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タイムリープは恋の劇薬 ~サブタイトルも付かない人生にオススメの青春ゴーアラウンドプラン~  作者: 御子柴 流歌
第1章: 中学2年、学校祭にて

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§1-1. 結婚式場にて、私は得体の知れないモノに巻き込まれたらしい

おはようございます、こんにちは、アンドこんばんは。

そして、お立ち寄りいただきましてありがとうございます。

ぜひページのラストまでお付き合いくださいませ。


さて、取り出しましたるは「タイムリープ/過去改変/ラブコメ」でございます。

 愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである――

(サン・テグジュペリ)



     〇



()()()っ! 遅い!」

「いや、マジでゴメンて」

 私の顔を見るなり、(とく)(しま)つかさがぷんすかキレている。

 新婦と同じくらいには目立ちそうなドレスなんかを着ている彼女は小学校からの親友。私が『コイツは親友だ』と言い切れる数少ない存在。まさか大学までいっしょになるとは思わなかったけど。

「ん? ……ああ、誰かと思えば」

「そういうキミは道重くんね」

 久々だなぁなんて言い合う相手は道重(しゅう)。そんなキンキンの金色に染め抜いているあたり、たとえ何年先でもキミのことを道重くんだとしっかり認識できる自信が持てるというものだった。いわゆる遊び人っぽくも見えるが、実はそうでもないということはココに居る全員の共通認識だった。

 他にも見覚えのある顔がほとんど。知らない顔は、恐らく今日の主役の高校時代の同級生とかだろう。その辺りの人たちとは――まぁ、話を振られたときに答えるくらいでいいか、私は。

「紗結綺、今回けっこう()()()よ」

「……勝手に私まで飢えてるヤツ扱いしないでくれる? っていうか、そもそも私誰かの結婚式来るのって初めてだから」

「あれ、そうだっけ?」

「そうよ。院生やってたときは何回か招待状来てたけども」

「ああ~、たしかにアンタ来なかったね。忙しいとか何とか適当に理由付けて」

「ちょっと。ガチで研究とか論文とかあってムリだったんだって」

「はーいはい」

 人の話をいい加減に聞く辺りも含めて、つかさはいつも通りだった。

「……うむ。男子的にも()()()かもなぁ」

「道重くんもノらなくていいから」

 そういうことを言うから、知らない人に誤解されるんだっていうのに。

「……さて。そうなると、あとは(まさ)(ひろ)くらいか」

「そだねえ。紗結綺、知らない?」

「そんなの私がいちいち知るわけないでしょ。……どうせ遅刻でしょ、アイツは」

「15分遅刻者が自分を棚に上げてる件について」

「うっさいわねえ、いちいち」

 義務教育を同じ学校で終え、そのまま同じ高校にも通い、さらには大学まで同じというメンツはそれくらいだが、一応その辺りとは連絡などは取り続けていた。

 だけど何となくこの場の空気感のせいで、物凄く居心地が悪い。

「まだ時間あるよね、ちょっと外すわ」

「あ、ちょっと!」

 つかさは何かを言おうとしていたが、とりあえず無視だ。



     〇



「……はぁ」

 化粧室にてため息。鏡周りの装飾からして何とも派手で落ち着かない。

 もしかしたら来なきゃ良かったのかも――とかいう、少しばかりの後悔。

 もちろん懐かしい子たちの顔を見られたのは良かったかもしれない。

 だけどマリッジの当事者でもないのにブルーになるのは仕方ない。

「はぁ……っ」

 どうにか気持ちを元に戻そうとするけれど、鏡の中の自分の何とも冴えない雰囲気にやっぱりため息が出ていった。

 今日は同級生の結婚式。まさしくハレの日。なのに私は陰鬱の()があった。

 もちろん式場はプチ同窓会の様相を呈している。そこかしこで「久しぶりー!」の声が上がっている。私たちのクラスが同窓会をやったのは全員がハタチを超えたタイミングだったので、もうかれこれ5年以上も前のことか。――うう、何だかまたため息を吐きたくなってくる。

