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タツノシン ~Astral Stories~  作者: コーポ6℃
第一章 子供と老人
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第28話:二人のこれから

 ────長い……永い戦いだった。吸って吸われて、どれほど時間がかかっただろう。


 あちこちから色んな騒音が聞こえてきたけど、僕は休まずにツボの魔力を吸い続けて、やっと停止させることができた。ドロドロと天に昇っていた瘴気は止み、徐々に光が差し込み始めている。



「タツーーーー!!」


 

 シンの声が聞こえる。魔力を吸いすぎて少々気持ち悪かったのだけれど、シンの声で安心したのか幾分かマシになった。


 

「シーーン! ここーー!!」


 無事に聞こえたみたいで、シンがこちらに向かってきている。地鳴りが響いていた村は、いつの間にか静寂が広がっていた。お互いの声がよく聞こえる。



「タツ!!」

 

 シンが僕の元へと慌ててやって来た。シンの様子から察するに、心配かけちゃったみたいだね。



「やぁシン、お疲れ様」

「お疲れ……って、ここで何してたんだ?」


 僕は静かになったツボを指差した。ふふふ、これが僕の戦果だよ。



「瘴気雲を出してたツボと戦ってたんだよ。ツボの抵抗がすごくてね……いやぁ〜凄まじい激戦だったけど、もう大丈夫だよ」

「そ、そうか……俺はてっきり何かあったのかと。無事ならいいんだ」


 シンがホッと息を吐き、額の汗を拭う。

 おんやぁ? 激戦ぶりをアピールしたんだけど、思ってた反応と違う。もっと褒めてもらえると思ってた。


 

「で、どうする? 止まってるようだけど、一応割っとくか?」

「そうだね……再起動したら面倒だもんね」


 僕が頷くと、シンがツボに嵌め込まれた宝石部分に蹴りを放つ。僕の時とは違って、あっさりと宝石は割れてツボが真っ二つになった。

 うーん。ちょっと悔しい。



「これでよし、と」

「全部……終わったのかな?」


 辺りを見回してみるけど、どこでも戦闘は行われていない。出現した化物もいなくなり、村全体を日光が照らしてくれている。


「そうみたいだな。とりあえず、カザンのところへ行こう」

「うん」


 僕たちは展望台を下り、カザンさんのいる方向へと歩き出した。

 程なくして、カザンさんの姿が見えたので名前を呼びながら手を振ると、カザンさんも手をあげながらこっちに歩いて来てくれた。



「いよぉ、終わったみたいだな」

「あんな化け物を倒すとは、さすがだな」


「へッ、当たり前……と言いたいところだが、倒したのは俺じゃねぇ。まぁ詳しい話は後でする」


 自分の事に必死で、何が起きてたのか視る余裕がなかったんだよね。後で説明してもらえるならすごく助かるよ。


 

「後始末はこの国の人間に任せて、俺たちは引き上げるぜ」

「え、もう行っちゃうの?」


「あぁ、本国ではまだ仲間が戦争中なんでな。一日でも早く帰りたいんだよ」

「そうか。確か、ライヴィア王国だったよな?」


「そうだ。ところでお前ら、これからどうするんだ?」

「え?」

「どうするって……」


 僕とシンは目を合わせる。特に考えてなかったけど、村がこんな状態になっちゃったんだ。コウタ達を弔ったり、復興を手伝ったりと、色々とやれることはあると思うけど……。



「単刀直入に言う。俺と一緒に来ないか?」


 その言葉に、僕もシンも驚きの声が飛び出た。正直思ってもいなかった言葉だ。


「と言うより、来てもらわないと困る。俺も……村の連中もな」

「村の連中が? なんでだよ」

 

「言い難い事だが、ヴィクター達がこの村に攻め入った理由はお前達だ」

「お、俺たちが?」

 

「そうだ。それが全てじゃねぇが、お前達を探していたのは確かだ」



 僕達のせいでこの村が襲われた? 僕達のせいで……コウタ達は殺されたの?



「言っとくが、お前達に罪はない。お前達もこの村も、巻き込まれただけに過ぎないんだからな」

「……なぁ、カザン。お前達はこの村に()()を取りに来たんだろう? それって何なんだ?」


 シンの質問に、カザンさんが少し眉をひそませる。


 

「誰かに聞いたのか? ……まぁ隠す必要もない。俺達が来たのはお前達に会うためだ」

「俺たちに……」


「色々あって戦う羽目になったがな。まぁ、お前たちの事を知るには丁度よかったぜ」

「なぁカザン。お前は、俺たちの事を何か知っているのか?」


「知らない……と言えば嘘になる。だが会うのは初めてだ」

「どういうことだよ」


「悪いが、俺からはこれ以上何も言えん。ただ言えるのは、このままお前達がこの村にいれば再び奴らが来るってことだけだ」

「……それが本当だとして、俺たちがお前の国に行ったらどうなる?」


「奴らの標的が、俺達の本拠地パラディオンになるだろうな」

「じゃあ……どこにも行けないじゃないかよ……」


 シンの言う通りだ。僕たちがそのパラディオンに行けば、そこに住む人たちの迷惑になる。……かといって、ここにいるわけにもいかない。

 僕はシンと二人ならどこにでも行く覚悟はあるけど、シンは今回のことで大分参ってるみたいだ。シンは優しいから、必要以上に自分のせいにしてしまうんだ。現に今も、俯いて泣きそうになっている。


 でも……そんなシンを見てカザンさんは、不敵な笑みを浮かべながらこう言ってくれた。


 

「俺を誰だと思ってるんだ? 俺ぁ全滅のカザン様だぜッ。お前らに寄ってくる敵なんざ一網打尽にしてやるよ」


 きっと、それは本心からの言葉なのだろう。カザンさんは、僕たちが迷惑だなんて微塵も思っていない。その頼もしすぎる言葉に、シンの顔が少し明るくなる。


 

「それによぉ、敵には既に言ってあるんだ。お前達はパラディオンにいるってよ」

「なッ……何勝手なこと言ってんだ!」


「へッ。で、どうする?」

「シン……どうする?」

「どうするも何も……行くしかないじゃないかよ」


 呆れたように笑いながら答えるシンに、カザンさんがニヤリと笑い返す。


「よし、じゃあ行くとするか」

「ま、待ってくれ。村の人達に話したいことがあるんだ」


「シン。さっきも言ったが、お前達が気に病む必要はないんだぜ」

「いや……世話になったんだ。これはケジメだ。話だけでもさせてほしい」


 シンは真っ直ぐにカザンさんを見据えている。こうなったらシンは絶対に折れない。そんなシンの覚悟を感じたのか、カザンさんは僕たちに背を向けて歩き出した。


「村の外にいるから、終わったら来てくれよ」

「あぁ、ありがとな」


 ヒラヒラと手を振りながら歩き去るカザンさんを見送り、僕たちは自然と目を合わせた。



「行こう、タツ」

「うん」


 歩き出したシンに続いて、僕も歩き出す。

 向かう先は東門だ。村のみんなが続々と戻ってきている。


 この三日間で、イズモ村が受けた被害は計り知れない。その責を、シンは背負おうとしている。今までのシンなら、僕を待たせて自分だけで話をしに行ったと思う。

 でもシンは……僕に『行こう』と言ってくれた。

 


 不謹慎かもしれないけど、僕にはそれがとても嬉しかった────。

拙作を読んで頂きありがとうございます。感想・質問・指摘などしてもらえると嬉しいです。

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