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記憶の残響

部屋の空気は張りつめていた。ソウタは精鋭の祓い師たちの前に座り、その視線の重みに耐えていた。隣ではクラリスが沈黙を守りながら、すべてを静かに見守っていた。


ソウタは深く息を吸い込んだ。ほんの一瞬、目を閉じ、あの場面へと意識を戻そうとした。


ソウタ:あれは……男でした。長いローブを着ていて、すごく濃い紫色でした。縁には金の装飾があって……まるで儀式用の服みたいでした。


彼は一度言葉を止め、自分の手を見つめた。まるで、その瞬間を再び感じようとしているかのようだった。


ソウタ:肩がぶつかったんです。ほんの少し。でも……何かが僕の中に入り込んできました。ものすごい圧力でした。空気が凍って、足元の地面が崩れ落ちるような感覚。足が震えて、息もできなくて……振り向いたら、もうそこにはいませんでした。


レンジは小さくため息をつき、椅子に少し寄りかかりながら、緊張を和らげようと半分笑みを浮かべた。


レンジ:うーん…それじゃあ、あまり手がかりにはならないかな?でも一応、話してくれてありが──


ケンシン:集中しろ、ソウタ。


ケンシンの鋭くて率直な声が、レンジの言葉を断ち切った。紫の目を持つ青年はすぐに口を閉じ、ケンシンはソウタから目を離さずに少し前のめりになった。


ケンシン:もっと思い出してみろ。どんな小さなことでもいい。シンボル、言葉、仕草、何でもだ。軽く見ちゃいけない。時には、一番小さなことが一番重要だったりする。


ソウタは唾を飲み込んだ。記憶は思った以上に重くのしかかってきたが、彼はうなずいた。再び目を閉じ、必死に何かの映像や手がかりを探し始めた。


重たい沈黙が数秒間流れた。


ソウタ:ただ……顔はフードで隠れていて……でも、白い髪の房がいくつかはみ出していた。それだけです。ごめんなさい。


彼は目を開け、自分自身に苛立ちを感じながら拳を膝の上で握りしめた。


ソウタ:すみません……あまり役に立たないですよね。


レンジ:まあ、仕方ないか……


レンジは椅子にもたれ、深いため息を吐いた。ケンシンは視線を一瞬だけ落とし、少し落胆した表情を見せた。


だが、沈黙が完全に場を支配する前に、クラリスがそっと声を上げた。


クラリス:もしかしたら……別の方法があるかもしれません。


その瞬間、三人の視線が一斉にクラリスに向けられた。


クラリス:私、知ってるんです……首都の下町に住んでる霊媒師の方を。父の知り合いで……私が子どもの頃、ある辛い時期に助けてもらいました。


彼女の声は少し震えていた。その出来事を思い出すのは、あまり気が進まない様子だった。彼女の指先は無意識に袖口をいじり、不安を紛らわせようとしていた。


クラリス:詳しいことは話しません。でも……ソウタの記憶を取り戻せる可能性があるとしたら、その人です。私はそう信じています。


そのとき、ケンシンが両手で机を叩いた。木の板が鳴り響き、場の空気が一変した。レンジは思わずビクッと肩をすくめ、小さな「うわっ」という声を漏らした。ケンシンは力強く立ち上がり、真剣な表情で言った。


ケンシン:もう決まりだ。クラリス、君がその霊媒師のところまで案内してくれ。真実を明らかにして……その人物の正体を暴こう。


まだ席に座っていたレンジが、思案気に手を少し挙げた。


レンジ:ちょっと待ってくれ、ケンシン。カエンはいないんだぞ……覚えてるか?誰かが王と王女たちを守らなきゃいけない。俺たちは王直属の祓い師だからな?


