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タツノシン ~Astral Stories~  作者: コーポ6℃
第三章 邂逅編 ゲヘナ城塞攻略戦
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第6話:パーティー編成【後編】

 【死の翠星ルジーラ】────セルミア教の暗部とも言われる、執行者という名のシスター達。

 そして、その執行者の中でも特に強い力を持つのが “3人の執行者(トリニティ)” と呼ばれる3人。


 【執行長グラス】・【糸紡ぎの聖女アラテア】・【死の翠星ルジーラ】。その中でもルジーラの力は頭一つ抜けているらしく、執行者最強と言われている。


 俺とタツは気づかなかったのだが、アマツクニでカザンがこのルジーラと戦ったらしい。しかも……レガリア状態のカザンとだ。俺が言うのもなんだが、あのカザンと戦って生き残れるということが、ルジーラの強さを証明している。


 過去に何かあったのか、オルメンタはひどく怯えている様に見える。



「……ルジーラがいるの?」

「さぁな。だが、あいつとアマツクニで会った時、ゲヘナで会おうって言い残してたからな。間違いなく来るだろうよ」


 カザンの言葉に、リリシアが眉を顰める。リリシアもルジーラのことを知っているようだが、さっきまでの威勢の良さが無くなっている。やはり、それだけの相手ということなのだろう。



「なぁ、ルジーラってのはそんなに強いのか?」



 強いとは聞いている。そしてみんなのこの反応、疑う余地もない。ただ、訳のわからないものに飛び込んでいくかのような、この不安感を少しでも払拭したかった。

 そんな俺の為だけの質問に、オウガが答えてくれた。



「強い。いや、強すぎると言っていい。人類の癒し手と言われるA・S(オールシフター)だが……ルジーラに限っては破壊者と言うのが相応しいだろう」

「A・Sなのか?」


「そうだ。ルジーラはA・Sの持つ力を、全て敵を殺す事に利用している。それに加えて、奴自身が持つ共鳴魔力レゾンなのか、加護なのか……遥か先の音を聞き分ける聴覚に飛行能力、更には幽世かくりよ現世うつしよを自由に行き来することもできる」

「あの世とこの世を行ったり来たりできるのか?」


「その認識で間違いない。エーテルダイブと言われる空間移動法だ。それ故、ルジーラは神出鬼没で行動が全く読めない。今回に限り、事前に参戦することが分かっているのは幸運と言えるかもな」



 むしろ不運な気がしてきた。つまり、どこから現れて、どこで聞き耳立ててるか分からないってことだろ? もしかしたら、この会話も聞かれてるのかもしれない。 



「ルジーラの最も警戒すべき力は、奴のレガリアから放たれる死霊の炎だ。A・Sの特性を活かした恐るべき炎。対象に着火すれば、その対象者の魔力を吸い上げ一気に燃え広がる。燃えて死ぬか、魔力が枯渇して死ぬか……どちらにしろ、一度燃えれば逃れる術はない。奴の魔力を上回らない限りはな」



 想像はついていた。やはり、そのルジーラも玉璽保持者レガリアホルダーなんだな。他者に魔力を与えることのできるA・S。その力を、ルジーラは奪う事に使っている。

 俺もタツに与えてもらっているから、その恐ろしさが分かる。もし逆なら、俺は一瞬で死ぬだろう。



「今ここにいる俺たちの中で、ルジーラに対抗できる戦力はカザンだけだ。だが、幸いなことにルジーラはカザンに執着している。どちらにしろ、カザンに頼む他はない。頼んだぞカザン」



 オウガがカザンに視線を向ける。カザンがニヤリと笑い、力強く自分の胸を親指で突く。



「おいおい、誰にもの言ってんだ。俺は “パラディオンの英雄ヒーロー“ カザン様だぜッ。コウモリ女の一匹や二匹任せとけってんだ」



 そう力強く言い切るカザン。俺もカザンには全幅の信頼を寄せている、疑ってなどいない。ただ、今のカザンの名乗りが気になっていた。そしてそれは、他のみんなも同じだったようだ。



「どうしたカザン。異名を変えたのか?」

「おう。ガキ共に言われたんだが、気に入ったからこっちにするぜ」


 “全滅のカザン” 終了のお知らせ。まぁ自称だし、聞いてた事典にはずっと “全滅のカザン” で載ってるんだろうな。


 少し話が逸れたところで、タツとガウロンが帰ってきた。2人に作戦内容を説明したところ、花粉も特に問題はないようだった。ぶっつけ本番になるが、今は2人を信じるしかない。



 作戦を纏めるとこうだ。



 俺とタツ・オウガ・ガウロンの4人は城塞内部に潜入、オウガが地獄炉を確保するのをサポートする。その際ヴィクターと戦闘になった場合は、なるべく時間を稼ぐ。ただし、オウガが無事地獄炉に到達した場合は、俺とタツ・ガウロンは敢えて姿を現し、交戦することも視野に入れておかねばならない。

 


 ノヴァリス4姉妹とフラウエルの5人は、城塞から南西へ2キロ離れた丘へ向かい、リリシア達の能力で潜入組のサポートをする。その際敵の襲撃が考えられるが、ルリニアさんが護衛してくれるとのこと。


 

 そして、正面から陽動作戦を行うカザン・カシュー・ペロンド達だ。敵を殲滅しつつ、ヴィクター相手に時間を稼がねばならない。

 城壁に設置された魔力砲も、今度は一斉砲火してくる可能性がある。その際に、フルティナが防ぐことができるのは5門の内の1門だけ。次弾装填は妨害することができるようなので、初撃だけは自分たちで何とかしなくてはならない。

 そして、最も懸念すべきはルジーラだ。こいつに関しても、もはやカザンに頼るしかない。このパーティーが、最も苦難だと言えるだろう。



「作戦は決まった、決行は日が沈んでからだ。夜戦の準備をしておけ」



 オウガの指示で、皆が動き出す。城壁を修復している今ではなく、ヴィクター達の慢心をつくためにも、敢えて夜に行動するらしい。戦うカザン達は大変そうだが、当の本人たちは特に気にしてなかった。


 夜まではまだ時間がある。オウガ・オルメンタ・ガウロン、そしてカザン・カシュー・ペロンドは夜戦の準備に向かった。フラウエル達は怪我人の治療に向かうようだ。タツが一緒に行きたいというので、俺たちも一緒に行く事にした。

 正直俺が行ってもできることはなさそうだが、ルリニアさんとフルティナが食事の用意をするらしい。俺はこの2人について行く事にした。料理なら、俺も何か手伝えるはずだ。



 怪我人達が集まる陣地に到着した俺らは、二手に分かれた。ぶっちゃけタツも治癒ができるわけではないのだが、本人がA・Sの治癒を見たがってるから引き止めるのも可哀想だ。見学することで、何か掴めるものがあればいいのだが。

 


 夜戦開始までの数時間────タツと分かれ、それぞれのパーティーで行動を開始した。

拙作を読んで頂きありがとうございます。感想・質問・指摘などしてもらえると嬉しいです。

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