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タツノシン ~Astral Stories~  作者: コーポ6℃
第四章 シン追憶編
102/217

第1話:アズール騎士団

第四章【シン追憶編】 過去編スタートとなります。

 〜これは、タツとシンが天津国で目覚めた日から221年前の話〜



 ライザール皇国────この国は今、ある天災に悩まされていた。レヴェナントと名付けられた亡者がどこからともなく現れ、人々を襲うのだ。広大な国土を持つライザールは、その対応に苦しんでいた。自衛の為に、国民へ与えられた魔導具も効果はあったが、全ての被害を防ぐことは不可能だった。


 そしてレヴェナントの猛威から国民を守る為、ある組織が結成された。



 【アズール騎士団】

 ライザールの守護神であるテクノスの神託者、 “サンディス・ヴォルクシュタイン” によって結成されたこの騎士団は、強力な魔導具を手にレヴェナントを殲滅し、人々を脅威から守り続けた。


 燦然と輝く蒼い鎧に身を包んだ彼らを、人々は英雄と評し、国の守護者と諸手を挙げて賞賛した。


 子供達の憧れともなったアズール騎士団には、多くの騎士志願者が殺到した。だが、国の防衛という大任を負う騎士団の敷居は高く、多くの騎士見習いである従士たちの中には、夢を諦め兵士として騎士団に所属する者も大勢いた。


 正騎士への道──それは、準騎士と従士たちで行われる御前試合にて優勝し、その後行われる団長サンディスとの試合で、サンディスに認められれば皇帝に推挙され、洗礼をもって正騎士へと任命される。

 年齢も身分も関係ない。実力と人格が問われるこの選別方式は、誰もが夢見ることができ、従士たちの目を輝かせた。ただし、2年ごとに行われるこの御前試合優勝者も、サンディスの御眼鏡には適わず正騎士への道を断たれることもあった。


 現にここ4年の間に行われた2回の御前試合では、正騎士への昇格はサンディスによって否定されてきた。

 

 4年ぶりの正騎士誕生なるか……国民の関心と期待が高まる中、盛大に行われた御前試合は、優勝者とサンディスとの手合わせも滞りなく終了した。




 

 ────ライザールの皇都エルドランにて、新たな若き正騎士の叙任式が執り行われていた。


 アウローラ大聖堂──その天井は高く、虹色に輝くステンドグラスから差し込む光が、女神セルミアの像を美しく醸し出す。大理石の床には幾何学模様が美しく刻まれ、聖歌隊の歌声が荘厳な雰囲気を一層引き立てている。


 大聖堂の中央には、皇帝オルディンが王権の象徴である宝剣を握っている。そしてその膝下には、深海のように深い蒼色の鎧を纏った青年が膝をつき、頭を垂れていた。

 鎧の表面には繊細な銀の装飾が施されており、青年の持つ赤みがかった金色の毛髪と共に、光を浴びて輝きを放っていた。



「シン・ブレイブハートよ──汝はこのテクノス神によって賜られた宝剣と、セルミア神の神前にて、正騎士としての誓いを立てる覚悟はあるか?」


 皇帝オルディンの厳かで力強い声が大聖堂に響き渡る。シンと呼ばれた青年は、一度だけ大きく喉を鳴らし、決然とした声で答えた。



「誓います。この命をかけて、ライザールの正義を……民を守り抜きます」



 オルディンは頷き、宝剣を掲げて天に示した。宝剣に映る光が、ステンドグラスを通じて七色の輝きを放つ。



「ならば、ここに誓いの剣を捧げよう。シン・ブレイブハート──ライザール皇帝オルディンの名の下に、汝を正騎士に叙す」



 オルディンが宝剣をシンの肩に当て、その後胸に掲げた。聖歌隊が高らかに讃美歌を歌い上げ、大聖堂の熱が高まっていく。シンがゆっくりと立ち上がると、参列者から讃美歌を掻き消すほどの拍手と喝采が送られた。



 この若き正騎士の誕生に、ライザール皇国は湧き上がった。それは若き青年が正騎士になるという、新たな世代の誕生と成長、レヴェナントという天災に見舞われる国の将来を、明るく照らし出す希望の光だった。


 この青年は必ず英雄になる。誰もがそう期待し、祝福の声を上げた。



 シン・ブレイブハート────木々の葉が黄金色へと変わり始めた18歳の秋だった。

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