レンジは体を起こし、ケンシンの方へ少し身を寄せて、いたずらっぽく微笑みながら指先でこめかみを軽くトントンと叩いた。


レンジ:お前はほんとに頑固だな。


ケンシンは長くため息をつき、目を閉じてからゆっくりとうなずいた。


ケンシン:お前の言う通りだ、レンジ……だが、これは逃せない機会でもある。だから、どちらが行くか決めなきゃならないな。


レンジはまるでその言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。


レンジ:ジャンケンはどう?それか腕相撲?あ、もしかして……睨めっこ対決なんてのはどうだ?


ケンシンは彼を横目で一瞥し、まったく表情を変えずに言い放った。


ケンシン:俺が行く。お前はここに残って、王と王女たちを守れ。それに……俺はバカじゃない。眼術持ちと睨めっこ勝負なんて、する気はないさ。


レンジはニヤッと意地悪そうに笑い、ウインクを送った。ただし、閉じたのは紫の眼ではなく、もう片方の普通の目だった。あえて眼術のある方の瞳を残し、そこにかすかな光が走った。


……


四人の若者たちは詰所を出て、城の廊下を歩き抜けた。外に出たそのとき、ソウタは思わず足を止めた。目の前の光景に、息を呑んだのだ。


騎馬に乗った騎士団が城の正門から入ってくるところだった。だが、彼らは普通の騎士ではなかった。鎧は輝く銀ではなく、黒。深い漆黒の装甲が彼らの体を包んでいた。


右肩には長い黒のマントが垂れ、その縁には白い模様が施されていた。左腕の肩当てには、白く大きな十字が刻まれており、その存在を誇示していた。


彼らの馬の一歩一歩が、地面を力強く鳴らす。その動きには一切の無駄がなく、統率された重厚な気配が辺りを包む。彼らから放たれる気迫は、明らかに一般兵とは別格だった。


その隊列の先頭には、ひときわ目を引く青年がいた。灰色の髪、半分閉じたような目。どこか疲れているように見えるが、その奥には底知れぬ虚無と鋭さがあった。見つめられるだけで心を読まれているような錯覚を覚える。


彼の顔立ちはカエンと同じくらい、二十二か二十三歳ほどに見えた。だがその表情は、あの快活な祓い師とは正反対で、まるで人間らしさを削ぎ落としたような厳しさがあった。


騎士たちは、若者たちの前で馬を止めた。ケンシンとレンジが一歩前に出て、敬意を込めて挨拶をする。


ケンシン:ソレン。


レンジ:こんなところで会うなんて、奇遇だな。


灰色の髪の青年──ソレン──は馬から静かに降り、二人に軽く微笑みかけた。だがソウタには、その笑みが妙に不気味に見えた。彼の顔には、その感情がふさわしくないように感じられたのだ。


ケンシン:いいタイミングだ。実は頼みたいことがあってな。一人、そちらの部下を同行させてもらえないか?


その瞬間、ソレンの笑みは消え、元の無表情に戻った。彼の虚ろな瞳がケンシンをまっすぐ射抜いた。


ソレン:……何のために、うちの者が必要なんだ?


ケンシンは簡潔に説明した。学園での事件のこと、目撃者の存在、そして下町にいる霊媒師について。ソレンはそれを静かに聞いていた。


話が終わると、彼はわずかにうなずいた。


ソレン:わかった。


ソレンは視線をわずかに逸らし、圧倒的な威圧感を伴う声で命じた。


ソレン:ライゲン!


その声は空気を震わせ、抗うことのできない命令のように響いた。すると、騎士団の中から一頭の馬が動き出し、他の騎士たちは一糸乱れぬ隊列を保ったまま微動だにしなかった。


馬に乗った若い騎士はソレンの前で馬を止め、素早く地面へと降り立った。そして背筋を伸ばし、無言で直立した。


ソレン:同行してくれ。彼らの補佐をし、すべてがうまくいくように見届けろ。


その言葉を聞いたライゲンは、ようやく静かに頭を下げた。


ライゲン:はい、ソレン様!