 何でこんなハレの日にため息が多いのかと訊かれれば、その理由はもちろん『式場について早々、受付をしてくれていた同級生ふたり(女子)の左手薬指にしっかりと指輪があったから』だ。

 向こうは校内でもトップクラスに()()()()()()()だったこともあってそこまで親しい方でもなく、高校からは違う学校に行っていたし、同窓会の時にも然程話をしなかったとはいえ――だ。衝撃がないわけではない。

 彼女たち以外にも指に光るモノをつけている子が、男女問わずよく居た。そして、一度目にしてしまうとついつい視線が行くので、余計に見つけてしまうという悪循環。

「そういうモンよ、そういうモン」

 だからこそ、改めて自分に言い聞かせる。

 たとえ自分には今のところそこまで浮いた話がなくたって、それで良いじゃないか。

 幸せってつまり何なんだって話になっても、結婚や恋がすべてじゃないとは思う。

 うん、きっとそうだ。たしかミスチルなんかがそう歌ってたはずだ。

「……戻るか」

 軽く両頬を叩こうとして、やっぱりやめる。何のためにココに来たんだって話。

「はぁ……」

 代わりに出て行くため息。

 そして、急に明るくなっていく――視界。

「……は?」

 真正面にある鏡、その装飾パーツが急激に輝きだしたように見える。 

「え、ちょっと!?」

 もはやそうとしか見えない。どこからか光が入ってきているわけでもないので、それ自体がめちゃめちゃに光っている。

 ――え、何。爆発でもするの? ここで私の人生、ジ・エンドですか?

 思わず目を瞑って、さらには顔を手で覆う。

 それでもまぶしさは変わらない。まるで光の束が手の平を突き抜けて来ているようだ。

 もっときつく目を瞑って5秒くらいは経った頃合い、少しだけ落ち着いてきたようだ。暗さが戻ってきたのか、あるいは私の目が慣れてきただけなのかは解らないが、とりあえず少しずつ目を開けて、さらには手を外してみると――。

「…………ん? んん?」

「どうされました?」

 ――誰かいる?

 何となく背後に気配を感じた。声も聞こえた気がした。

 しょぼつく目を強引に慣れさせながら後ろを向いて、瞬きを数回繰り返す。

 気のせいでは、ない。

 誰かが私を見つめていた。

「どうかされましたか?」

「え? ええ、いえ、その……とくに何も……」

 どうかされましたか――はどちらかと言えば私もあなたに言いたい台詞だったりするのだけれど。

 それにしても、突然現れたような感じのするこの女性はいったい何者なのだろうか。

 いかにもな感じの正装。いわゆる『緑の黒髪』とも言われるようなつややかな黒髪も目を引く。パッと見た感じだとこの式場のスタッフっぽい雰囲気はあるが、でもどことなく違和感を抱かせる。

 何がおかしいのかは解らないが、何かがおかしいことは判る。

「そうでしたか。それは失礼致しました」

 丁寧に礼をされ、思わずこちらも返した。互いに面を上げた後、向こうはしばらく見つめ返してくるので、しばらくの沈黙が訪れる。

「あの……」

「何か、お悩みされていることはありませんか?」

「え?」

 これってもしかして、式場とかに現れるよくわからない営業めいた勧誘の類いのヤツ?

