表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

後輩をいじるには、まだまだ難易度が高かった。

昼飯を食べて、電車に乗って十分ほどして、内山の家の最寄り駅に着いた。あんまりこっち方面には来ないんだが、なかなかいいとこだな。住みやすそうだ。


「なかなかいい所だな」


「でしょ。私も気に入ってるんですよ。駅ちかだし」


「確かに。内山は、一人暮らしはするつもりはないのか?」


「そりゃしたいですよ。けど、マ…、お母さんはともかく、お父さんが許してくれないんですよ」


「まあ、そらそうか。こんな可愛い娘が一人暮らしなんて、普通に泣くな。お父さんからすれば」


「え!? い、いま可愛いって言いました!? 言いましたよね!?」


「え…? いやまあ、言ったけど」


「せ、先輩に可愛いって言われた……っ か、可愛いって…っ」


「ん…? 可愛いなんて言われ慣れてるだろ」


「せ、先輩は別なんです! 私にとったら…」


「とったら?」


「……っ。な、なんでもないです! これ以上変な事言ったら、お父さんに無理矢理、襲われたって言いますよ!」


「僕が悪かったですそれだけは勘弁してください」


「ふ、ふん。ほんと先輩は、引きこもり陰キャ変態野郎ですね」


「こ、こいつ…」


こいつはほんとに口が悪いな。可愛いって、ちょっと褒めただけやん。なのにこの言われよう。

つくづく陰キャには人権ってものがないのがわかる。

ここは一発ドカンと、先輩として説教してやる。


「内山君。ちょっと口がわるーー」


「ああ?」


「すいませんでした」


イヤ怖すぎー。ちびると思った。なんでこんな怖い顔をできるんだ。こいつは。


「さて、もう着きますよ」


「お、おう」


「なに緊張してるんですか? あ、もしかして、女の人の家に入るの初めてですか? ぷぷ。だっさー」


「う、うるせえな。別にいいだろ」


「は、初めてだったんだ。私が初めて…。ふふっ」


「なに笑ってんだ。失礼だー-」


「は?」


「なんでもありません…」


クソ情けねえ…。でも怖いもんは怖いもん。これで反抗してきたら、それ以上に攻撃してきて、号泣する未来しか見えない。


「さて、ここです。入りますよ」


「お、お邪魔しまーす」


緊張するな。女性の部屋に入るなんて、あの時以来か。

そう、実は女の子の家に入る事は、これが初めてではない。高校生の時に、一回だけあるのだ。最悪の思い出だけどな。あんまり思い出したくない。


「ここが私の部屋です。適当にくつろいでください」


「お、おう」


「飲み物持ってきます。なにか変な事してたらぶち殺しますからね」


「は、はい…」


じっとしとこう。まあでも、やっぱり気になるわけで。部屋の中を見渡してみる。

まあギャルって感じの部屋だな。机の上は化粧品でいっぱいだし、ピンク色のベットに、ゼブラ色の毛布。

いや、絶対ド〇キやん。ド〇キにしか売ってへんわ。あんな毛布。

それに写真がいっぱい飾ってあるな。夢の国の時の写真や、喫茶店の時の写真。

普通にエンジョイしてやがる。


「お待たせしましたー…。何か変な事してませんよね」


「し、してねえよ」


「ふーん…。まあいいですけど。じゃあ早速、うちの猫連れてきますね。いま一回にいるんですよ」


「お。おう! 早く触らせくれ!」


「うわキモ。今の普通にキモいです」


「う、すまん…」


ちょっとはしゃぎすぎたな。反省反省。猫の事になるとつい反応してしまう。

しばらく待っていると、内山が一階から上がってきた。


「こちら、うちのココアちゃんです!」


「…にゃー」


「お、おう! 可愛い! 可愛すぎる! ちょっと抱っこさしてくれ!」


「どうぞー」


「どれどれ。モフモフ具合を確かめる……いたっ」


「にゃー」


「あははー。引っかかれてやんのー。だっさー」


内山が、ココアちゃんを抱きしめながら、俺をいじってくる。普通にうぜー。

このままでは、俺の猫好きとしてのプライドがズタボロになってしまう。


「コ、ココアちゃーん。こっちおいでー」


「……にゃ」


「この俺が猫ちゃんに、そっぽを向かれただと…」


「どこの俺ですか…」


バ、バカな…。十年間猫ちゃんに癒されてきたが、こんな経験は初めてだ。でもそっぽ向く猫ちゃんも可愛いな…。


「なににやけてるんですか…。それにしても、うちのココア可愛いでしょ」


「ああ…。天使だ…」


「うわキモ…」


ふむ。ツンデレな性格も全然ありだな。


「けど、飼い主にはあんまり似てないな」


「どういう所がですか?」


「そりゃー、同じツンデレでも、飼い主のほうが、ツンが多いーー」


「殺すぞ」


「すいましぇん」


やっぱり内山の事いじるのは、難易度が高すぎる。怖い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