ソレンは軽くうなずくと、彼の肩をポンと一度だけ叩いた。そこには無言の信頼が込められていた。


そしてソレンは再び馬にまたがり、騎士団の方へ顔を向けて言った。


ソレン:進め。


その一言と同時に、騎士たちは城の外周を回って、厩舎の方へと向かっていった。


ソウタは去っていく騎士団を目で追っていたが、ふと視線をライゲンへと戻した。彼は自分と年齢がそう変わらないように見えた。しかしその立ち姿からは、どこか強ばった緊張感が伝わってきた。よく見ると、彼の体は微かに震えているようだった。


ソウタ:ライゲンって言うんだよな?


ライゲン(緊張した大声で):は、はいっ!はじめましてっ!!


ソウタはしばらくぽかんと彼を見つめ、どう反応すればいいか分からずに瞬きを繰り返した。


ケンシン:……そんなに固くなるな。


ケンシンはライゲンの肩を軽く叩くと、親指で自分の背後──ソウタを指差した。


ケンシン:今からこいつの記憶を探るために、下町の霊媒師のところへ行くんだ。


数分後、城の城壁近くに一台の小さな馬車が到着した。待っていた彼らの前に静かに止まり、御者が手早く馬車の扉を開けた。


レンジ:ご無事で、クラリス嬢。


クラリスは礼儀正しく小さく会釈を返した。ソウタはその言葉を聞いた瞬間、内側から何かが込み上げてきた。黙ったまま腕まくりをし始め、その表情からは明らかに喧嘩を売る気満々であることが伝わってきた。


それを見たケンシンは、ソウタの首元のスカーフを指先でつまみ、ぐいっと馬車の中へ引きずり込んだ。


ケンシン:入れ。


レンジ:無事でな、ソウタ。今週はもう十分大変だっただろ。


ソウタ(馬車の中から怒鳴って):お前なんかに心配されたくないんだよ!勝手に──!


ケンシンはすばやく扉をバタンと閉めた。馬車がゆっくりと動き出すと、ソウタの叫び声が街道に響き渡った。ただし、言葉の内容までは聞き取れなかった。


若者たちはすでに下町の外れに到着していた。クラリスは御者に銀貨を数枚手渡し、深くお辞儀をした。


クラリス:送り届けてくださって、ありがとうございました。


御者はにこやかにうなずき、馬車を回して静かに去っていった。車輪の音が次第に遠ざかり、やがて街のざわめきに溶け込んでいった。


三人は自然とクラリスの方へ視線を向けた。


ソウタ:案内、よろしくね。


ソウタの声は優しく、温かかった。クラリスは少し顔を赤らめ、照れ隠しにすぐ前を向いて言った。


クラリス:……ついてきて。


彼らはくたびれた石畳を踏みしめながら歩き出した。古びた建物と狭い路地に囲まれたこの街には、都心の喧騒は届かず、どこか静寂が支配していた。


歩きながらソウタがふと口を開いた。


ソウタ:ねえ、ライゲン。その制服、普通の騎士と全然違うけど……何か意味があるの?


ケンシン:……お前、本気で言ってるのか?


ケンシンは呆れたようにため息をついた。


ケンシン:あいつらは〈黒騎士団〉。王国最強の戦闘部隊にして、全大陸でも恐れられてる精鋭中の精鋭だ。一度も任務を失敗したことがない。王直属で、命令があって動くわけじゃない。国家を代表する存在なんだよ。


ソウタは黙って数歩進みながら、言葉の重さを噛みしめていた。


ソウタ:(……こんなにも強い人たちがいるんだ)


ソウタ:じゃあ、レンジには兄さんがいるってこと?


