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§2-4. ある意味、一大イベント

おはようございます、こんにちは、アンドこんばんは。

そして、お立ち寄りいただきましてありがとうございます。

ぜひページのラストまでお付き合いくださいませ。


さながら不謹慎ではありますが、コドモにとっては『非日常=楽しい』なんです。たぶん。


 昼休みの校内に響き渡る『ピンポンパンポーン』とよく定型的に表現される「ド・ミ・ソ・ド」の並び。

『えー、先生方におかれましては、至急職員室にお集まりください。繰り返します、先生方におかれましては全員至急職員室にお集まりください。連絡以上』

 教頭先生と思われる声。そしてもう一度鳴り響く4音。

 ――そして、沸き立つ教室。

 ウチのクラスだけではなく、隣のクラスもそうだ。何だ何だと大盛り上がり。

「お?」

「おお?」

 (みち)(しげ)くんがこちらにやってくる。私といっしょにぐだぐだしていたつかさもそれに載っかる。

「これは、絶対に何かあるだろうなぁ……」

「ないわけないだろうなぁ……」

 言い方をわざわざ揃える。打ち合わせもなくて、よくそんなにぴったり併せられるモンだとこっそり感心する。

「何だろうな?」

 トイレから戻ってきたらしいマッシロもしれっと合流してきた。

「さぁねえ」

「午後の授業は無し! ……ってなったら良いんだけど。授業無しっていうか『帰れ~』的な」

「気持ちは解る」

 でも、だったら最初から臨時休校にして欲しいよね、とも思ったり。――いや、この日の朝早くがどんな天気だったかを私は覚えていないので、ここで適当なことは言わないけれど。それでもさすがに少しは吹雪いていたのではないかという予想は立てられる。それくらいの雪だ。

「給食前じゃなくて良かったなぁ……」

「ああ、そっち?」

「そりゃそうだろ」

 何故か機嫌を悪くするマッシロ。少なくとも勉強のために学校に来たがるようなタイプではないので、その反応は納得出来るけれど。

「ああ、そうか。(まさ)(ひろ)お前、ビーフシチュー好きだったもんな」

「お前に把握されてるのは何かヤだな」

「失礼な」

 そうだったっけ。言われてみればそんな気がしなくもない――くらいの曖昧な記憶だった。むしろデザートの方が嬉しかったりするような。

「お前は牛乳が飲めればいいんだろ?」

「うっさい」

 面倒なので一言でシャットアウトする。身長とかいろいろ欲しいし、そもそも牛乳は好きだから否定はしないけど。でもうるさい。いちいちこっちに矛先を向けるな。

 そんなことを話している内に昼休みも残り1分。授業開始までは残り6分と言ったところ。

 本来ならば先生がやってくるにはだいぶ早いのだが、早くも教室前側に先生の姿が見えた。

 しかもやってきたのは次の教科の国語担当の先生ではなく、社会科担当であるウチの担任。――うわぁ、懐かしい。前回の転送(タイムリープ)ではお目にかかれなかったのでちょっと嬉しかったりはする。リアルだと前回の同窓会以来だけど。

「お?」

「おおっ!?」

「ええっ!」

「お前らうるさいぞー」

 沸き立つ生徒、あしらう先生。ああ、これこれ。この力感の無い雰囲気。懐かしいわぁ。

「いやいや、次は国語ですよー?」

「解ってて言ってんだろ?」

 野次る道重くん、あしらう先生。半笑いだが、その目はわりと真剣に見える。この後の話題が割と深刻なことが簡単に伺い知れる。

「悪いな。予鈴がそろそろ」

 言い始めたところで丁度鳴り始めるチャイム。先生は一応それが鳴り終わるまで待つ。教室内もそれに併せて静かになった。他の教室でもだいたい同じような状況になっているらしく、さながらテスト中のようだ。

