第5話:パーティー編成【前編】
必ず成功する──そう豪語したオルメンタに、全員の視線が集まる。だが、まるで臆することなくオルメンタが説明を始めた。
「まず城塞内部に潜入するメンバーですが、これはオウガ様は外せません」
「そうだな。俺が行かねば始まらないからな」
「はい。そして、地獄炉の位置が変わるかもしれない事を考慮して、タツに同行してもらうのが最善かと」
まぁそうだろうな。って事は必然的に俺も一緒に行く事になるだろう。そう思い名乗りを上げようとした時、先にカザンが代弁してくれた。
「ならシンも一緒に行くべきだ。こいつらは2人の方が力を発揮する」
「分かった。なら、オウガ様とタツとシン。そしてガウロンが一緒に行けば、索敵も戦力的にも問題はないかと」
「……いいだろう。では俺たち4人で城塞内部に潜り込むとしよう」
「はい。オウガ様は地獄炉へ直行してもらい、敵の対処は残りの3人にしてもらいます。その際だが、シン──」
オルメンタに名前を呼ばれた。こんな時になんなんだが────すごく仲間してるって感じがして、素直に嬉しい。
「ガウロンにも言っておくが、ヴィクターと対峙しても、なるべく時間を稼いで欲しい。オウガ様が地獄炉を掌握すれば、恐らくタツなら分かるだろう?」
「あぁ。どうやって掌握するのか分からんが、タツなら分かるだろうな」
「地獄炉と繋がったヴィクターは3人。奴らがどう動くかは私にも分からないが、奴らを倒すのは掌握してからが好ましいんだ」
「分かった。……今のうちに聞いておきたいんだが、どうやって潜入するんだ? もう一回壁を破壊するのか?」
「それについてもアテがある。俺に任せてくれ」
そうオウガが言い切る。敢えて言わないって事は、今は秘密なんだろう。……まぁ俺もタツには必殺技のこと秘密にしてたけど、言っといた方がいいと思うんだけどな。
「敵は任意に地獄炉を暴走させる危険性がある。それを避ける為にも、潜入の精度を高める必要がある。オウガ様、その為に私達姉妹は、城塞から2キロ離れたこの丘へ向かいます」
「そんなとこで何するのよ?」
「姉様の花粉をばら撒いてほしい。毒じゃないからね? 姉様の魔力を含んだ花粉で、戦場を覆って欲しいんだ」
「なるほどな。A・Sの魔力で覆い尽くせば、俺たちの存在も秘匿できるかもしれん。だが、タツとガウロンの索敵に支障が出ないか?」
チラリとオウガが俺を見る。うーん、花粉ってのがどれほどのもんか分からんが、スギ花粉くらいの霞み方なら多分大丈夫じゃないかな? それよりも、花粉症を発症しそうで怖い。
っていうか、リリシアって花を作れるのか。この美貌で花を作り出す能力って、なんか色々噛み合ってる気がする。……性格は残念だが。
「多分大丈夫だと思う。ガウロンは分からんが」
「そうか。2人が戻ったら確認するとして、とりあえずその作戦で話を進めようか」
「ちょっと。勝手に話を進めてるけど、あたしの花粉は風に乗っていくのよ? そう上手いこと戦場だけ覆うなんてできるかしら」
「何言ってるんだよ姉様。だから私が一緒に行くんじゃないか」
呆れたように言うオルメンタの言葉に、リリシアが閃いた様な顔になっている。そして俺は、何のことか分かっていない。そんな俺を見かねたのか、オルメンタが説明してくれた。
「私の共鳴魔力は風なんだ。姉様が作り出した花粉を、私が風で飛ばす。……ただ、一つ懸念することがある。私は風を操れるけど、風から魔力を吸収することができないんだ。大規模の風を行使するとすぐに魔力切れになってしまう。だからフラウ、一緒に来て欲しいんだ」
「うん、大丈夫だよ。オルちゃんが魔力切れになっても、すぐに私が補充してあげる」
ニッコリと微笑むフラウエル。A・Sは魔力が多いとは聞いていたが、そんなにも違うものなのか。
「ティナ、ここから魔力砲は狙える?」
「多分大丈夫だと思うけど、狙えるのは一門だけだよ? 同時発射されちゃったらどうしようもないかも」
「それで十分だよ。私達が向かう場所は、恐らく地獄炉の範囲に入ってる。敵がここにレヴェナント達を転移させてくる可能性も十分ある。だから、私達の護衛をルリ姉にお願いしたいんだ」
「えぇ、任せてください」
護衛? ルリニアさんが? とてもじゃないが、戦える人には見えないんだが……。
「いいのか? ルリニア」
「その為に私はここに来ました。みんなは私が守ります」
オウガの質問に、軽く微笑むルリニアさん。だが、その表情は決意に満ちていた。侮るようなことを考えていた、さっきまでの自分を叱りたいほどに。
「最後に、正面からの陽動部隊だ」
「へッ、やっと俺の出番か?」
「カザンは、カシュー・ペロンドと共に全軍を率いて正面から戦ってくれ。無論言うまでもないが、ヴィクターに対しては時間稼ぎをして欲しい」
「あぁ、任せな」
自信満々にいい放つカザン。確かに、こいつなら安心して任せられる。それにカシューとペロンドもいる。こいつらがレヴェナント達に負けるとは到底思えない。
ここまでの作戦を聞いていると、確かにできる気がしてきた。適材適所、うまいことメンバーを分けたオルメンタに感心する。
俺が感心していると、オルメンタの表情が曇りだす。
「ただ……どうしても拭うことのできない不安要素があるんだ」
そう言ったオルメンタは視線を落とし、手で自分の腕を強く掴む。恐怖に震える体を、無理矢理抑えようとしているかのように。そんなオルメンタの肩をオウガが優しく触れ、静かに話し始めた。
「分かっている。死の翠星ルジーラのことだな」
拙作を読んで頂きありがとうございます。感想・質問・指摘などしてもらえると嬉しいです。
ブックマークと★の評価をしてもらえると励みになります!