ライゲンは小さくうなずき、どこか誇らしげな笑みを浮かべた。


ライゲン:ああ、ハルキっていうんだ。すごい人だよ。まさに〈黒騎士団〉の理想って感じ。冷静で、頭も切れるし、判断も早い。どんな状況でも動じない。本当に尊敬してるんだ。


ソウタはますます興味を引かれた様子で、さらにライゲンに質問を重ねていった。その内容までは聞き取れなかったが、彼の声は明るく、歩調も軽やかだった。


数分後、一行はある一軒の家の前にたどり着いた。古びてはいるが、手入れの行き届いた質素な建物だった。入口のそばには木の板がぶら下がっており、そこにはこう書かれていた。


「霊媒師 ── ノックしてください」


クラリスは迷いなく扉へと歩み寄り、軽くノックを三回。


やがて扉がゆっくりと開き、中から皺深い顔立ちの老人が現れた。その目には鋭さが宿っている。


ミロルド:クラリス……。


クラリス:お久しぶりです、ミロルドさん。


老人の顔に笑みが広がった。


ミロルド:おやおや、まぁ……なんと懐かしい。元気そうで何よりだ。


彼は手で中を指し示しながら言った。


ミロルド:さあ、皆さんもどうぞ。お入りなさい。


家の中は質素ながらも温かみがあった。古いが丁寧に手入れされた家具、どこか懐かしい香りの漂う空気、厚手のカーテンが差し込む光をやわらげ、室内に穏やかな陰影を作っていた。


ミロルド:来ると思っていましたよ、クラリス嬢。お茶でもどうですか?


クラリスは微笑みながら首を横に振った。


クラリス:結構です、ありがとうございます。


他の3人もそれに倣って静かに首を振った。


ミロルド:では、こちらへ。


老人はゆっくりとした足取りで家の奥へと進んでいき、一行を蝋燭の光だけで照らされた一室へと案内した。部屋の壁には不思議な模様が描かれ、棚には布や石でできた小さな護符のようなものがいくつも並べられていた。


まるで聖域のような、どこか厳かな空気が漂っていた。


ミロルドは部屋の入り口で立ち止まり、ゆっくりと振り返る。


ミロルド:君だ。


細い指でソウタをまっすぐに指差し、低く重みのある声で言った。


ミロルド:君はよからぬものを、この家に連れてきた。だから……部屋に入りなさい。そして、そこにある椅子に座るんだ。


彼が示したのは、部屋の中央にひとつだけ置かれた木の椅子だった。


ソウタは緊張しながら椅子に向かい、ゆっくりと腰を下ろした。ミロルドは彼の正面に立ち、残る三人──ケンシン、クラリス、そしてライゲン──も部屋に入り、扉を静かに閉めた。


ケンシンは腕を組んだまま壁にもたれかかり、クラリスは表情を引き締めながらも、心配そうにソウタを見つめていた。ライゲンは部屋の雰囲気に興味津々といった様子で、まわりを観察していた。


ミロルド:……重いものを背負っているな、坊や。だが、やらなければならん。


そう言うと、老人は棚の中から赤い粉の入った小さな壺を取り出した。そしてその粉を指先で少量すくい、ソウタの額に不思議な記号を描いた。


次に、彼の額に大きな手のひらをピタリと押し当てた――その瞬間、ソウタの目が真っ白に染まり、意識が沈んでいった。


……


気がつくと、ソウタは学園の中にいた。あの日のままの光景が広がっている。ただし今回は、その傍らにミロルドの姿があった。彼はしっかりとソウタの肩に手を置き、周囲を鋭く見回していた。


目の前には、自分自身がナイロを探して慌ただしく走り回る姿が見える。ソウタは手を振ったり、声をかけようとしたりするが、自分自身にはまったく届かない。まるで幽霊のように、存在に気づかれもしなかった。


そして――あの瞬間がやってきた。


フードをかぶった人物とぶつかった、その直前。時間がピタリと止まる。


ソウタは一歩前に出て、その人物の正面に立った。心臓が強く脈打ち、喉が鳴る。


ソウタ:(……見つけた)


震える手で、フードに手を伸ばす。


その瞬間――


その人物が笑い始めた。最初は低く、やがてその笑いはどんどん大きくなり、不気味で狂気じみた哄笑へと変わっていく。


ソウタは思わず一歩後退した。隣にいたミロルドが眉をひそめ、不安げに呟く。


ミロルド:……これは、異常だ……こんなことが起きていいはずがない……


笑い声がぴたりと止まり、フードの奥から二つの目がこちらを射抜いた。


リクトス:……他人の記憶に鼻を突っ込むとは、なかなか図々しいな。お前には関係ない場所だろう?


