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もう一度、君に会いたい異世界譚  作者: リュウチン
第一章 転生の兆しと貴族の息子編
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第二話「魔力の芽生え」




ーー俺が転生してから、一年が経った。


気がつけば、この新しい世界での生活にも少しずつ慣れてきた。


 赤子として始まった人生は、最初はただただ暇で、周囲の大人たちの会話をじっと耳にする日々だったが、そのおかげでこの世界の言語もだいぶ理解できるようになった。


 前世では英語の成績が散々で、言葉を覚えることなんて苦手だと思っていた俺だが、不思議なもので環境が変わると人間の適応力というのは侮れないものだ。


 言葉がわかるようになるだけでも、驚くほど安心感が増すものだと気づいた。

 周囲の言葉がただの音の羅列ではなく、意味を持つものとして頭に入ってくる。

 それだけで、ここが全く知らない異世界だという不安が少しずつ薄れていく気がした。


 この頃になると、俺もハイハイが出来るようになった。

 移動できるというのは素晴らしい事だ。

 身体が動くという事にこれほど感謝したことはない。


「眼を放すとすぐにどこかにいっちゃうの」


「元気でいいじゃないか。

 生まれてすぐの頃は全然泣かなくて心配したもんだ」


「今も泣かないのよねぇ」


 両親はそんな風に言っていた。

さすがに腹が減った程度でビービー泣くような歳じゃない。


 ハイハイができるようになると、少しずつ行動範囲が広がり、周りの世界が見えてきた。


 赤ん坊の小さな体ながら、興味の赴くままに動き回り、この家の隅々まで探索した。

 廊下を這いながら柱や家具に触れ、目に映るものすべてが新鮮で、好奇心をくすぐられた。

 だが、動き回るたびにひとつ確信したことがある。


(この家、どう考えてもデカすぎるだろ。)


 廊下はどこまでも続くように思えるし、いくつもある扉の向こうには、それぞれ異なる空間が広がっている。

 一部の部屋には入れないようにしっかりと鍵がかけられているが、それすらもこの家の広大さを象徴しているようだった。


 天井も高く、壁には豪華な装飾が施されている。

 まるで前世で見たヨーロッパの貴族の邸宅そのものだ。

 この家での暮らしがどれほど贅沢なものなのか、子どもの俺ですらぼんやりと理解できるほどだった。


 (まさか貴族の家に生まれるとはな……)


 そして、もうひとつ大きな発見があった。


 ーー魔法だ。


 この世界には、魔法というものが存在する。俺がそれに気づいたのは、転生して半年が過ぎた頃のことだった。


 その日、母親に抱かれながら、自宅の広大な庭を散歩に連れて行かれた。

 赤ん坊の俺にとっては、この世界で初めての「外の世界」だった。


 澄んだ空気と青々とした木々、色とりどりの花が咲き乱れる庭園の景色に目を奪われ、夢中でそれを堪能していた。

 ふと視線を庭の端に向けると、そこにいたのは剣を振り回している父親の姿だった。

 (剣!?この世界には剣もあるのか!)

 と思ったのもつかの間。

 急に父が持っていた剣が光に包まれ。

 父はその光っている剣を、大きく目の前の木に向けて振りかぶる。


 ズバァン!


 剣が振り下ろされた瞬間、光が弾けるように放たれ、前方の木が真っ二つに割れた。

 木は切り倒されたというよりも、一瞬でその存在を断ち切られたようだった。


 (なんだこれ……!こんなものが、この世界には普通に存在するのか!?)


 驚きと興奮、そしてほんの少しの恐怖が入り混じり、心臓が高鳴るのを感じた。

 父の姿はどこか人間離れして見え、その剣と光の力が、この世界の「魔法」なのだと確信せざるを得なかった。


 前世では何の取り柄もなく、ただ平凡な人生を送っていた俺が、この世界に来て初めて「何かになれるかもしれない」という予感を抱いた。


 魔法。

 この未知の力を身につけられれば、きっと前世とは違う自分になれる。 

 何かを成し遂げられる人間になれるかもしれない。そんな思いが胸を熱くさせた。


 その日から、俺は魔法について勉強を始めることにした。

 もっとも、赤ん坊の俺にできることは限られている。

 母親が読んでくれる絵本や、周囲の大人たちの会話の中から、魔法に関する情報を拾い集めるだけだ。

 

 それでも、少しずつ見えてきた。


 この世界で魔法を扱うには、どうやら「魔力」というものが必要らしい。

 そしてその魔力を操作し、発動するための「詠唱」や「構文」という技術も存在することがわかった。


 そして、転生してから一年が経った最近、ついに俺自身も少しずつ魔法を使えるようになってきた。


 家にある広大な図書室から魔書(魔法の本)をこっそり持ち出し、毎日のように熟読してきた成果がようやく現れ始めたのだ。


 最初本を開いたときは意味不明な文字しかなく、どうしようか焦っていたが、

本には絵なども書いてあったので三か月ほどで難なく解読することができた。


 本には魔法の基礎から応用まで、驚くほど詳細に書かれていた。


 いつから魔法がこの世界で使われるようになったか。

 伝説の魔法使いの事等も書いてある。


 魔法使いの中の位の事や、初級魔法、中級魔法、上級魔法の詠唱文や、

どういう魔法なのかも書いてあった。

 

 他にも上級魔法の上にある超級魔法、そのまた上の究極魔法、

詠唱文等は書いていなかったが存在だけ明記されていた。


 今の俺の目標は、この魔書に載っている水の初級魔法を多く発動できるようにすることだ。


 魔書に載っている水系統の初級魔法は以下の通りだ。


 水の玉を作るアクアボール

 作った水の玉を中から弾くスプラッシュ

 水を槍のように尖らせて攻撃する魔法アクアスパイク

 手の平から水を滝のように落とすアクアフォール


 初球の魔法は一通り使ってみた。

 アクアボールを何個も作ってみようともおもってみた。

 だが、これがなかなか難しい。


 連続で魔法を使おうとすると、魔力が尽きてしまい、すぐに意識が遠のいてしまうのだ。

 何度か試した結果、目が覚めると部屋の床で倒れていることもあった。


 「焦るな……こういうのは、段々と力が身体に染みついていくものだ」


 そう自分に言い聞かせながら、日々の練習に励む。

 焦りは禁物だ。


 魔法の練習を繰り返すたびに、体の中にある魔力の存在を少しずつ感じられるようになってきた。

 それはまるで体内を流れる静かな川のようで、意識を集中するたびに、その流れを手のひらに集める感覚  がわかってくる。

 

 初級魔法でも少しずつ体内の魔力量が増えているのもわかった。


 (何事も継続が大事だからな)


 そうして、俺は毎日、気絶寸前まで初級魔術を使い続けて過ごした。


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