§2-5. 何故か戻れなかった、その続き
おはようございます、こんにちは、アンドこんばんは。
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まさかの2日目です。
「……起きれた」
見た目は中2、頭脳は20代の私が次の日の朝に目を覚ましたとき、世界はそのまま中学2年生当時のままだった。
起きられてしまった――というか、私がいるべき世界線に帰れなかったのは何故なのか。その理由は全く分からない。その原因を探しにアマゾンの奥深くに赴いたところで絶対に無駄足になることくらいは解りきっている。そんな状況だった。
「これ、結局とくに何も変わりがないから、私はまだ中2当時のままってこと……なのよね?」
確信なんて持てやしないが、そうでも思っておかないとやってられない。これがもし何らかの事故が起きた結果であって、再び元の時間軸に戻れなくなったのだとしたら、さすがに困り果ててしまう。
また高校生や大学生をやり直さないといけないのは、さすがにちょっとイヤだ。そりゃあもちろん楽しいことはあった。それなりに人並みには楽しんだと思う。それでもイヤなイメージも当然付き纏うのであって、中には2度目なんて真っ平御免なこともある。たとえあの未来じゃなくなるのだとしても――である。
「……とりあえず起きなきゃ」
目覚まし時計は6時35分を指している。スマホのアラームはそろそろ3つ目の設定時刻を鳴り示すころだった。
雪は、相変わらず降り続いている。
〇
朝食を済ませ、母に見送られながら家を出る。追い風とそれに乗っかるようにして吹きすさぶ雪に背中を押されながらどうにか学校に辿り着いてしばらく経てば、教室内の話題は完全に昨日の集団下校だった。
「なんかふつうだったよなぁ」
「そっちの方は追い風だからでしょー? こっちの方なんてヤバかったよ」
「そーそー。めっちゃ強い風吹いたら一瞬息止まるよね」
「あ、わかるそれ!」
どの生徒も無事に帰宅できたらしいことは把握済みだった。何かしらの問題があれば恐らく地方ニュースか何かで流される程度には大事になるはずなので、それが無かったということは恙無く下校が完了したというわけだ。生徒たちがこうやって軽口を叩けるのも無事だったからに他ならない。きっと今頃先生たちも安心しているだろう。
――ところが、だった。
「ねえ、紗結綺?」
午前の授業、給食、昼休みと過ぎて残りのコマも1時間。それくらいのタイミングでつかさが私を呼んだ。
「なに~……え?」
次の授業の道具を教室後ろの棚から持ってこようとしたところで不意に外の景色を見て、思わず動きが止まる。
「わりと、ヤバくね?」
「うん。……だいぶヤバくね?」
たしかに朝から雪は降っていたし、何なら今日はずっと降り続いている。ただしその降り方はいわゆる『しんしんと降る』タイプの雪で、クリスマスなんかの時期にはイルミネーションが映えるようなところにこんな雪が降ってくれると一層映えると思われるヤツだった。
だけど、今はどうだ。
「昨日の再放送みたい」
「マジでそれ。……ってか、その表現おもろ」
「……いつだったか忘れたけど、芸人さんか誰かが言ってた気がした」
「今度私も使お」
それはともかく。
突然の悪化。まさに昨日の再放送のように一気に吹雪き始めた。
視界はすでに40メートルを切ってくる程度だろうか。最悪の時間帯よりは幾分かマシだが、あくまでもその程度だった。
「これ……今日は大丈夫だよねえ……?」
「いやぁ、わっかんない……」
「さすがに今日は部活やりたいんだけど……」
いくら未来から来ている自分でも、さすがに天気までは把握していない――というかそもそも2日目があるなんて思っていなかったので完全に想定の範囲外だった。
部活と言えば、私も今日はそれがある。せめてその時間には穏便に事を済ませられるくらいになっていればいいのだが。
〇
そんな考えは全く以て甘いのだということを、しっかりと思い知らされることになった。