「さて、と。予鈴が鳴り終わったところで話を始めるんだが……」

 咳払いをひとつ挟む。

「ええ、まぁ、簡単に言ってしまうと、今日の午後の授業は無し!」

「「「おおおおおお!?」」」

「部活も無し」

「「「ええええええ!?」」」

「当然だろうが」

 バッサリ。

「ということで、集団下校ということになった。……まぁ、ちょっとマズいからな、この雪は」

 完全にホワイトアウト状態になった外を尻目に、歓喜と絶望が交差する教室。

 然もありなん。授業が吹き飛んだのは(大抵の生徒にとっては)好ましいことだろうけど、放課後とそこで行われる部活動まで吹き飛んだのはきっと残念なことだろう。

 私も正直なことを言ってしまうと、当時の部活の仲間に会えないのはちょっと残念だった。

「今から体育館に集合。で、それぞれ住所ごとに集まってもらう」

 ある程度同じ方面の生徒で集まって、それぞれの団体で帰っていくというスタイルを採用したようだ。それぞれのグループに対して割り振れる教職員の数も多くできるし、妥当性は高いと思う。

「いやぁ、……マジか!」

「何でそんなテンション高いのよ」

「わかる!」

「ちょっ」

 つかさがハイテンションで重なってくる。せっかくマッシロをあしらおうとしていたのに、ノせないでよ。困るわぁ……。



     〇



 午後イチの授業にあたる5時間目を体育館内でのグループ分け作業に割り当て、6時間目を帰宅とすることになった全校生徒は何となく浮き足立ちながら体育館に集まってきた。

 つかさはやや方向が違うので別グループだが、マッシロと道重くんは同じだった。今生の別れみたいなテンションになっていたつかさが、ちょっと面倒だった。死にゃあせんでしょ、さすがに。

 住んでいる町単位でのグループ分けにもグループに分けられた後でも、おしゃべりおしゃべり、そしておしゃべり。よくそんなに話すことがあるなあ――なんて思うのは、ただ私が本当は中学2年生ではないからなのかもしれない。もう少し話に混ざった方が良いのかもしれないが、下手なことをやらかすと後々面倒なので言わないでおく。それがきっと賢明な処世術のはずだ。

『いい加減に、静かにしろっ!!』

 定期的にマイク越しに怒っていた『ザ・生徒指導』な先生がとうとうハウリングを起こさせるレベルでブチ切れたところで、体育館内はようやく静まった。

「お~、こえ~」

「……よくアンタ、このタイミングで声出せるわね」

 恐れ知らず。マッシロがへらへら笑っていた。

「まぁ、ブチ切れたところで、あのマイクでぶっ叩こうモンなら……って話よ」

「うわぁ、悪ガキ……」

「勘の良いガキはキライだよ――ってか?」

「……はいはい」

 当時ならそんなことは思わなかっただろうけど、大人の気持ちも解っている今ならばちょっとだけ思ってしまう。――こういう小賢しい知識を持ってしまったヤツも受け持たないといけないなんて、かわいそう。

「っていうか、結構こっちの方って多いんだな」

「アンタはいつもギリギリに来るから知らなかっただけでしょ」

「……っぐ」

 私が当時登校していたタイミングならば、信号待ちの角は小中学生でいっぱいになるくらいには集まることもあった。遅刻寸前でやってきていたはずのマッシロには解らないだろう。

「あ、ホラ。次ウチらみたいだよ」

「お」

 やや遠方側から学校を出ることになっていたので今度は私たちのグループ。

()()()~っ!」

「はいはい、じゃあね。帰ったら連絡するからさ」

「さぁゆぅきぃぃぃ!」

 もう、悪目立ちさせないでよ。



     〇



 縁起でもない見送られ方をした私だったが。

 ――本当に、何事もなく、()()()()()()()()()

 本当に、マジで本当に、何にも問題は起きなかった。不思議なくらいに何も起きなかった。

 もちろんガチガチの向かい風で冷たい雪がぶつかってくるという、地獄のような天気は大問題だった。それは間違いない。帰り着いて数十分が経っても顔や手足の感覚はなかなか戻らなかったのもそれはそれで問題だった。

 ただ結局私は事故に巻き込まれるようなこともなく無事に帰り着くことができて、自室の机の上に置かれていたスマホからつかさに帰宅の連絡をすることもできて、少しシワが浅かった母と夕飯を食べ(父は雪のせいで帰宅がかなり遅れた)、お風呂に入り、ものすごく久々にベッドで寝ることができた。

 ――あれ?

 ちょっと待って。

 何かおかしくない?

 ――どうして私は、元の時間に戻れないの?


……そこそこ実話が混じってます、実は。


ということで、ここまでのお付き合いありがとうございます。


何かありましたら、遠慮無くどうぞ。

いろいろとお待ち申し上げております。

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