表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タツノシン ~Astral Stories~  作者: コーポ6℃
第三章 邂逅編 ゲヘナ城塞攻略戦
69/217

第3話:集いし仲間達

「同年代?」


 オウガが疑問を呈す。その疑問に対して、リリシアとフラウエルは首を傾げる。



 ……なんだ? こいつらには俺たちの姿が違って見えているのか?

 確かに俺たちの元の年齢を考えれば、こいつらと同年代位だろう。しかし他の連中には、俺たちは老人と子供にしか映っていない。一体何が起きているんだ?


 俺はチラリとタツを見る。タツも困惑しているようだ。顔は青ざめ、汗をかいている。そんなにビックリしなくてもいいのに。



「まぁこいつら本当は18と16らしいからな。でも見た目はジジィとガキだ。お前ら本当はババァだったりするのか?」


 カザンの冗談混じりの発言に、リリシアが食って掛かる。



「誰がババァよ!? っていうかあんた誰よ? 偉そうにしてんじゃないわよ」


 偉そうなのはお前だと思うんだが。だがややこしくなりそうなので黙っておく。



「リリシア、こいつがカザンだ。そしてこっちがカシュー、こっちがペロンドだ」

「カザン? ふーん、こいつがねぇ。ふーん」



 カシューとペロンドには見向きもせず、カザンを物色するように眺めるリリシア。ペロンドが悲しそうな顔をしている。



「お前がリリシアか。なるほどな、オルメンタが言った通りの女みたいだな」

「何が言った通りなのよ?」


「自意識過剰のダチョウ女だ、ってな」

「…………??」



 意味が分からなかったのか、リリシアがフルティナの顔を見る。ニッコリと笑ったフルティナが説明を開始した。



「ダチョウっていうのはアニマライズに生息してる大型の鳥類で、免疫力が強くて病気にならないし、傷の治りも早いんだって! 走る速度が早くてスタミナもあるけど、頭が悪いらしいよ! 危険な状況を省みず突撃しちゃったり、何してたか忘れちゃうらしいね! あはは! 確かにお姉様っぽいね!」



 言い方ぁ!! このフルティナって子、空気が読めないんじゃないか!?

 リリシアが口をパクパクさせながら、みるみる顔が赤くなっていく。


 

「────くすッ」


 リリシアの隣にいるフラウエルが肩を震わしている。手で口を抑えているが、笑っているのはモロバレだ。



「ふ、フラウ! あんた何笑ってんのよ!? 友達が馬鹿にされてるのよ!!」

「ご、ごめんなさいリリィ! で……でも……ぷふッ……と、特徴が一致しすぎてッ────」



 笑うのを必死に堪えようとして、逆にツボに入ってしまったようだな。我慢しすぎてフラウエルの顔は耳まで真っ赤だ。それに釣られてか、ルリニアさんも顔を手で覆い隠している。



「お、おい! いい加減にしないか!! 今の状況を分かっているのか!?」


 オルメンタが声を荒らげ注意してくるが、その口角は上がっている。そしてその横では白銀の騎士が鎧を震わせている。……これオウガも笑ってるよな?



「お前がダチョウ女なんて言うのが悪ぃんだろ?」

「そうよ! この鶏ガラ女!!」


 カザンとリリシアに責められるオルメンタ。後ずさりしながらも、リリシアの悪口に怒り心頭のようだ。



 ギャーギャーと言い合う仲間達。作戦会議じゃなかったのか?いつまで経っても止むことのない喧騒に、俺は遂に我慢できなくなった────





「ぷッ──ははははッ!」


 堪らず吹き出してしまった。


 なんだよこいつら、面白いじゃないか。初対面だし、俺なりに緊張してたんだけどな。目の前で繰り広げられるドタバタ劇を前にして、すっかり気が抜けちまった。本当に、同年代の友達みたいだ。


 俺が笑ってると、みんなの視線が俺に集まっていた。



「はは、あー……わりぃわりぃ。我慢できなかったわ」

「何笑ってんのよ! 元はと言えばあんたが原因でしょ、このジジイ───って、あれ?」

「え?」


 リリシアとフラウエルが目を白黒させている。どうしたんだ?



「な、なんで? さっきまで確かに……」

「おじいさんと子供になってる……」


 マジで意味が分からない。何で老人と子供に見え方が変わったんだ? 一体何が起きてるんだよ!?



 ──幕舎内を妙な沈黙が包み込んだ時、再び幕が開かれ、1人の男が入ってきた。



「ガウロン、戻ったか」

「馬がなくてな。戻るのに時間がかかった」



 オウガが口にした名前。ガウロン──ティエンタの英雄と呼ばれるA・Sの男。

 

 カザンは、このガウロンの事を “切り札“ だと言っていた。実物を目の前にしてみて、その言葉の意味が分かった気がする。カザンとはまた違った、強者の風格というものが伝わってくる。

 タツの目には、ガウロンはどう映っているのだろうか?


