後輩は、インスタ界でもモテる。
そんなイタイ会話をしていたら、店員が食事を持って来てくれた。
「…普通にうまそうだな」
「普通には余計です。ぶっ殺しますよ。この私が喫茶店選びで、失敗するわけないじゃないですか」
「…ハイ。なんか、すんません…」
ぶっ殺すとか、君みたいな可愛い子が、言っちゃだめでしょ。余計に心にクルから。心臓に槍刺さっちゃうから。毒が塗られてるナイフ刺さっちゃうから。
でも、確かにこのカルボナーラ美味い、これで八百円。かなり良心的だ。
「とりあえず、写真撮ろ」
「……写真なんて撮ってどうすんだ?」
なんか内山がパシャパシャといろんな角度で写真を撮っている。お前はプロの写真家か?
「インスタに投稿するんですよ。ほら、こんな風に」
「へー」
内山にちょっとドヤ顔風にスマホを見せつけられる。俺あんまり、インスタとか詳しくないんだよな。
ツイッターとかも見るだけだし。
どれどれと前かがみになりながら、スマホを見る。……なんか全部、輝かしいな。
つかマジで写真撮るの上手いやん。
「内山は写真を撮るの好きなのか? 滅茶苦茶撮るの上手いな」
「あ、ありがとうございます。インスタで写真ばっか撮っていたら、いつの間にか上達してました」
「へー。すごいな。……この三万ていう数字は何の数字なんだ?」
「あー。これフォロワー数ですよ」
「へー……いやちょい待ち。フォローしてくれてる人が三万人いるって事だよな…?」
「そうですよ?」
さ、三万だと!? こいつインスタでも、おモテになるのか。なんて奴や。今すぐに転職したほうがいいんじゃね。芸能界に。今の内にサイン貰っておこうかな。
「す、スゲーな…。お前はインスタ界でもモテるのか」
「ふふん。誰だと思ってんですか」
「生意気な後輩」
「目ん玉えぐりますよ?」
「サーセン」
だから君みたいな可愛い子が、そんな物騒な事言っちゃだめです。刺さっちゃいますから。
魔王と勇者の剣が同時に刺さっちゃいますから。
「と、とりあえず出るか。そろそろ猫エネルギーが切れそう。早くモフモフさして」
「そうですね。ここは私が……」
「いいって。俺がだすよ。猫をモフモフさしてくれるお礼だ」
「あ、ありがとうございます。……たまには先輩らしいとこもあるんですね」
「ふん。誰やと思ってんねん」
「引きこ陰キャ先輩」
「……ビンタするー-」
「あ?」
「すいません調子乗りました」
「ふふ。それでは行きましょうか! 私の家に!」
楽しそうだなー。まあ、こんな俺と一緒にいて、これだけ笑ってくれるなんて、それだけでも嬉しい気持ちになる。今までクソみたいな思い出しかないからな。
まあ今日は猫ちゃんと戯れるだけだし、なんもないだろ。
……なんかのフラグみたいだからやめよ。
とりあえず、今日は存分に楽しもう。主に猫ちゃんで。