 マルチ商法とかに引っかかるのは精神的な動きの大きいこういう場面だというのを聞いたことがあるような無いような。

「ああっ、すみません、決して怪しい者ではございません」

 そう言いながら彼女は少し慌てたように持っていたカバンを探ろうとして。

「……ここでは少々お邪魔になりそうなので、こちらの方へ」

 たしかに、化粧室でこんな話をしているのも如何なモノか。実際いつまでもここにいるわけにもいかないので大人しく廊下に出ると、明らかにこの女性の関係者――というか同僚のような男の姿もあった。こちらももちろん正装なのだが、やはり得体の知れない違和感が拭えない。

 ふたりはとくに会話を交わすようなこともなく、最初から示し合わせていたかのようなシンクロ具合で名刺を差し出してきた。

「……なるほど、結婚相談所の方ですか」

 わりと余計なお世話だ――というのは今の内にしっかりと飲み下しておく。

 ――『アストモス結婚相談所 AHエリア長 (なか)(もり)(てい)()

 ――『アストモス結婚相談所 AHエリア担当 (いちの)(みや)()()()

「こういうところにも営業回りみたいなこと、わざわざされるんですね」

 だから、ちょっとだけ棘を含める。

 ところでこの『AHエリア』って何だろう。何らかの区分のようだけど、そんな略称を持つようなモノがこの辺りにあっただろうか。

「ええ、そうですねえ……。最近はマッチングアプリで済まされる方も多いですし、色々な出逢い方というモノがありますけれども」

 男の方、中森さんが苦笑いしながら答えた。皮肉を受け流せるくらいの度量はあるらしい。日頃の賜物というヤツだろうか。

「弊社でもそのようなアプリの開発などを行っていますが、そちらと並行して少し前から新機軸のサービス提供を始めたのです。それで、このたび新システムを追加したということで現在は並行してモニタリングと言いましょうか、みなさまにお声がけをさせていただきつついろいろとお試しをいただいているというカタチでして」

 どこの業界も大変なんですね。

 それしても、新システムのお試しですか。そうなるとこの後に言われる内容としては。

「ちなみに、……失礼ですが、ご興味のほどは……」

 やっぱりか。

「まぁ、……人並みには?」

 無いとは言わないが、有るとは絶対に言わない。

 あとはどうやってあしらおうか――。そう思っていたとき。

「そうでしょうねえ」

「…………は?」

 何だコイツ。『そうでしょうねえ』って何様だ、コイツ。マジで。

 まさかさっきの皮肉の意趣返しのつもりか?

「今振り返って『あの時こうしていれば』と思えてしまうようなことは、恐らくあるはずですからね。とくに貴女のような方は」

「ちょっと、アナタね……」

 失礼が過ぎる。最近は侮辱罪の適用が容易になっていると聞くし、今からでもスマホの録音機能を使えばコイツらを一網打尽に――。

「た・と・え・ば。……高校2年の夏、わりと気になっていた先輩がサプライズの手伝いを頼んできて喜んで手伝っていたら、結果的に自分の友人への告白を助けてしまっていた……とか?」

 ――――――。

 ――……?

 は?

「大学1年の秋、あの合コンに顔を出したばかりにスマホを電話番号ごと変えなければいけなくなってしまった、……とか」

 いやいや、ちょっと。

 ――何でそんなこと知ってるの?

「『あの時、あんなことをしていなければ、私は……』みたいなこと。ありませんでしたか?」

「そりゃあ……、そうでしょうよ。誰だってあるでしょうよ。そんなこと」

 今、アンタに指摘された通りだよ。キモチワルイけど。

「他にもあります?」

「……まぁ」

「たとえば?」

「は?」

 満面の笑みで先を促される。

 仕方ないので何か思い付けるモノを――。

「……中2の、学校祭のときとか」

 さっき元クラスメイトたちの顔を見て不意に思い出したことがあった。

 ひとつ年上の、すごく評判の良かった先輩。顔もイイが(中学生基準で)オトナの余裕みたいなのがあり、当時の女子たちからの人気は高かった。

 とくに良い思い出でもなければ、悪い思い出でもない。ただの記憶レベル。こうしてなにかをきっかけにしないと思い出せないような記憶に過ぎない話だ。

「その過去、書き換えに行かれますか?」

 ――マジで貴方(アンタ)、さっきから何言ってるの?

ここまでのお付き合いありがとうございます。


何かありましたら、遠慮無くどうぞ。

いろいろとお待ち申し上げております。

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