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タイムリープは恋の劇薬 ~サブタイトルも付かない人生にオススメの青春ゴーアラウンドプラン~  作者: 御子柴 流歌
第2章: 中学2年、真冬の帰り道

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§2-6. 文殊いくつ分かの知恵

おはようございます、こんにちは、アンドこんばんは。

そして、お立ち寄りいただきましてありがとうございます。

ぜひページのラストまでお付き合いくださいませ。


打破していきます。

「何だ。お前もいたのか」

「そりゃ居るでしょ。居ちゃ悪い?」

「へいへい」

 この態度――! この態度である。

 いきなり喧嘩を売っておきながら、黙っていろと言わんばかりのこの態度。だから腹立たしいという話。

「まぁ、面白くない冗談だった。スマン」

「……ふん」

 だったら最初からそういう態度で居れば良いのに。というか、そもそもくだらないと思っているなら言わなきゃ良いのに。本当に面倒なヤツ。

「それで? マジな話、どうしたんだ?」

「んー……。今先生が向こう側の方見に行ってるんだけど、ちょっと玄関先がマズいことになってて」

「マズい事っていうと……雪か?」

 私は大きく頷く。自分の目でも確かめたくなったらしいマッシロは、怪訝そうに眉を強く潜めつつ上靴のまま玄関に突入して、敢えなく帰還してきた。苦笑いのひとつふたつでも浮かべながら戻ってくるかと思いきや、予想外に真剣だった。

「マズいな、確かに」

「でしょ」

 本当にマズい。何がマズいって、私の記憶の中の中学時代には『放課後の大雪で帰宅困難になった』なんてモノは存在していないのだ。

 大雪にぶち当たることはまぁまぁあった。歩道に吹き溜まった雪が足首よりやや上くらいになっていたことはあったが、それでも帰れないことはない。今、あの向こうあたりでは、いったいどれくらいの雪が溜まっているのだろうか。この街をすべて雪で埋め尽くしてしまおうという強い意志すら感じる降り方だ。簡単には想像できなかった。

「おお、結構集まってたな」

 完全防備――上下をスキーウェアに身を包んだ先生がやってきた。当然みんなが一瞬気圧される。

「校門当たりまでを今から除雪機(きかい)使って一気に()ねるから、君たちはちょっとだけ待っててくれ。親御さんに連絡するんだったら職員室に入って電話してくれてもいいから」

 はいもいいえも聞き取らないままに、先生は戦場(ゆきのなか)へと駆け出していった。わりとかっこいいと思ったのは内緒――。

「何かカッコイイ……」

「かっけえ……」

 あ、同志がいた。ちょっと安心。

 学校に配備されている除雪機はかなり大きいサイズだ。一般家庭用と比べても倍以上の幅はある気がする。ふつうに考えたらすぐに動けるようにはなりそうだけど、どうだろうか。

 固唾を呑んで、少し冷える玄関先で待つ。他にも部活で残っていた生徒はまだ居たらしく、待っている私たちに話を聞いて同じように待機する生徒が徐々に増えてきていた。

「なぁ、ふと思ったんだけどさ」

 思いつきで話し始めたのは、マッシロと同じ部活の男子。同じクラスにはなったことがないはずで、イマイチ名前は覚えていなかった。

「これさ、自主的集団下校みたいな感じで帰った方が良くね? って思ったんだけど」

「ん?」

 周り数名が頭上にキレイな疑問符を浮かべた。すぐには察せなかった子が多いようだ。

「『家の方向が同じ子で集まって、まとまって帰りませんか?』ってこと?」

「そうそう、それ」

 そんな感じだろうとは思った。無事翻訳ができてよかった――中身オトナとして。

 たしかにそれはアリな選択だとは思う。

「でもそれってさ、俺らだけで集まったところで危ないんじゃね?」

「たしかに。結局吹雪いているには代わり無いんだし」

 何人かが反対意見を出したが、もちろんその危険性もある。あれはオトナである教職員の引率があるからこそできるのであって、子供だけでやる意味はどれほどあるのか解らなかった。だからこそ私はハッキリとその意見に載っかるかどうかの判断を迷っていた。

