姿があった。


「すまない。あと少しで終わる」


レイは黙々と道具袋を整え、泥のついた剣を拭いていく。

どれも自分の装備ではない。仲間――いや、彼を見下す連中の装備だ。


(戦いに出ることもなく、ただの雑用係……それが、俺の“役割”だ)


本来、魔導士見習いとして参加したパーティーだった。

だが、初期ステータスに“魔力ゼロ”と記されたその日から、周囲の態度は一変した。


戦いには出るな。

魔法も使うな。

掃除でもしてろ――と。


それでも、レイは黙って耐えてきた。

自分には何もないと思い込まされ、努力を嘲られ、それでも仲間でありたいと願っていた。


「はぁ……ほんと、なんでこんな雑魚連れてきたんだか。おかげでパーティーランクも上がらねぇよな」


その日、依頼先からの帰還直後。

ギルドの会議室に呼び出されたレイは、リーダーである剣士カイルから「追放通告」を突きつけられた。


「――レイ・アルステッド。お前は今日限りでパーティーを抜けろ」


「……理由は?」


「理由? はっ、言わせるのかよ。スキルも魔力もないお荷物が、何を聞いてんだ?」


他のメンバーがくすくすと笑う。

あの日助けた仲間たちでさえ、今は彼を“無能”と断じていた。


「お前がいなくなれば、ようやくまともな戦いができる。せいぜい一人で生き延びろよ、雑用係さん」


レイは何も言わなかった。

いや、言えなかったのかもしれない。

ただ静かに、部屋を出てギルドを後にする。


そして――


◇ ◇ ◇


その夜。

レイは一人、王都の外れにある森の中を歩いていた。


月明かりの下。

ふと、彼の指に嵌められていた《銀の封印指輪》が、淡く光を放つ。


「……もう、いいよな。全部、終わったんだから」


そう呟くと同時に、レイは指輪に意識を集中させた。


《封印解除――確認完了。認証:レイ・アルステッド。魔導識別コード照合一致》


――カチン。


乾いた音と共に、指輪が砕ける。

次の瞬間――


彼の全身から、凄まじい魔力の奔流が解き放たれた。


風が唸り、木々がざわめき、空気が震える。

大気がレイの魔力に呼応し、周囲の温度さえ変わっていく。


【ステータス更新】

種族:人間

職業:最終魔導士アルケイン・マスター

属性適性:火・水・風・土・雷・氷・光・闇・時・空

スキル:《大魔典》《無詠唱》《魔力無限》《創造魔法》《古代言語理解》


「……やっぱり。俺は、“魔力ゼロ”じゃなかった」


微笑むレイの背に、八つの魔法陣が浮かぶ。

それは、かつて伝説の中で語られた、“すべての魔を操る者”の証。


封印されていた力。

偽りのステータス。

歪められた評価。


その全てが、今、解き放たれた。


「もう二度と……誰にも、俺を見下させはしない」


彼の瞳が、静かに紅く燃える。

その足取りは、やがて世界を変える“最終魔導士”の伝説へと繋がっていく――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