ゆっくりと、そしてわざとらしく、男は自らのフードを取り払った。


その顔があらわになる。


白く長めの髪が無造作に垂れ、左の頬には大きな「×」の傷。だが何より印象的だったのは――燃えるような鮮烈なオレンジ色の瞳。その色は、ただ目を合わせるだけで心を焼かれるような迫力を持っていた。


リクトス:どうだ? 俺の顔、気に入ったか? よく覚えておけよ……


その声はねっとりと歪んでいて、恐怖を楽しむような響きがあった。


リクトス:俺の名はリクトス。〈カルタス・ヴォクス・モルトゥア〉が誇る、“裂傷の災厄カラミティ・オブ・テア”だ。そして今から……お前の心に、しっかり刻みつけてやるよ。


そう言って、彼はゆっくりとソウタに近づきはじめた。


ソウタの身体はまったく動かなかった。ミロルドも同じだった。まるで見えない鎖で動きを封じられているようだった。


(罠なのか?)


リクトスはソウタの目の前まで来ると、にやりと笑い――


その両腕をソウタの腹部に突き刺した。


ソウタの身体に血は流れなかった――だが、激痛が襲った。内臓を掴まれ、ねじられ、引き裂かれていくような、想像を絶する痛み。


次の瞬間、リクトスはもう片方の腕も彼の腹の下へと突っ込んだ。見た目には傷はないのに、体の奥底から崩壊するような感覚。


ソウタ:あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああっっっ!!!


叫びは絶叫へと変わった。喉が裂けるほどの叫び。魂の底から絞り出されるような、あまりにも生々しい苦痛の声だった。


息を吸うことすらできず、痛みによって身体は痙攣し、腕も脚も動かせない。ただ、目の前の男に体の奥を破壊され続けている感覚だけが、恐ろしく鮮明だった。


ミロルドは隣で何度も名を呼び、手を伸ばして止めようとするが、指は虚空をすり抜けるばかりで届かない。


痛みは幻ではなかった。現実以上の現実だった。


……


現実の世界。


ソウタの身体が椅子の上で激しく痙攣しはじめた。手足は跳ね、歯を食いしばりながら、喉の奥からは恐ろしい悲鳴が次々と溢れ出ていた。意識は完全に記憶の世界に囚われていたが、その苦しみは現実の肉体にも容赦なく現れていた。


ミロルドは依然として額に手を当てたまま、彼の意識の中に残っていた。霊媒師として、どうにかソウタを引き戻そうとしていた――だが、そのときだった。


ケンシンが壁から飛び起きた。クラリスは顔を青ざめさせ、一歩前に出る。ライゲンも身構え、今にも動き出そうとしていた。


そして――


ソウタの腹部から、二本の黒く歪んだ幽霊のような手が現れた。ゆっくりと、重たく、別の世界から這い出てくるように。


その手はまっすぐミロルドへと向かっていった。


一本、また一本。老人の胸を、腹を、背中を貫いていく。抵抗する間もなかった。まだ彼は意識の中にいたからだ。肉体だけが、無防備だった。


そして――


ミロルドの顔が苦痛に歪んだ瞬間。


黒い手が彼の体をつかみ、両側に引き裂いた。


ミロルドの肉体は、音を立てて真っ二つに裂かれ、鮮血が部屋中に飛び散った。


――凄まじい力で。


✍️【作者のあとがき】


ソウタにとって最初の大きな試練でした。

ここから先、もう元には戻れません。

読んでくださって、本当にありがとうございます。

次回の章もお楽しみに!

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