 ――のだが。

「いやいや。バラバラになって帰る方が危険だろ」

 反対意見への反論を始めたのは、意外にもマッシロだった。

「『万が一』とは言うけどさ、その万が一がここで起きない保証も無いだろ。だって、こんな雪が降ることこそ万が一レベルだろ」

「たしかになぁ……」

 へえ、と感心してしまった自分がちょっと悔しい。コイツ、しっかりカッコ付けだったところはあったはずだけど、こんなノリだっただろうか。キザったらしくもなく、嫌味ったらしくもないのが、ちょっと釈然としないところはあるけれど。

 それもこれも、わりと説得力のある言葉の選び方をしたからに他ならないわけで。

「私は、まとまって帰るのに賛成かな」

 ――だったら、その勇気に免じて同意の票を投じてあげよう。

「大きい通りを極力選んでまとまって帰ればいくらなんでも大丈夫だと思うし、いざとなったらコンビニとかに駆け込んでどうにかしよう、ってことで」

「うん。たぶんそれでイイと思う」

 ふたりで頷き合う。ウマいこと援護射撃はできたらしくて良かった。反発されるような道理もないけれど。

「あとは、アレだ。もし同じ方向のがいないとかなら、先生の車にでも乗せてもらえば」

「……ん? ぶっちゃけその方が」

「いやいや、人数考えろっつーの」

「言われみりゃそうだわ」

 だいたい1クラス以上の人数が集まっている。今残っている先生たちの車に入ろうとしても絶対何人かは溢れることになるはずだ。

 そんなわけで意見はまとまった。あと必要なことといえば、昨日体育館でやったように、今居る生徒がだいたいどの方角に家があるのかの調査。まずは町名基準で集合。この段階でそこそこのまとまりにはなったので、これをベースにしてそこからさらに細かく区分け。

「最後に女子ひとりになるような場合があったら、いちばん近い誰かが送ってから帰りゃいいだろ」

「お? どうした?」

 最終的な解散の部分の調整を終えたところで、雪だるまが入ってきた。先生だ。除雪機で跳ね飛ばされた雪が舞ってきたのだろう。

「あ、お疲れさまです。実は……」

 ――と、今まで話していた内容と、この区分けについての報告をする。真剣な顔をしていた先生は途中から感心してくれているのか、頷きが逐一大きくなってきた。元々かなり身振り手振りの多い豪快なタイプの先生だけれど、殊更に大きい。

「よし、解った。ちょっと距離が遠くてグループがあまり大きくないところは、先生たちが乗せてってやる」

「マジで!」

「お前らはいちばん近いだろうが」

「……バレたぁ」

「とくにお前は、家が近いんだからもう少しギリギリにならんようにだな」

 完全に藪をつついたパターンになっていた。

 隣で微妙な顔をしていたマッシロに言う。

「アンタ、余計なこと言わなくて良かったわね」

「何でだよ」

「同じ事ネチネチ言われてたかもよ」

「……たしかに」

 完全遅刻こそ回数は少ないが、目を付けられやすいタイミングで登校している感はある。恐らく名前と顔は他学年を受け持っている先生にも認識されているはずだ。

「ま、アイツは完全に無駄口だ。あと、俺ん家の場合はそんなに近くもないし」

「それも言えてるわ。賢明ね」

 なにはともあれ、生徒玄関から校門までの除雪は先生の尽力でどうにかなった。

 その後は各自歩道の吹き溜まりを強行軍もかくやというノリで突破するしか無かったが、それでもどうにか帰宅することはできた。母は相当気を揉んでいたらしく、私がインターフォンを押すと外にまで足音が聞こえてくるほどだった。



     〇



 ――その後。

 日付も変わろうかというくらいでようやく父も帰宅。除雪作業が完全に追いつかず、通勤用の電車が不通になってしまい、あらゆる手段を使ってどうにか帰ってきたとのこと。

 私の事も訊かれたが、セルフ集団下校の件を聞くと父も感心していた。ああいうのは孤立するのが一番危険だということは過去の事例からも明らかだと熱弁し始めようとしたところで母からのストップがかかる。いい加減に寝ろということらしい。

 寝る準備も終えていた私は素直に部屋へと向かい、ベッドに入り込もうとしたところで――ようやく見覚えのある、そして見たかったサイケデリックな光景に巻き込まれた。

 どうやらこれで『帰還』らしい。

 だけど、いったい何がどうなったんだろうか。

どうにかなった……のでしょうか。


ここまでのお付き合いありがとうございます。


何かありましたら、遠慮無くどうぞ。

いろいろとお待ち申し上げております。

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