 

「いよぉ、ガウロン」

「戻ったか、カザン」


 カザンが手を挙げ挨拶を交わす。その横でカシューとペロンドも手を挙げ、ガウロンが静かに頷いていた。

 


「全員揃ったな。初対面の者も多い、一度自己紹介しておこうか」



 そう切り出したのはオウガだった。一方的な情報ばかりで、俺とタツについてはみんな知らないもんな。その提案には大賛成だ。

 オウガを先頭に、順番に軽く自己紹介を行なった。そして最後にガウロンが名乗った時、フルティナがさっきの話題を持ち出した。



「ねーねーガウりん。ガウりんには2人がどう見える?」


 それは俺も気になっていた。さっきの2人もA・S、ガウロンもA・Sだ。A・Sには何か違った見え方があるのかもしれない。

 ……しかし、ガウロンがA・Sというのは秘密のことらしいが、このフルティナって子はそれを知っているのだろうか? 別にそんな意図は無く、聞いたのはただの偶然かもしれないが。



「どうでもいいことだ」


 このガウロンの発言で、俺たちの容姿についての話題は終わってしまった。俺たちにとって気になることではあるが、まぁ今はそれよりも優先することがあるしな。質問をしたフルティナも、 “そっかそっかー” と言って、それ以上追求しなかった。





「シンとタツのおかげで敵は沈黙している。現状を整理しよう。まずはガウロン、テラスとクレセント騎士団はどうなった?」

「クレセントが囮となり、テラスは無事に脱出した。クレセント側はかなりの被害を被ったようだが──」


「が、ガウロンさん。あの、団長のドリューズさんは?」

「無事だ。奴は、最後は自分を囮として味方を逃していた。勇敢に戦っていたぞ、フラウエル」

「そうですか、無事でしたか……」


 ホッとため息を吐くフラウエル。その団長さんとは知り合いなのだろうか?



「敵は殲滅したのか?」

「レヴェナントと変異種はあらかた始末した。だが、ランシラスと名乗るヴィクターは撤退した」

「お前が取り逃がしたのか? 珍しいな」


 カザンの言葉から、いかにガウロンを信頼しているのかが伝わってくる。オウガも信頼しているように、やはりこのガウロンは相当な強さなのだろう。



「少し気になることがあってな」

「気になること?」


 オルメンタが首を傾げる。



「ランシラスの魂が、何かに繋がっているのが視えた。地獄炉と直結して、魔力を補給しているのかと思ったのだが────」

「違ったのか?」

「分からん。だが、嫌な予感がしたのでな。奴を仕留めるのは保留しておいた」



 そういえば、このガウロンはタツと同じく魂が視えるらしい。ただ、その精度はタツと比較すれば数段劣るとカザンが言っていたが……タツに聞けば何か分かるかもしれない。



「なぁ、タツ」

「──へ?」



 またボケっとしてやがった。大方、ガウロンを視ていたのだろう。口数が少なすぎて存在が薄くなってるぞタツ!



「どうしたの?」

「聞いてなかったのかよ。お前なら、ここから敵の様子が分かるんじゃないか?」

「え、うん。ちょっと待ってね!」



 タツが慌てて城塞方面に視線を向ける。自分で言っといてなんだが、この距離から視えるかな?



「うーん、ヴィクターが4人いるかなぁ。その内の3人から、何か紐みたいなものが伸びてるね。これは────地獄炉と繋がってるみたい」



 タツがそう発言すると、その場にいたほとんどが感嘆の声を漏らした。この距離からでも敵の数が分かるというタツの能力の利便性、それも仕方ないことだ。



「3人? もう1人は?」

「特に何も繋がってないね。うーん、なんか見たことある気がする魂なんだけど……」


 オルメンタの質問に、腕を組み首を傾げるタツ。ヴィクターで見た事がある魂なんていたか?



「地獄炉と繋がっている。ガウロンの予想と一致したが、3人だけというのも分からない。ただの魔力供給ではないのか?」


 オウガにも分からないようだ。ただ、ガウロンが嫌な予感がしたと言っていた。多分何かあるのだろうが……。



「なんか……僕には導火線みたいに視えるけど──」

「導火線?」


「うん。なんていうか、ヴィクター達から火がついて地獄炉がドカン! って感じがする」



 そのタツの言葉を聞いて、オルメンタの顔色が変わる。そして視線をオウガに向けると、オウガがゆっくりと頷いた。



「……なんということだ。俺たちはもう少しで間違えるところだった。礼を言うよタツ」

「え? ど、どういたしまして」


 どゆこと? 俺にはさっぱり分からない。



「ガウロン、よく踏みとどまってくれた。お前の直感は正しかったようだ」

「そうか、やはりな」


 おーい、誰か説明してくれ!! 俺だけ置いてけぼり食らってる感じなんだが!?



「ちょっと。ワケわかんないこと言ってないで説明してよ」


ナイスだリリシア! こういう時、物怖じせず聞けるのは才能だぞ才能。



「あぁ、すまなかった。その前に、この戦いにおける俺たちの目的を教えておこう」



 オウガがテーブルの上に手を置き、静かに宣言する。





「俺たちの目的────それは、ゲヘナ城塞に設置された地獄炉を無傷で手に入れる事だ」

拙作を読んで頂きありがとうございます。感想・質問・指摘などしてもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