放課後に入ろうという段階で雪は降り続いているものの、風は少しだけ収まった。
そのため学校側は『無事に帰宅できる』と判断し、昨日のような集団下校は行わないことにした。ただし、放課後に何らかの活動がない生徒は速やかに帰宅し、寄り道等は一切禁止という通達は成された。そもそも普段から寄り道はダメでしょ的な話はあるのだが、それはそれである。雑に言えば『用がなければとっとと帰って、家で大人しくしていろ』という話だ。
部活動に関しては特別な指示は出てこなかったので、私を含めて大概の生徒はそのままそれぞれの活動場所に向かうことになった。今日のバレー部の体育館割り当ては後半。部活終了は18時というスケジュールだった。
その頃には雪も大人しくなっていてくれれば――。
そんな願いも空しく、それどころか天候は悪化の一途。体育館中央付近にある頑丈なはずの扉が時折揺れるくらいの風も吹き始めていた。途中の飲水休憩のついでに外を見てみれば、案の定というか何というか。学校だけが完全に孤立してしまうのではないかという有様だった。
「いやいやちょっと……」
「ヤバくない? これ……」
天井付近の窓には容赦なくバチバチと雪が当たっている。その音が下の方にもしっかりと響いてきて、いよいよマズい状況なのではないかという空気が体育館内を満たしていく。
怪しげな雰囲気のままどうにか部活の終了時刻を迎え、それぞれで体育館の掃除を行って帰り支度をする。それぞれが支度を進める手はみんなかなり早い。当然ながら私もそうだ。みんな、何となく嫌な予感はしているのだろう。
生徒用玄関に向かったときには、もう悪夢だった。
風はそうでもない。
問題は雪――その量がとんでもなかった。
雪国らしく二重構造になっている玄関戸はどちらもガラス戸になっている。今はほぼ夜になっているが玄関前にはきっちりと照明で明るくなっているので本来ならば向こう側が良く見えるはず。
見えるはずなのだが、今は明らかに上の方からしか外が見えない。
下側は完全に着雪してしまっている――のだろうか。
――いや、ちょっと待って。
これは、違う。
ただの着雪じゃない。
上靴のまま三和土部分を駆け抜けてその扉を開けようとして、――開かなかった。
「え?」
「ん? ちょっと、え? 待って待って、どういうことそれ」
私の様子に気が付いた他の部員も寄ってくる。今度は少しだけ力を入れて開けようとして、ようやく開いた――のだが。
「うわっ!?」
「え、ウソ!」
雪がふくらはぎくらいの高さまで積もっていた。
衝撃的過ぎたのとあまりの寒さにすぐに閉じる。まさに『イヤなモノを見せられた』ときのような気分だった。
「ちょっとこれ今日帰れる!?」
「たぶんこれ、ここに吹き溜まりになっただけだと思うから、外はそれほどでも……」
――それほどでもないとは全然言い切れなかった。
玄関先というのはたしかに吹き溜まりやすいとは言える。が、ここは風通しが良い方なので、ここに積もっている雪がすべて風で溜まってきたモノだとは言いづらかった。
「みんな、大丈夫?」
「いやぁ……どうなんでしょう」
ここで先生もやってきた。ウチの顧問だけではなく、他の部活を担当している先生も居た。
曖昧なことしか言えない。さすがにここまで雪が降った日の記憶なんて、中学時代にはない。最近になって自衛隊の除雪作業が入るとか、とんでもない降り方をする日は珍しくもなくなってきているが、まさにそのときくらいの降り方だ。
「ドア開くか?」
「一応さっき開けましたけど、ちょっとヤバイです」
「ん? ……うわ、たしかに、これは……」
確認した先生も私たちと同じようにすぐさまドアを閉めて、何かを確認しに職員室の方へと戻っていった。
「お、バレー部じゃん」
「え?」
聞き慣れた声――否、聞き飽きた声。
入れ替わるようにやってきたのは、サッカー部のメンバーと一緒のマッシロだった。
さて、この窮地をどう脱するか。
ということで
ここまでのお付き合いありがとうございます。
何かありましたら、遠慮無くどうぞ。
いろいろとお待ち申し上げております。




